玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす

文字の大きさ
61 / 384
第2章 ユルガルム領へ

第2章第009話 巨大白蛇

しおりを挟む
第2章第009話 巨大白蛇

・Side:ツキシマ・レイコ

 タシニを出てから二泊目終了。予定では、次の野営が最後です。皆早めに先に進みたいのか、準備はテキパキ進み、出発です。

 道中、レッドさんが探知の反応を見つけます。街道右側、東から数は六。今回は多いですね。
 タルタス隊長に知らせると、皆に警戒を促します。結構な速度でこらちに…こちらに向かってくるわけでは無いようですね。前方を通過するようです。

 「前方を通過します!」

 私が皆さんに告知します。
 それでも、護衛と騎士達が臨戦態勢を取っていると…前方の街道を、あの仔狼が走って横切って行きます。何事?と思ったら、それを追っかけて脇の林から出てきたのは…白蛇?

 鎌首持ち上げたら人の背丈くらいあるような、胴の太さも大人の男の胴より太いくらいの巨大な白蛇が、仔狼を追いかけています!。
 仔狼が捕まるか?と思ったとき、親狼が駆けつけて来ました。一方の親狼が蛇を牽制しているところの後ろから、もう一方が蛇の首…というか頭の根元に噛み付きます。もう一匹の仔狼も出てきました。家族総出で蛇に噛み付きます。
 首あたりか肋骨か、骨がベキベキと折れる音がして、蛇が大人しくなりました。

 この光景にキャラバンの人たちは固まっています。

 「…キャラバンにけしかけようとして失敗したのか。単に狼たちの狩りの場面に出くわしたのか。判断に迷うな」

 タルタス隊長が分析しますが。これはちょっと分りませんね。
 ここで思い出します。反応は六だったことに。今いるのは、狼が四に蛇が一。一つ足りません。

 「タルタス隊長、反応は六です! もう一匹います! 東からもう一匹!」

 私でもすぐに分る大きい反応が一つ。こちらに向かっています。

 「っ! 全員警戒を解くな!」

 ズズズズ

 引きずるような不気味な音を出して、最後の一匹が林から進み出ていきます。キャラバンと狼たちを認めると、鎌首を持ち上げて、蛇独特のシャーという威嚇をしてきます。

 「ちょ! こんなのがこの世界にはいるんですか?!」

 「俺も見たことねーよ、こんなのっ!」

 タルタス隊長、素が出ています。

 でかい!
 先ほどの白蛇より一回り二回りでかいという程度では済みません。頭だけ見ればティラノサウルスか?というくらいのサイズです。
 白狼たちも再度臨戦態勢を取りますが、攻め倦ねています。が、その蛇は場所的に一番近い親狼に向かっていきます!
 逃げるか避けるしかない白狼たち。

 戦場がキャラバンの前を塞いでいるのと、引き返そうにも馬が暴れるのを苦労して抑えている状態なので、私たちも退避も出来ません。
 しかし、馬車を諦めて伯爵家勢を徒歩で逃すにしても、これではタシニまで逃げ切れる保証もありません。
 そうしているうちに蛇は、見える範囲で一番でかく、捕らえるのも容易そうな獲物として、キャラバン先頭の馬車の馬に目を付けたようです。
 仕方ありません、レイコ出動します!。



 レッドさんが飛翔し、巨大白蛇の回りを飛んで注意を引きます。蛇の頭が下がったところを跳び蹴りしてみましたが。毎度勢いを付けきれないのと体の軽さで、大してダメージが通りませんね。
 我に返った護衛隊の人達が、槍を投げて攻撃を試みますが。かなり堅いのか、皮に傷を付けるのが精一杯のようで、刺さりもしません。
 これは、レイコ・バスター初使用か?と考えてましたが。あれはいろいろ輻射がキツいので、ここでは使いたくありません。白狼たちを巻き込んでしまいまう恐れがあります。

 あ、仔狼が蛇の尾あたりに噛み付きましたが。殆ど効かず、逆に跳ね飛ばされました。

 「キャイン!」

 犬っぽい悲鳴を上げて、地面にたたき付けられています。
 蛇が転がった仔犬に食いつこうとしたその横っ面に、レイコ・ガンを放ちます!
 ガンとは言いつつも、実情は単なる熱線と言っていいものです。この蛇相手では、貫通力は皆無ですが。

 !!!!

 それでも、うまいこと片目にダメージが入ったようです。
 片目を瞬膜で閉じた白蛇が、声にならない悲鳴を上げ。ものすごい速度で茂みの向こうに退散しました。



 「…さすがにあれをキャラバンにけしかけは出来ないだろ。どう見ても命がけだ」

 レッドさんは警報を解除してます。見える範囲には脅威はありません。あくまで視界が通る範囲ですが。
 しかしあの蛇は逃げただけ。依然、脅威は健在です。

 タロウさんの指示で、横モヒカンさん達が小さい方の白蛇の皮を剥いでいます。ここに長居したくないので時間勝負です。
 タルタス隊長、ダンテ隊長、覇王様に私とで、臨時対応会議です。タロウさんも来て下さいよ。

 「どうする? 進むか戻るか?」

 ここに留まるという選択はもちろんないのですが。どちらに進むのがより安全なのか計りかねています。
 一番近くの街や村ということなら、このまま進むべきですが。あのサイズの蛇では、村程度に逃げ込んでもどうでもならないでしょう。退治に軍が必要なレベルですね。

 「タルタス隊長、とりあえずレッドさんに偵察して貰いましょう」

 「小竜様に?危ないことはさせられないぞ?」

 皆はもう大げさにはしませんが、赤竜神の子供だとか使いだと見なされているレッドさんです。護衛する必要があるかはともかくとして、ある意味伯爵家以上のVIPな存在のレッドさんですので。偵察に使うのに躊躇されています。

 「そこは大丈夫です。いいよね?レッドさん」

 「クー」

 とレッドさんが了解してくれました。

 ちょっと皆から離れて。レッドさんに右手に載って貰います。私の手ではちょっと窮屈ですが。
 そのまま砲丸投げの要領で…レイコ・カタパルト!

 「レイコちゃん何を?!」

 後ろでびっくりしている人がいますが、心配ご無用。

 放物線を描いて飛んでいくレッドさん。その頂点で翼をばっと広げます。その翼がボウと光って、かるく羽ばたきながらそのままパワーズームしていきました。
 おお、全力で飛ぶレッドさん、私も初めて見ます。


 数分でレッドさんが戻ってきました。

 タルタス隊長に地図を出して貰います。…雑な地図ですね。街道と河、山のだいたいの位置くらいです。でも、町や村との相対位置でだいたいの場所は示せます。レッドさんから、上空から見た詳しいイメージが送られてきます。

 街道はほぼ北向き。例の蛇は、ここから東北東の方向約二キロメートル。今は、街道から結構離れた浅い洞窟に潜んでいるようで。離れたところからの横面からの探査に引っかかったようです。
 次の野営地の場所らしき処も見つかりました。

 「丸太小屋があるところが次の野営地で合っていますか?」

 「ああ。そこが予定地だ」

 となると。蛇のいる洞窟を横目にやり過ごして、そこまで行ってしまった方が安全だろうという話になりました。役に立つかどうかはともかく、小屋があるというのもポイントが高いです。どのみち夜に移動するのは無謀ですからね。

 ともかく今は先を急ごう!と言うところで。問題が一つ残ってました。

 白蛇に飛ばされた仔狼。どうも足を痛めたらしいです。完全に折れてはいないが、ひびくらいは入っていそうで。足を引きずってでも歩こうとしていのすが、痛みで上手く立てないようです。これでは、親狼について行くことは出来ないでしょう。
 親狼が、怪我をした仔狼に心配そうに付き添っています。これは、ちょっとやそっとでは離れそうも無いですね。

 もしこのままここに置いてっても、無事かどうかはちょっと妖しいです。あの巨大白蛇はともかく、小さい…とは言い難いサイズでしたが、小型の白蛇がもういないとは断言できないですし、野生動物は他にもいるでしょう。

 いつのまにか馬車を降りているクラウヤート様が、心配そうに仔狼を見てます。

 「タルタス隊長、なんとか助けてあげられないかな?」

 「うーん…連れて行けないこともないのですが。大人しく馬車に乗ってくれますかね?」

 タルタス隊長もなんとなく情が移っているらしい。助けられるものなら助けたいようです。
 クラウヤート様が、何か期待するようなまなざしで私を見てました。今のところ、狼と直接接触したのは私だけ。
 …はい分りました。私もあの仔を見捨てたくは無いですからね。

 仔狼には親狼が付き添っている。そこに驚かさないように近づいていく。
 親狼は私をじっと見ている。

 「この仔を助けたいの。馬車に乗せるね」

 言葉が通じるわけでは無いでしょうが。私を襲うことも無いようです。
 ゴールデンレトリバーくらいのその仔を、お腹と胸のあたりを抱えて持ち上げる。仔狼がちょっと抵抗するが、親狼が

 ガウっ!

 と軽く吠えると大人しくなった。私が助けようとしていることは理解しているようです。ほんと、頭良いですね、この狼たち。

 最後尾の荷馬車の空いているところに仔狼を乗せたところで、キャラバンが進み出しました。先は急ぎます。
 他の狼達も、少し離れて付いて来ています。

 とりあえず、仔狼の足を添え木で固定しようかと思っていたところ、エカテリンさんがカバンを持って来ました。中は騎士隊の救急用品だそうです。添え木に使う竹板とか、固定や包帯代わりのサラシとか、いろいろ入ってます。
 私がやろうかと思ったけど、エカテリンさんの方が慣れている感じなので、任せてみました。仔狼も、痛みを我慢しつつ大人しくしています。

 「完全に折れてはいないけど。ひびは入っているね。全治一ヶ月ってところかな? 一応、痛み止めと熱止めの薬もあるけど、多分飲まないよな。後で餌に混ぜられないか考えてみよう」

 足に竹板を当てて、サラシで巻いて固定します。この辺は地球と同じような物ですね。

 「にしても、見事な毛並みだねぇ」

 エカテリンさんは、もう警戒をしていない仔狼の毛並みを撫でている。仔狼もされるがままだ。
 エカテリンさん、ニコニコしてます。足折れて痛いはずだから、お手柔らかにね。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ペットになった

ノーウェザー
ファンタジー
ペットになってしまった『クロ』。 言葉も常識も通用しない世界。 それでも、特に不便は感じない。 あの場所に戻るくらいなら、別にどんな場所でも良かったから。 「クロ」 笑いながらオレの名前を呼ぶこの人がいる限り、オレは・・・ーーーー・・・。 ※視点コロコロ ※更新ノロノロ

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい

あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。 誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。 それが私の最後の記憶。 ※わかっている、これはご都合主義! ※設定はゆるんゆるん ※実在しない ※全五話

転生したら幽閉王子でした~これどうすんの?

サクラ近衛将監
ファンタジー
 神様の眷属の過失が原因の事故に遭って死んだ桜庭雄一が異世界に転生したら、とある国の忌避すべき王子として幽閉されていた。  転生にはチートがつきもののはずだが、事故で死んだ者が300名を超えるために、個別にチートは与えられず、転生先の者の能力を生かせと神に告げられている。  「神の加護」ではないけれど、「恩寵」が与えられているので、当該異世界では努力を為した分、通常に比べると成果があるらしい。  これはとある国の幽閉王子に転生した男の冒険譚である。  原則として、毎週月曜日20時に投稿予定です。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

処理中です...