玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす

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第6章 エイゼル市に響くウェディングベル

第6章第017話 決闘です

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第6章第017話 決闘です

・Side:ツキシマ・レイコ

 「というわけで。今日は安全第一で行きましょうっ!」

 「はぁ… まぁアイリのために頑張りますか…」

 「タロウっ! もっとシャキッとしなさいよ!」

 というわけで。アイリさんとの結婚を巡って、タロウさんとチャラ貴ラージュの決闘当日です。
 場所は、アイズン伯爵邸の横にある貴族街の護衛騎士詰め所、そこに併設されている訓練場です。
 ギャラリーはアイズン伯爵の護衛騎士の皆さん。これが貴族街でなければ、一般の人やら商会の人やらでギャラリーが賑わっていたでしょうけど。上の方から大げさにするなという話が下りてきているようです。

 臨時の貴賓席みたいなところが設けられていまして。シエラ辺境候夫人とチャラ貴1であるカマンパパが陣取っています。
 チャラ貴ラージュもスタンバっていますが…
 チャラ貴側の代理人が、ガチャガチャと鎧を鳴らして訓練場に入ってきました。
 …まぁおばあちゃんであるシエラ夫人と、チャラ貴1であるカマンパパが用意してくれた代理人だと思いますが。 …あの赤い鎧って…

 「我こそは武者修行の旅に正教国より出でて幾星霜、教会より賜った騎士爵位は赤竜の騎士、ドンク・イソーテなり。シエラ様には一宿一飯の恩あり。義によってラージュ殿下の決闘の助太刀を致す」

 なんか古めかしいセリフに翻訳されてますが…赤い鎧の人ですじゃんこの人。ダーコラ国か正教国あたりから流れてきて、見た目の派手さでシエラ夫人の目に止ったって所でしょうかね? まぁ確かに鎧が磨かれていればけっこう精悍には見えますけど。今まで会った赤い鎧の人は、中身が伴っていた試しがありません。
 あと。ラージュ"殿下"…まぁ確かに王族の血縁はありますけど、殿下呼びしてもいいのかしら? バレたら怖いぞたぶん。

 「はい。私がタロウさん側の代理人ですっ!」

 「え?巫女様が代理人? タロウとやら見下げた奴だなっ! まさか斯様な少女に代理人をさせるなどっ! 貴様それでも男かっ?」

 チャラ貴ラージュが噛み付きます。

 「…何も知らなければそう思うでしょうけど。レイコちゃんから立候補したことだし、この国で一番強いのもレイコちゃんなので、心配ご無用です」

 タロウさんが説明します。…私は奉納関係だけって思われているのかしら?

 「何をわけの分からんことを言っておるかっ! このような少女と決闘なぞ出来るかっ!」

 …うるさいですねチャラ貴。
 まぁほっといて、トコトコと赤い鎧の人に近づきます。

 「騎士様、立派な鎧ですねっ!」

 「うむっ!。正教国の祭司長から直接祝福を賜った逸品であるっ!」

 「頑丈そうですね。ちょっと叩いてみて良いですか?」

 「…まぁ子供の手なら問題あるまい」

 カンカンっ。…結構響く音がしますね。板金がかなり薄いんじゃないでしょうか。本物のフルプレートアーマーって、重量40キログラムとか言いますしね、薄くしないとまともに動けないのかも?

 「はっはっは。堅かろう! お主が剣を振るったところで、我が鎧には傷も付かんぞ!」

 レイコ・ナックルナイフなら、普通の人が使っても簡単に穴を穿ちそうですが。この程度なら剣なんか要らないですよ?
 …腕を引いて。人差し指一本伸ばして、えいっ!

 スコンッ!

 笑っている赤い鎧の人の胴当たりにプスッと指を刺します。内側は革服ですか? 指でこしょこしょしてあげます。

 「へ?」

 何が起きたかよく分からない様子。

 スコンッ!スカンッ! スカカカンッ!

 同じようにもう二箇所穴開けてから、その下に指四本揃えてスカカンっ!と。ほら、北斗七星の出来上がり。
 こちらの夜空には北斗七星は無いですけどね。
 ちなみに。北斗七星と同じ星はもしかしたらこの惑星からも見えているのかもしれませんが。地球から50光年から160光年の間にばらけていますので、横から見たらもう柄杓には見えません。

 「ずいぶんと柔らかいですね…この鎧」

 左手のゆび四本揃えてさらに追加でスカカンっ! そのまま両手で広げて、バリバリっ!と胴部分が割れます。

 「ああっ! 借金して買った鎧になんてことをっ!」

 あの? 正教国で祝福受けたって言ってませんでした?

 「前座も終わったところで、決闘始めましょう?」

 「う…噂で聞いたことがある。ダーコラ国で巫女に接触した赤竜騎士団員は、片っ端に手足を砕かれて再起不能になったと…まさか本当の話か? 護衛にやらせていたのではなかったのか?」

 「あの人達ね… 問答無用で私に斬りかかってきたので、問答無用に手首と膝を壊してあげましたが、なにか? 自分で言うのもなんですけど私は子供の姿ですからね。それなのにいきなり斬り殺そうとしてくるような人間を放置する必要ないでしょ?」

 弱者には強かった彼らが弱者の立場になって、今頃どうしているのやらです。
 ドンクさん、フェイスマスクから覗いている目がなんか涙目ですよ?

 「まぁこれは決闘なので。故意に再起不能にしたりはしないので安心してください。では始めましょ?」

 事故はあるかもしれないけど。

 「せ…拙者、急用を思い出したので、本決闘は辞退させていただくっ!」

 あ…剥がれかけた胴鎧を押さえつつ、控え室の方に走っていきましたね。ドンクさん。

 「…代理人がいなくなったので、次はラージュ様の番てことでいいですか?」

 「く…くそっ! こちらの代理人が辞退したんだ!そちらも巫女様を代理人から降ろして、タロウ自ら決闘に応じろっ!」

 え? そんなルールでしたっけ?

 「俺は構いませんよ」

 おお。なんか格好良いですよタロウさん。
 ラージュは対人戦に特化した装備、フルプレートアーマーにショートソードにラウンドシールドですね。まぁ王道の装備ではありますが…豪華ですがサイズが微妙に大きい鎧? 赤い鎧の人の鎧より丈夫そうですが、その分重たいのでしょう、なんか脚がプルプルしています。鍛え方が足りないように思えますね。どうにも鎧に着られている感がハンパないです。
 タロウさんの装備は、革鎧に両手持ちのロングソード一本。手首から肘までは、金属で補強された手甲が付いています。キャラバンを率いているときに着ている護衛職向きの対魔獣装備ですね。
 一応の配慮で、護衛騎士団から借りた練習用の剣には刃は付いていません。ただ、実質同じサイズの鉄の棒ですから、本気で相手を害そうとしたら十分可能です。

 「ふんっ。そんな装備で大丈夫か? まぁ平民には総鎧なんて買えぬのだろうがな」

 「ご心配いただき強縮です。大丈夫です、これで問題ありません」

 なんかデジャ・ビュのある会話をする二人が対峙します。
 ランドゥーク商会では、制服やら下着やらの軍装品も扱っていますが。さすがに鎧は範疇外です。

 「審判は、ネイルコード国エイゼル領護衛騎士団長ダンテ・リュービンが承る! それでは始めっ!」

 審判役はダンテ隊長。号令と共に試合開始です。

 ラージュが、鎧をガチャンガチャンと鳴らしながら突進してきます。…突進のつもりでしょうかね? 総重量50キロはありそうな装備を纏って全力疾走は難しいでしょうね。
 タロウさんは、右に剣を下げて相手に向かいます。それだけで警戒したラージュが盾を左に構えますが。その盾に向かって思いっきり剣を叩き付けます。
 まぁ鍛えられた騎士ならその一撃をいなせたのでしょうが。正直ラージュの動きはあからさまに素人。剣を叩き付けられた衝撃を逃すような受け方が出来ません。

 「うわーっ!」

 盾に剣がぶつかる音と同時に悲鳴を上げてひっくり返りました。左腕を押さえていますね。タロウさんは意図的に盾を狙ってましたけど、今の衝撃で腕の骨でも逝きましたかね?

 転がっているラージュの顔前に剣を突きつけるタロウさん。

 「降参されますか?ラージュ様。降参されない場合、戦闘不能と判断されるまで続けることになりますが…」

 「な…なんのこれしきっ!」

 …起き上がろうとしますが、起き上がれません。鎧が重すぎるんですね。
 まぁタロウさんも起き上がるのを待ってやるギリもないでしょう。起き上がろうとするところを兜の額部分をゴンゴンと突きます。これをやられるとまったく起き上がれなくなります。

 「くそっ! 卑怯だぞっ!」

 「…くすっ」 「く…くくく」 「ぷすー」

 ギャラリーからも声を殺した笑いが起きています。
 チャラ貴がぐぬぬとなっている前で、タロウさんはロングソードを上段に構えます。いつでも全力で振り下ろせる体勢を取って、今一度問いかけます。

 「再度勧告します。降伏してください。でないと気絶させるしかなくなりますが、故意に気絶させたことがないので最悪死にますよ? これ以上痛い思いをしたくなければ降伏してください」

 「ぐぅ…し…しかたない…降伏…」

 「お待ちなさいっ!」

 見物人の席にいたシエラ夫人が叫びます。

 「平民が貴族に剣を向けて良いわけがありますか? しかもラージュは私の孫、言わば王族です。そんな貴人に剣を向けてただで済むわけがないでしょう?」

 「あのお婆さん。これ決闘なんだけど。しかもラージュ様から持ちかけた」

 あ、お婆さんって言っちゃった。

 「お…お婆? あなたなんてことをっ! 不敬です! そこの騎士、此奴らを引っ捕らえなさい。処刑台送りにしてあげますっ!」

 ここにいる騎士は、ほとんどアイズン伯爵の護衛騎士です。まぁ言うこと聞くわけはないのですけど。
 シエラ夫人にもアマランカ領の護衛騎士が付いていますが。流石に他の領地で出来ることと出来ないことの分別は付いているようで動きません。お付きの人が諫めようとしていますが、言うこと聞きませんね。

 「何をしているのです! 王姉である私の命令が聞けないのですが?」

 「いい加減にしろ! 姉上っ!」

 側の建物の二階のテラスから声がします。なんとクライスファー陛下とアイズン伯爵が揃っておられました。

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 こういうパターンの話のぶった切り方は、気を持たせすぎてあまり好きではないので。文字数バラバラでもできるだけ一話にまとめるようにしているのですが。倍の行数でも区切りが付かなかったので、ここで分割しました。
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