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第7章 Welcome to the world
第7章第001話 出生前性別判定?
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第7章第001話 出生前性別判定?
・Side:ツキシマ・レイコ
新年明けてさほど経っていない冬の朝、私は暖かい炬燵に捕まっています。
まぁ別に極寒の中で裸でいても凍えない体ですが。寒い日に炬燵に入ることはきちんと快楽と感じるのです。いくら極端な気温に耐性があっても、こういった楽しみは無くして欲しくないですからね。
共同リビングに設置した炬燵は今朝も繁盛してまして、食事当番以外の皆が起きてきてまずは炬燵に入ります。
「はぁふぅ…暖かくてまた眠くなりそう…」
レッドさんを抱っこして炬燵に入ってるアイリさん。これから仕事に出かけないといけない人も、炬燵は抗い難いトラップと化すのです。
アイリさんは妊娠が分かってからも働いていますが。ランドゥーク商会の方でもいろいろを気を配ってくれている感じで、なるだけデスクワークで済むように、また定時にはきちんと帰れるようにしてくれているようです。通勤にはいつもタロウさんが付き添っていますしね。
「仕事をしたくないわけじゃ無いのよ。でも、ほんと足に根が張るわね、炬燵って。いっそ、仕事の方からこっちら来てくれないかしら?」
「アイリ、何ならそう取り計らおうか?」
アイリさんの隣で炬燵に入っているタロウさん。確かにランドゥーク商会の跡取りたるタロウさんの権限なら可能でしょう。
炬燵デスクワーク、なにそれ夢のような労働環境ですね。
「将来の会頭の権威をそんなことに使ったら、いくらなんでも顰蹙買うわ。ダウンも作ったし、ここから通うには問題ないわよ。それにある程度の運動は必要だって言われているし、丁度良いくらいだわ。…それでも抗い難い炬燵だけど」
元はカーラさんの防寒のために何か暖かい服などを…と去年考えたのが、ドテラとガウンです。
まぁ、服を二重にして、間に綿を入れたらドテラ。鳥の羽をいれたらガウンです。構造は簡単。
今までほとんど廃棄されていた食肉用鳥の羽を再利用すると言うことで、最初はガウンの方が推されたのですが。見た目がもこもこしてイマイチ格好がよろしくないのか、最初はあまり売れませんでした。ただ、まぁ着てみればわかるその防寒性。冬の寒さの前には格好を気にしてもいられず。子供やお年寄り、この時期の門番や馬車の御者など、ともかく見た目より寒さ対策だという方々にはかなり好評です。
アイリさんもミオンさんも、防寒には気を使っています。まだお腹が目立つほどではありませんが、もう一人の体ではありませんからね。
マーリアちゃんは、セレブロさんと散歩に出てます。
セレブロさんの朝にトイレのついでに、河の方まで散歩…というより、あれはマラソンですね。河原でおっかけっこするのが日課となっております。
結構寒いはずですが、私ほどでは無いにしろマーリアちゃんも寒さには強いようで。セレブロさんも本来は雪山で生きてる動物でからこちらも平気。
カヤンさんが朝食を作ってくれています。食事はカヤンさんに任せておけば問題はありません、
アライさんも厨房の方を手伝ってくれています。アライさんはこまめに色々手伝ってくれていて助かります。
アイリさん年越しの後は、つわりが酷くほとんど食べられない状態だったのですが。日本にいたときに見たどっかのネット記事で、ジャンクフードなら食べられたという話を読んだのを思いだして、ピザとハンバーガーとフライドポテトとか出してみたら…あら不思議、普通に食べられました。酸っぱいものは食べられるなんて話もあるので、ケチャップ(もどき)とかが良いんですかね?
もちろん偏った食事はよろしくないので注意は必要ですが。体重を気にして普段は食べるのを控えていた物が食べられて、むしろなんか幸せそうでした。
ミオンさんは普通に食べてました。カーラさん曰く、モーラちゃんの時にも特につわりはなかったそうです。まぁ体質の差ですかね。それを聞いたアイリさんがうらやましそうにしています。…ミオンさんダイエットいらずですからね。
アイリさんの膝上と炬燵布団の間でまったりしているレッドさん、今のアイリさんの体調とかどうでしょう?
レッドさんが、抱っこされている範囲で分かることを送ってきてくれました。
『出産まで推測で149日ほど。超音波での診断、胎児の成長に問題なし、胎児の性別が判明…』
「ストーーーップッッ!!」
おもわず大声で止めてしまいました。…レッドさん、出産前に赤ちゃんの性別判断まで出来るんですかっ!?
アイリさんもびっくりしています。
「どうしたのレイコちゃんっ! 急に大声出してっ」
「ごめんなさいアイリさん… えっと実は、レッドさんが赤ちゃんの性別が分かるって言ってて…」
「「ええ~~~っ!」」
はい。まぁこの世界の人からすれば何気に凄い能力ですよね。
「「ええ~… えっ? え~、あ~、うーん?」」
アイリさんとタロウさん。ん?急にテンション下がりましたね。互いにチラチラ視線交わしていますけど、なんですか?
「お二人ともどうしました?」
「いえね。たしかに生まれる前に分かるって凄いと言えば凄いんだけどね… ねぇタロウ」
「さすが小竜神様…なんだけど。まぁアイリとは男の子と女の子どちらがいい?みたいな話は散々していたんだよ。喧嘩寸前にまでなったけど、結局男の子だろうが女の子だろうがどちらでも俺たちの子供だし、どちらであってもなにも変わらないってことになってね。それに今から子供の性別を変えられるわけでも無いだろ? だったらともかく母子共に元気で生まれてきてくれれば、俺はそれ以上望まないよ」
…そりゃそうですね。
せいぜい、名前を考えておくとか、生まれる前に衣類を男物か女物かで揃えて置くくらいですか。
「私もまだレッドさんから結果は聞いていないんですけど。では内緒にしておいてもらうってことでいいですね?」
「うん。それでお願いねレイコちゃん」
「タロウもアイリも、なんだかんだで親になる心構えが出来ているな。感心々々」
警備に詰めているエカテリンさん。テーブル席でお茶飲んでます。
ここでは冷暖房完備で美味しい食事付きということで、警備の半分くらいはエカテリンさんが率先して担当してくれています。次に多いのは、料理騎士さんですね。
ここの警備希望者は多いそうなのですが。女性騎士がエカテリンさんだけなので。貴族街での女性貴族警護の任が無いときには、優先的に配属されているそうです。
「…やっぱ黙っているわけには行かないかな…」
っと。ちょっと考え込んでるエカテリンさん。
「どうしたんですか?エカテリンさん」
「…今のレッドちゃんが赤ちゃん生まれる前に性別が分かるって話、上に報告しないわけには行かないんだけど。いいかな?」
「なにか問題になりそうな話なんですか?」
「まぁ、子供が生まれればお祝いを贈るのは、庶民も貴族でも同じなんだけど。誰から誰へのお祝いか、どれほどの物を送ったか、その辺に結構貴族の面子が関わってきてね。寄親やその親族の慶事ともなればそこらで買ってきた物をとはならないし、高位貴族はもっと大変だ。生まれた子の性別で贈り物が変わったりするしね」
「ふむふむ」
まぁそうでしょうね。貴族間のお祝いに買ってきた菓子詰めというわけには行かないでしょうし。
「それが王家の慶事ともなれば、どのような贈り物をするかで全ての貴族が悩むことになるし。悩むと言っても、実際に贈り物を作るのは職人達だ」
ああ、だいたい分かりました。
「生まれた、性別が分かった、お祝いは早い方が良い。結果、贈り物を作ることになる職人達への催促がえらいことになる。それだけならともかく、例えばより上位の貴族から下位の貴族の依頼より優先しろと強要したりとかで貴族間で険悪になったりと、結構影響がでかいんだ。今回は王室とユルガルムでのおめでたともかち合っているし。今頃あちこちの職人達が戦々恐々としているだろうな。」
「ふむ。最初から男女両方の贈り物を用意しておくとかは?」
「下位貴族への贈り物ならまだ外れても使い回しが出来るだろうけど。今回は第二王子妃、生まれてきた子にも王位の継承権は発生する立派な王族だ。ユルガルムのターナンシュ様にしても、ユルガルム辺境候は王家に並ぶ家柄だしね。どちらも手は抜けないから予算を分けて二つ作るなんてことは出来ない貴族の方が多いだろうし。二つ作るとなると職人の負担も大して軽減しないだろうね。生まれる前に性別が分かるのって混乱を最小限にするのに凄く助かるんだよ。多分、判別の依頼が来るよ」
「なるほどです…うーん」
腕を組んで考えます。
まぁ今回の件について、例えば第二王子カステラード殿下の奥方アーメリア妃、こちらの出生前判断は問題ないと思います。が…
「どうしたの?レイコちゃん」
「いえね。例えば男の子が欲しいという家庭で性別判断して、もし女の子だったら…とか考えると…」
ハッとするアイリさん。
「え…そんなまさか…」
「いや…あり得ないとは言えないかも」
エカテリンさんは、可能性を否定しません。最悪、望まない性別だった場合に堕ろせという話になるのではないかと。
「まぁまず次の子に期待という事になるだろうけどね。奥さんが複数いる貴族とかで家督争いとか絡んだらどういう陰謀を誘発するか… 最悪の事態になる可能性が全く無いとは言えないね」
第二夫人が嫡男を生むことを阻止するために母体ごと始末する…なんてベタな話ですが。レッドさんの診断が切っ掛けになっては目も当てられません。
「…ダンテ隊長と伯爵にはとりあえず報告するけど。混乱を最小限にするために生まれる前に性別を公表することが前提だから、レッドちゃんの能力が広まっちゃうのは防げないかも」
「うーん。私が知っている人ならすぐに診断してもらっても良いんだけど。…知らない人の場合、妊娠してから5ヶ月以降、第二夫人や妾さんがいないこと、出産まで経緯の観察を義務づけること。こちらが何を危惧しているのかの周知。こんな条件かな?」
診断は安定期に入ってから。家庭環境に問題のないこと。あと、もし何かあったら疑うぞと。
「悪用は許さないと明言する、疑惑は国がしっかり調査する。確かにそれしかないかな。うん、多分王都の方でその辺の条件が検討されると思うよ」
「それでお願いします。はい」
多分、ローザリンテ殿下あたりが良い基準を作ってくれるでしょう。
ちなみに。レッドさんにはミオンさんの赤ちゃんも見てもらいました。こちらも性別は生まれてからのお楽しみとなりましたけど。それはともかく健康診断ですね。
ただ、これだけは伝えておいた方が良いという忠告がレッドさんから。判明した驚きの事実、なんとミオンさんのところは双子だそうです。山の民の場合、多産であることは珍しくないそうですが。キック家の家、部屋多めにしておいて良かったですね。
「弟か妹って思っていたけど。弟と妹ってのもいいわよねっ!」
一気に二人も弟妹増えますね、モーラちゃん。
「一気に二人か…また賑やかになるなこれは。うん、頑張るかっ!」
カヤンさんが、家族が一気に増えるということで、ますます張り切っています。いよっ!大黒柱っ!
・Side:ツキシマ・レイコ
新年明けてさほど経っていない冬の朝、私は暖かい炬燵に捕まっています。
まぁ別に極寒の中で裸でいても凍えない体ですが。寒い日に炬燵に入ることはきちんと快楽と感じるのです。いくら極端な気温に耐性があっても、こういった楽しみは無くして欲しくないですからね。
共同リビングに設置した炬燵は今朝も繁盛してまして、食事当番以外の皆が起きてきてまずは炬燵に入ります。
「はぁふぅ…暖かくてまた眠くなりそう…」
レッドさんを抱っこして炬燵に入ってるアイリさん。これから仕事に出かけないといけない人も、炬燵は抗い難いトラップと化すのです。
アイリさんは妊娠が分かってからも働いていますが。ランドゥーク商会の方でもいろいろを気を配ってくれている感じで、なるだけデスクワークで済むように、また定時にはきちんと帰れるようにしてくれているようです。通勤にはいつもタロウさんが付き添っていますしね。
「仕事をしたくないわけじゃ無いのよ。でも、ほんと足に根が張るわね、炬燵って。いっそ、仕事の方からこっちら来てくれないかしら?」
「アイリ、何ならそう取り計らおうか?」
アイリさんの隣で炬燵に入っているタロウさん。確かにランドゥーク商会の跡取りたるタロウさんの権限なら可能でしょう。
炬燵デスクワーク、なにそれ夢のような労働環境ですね。
「将来の会頭の権威をそんなことに使ったら、いくらなんでも顰蹙買うわ。ダウンも作ったし、ここから通うには問題ないわよ。それにある程度の運動は必要だって言われているし、丁度良いくらいだわ。…それでも抗い難い炬燵だけど」
元はカーラさんの防寒のために何か暖かい服などを…と去年考えたのが、ドテラとガウンです。
まぁ、服を二重にして、間に綿を入れたらドテラ。鳥の羽をいれたらガウンです。構造は簡単。
今までほとんど廃棄されていた食肉用鳥の羽を再利用すると言うことで、最初はガウンの方が推されたのですが。見た目がもこもこしてイマイチ格好がよろしくないのか、最初はあまり売れませんでした。ただ、まぁ着てみればわかるその防寒性。冬の寒さの前には格好を気にしてもいられず。子供やお年寄り、この時期の門番や馬車の御者など、ともかく見た目より寒さ対策だという方々にはかなり好評です。
アイリさんもミオンさんも、防寒には気を使っています。まだお腹が目立つほどではありませんが、もう一人の体ではありませんからね。
マーリアちゃんは、セレブロさんと散歩に出てます。
セレブロさんの朝にトイレのついでに、河の方まで散歩…というより、あれはマラソンですね。河原でおっかけっこするのが日課となっております。
結構寒いはずですが、私ほどでは無いにしろマーリアちゃんも寒さには強いようで。セレブロさんも本来は雪山で生きてる動物でからこちらも平気。
カヤンさんが朝食を作ってくれています。食事はカヤンさんに任せておけば問題はありません、
アライさんも厨房の方を手伝ってくれています。アライさんはこまめに色々手伝ってくれていて助かります。
アイリさん年越しの後は、つわりが酷くほとんど食べられない状態だったのですが。日本にいたときに見たどっかのネット記事で、ジャンクフードなら食べられたという話を読んだのを思いだして、ピザとハンバーガーとフライドポテトとか出してみたら…あら不思議、普通に食べられました。酸っぱいものは食べられるなんて話もあるので、ケチャップ(もどき)とかが良いんですかね?
もちろん偏った食事はよろしくないので注意は必要ですが。体重を気にして普段は食べるのを控えていた物が食べられて、むしろなんか幸せそうでした。
ミオンさんは普通に食べてました。カーラさん曰く、モーラちゃんの時にも特につわりはなかったそうです。まぁ体質の差ですかね。それを聞いたアイリさんがうらやましそうにしています。…ミオンさんダイエットいらずですからね。
アイリさんの膝上と炬燵布団の間でまったりしているレッドさん、今のアイリさんの体調とかどうでしょう?
レッドさんが、抱っこされている範囲で分かることを送ってきてくれました。
『出産まで推測で149日ほど。超音波での診断、胎児の成長に問題なし、胎児の性別が判明…』
「ストーーーップッッ!!」
おもわず大声で止めてしまいました。…レッドさん、出産前に赤ちゃんの性別判断まで出来るんですかっ!?
アイリさんもびっくりしています。
「どうしたのレイコちゃんっ! 急に大声出してっ」
「ごめんなさいアイリさん… えっと実は、レッドさんが赤ちゃんの性別が分かるって言ってて…」
「「ええ~~~っ!」」
はい。まぁこの世界の人からすれば何気に凄い能力ですよね。
「「ええ~… えっ? え~、あ~、うーん?」」
アイリさんとタロウさん。ん?急にテンション下がりましたね。互いにチラチラ視線交わしていますけど、なんですか?
「お二人ともどうしました?」
「いえね。たしかに生まれる前に分かるって凄いと言えば凄いんだけどね… ねぇタロウ」
「さすが小竜神様…なんだけど。まぁアイリとは男の子と女の子どちらがいい?みたいな話は散々していたんだよ。喧嘩寸前にまでなったけど、結局男の子だろうが女の子だろうがどちらでも俺たちの子供だし、どちらであってもなにも変わらないってことになってね。それに今から子供の性別を変えられるわけでも無いだろ? だったらともかく母子共に元気で生まれてきてくれれば、俺はそれ以上望まないよ」
…そりゃそうですね。
せいぜい、名前を考えておくとか、生まれる前に衣類を男物か女物かで揃えて置くくらいですか。
「私もまだレッドさんから結果は聞いていないんですけど。では内緒にしておいてもらうってことでいいですね?」
「うん。それでお願いねレイコちゃん」
「タロウもアイリも、なんだかんだで親になる心構えが出来ているな。感心々々」
警備に詰めているエカテリンさん。テーブル席でお茶飲んでます。
ここでは冷暖房完備で美味しい食事付きということで、警備の半分くらいはエカテリンさんが率先して担当してくれています。次に多いのは、料理騎士さんですね。
ここの警備希望者は多いそうなのですが。女性騎士がエカテリンさんだけなので。貴族街での女性貴族警護の任が無いときには、優先的に配属されているそうです。
「…やっぱ黙っているわけには行かないかな…」
っと。ちょっと考え込んでるエカテリンさん。
「どうしたんですか?エカテリンさん」
「…今のレッドちゃんが赤ちゃん生まれる前に性別が分かるって話、上に報告しないわけには行かないんだけど。いいかな?」
「なにか問題になりそうな話なんですか?」
「まぁ、子供が生まれればお祝いを贈るのは、庶民も貴族でも同じなんだけど。誰から誰へのお祝いか、どれほどの物を送ったか、その辺に結構貴族の面子が関わってきてね。寄親やその親族の慶事ともなればそこらで買ってきた物をとはならないし、高位貴族はもっと大変だ。生まれた子の性別で贈り物が変わったりするしね」
「ふむふむ」
まぁそうでしょうね。貴族間のお祝いに買ってきた菓子詰めというわけには行かないでしょうし。
「それが王家の慶事ともなれば、どのような贈り物をするかで全ての貴族が悩むことになるし。悩むと言っても、実際に贈り物を作るのは職人達だ」
ああ、だいたい分かりました。
「生まれた、性別が分かった、お祝いは早い方が良い。結果、贈り物を作ることになる職人達への催促がえらいことになる。それだけならともかく、例えばより上位の貴族から下位の貴族の依頼より優先しろと強要したりとかで貴族間で険悪になったりと、結構影響がでかいんだ。今回は王室とユルガルムでのおめでたともかち合っているし。今頃あちこちの職人達が戦々恐々としているだろうな。」
「ふむ。最初から男女両方の贈り物を用意しておくとかは?」
「下位貴族への贈り物ならまだ外れても使い回しが出来るだろうけど。今回は第二王子妃、生まれてきた子にも王位の継承権は発生する立派な王族だ。ユルガルムのターナンシュ様にしても、ユルガルム辺境候は王家に並ぶ家柄だしね。どちらも手は抜けないから予算を分けて二つ作るなんてことは出来ない貴族の方が多いだろうし。二つ作るとなると職人の負担も大して軽減しないだろうね。生まれる前に性別が分かるのって混乱を最小限にするのに凄く助かるんだよ。多分、判別の依頼が来るよ」
「なるほどです…うーん」
腕を組んで考えます。
まぁ今回の件について、例えば第二王子カステラード殿下の奥方アーメリア妃、こちらの出生前判断は問題ないと思います。が…
「どうしたの?レイコちゃん」
「いえね。例えば男の子が欲しいという家庭で性別判断して、もし女の子だったら…とか考えると…」
ハッとするアイリさん。
「え…そんなまさか…」
「いや…あり得ないとは言えないかも」
エカテリンさんは、可能性を否定しません。最悪、望まない性別だった場合に堕ろせという話になるのではないかと。
「まぁまず次の子に期待という事になるだろうけどね。奥さんが複数いる貴族とかで家督争いとか絡んだらどういう陰謀を誘発するか… 最悪の事態になる可能性が全く無いとは言えないね」
第二夫人が嫡男を生むことを阻止するために母体ごと始末する…なんてベタな話ですが。レッドさんの診断が切っ掛けになっては目も当てられません。
「…ダンテ隊長と伯爵にはとりあえず報告するけど。混乱を最小限にするために生まれる前に性別を公表することが前提だから、レッドちゃんの能力が広まっちゃうのは防げないかも」
「うーん。私が知っている人ならすぐに診断してもらっても良いんだけど。…知らない人の場合、妊娠してから5ヶ月以降、第二夫人や妾さんがいないこと、出産まで経緯の観察を義務づけること。こちらが何を危惧しているのかの周知。こんな条件かな?」
診断は安定期に入ってから。家庭環境に問題のないこと。あと、もし何かあったら疑うぞと。
「悪用は許さないと明言する、疑惑は国がしっかり調査する。確かにそれしかないかな。うん、多分王都の方でその辺の条件が検討されると思うよ」
「それでお願いします。はい」
多分、ローザリンテ殿下あたりが良い基準を作ってくれるでしょう。
ちなみに。レッドさんにはミオンさんの赤ちゃんも見てもらいました。こちらも性別は生まれてからのお楽しみとなりましたけど。それはともかく健康診断ですね。
ただ、これだけは伝えておいた方が良いという忠告がレッドさんから。判明した驚きの事実、なんとミオンさんのところは双子だそうです。山の民の場合、多産であることは珍しくないそうですが。キック家の家、部屋多めにしておいて良かったですね。
「弟か妹って思っていたけど。弟と妹ってのもいいわよねっ!」
一気に二人も弟妹増えますね、モーラちゃん。
「一気に二人か…また賑やかになるなこれは。うん、頑張るかっ!」
カヤンさんが、家族が一気に増えるということで、ますます張り切っています。いよっ!大黒柱っ!
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