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第2章 ユルガルム領へ
第2章第022話 軍学校
第2章第022話 軍学校
・Side:ツキシマ・レイコ
ネイルコード国の国王に謁見するために、現在王都行きの馬車の中です。
はい。アイズン伯爵の護衛の名目ではありますが、同じ伯爵家の馬車に同乗しています。レッドさんも一緒です。あと、毎度のダンテ隊長。
エイゼル市の脇…街の拡張に伴ってエイゼル市の中と言って良い場所を流れるのが、カラスウ河です。感覚では多摩川くらいの規模かな?
河には堤防もけっこう整備されており、街から離れれば農地が広がっています。
河にほぼ平行して街道が通っています。この街道は、王都とエイゼル市を結ぶ幹線だそうで、馬車四両くらいは並べる幅があります。先ほどから荷馬車も多くすれ違いますね。
先日、連座の件で激高してしまったので。ちょと気まずいですが。
「アイズン伯爵…あの…その」
「ん?どうしたねレイコ殿」
「先日は貴族なんか嫌いとか言ってしまって済みません」
「なんじゃそんなことか。気にはしておらんよ。わしもバッセンベルには腹が立った口だからな」
「…生意気言いますが。アイズン伯爵は、私の感覚でもすごく良く領地を納めてられると思います。為政者としては理想的といって良いくらい」
それこそ、私がいなくてもいいんじゃないかというくらい。
「巫女様にそこまで言って貰えるとは光栄じゃな」
「ですが。貴族だから偉い、何してもいいと考えているようなのは、貴族とかいう以前に、どうしても」
「貴族が嫌いというより、そういうのをのさばらせている貴族という仕組みが嫌い…というところかね?」
「…そうですね」
民主主義万歳!…なんていうつもりはないです。衆愚政治、ポピュリズム。民衆は好き嫌いだけで判断して責任は丸投げ、未熟な民主主義が陥る罠だ。発展途上国に民主主義を押しつけると、大抵これで失敗している。彼らは、権利を主張するのに選挙ではなく、安易に武器の方を取るのだ。
民衆の教育と民度が上がってこそ民主主義は"適切に運用される"と、お父さんも言ってた。
本来は、資本主義によって行なわれる資本や人材等のリソースの集中と効率的運用。これらは、この国では貴族が、というよりアイズン伯爵と彼に同調する王侯貴族によって行なわれています。もし、エイゼル領からアイズン伯爵を排除してしまっては、この領の安定と発展は、一気に瓦解するでしょう。
それを出来るだけの権力をアイズン伯爵に与えているのも、この国の貴族制度なのは事実なのです。
このへんのことを簡単にアイズン伯爵に説明ました。
「民主主義か。理想は分るが、あくまで理想にしか思えんな」
「はい。だから、アイズン伯爵を否定しているとかじゃなくて…」
「うん、分っておるから。まぁ、あの不愉快なやつらの話はお終いにしよう」
「…はい」
アイズン伯爵にとっても、あの結末は不本意だというのは分っているが。
貴族を否定したところで、この領地が伯爵の権威で作られたのも事実。この辺の仕組みとの付き合い方とかは、もっと勉強する必要があります。
王都へは、エイゼル市を出発して夕方前には着くくらいの距離なのですが。馬車は、昼休み休憩もかねて途中にある国の施設に入っていきます。
雰囲気は…西洋建築の学校?
敷地内には、校舎のような建物が何棟も建っており。広大なグラウンドがいくつも併設されているようです。
近くには、…宿舎か寮かな? 六六と同じような建物が、相当数並んでいます。
学校みたいなところだと思ったら、学校でした。
この国の軍の学校で。新兵訓練と、指揮官の育成のための学校が併設されていそうです。
今朝、エイゼル市を出たあとに聞かされたのですが。この軍学校にはダンテ隊長の友人の方が軍の士官として赴任されているそうで。ユルガルムで起きた蟻について、昼食がてら現場を見てきたダンテ隊長と私の話を聞きたい…という依頼なわけですが。
お会いした軍人は、イシンハイ・グガルチさん。この学校の校長だそうです。
階級が直訳できないのですが。三佐…あたりが意味が通るかな?ただこの軍では、三は一より偉いので、大佐さんですね。ゴルゲットには星三つです。そう言えば地球でも、一佐一尉なのに星は三つですね。
イシンハイ大佐に、蟻との戦いの経緯を説明しました。蟻の弱点などは報告が来ているそうですが。女王蟻と対峙したのは私だけですしね。
レッドさんはマイペースにお菓子を戴いています。
理屈は不明ですが、女王蟻を倒せば蟻は組織的行動をしなくなるようだ…とはいえ。あの女王は、兵隊蟻を結構な速度で量産してましたからね。流石に大軍と対峙しては蟻の再生産は間に合わないでしょうが。夜は攻撃を休むなんてしたら、その間に回復されそうです。
ともかく、蟻の数の回復以上の速度で殲滅して、穴の中で女王を叩く必要があります。
と話しているうちに。レイコ・バスターの話題が出ました。
…イシンハイ大佐が、実際に撃つところを見てみたいと。いいんですか撃って?
誰に許可貰ったら良いんだろ?…と思い、アイズン伯爵を見ますが。
「いやなら断ってもいいんじゃよ」
別にいやって事はないのですが。いいの? え?アイズン伯爵も見てみたいと。はい分りました。
グラウンドに出ました。グラウンドの向こう側は柵があって、学校の外は未開拓の丘や平原が広がっています。
試射に当たって念のため、二十メートルは私から離れて貰い、盛り土で体を隠して貰い、大型の盾を持った兵士を護衛に用意する、この辺をお願いしました。
「あの土を盛ったところを狙ってくれ」
とイシンハイ大佐が指を指します。あのグラウンドの外の丘ですね? 了解です。
レッドさんにお願いして索敵をして貰います。丘の向こうに人でもいたら大変ですから。
飛んでいくレッドさんにイシンハイ大佐がびっくりしています。
真上に放り投げたレッドさんは軽く滑空してすぐに戻ってきます。学校周辺、問題になるところに人影なし、接近する者も無しということです。
見学者が隠れて、護衛も配置に就いたところで。
あの丘なら、蛇を倒したときより大き目な感じで…チャージ終了!
「準備できました!。号令お願いします!」
イシンハイ大佐がカウントしてくれます。
「5!、4!、3!、2!、1!、撃て!」
パンっ!。
発射音自体は、メーザーが空気を加熱膨張させた分だけなので。軽い放電程度なのですが。
着弾点の丘は三百メートルくらい先です。
着弾の直後、丘が盛り上がり足元に振動が届いたと思ったら、丘の表面が割れて爆炎が吹き出し。ドガン!という衝撃波が私達に届く頃には、黒煙に変わり始めます。建物がガラス張りなら、全滅してましたね。
この辺にもぱらぱらと細かい砂が降ってきますが。でかい破片は飛んでこなかったようですね。良かった良かった。でも、グラウンドは土砂やら石ならが散乱、柵も吹き飛んでいます。
吹き飛んだ丘を見て、見学人達が唖然としています。
イシンハイ大佐が、指を指して言います。
「レイコ殿。盛った土ってあそこなんだけど」
爆破した丘より、ちょっと左方向。弓矢の的が置かれた盛り土が、グラウンドの端にあります。
後ろの校舎や宿舎が、ガヤガヤと騒がしくなります。何事かと人が一杯出てきました。
…やっちゃいました?私。
・Side:ツキシマ・レイコ
ネイルコード国の国王に謁見するために、現在王都行きの馬車の中です。
はい。アイズン伯爵の護衛の名目ではありますが、同じ伯爵家の馬車に同乗しています。レッドさんも一緒です。あと、毎度のダンテ隊長。
エイゼル市の脇…街の拡張に伴ってエイゼル市の中と言って良い場所を流れるのが、カラスウ河です。感覚では多摩川くらいの規模かな?
河には堤防もけっこう整備されており、街から離れれば農地が広がっています。
河にほぼ平行して街道が通っています。この街道は、王都とエイゼル市を結ぶ幹線だそうで、馬車四両くらいは並べる幅があります。先ほどから荷馬車も多くすれ違いますね。
先日、連座の件で激高してしまったので。ちょと気まずいですが。
「アイズン伯爵…あの…その」
「ん?どうしたねレイコ殿」
「先日は貴族なんか嫌いとか言ってしまって済みません」
「なんじゃそんなことか。気にはしておらんよ。わしもバッセンベルには腹が立った口だからな」
「…生意気言いますが。アイズン伯爵は、私の感覚でもすごく良く領地を納めてられると思います。為政者としては理想的といって良いくらい」
それこそ、私がいなくてもいいんじゃないかというくらい。
「巫女様にそこまで言って貰えるとは光栄じゃな」
「ですが。貴族だから偉い、何してもいいと考えているようなのは、貴族とかいう以前に、どうしても」
「貴族が嫌いというより、そういうのをのさばらせている貴族という仕組みが嫌い…というところかね?」
「…そうですね」
民主主義万歳!…なんていうつもりはないです。衆愚政治、ポピュリズム。民衆は好き嫌いだけで判断して責任は丸投げ、未熟な民主主義が陥る罠だ。発展途上国に民主主義を押しつけると、大抵これで失敗している。彼らは、権利を主張するのに選挙ではなく、安易に武器の方を取るのだ。
民衆の教育と民度が上がってこそ民主主義は"適切に運用される"と、お父さんも言ってた。
本来は、資本主義によって行なわれる資本や人材等のリソースの集中と効率的運用。これらは、この国では貴族が、というよりアイズン伯爵と彼に同調する王侯貴族によって行なわれています。もし、エイゼル領からアイズン伯爵を排除してしまっては、この領の安定と発展は、一気に瓦解するでしょう。
それを出来るだけの権力をアイズン伯爵に与えているのも、この国の貴族制度なのは事実なのです。
このへんのことを簡単にアイズン伯爵に説明ました。
「民主主義か。理想は分るが、あくまで理想にしか思えんな」
「はい。だから、アイズン伯爵を否定しているとかじゃなくて…」
「うん、分っておるから。まぁ、あの不愉快なやつらの話はお終いにしよう」
「…はい」
アイズン伯爵にとっても、あの結末は不本意だというのは分っているが。
貴族を否定したところで、この領地が伯爵の権威で作られたのも事実。この辺の仕組みとの付き合い方とかは、もっと勉強する必要があります。
王都へは、エイゼル市を出発して夕方前には着くくらいの距離なのですが。馬車は、昼休み休憩もかねて途中にある国の施設に入っていきます。
雰囲気は…西洋建築の学校?
敷地内には、校舎のような建物が何棟も建っており。広大なグラウンドがいくつも併設されているようです。
近くには、…宿舎か寮かな? 六六と同じような建物が、相当数並んでいます。
学校みたいなところだと思ったら、学校でした。
この国の軍の学校で。新兵訓練と、指揮官の育成のための学校が併設されていそうです。
今朝、エイゼル市を出たあとに聞かされたのですが。この軍学校にはダンテ隊長の友人の方が軍の士官として赴任されているそうで。ユルガルムで起きた蟻について、昼食がてら現場を見てきたダンテ隊長と私の話を聞きたい…という依頼なわけですが。
お会いした軍人は、イシンハイ・グガルチさん。この学校の校長だそうです。
階級が直訳できないのですが。三佐…あたりが意味が通るかな?ただこの軍では、三は一より偉いので、大佐さんですね。ゴルゲットには星三つです。そう言えば地球でも、一佐一尉なのに星は三つですね。
イシンハイ大佐に、蟻との戦いの経緯を説明しました。蟻の弱点などは報告が来ているそうですが。女王蟻と対峙したのは私だけですしね。
レッドさんはマイペースにお菓子を戴いています。
理屈は不明ですが、女王蟻を倒せば蟻は組織的行動をしなくなるようだ…とはいえ。あの女王は、兵隊蟻を結構な速度で量産してましたからね。流石に大軍と対峙しては蟻の再生産は間に合わないでしょうが。夜は攻撃を休むなんてしたら、その間に回復されそうです。
ともかく、蟻の数の回復以上の速度で殲滅して、穴の中で女王を叩く必要があります。
と話しているうちに。レイコ・バスターの話題が出ました。
…イシンハイ大佐が、実際に撃つところを見てみたいと。いいんですか撃って?
誰に許可貰ったら良いんだろ?…と思い、アイズン伯爵を見ますが。
「いやなら断ってもいいんじゃよ」
別にいやって事はないのですが。いいの? え?アイズン伯爵も見てみたいと。はい分りました。
グラウンドに出ました。グラウンドの向こう側は柵があって、学校の外は未開拓の丘や平原が広がっています。
試射に当たって念のため、二十メートルは私から離れて貰い、盛り土で体を隠して貰い、大型の盾を持った兵士を護衛に用意する、この辺をお願いしました。
「あの土を盛ったところを狙ってくれ」
とイシンハイ大佐が指を指します。あのグラウンドの外の丘ですね? 了解です。
レッドさんにお願いして索敵をして貰います。丘の向こうに人でもいたら大変ですから。
飛んでいくレッドさんにイシンハイ大佐がびっくりしています。
真上に放り投げたレッドさんは軽く滑空してすぐに戻ってきます。学校周辺、問題になるところに人影なし、接近する者も無しということです。
見学者が隠れて、護衛も配置に就いたところで。
あの丘なら、蛇を倒したときより大き目な感じで…チャージ終了!
「準備できました!。号令お願いします!」
イシンハイ大佐がカウントしてくれます。
「5!、4!、3!、2!、1!、撃て!」
パンっ!。
発射音自体は、メーザーが空気を加熱膨張させた分だけなので。軽い放電程度なのですが。
着弾点の丘は三百メートルくらい先です。
着弾の直後、丘が盛り上がり足元に振動が届いたと思ったら、丘の表面が割れて爆炎が吹き出し。ドガン!という衝撃波が私達に届く頃には、黒煙に変わり始めます。建物がガラス張りなら、全滅してましたね。
この辺にもぱらぱらと細かい砂が降ってきますが。でかい破片は飛んでこなかったようですね。良かった良かった。でも、グラウンドは土砂やら石ならが散乱、柵も吹き飛んでいます。
吹き飛んだ丘を見て、見学人達が唖然としています。
イシンハイ大佐が、指を指して言います。
「レイコ殿。盛った土ってあそこなんだけど」
爆破した丘より、ちょっと左方向。弓矢の的が置かれた盛り土が、グラウンドの端にあります。
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