259 / 384
第7章 Welcome to the world
第7章第032話 文明の衝突への危惧 その2
しおりを挟む
第7章第032話 文明の衝突への危惧 その2
・Side:ツキシマ・レイコ
ユルガルムからの帰りの馬車の中。文明の衝突についてなんて重たい話になってしまいました。
他国、他人種、他民族、他宗教。同じ人でも軋轢が生まれるのです。蟻についてはもう私にはどうしようもありません。あれらが必要なら、赤井さんがなんとかするでしょう。未来に丸投げしたいです。
「その考えで行くと。ファルリード亭のアライさんとかのラクーン達はどうなるのかな?」
クラウヤート様が問いかけます。アイズン伯爵とクラウヤート様は、ファルリード亭でよく食事されるので。アライさんはよく見てるはずです。
…なんか急にあそこが懐かしくなってきました。
人間と同程度の知能と社会性を持つ種族が実在する。ファンタジー小説なんかでは良く出てくる獣人の類いではありますが。ラクーン達ってとてつもなくすごい存在ですよ。
しかし同時に。私も正直、西方の国々の反応の問題より、彼らの方を心配しています。
「…最初は対等にという関係を持てても。行き来を制限しないのなら、彼らの土地や経済や文化までも人間のそれに浸食されてくじゃろうな。レイコ殿が言っている飛行機とやらで世界が結ばれているとき、彼らにどの程度の領域が残されているのやら」
衝突にならないとしても。平和的に共存というよりは、これはもう浸食です。
アライさんから話を聞くに、彼らの文明はまだ人間のそれに及ばないようです。現在では人間有利という状況ですので。制限無く接触を許せば、その懸念は現実の物となるでしょう。
「ラクーン達の国についてはまだ詳しくは分からないが。多分彼女らの領域に入り込んだ人間は、投資を理由にその土地や資源の所有の主張を始め。最終的にラクーンを支配するなんてことになりかねないな。彼らにそれを跳ね返せるだけの国体があるのかどうか… そのまま決定的な衝突につながりかねないな」
カステラード殿下がうなっています。
「そんな…」
実例としては、アメリカインディアンの境遇あたりが一番近いのでしょうか。土地を追われ、悪者として退治され。私が生きていた頃には"保護"対象です。
本気で彼らを尊重するのなら、アメリカという土地をまず全部返してから…でしょうけども。無理ですけど。
「ラクーンらがそうなる前に危機感を持ったのなら。座して見ていることを良しとしないのなら…」
「人間とラクーン達との間で戦争ですか? …あんなにかわいいのに… ああでも、アライさん、僕より力強かったような…」
かわいいには同感ではありますが。クラウヤート様も、深刻さがわかってきたようです。
ちなみにアライさん、結構強いですよ。指一本でらくらく懸垂が出来ますし、自分と同じくらいのサイズのエールの入った樽を持ち上げることくらい出来ますからね。
アライさんもマナによる身体強化が使えるようです。魔獣のようなマナ塊はないので、それに支配されての知性化でもないようです。
温厚な性格だから、暴力に走るところは想像できませんけど。温厚なのがラクーンの一般的性質なのかアライさんだからなのかは、不明です。ラクーンらが武装したら、戦力としては侮れないでしょうね。
「ラクーン達が皆アライさんみたいななら、人と暮らすのは難しくないと思いますけど。人と暮らすようになって人数が増えて、街で集団で生活するようになって、人間と対等に扱え!と主張したとき、まともに取り合う国がどれだけあるか…」
「山の民やエルセニム人だって、差別的に扱われることがあるのだ。まして人間ではないラクーン達がどう見られるか… 住む場所を明確に分けて互いに過度の干渉をしない、これくらいしかわしには思いつかん」
力が違う。知能が違う。体格が違う。寿命が違う。容姿が違う。だから同じに扱うのはおかしい。こういう考え方は、人間の男女間でも存在したのです。もっとも、男女の場合は共存せざるを得ないというのが生物としての仕組みで共存せざるを得ませんでしたが。…もし、人間が異性に依存せずに繁殖できるようになったなら、男女に分かれて戦争していたんでしょうかね? どっかのSFアニメのようですが。
「…男と女で戦争だと? …そんなこと考えたこともなかったが…男が負けるのではないか?」
目を剥いたカステラード殿下がぼやきます。
「くっくっく。奇遇ですな、私もそう思います殿下」
アイズン伯爵。…恐妻家と言うより愛妻家に思いますけどね。
「僕の周り、なにげに強い女性、多くないですか?」
私やマーリアちゃんは規格外。エカテリンさんは護衛騎士として活躍していますし。ミオンさんも元護衛業、そこらの男は目じゃありません。その子供のモーラちゃんの身体能力もなかなかです。
アイリさんやローザリンテ殿下も戦闘力はともかくとしても、弱い女性とは言えないですね。
この世界、兵士のほとんど男性ではありますが。女性も結構強いのです。
「感情的に見えても、理詰めでその感情を正当化してくるからな、聡い女性は。怒らすと手強いぞ」
経験があるようです、カステラード殿下。奥さん年下ですが、殿下に猛烈アタックしただけの強かさはあるようです。
「力が弱ければ、知恵を使うようになる。力より知恵の方が強いじゃろうし、女がこれに劣るなどと言うことは決して無いじゃろうからな」
女性だからと社会参加させないのはもったいないと、女性の就業率にも気を配っているアイズン伯爵です。
妊娠出産育児にも配慮した政策をけっこうとってくれています。さすがに育児休暇まではさすがに難しいようですが。休業中の軽作業の斡旋とか、復帰時の復職の推奨とかですね。
「女性やラクーンはともかく。蟻が相手だと"戦争"をしない選択をする国など無いだろうな。そもそも会話が出来ないのであれば交渉もできんだろう」
「戦争そのものが交渉…だなんて考え方もあります。戦って占領して奪って自分の物と主張するという」
「…間違いとはあながち言えんのが、軍人の性だな」
食べる。増える。他の生き物を捕食し、殖えるための場所を確保する。生物にとってのこれら当たり前の活動ではありますが。"社会"から見れば非常に暴力的な活動です。まさに弱肉強食。蟻に平和や共存を諭せるとは…ちょっと想像できないですね
赤井さん曰く。地球では、メンター達は人間との軋轢を避けて水星に引っ込んだそうです。エネルギーと鉱物資源があって人が住めない惑星、コンピューター生命体が引きこもるには理想的な場所でしょうね。
すべてのAIとメンターが地球を離れた訳ではないようですが。その後、地球文明は千年も保たずにマナの暴走で破滅を迎えています。赤井さんはマナの暴走の原因は不明とは言ってましたけど。メンターと人間の間で何かがあった可能性は高いのではないでしょうか?
私は、メンター達が積極的に人間を滅ぼしたとは思っていません。
コンピューターの中に居るのですから。もし嫌いな人間がいるとしても、縁を切ってメモリの中で眠っていればいいのです。例え人類全体が相手で問題が起きたとしても、水星で千年単位で引きこもっていれば、また状況の変化が期待できるでしょう。
人間が自滅した…という可能性の方が高いのでは?とは思っています。
ただ。こんな対応の仕方が出来るのはメンターだけ。生きている者はその生の間に解決しなければなりません。
同じ惑星の上で彼らとどう向き合うか。人間とラクーンが全く関わらないという選択肢は無いでしょう。未来に遺恨を残さないようになんとか軟着陸されられないか。そもそも何を持って着陸とするか。長い命題になりそうです。
カステラード殿下は、顎に手を当てて長考しています。
アイズン伯爵も視線は外に向けていますが。特に何かを見るというわけでもなく、考え込んでいます。
そろそろ雪は溶け、緑が息吹きつつある森と草原の間に拓かれた街道を馬車は進みます。今日の宿泊地、テオーガル領の領都までもう少しですね。
「…わしが男爵を継いでいろいろ領政に関わることになってから、他の貴族勢力との衝突は懸念しておった。それでも、民を富ます利点を理解できる貴族相手なら利を与えればよいし。そうでない古い考えのままの貴族なら飼い殺しにでもすればいいと思っておった。ダーコラ国にしても、富むように援助はしてもしばらくはネイルコードと差が出るからな。以西の国々との断衝として国体は保持するのが良いとローザリンテ殿下と合意していたしな。しかし…大陸をどうするのか。正教国より西、いや大陸全土にネイルコードという"波"が到達したときに何が起こるのか。犠牲が必要かもしれないということを深刻に考えていなかったように思う。さらには海の向こうの国々、そしてラクーンか…」
「ダーコラ国はそのうち、ユルガルム等の同じような辺境候領としてネイルコードに統合されるだろうな。現ダーコラ国王はネイルコード王室との血縁もあるし。となると、正教国との関係がさらに重要になってくるか。ただただ、ネイルコードが矢面に立たないということだけ考えるわけにもいかないか…」
「ネイルコード王国は、大陸をどうしたいのか。十年単位でどうこうなる話でも無いですが。今からいろいろ考えておく必要があると思います」
あとは覚悟ですか…
全体としては、大陸は良い方向に進むとは思いますが。それでも着いてこれない国や人による小競り合い、不幸になる人が皆無とは行きません。
寿命のない私は、その多くの人生に関わらないと行けないことがほぼ確定しているわけで… いや、関わることは義務じゃ無いけど…今更無視も出来ないしなぁ。大陸に住む人、ラクーン達。これらの未来に私が責任持たないと行けないの?
今回、ムラード砦で亡くなった人たちを思い出します。…最初から全部を私がやってしまえばいいという訳では無いのは理解していますけど。どうしても、手の伸ばし方は考えてしまいます。
「…うう…」
「ん? どうしたのかねレイコ殿?」
「ワフンッ!」
目の前のバール君のもふもふに飛び込みます。ついでにレッドさんもギューっと。
「…うわーんっ!。赤井さんっ、これも見越して私をここに寄越したんだ~っ!」
「レイコ殿っ?」
「そりゃ私が居れば文明は発展するし、戦争なんてそうそう起きないし、アライさん達ラクーンだって調停できるだろうけど。そのために今、私をここに放りこんだの?赤井さんっ!」
「レイコ殿、どうしたのかね?」
でかいバール君の上をゴロゴロ転がります。
「…赤井さん…赤竜神が、なぜ今私をここに送り込んだのかって理由を考えると。やっぱそういう諸々に関わらせるためなんだろうって。でも重いっ! 責任重すぎですよっ!赤井さんっ! あ~っ!わたしは庶民なんだ~っ!」
ゴロゴロ。
チートな体と知識でスローライフが望みなのに。なんて難しい問題に関わること前提でこの世界に放り込んだんだ赤井さんはっ!
「わたし、多くの人生に責任もつなんて、無理ですよ~っ!」
ゴロゴロゴロゴロ。
「地球大使の面目躍如だな。戦力として頼るつもりはないが、いろいろと期待はしているよ」
転がる私を見て、カステラード殿下がニヤニヤしています。…私を便利に使うってより、自分が楽すること考えてますね?その顔。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
「ガニメデの優しい巨人」でガニメアン達がなぜ地球を去ったのか。最近になってやっとその深刻さが理解出来ました。ガニメアンは、政争とか無縁の世界の住人のはずなのに、その知見によくたどり着いたなという感心。
・Side:ツキシマ・レイコ
ユルガルムからの帰りの馬車の中。文明の衝突についてなんて重たい話になってしまいました。
他国、他人種、他民族、他宗教。同じ人でも軋轢が生まれるのです。蟻についてはもう私にはどうしようもありません。あれらが必要なら、赤井さんがなんとかするでしょう。未来に丸投げしたいです。
「その考えで行くと。ファルリード亭のアライさんとかのラクーン達はどうなるのかな?」
クラウヤート様が問いかけます。アイズン伯爵とクラウヤート様は、ファルリード亭でよく食事されるので。アライさんはよく見てるはずです。
…なんか急にあそこが懐かしくなってきました。
人間と同程度の知能と社会性を持つ種族が実在する。ファンタジー小説なんかでは良く出てくる獣人の類いではありますが。ラクーン達ってとてつもなくすごい存在ですよ。
しかし同時に。私も正直、西方の国々の反応の問題より、彼らの方を心配しています。
「…最初は対等にという関係を持てても。行き来を制限しないのなら、彼らの土地や経済や文化までも人間のそれに浸食されてくじゃろうな。レイコ殿が言っている飛行機とやらで世界が結ばれているとき、彼らにどの程度の領域が残されているのやら」
衝突にならないとしても。平和的に共存というよりは、これはもう浸食です。
アライさんから話を聞くに、彼らの文明はまだ人間のそれに及ばないようです。現在では人間有利という状況ですので。制限無く接触を許せば、その懸念は現実の物となるでしょう。
「ラクーン達の国についてはまだ詳しくは分からないが。多分彼女らの領域に入り込んだ人間は、投資を理由にその土地や資源の所有の主張を始め。最終的にラクーンを支配するなんてことになりかねないな。彼らにそれを跳ね返せるだけの国体があるのかどうか… そのまま決定的な衝突につながりかねないな」
カステラード殿下がうなっています。
「そんな…」
実例としては、アメリカインディアンの境遇あたりが一番近いのでしょうか。土地を追われ、悪者として退治され。私が生きていた頃には"保護"対象です。
本気で彼らを尊重するのなら、アメリカという土地をまず全部返してから…でしょうけども。無理ですけど。
「ラクーンらがそうなる前に危機感を持ったのなら。座して見ていることを良しとしないのなら…」
「人間とラクーン達との間で戦争ですか? …あんなにかわいいのに… ああでも、アライさん、僕より力強かったような…」
かわいいには同感ではありますが。クラウヤート様も、深刻さがわかってきたようです。
ちなみにアライさん、結構強いですよ。指一本でらくらく懸垂が出来ますし、自分と同じくらいのサイズのエールの入った樽を持ち上げることくらい出来ますからね。
アライさんもマナによる身体強化が使えるようです。魔獣のようなマナ塊はないので、それに支配されての知性化でもないようです。
温厚な性格だから、暴力に走るところは想像できませんけど。温厚なのがラクーンの一般的性質なのかアライさんだからなのかは、不明です。ラクーンらが武装したら、戦力としては侮れないでしょうね。
「ラクーン達が皆アライさんみたいななら、人と暮らすのは難しくないと思いますけど。人と暮らすようになって人数が増えて、街で集団で生活するようになって、人間と対等に扱え!と主張したとき、まともに取り合う国がどれだけあるか…」
「山の民やエルセニム人だって、差別的に扱われることがあるのだ。まして人間ではないラクーン達がどう見られるか… 住む場所を明確に分けて互いに過度の干渉をしない、これくらいしかわしには思いつかん」
力が違う。知能が違う。体格が違う。寿命が違う。容姿が違う。だから同じに扱うのはおかしい。こういう考え方は、人間の男女間でも存在したのです。もっとも、男女の場合は共存せざるを得ないというのが生物としての仕組みで共存せざるを得ませんでしたが。…もし、人間が異性に依存せずに繁殖できるようになったなら、男女に分かれて戦争していたんでしょうかね? どっかのSFアニメのようですが。
「…男と女で戦争だと? …そんなこと考えたこともなかったが…男が負けるのではないか?」
目を剥いたカステラード殿下がぼやきます。
「くっくっく。奇遇ですな、私もそう思います殿下」
アイズン伯爵。…恐妻家と言うより愛妻家に思いますけどね。
「僕の周り、なにげに強い女性、多くないですか?」
私やマーリアちゃんは規格外。エカテリンさんは護衛騎士として活躍していますし。ミオンさんも元護衛業、そこらの男は目じゃありません。その子供のモーラちゃんの身体能力もなかなかです。
アイリさんやローザリンテ殿下も戦闘力はともかくとしても、弱い女性とは言えないですね。
この世界、兵士のほとんど男性ではありますが。女性も結構強いのです。
「感情的に見えても、理詰めでその感情を正当化してくるからな、聡い女性は。怒らすと手強いぞ」
経験があるようです、カステラード殿下。奥さん年下ですが、殿下に猛烈アタックしただけの強かさはあるようです。
「力が弱ければ、知恵を使うようになる。力より知恵の方が強いじゃろうし、女がこれに劣るなどと言うことは決して無いじゃろうからな」
女性だからと社会参加させないのはもったいないと、女性の就業率にも気を配っているアイズン伯爵です。
妊娠出産育児にも配慮した政策をけっこうとってくれています。さすがに育児休暇まではさすがに難しいようですが。休業中の軽作業の斡旋とか、復帰時の復職の推奨とかですね。
「女性やラクーンはともかく。蟻が相手だと"戦争"をしない選択をする国など無いだろうな。そもそも会話が出来ないのであれば交渉もできんだろう」
「戦争そのものが交渉…だなんて考え方もあります。戦って占領して奪って自分の物と主張するという」
「…間違いとはあながち言えんのが、軍人の性だな」
食べる。増える。他の生き物を捕食し、殖えるための場所を確保する。生物にとってのこれら当たり前の活動ではありますが。"社会"から見れば非常に暴力的な活動です。まさに弱肉強食。蟻に平和や共存を諭せるとは…ちょっと想像できないですね
赤井さん曰く。地球では、メンター達は人間との軋轢を避けて水星に引っ込んだそうです。エネルギーと鉱物資源があって人が住めない惑星、コンピューター生命体が引きこもるには理想的な場所でしょうね。
すべてのAIとメンターが地球を離れた訳ではないようですが。その後、地球文明は千年も保たずにマナの暴走で破滅を迎えています。赤井さんはマナの暴走の原因は不明とは言ってましたけど。メンターと人間の間で何かがあった可能性は高いのではないでしょうか?
私は、メンター達が積極的に人間を滅ぼしたとは思っていません。
コンピューターの中に居るのですから。もし嫌いな人間がいるとしても、縁を切ってメモリの中で眠っていればいいのです。例え人類全体が相手で問題が起きたとしても、水星で千年単位で引きこもっていれば、また状況の変化が期待できるでしょう。
人間が自滅した…という可能性の方が高いのでは?とは思っています。
ただ。こんな対応の仕方が出来るのはメンターだけ。生きている者はその生の間に解決しなければなりません。
同じ惑星の上で彼らとどう向き合うか。人間とラクーンが全く関わらないという選択肢は無いでしょう。未来に遺恨を残さないようになんとか軟着陸されられないか。そもそも何を持って着陸とするか。長い命題になりそうです。
カステラード殿下は、顎に手を当てて長考しています。
アイズン伯爵も視線は外に向けていますが。特に何かを見るというわけでもなく、考え込んでいます。
そろそろ雪は溶け、緑が息吹きつつある森と草原の間に拓かれた街道を馬車は進みます。今日の宿泊地、テオーガル領の領都までもう少しですね。
「…わしが男爵を継いでいろいろ領政に関わることになってから、他の貴族勢力との衝突は懸念しておった。それでも、民を富ます利点を理解できる貴族相手なら利を与えればよいし。そうでない古い考えのままの貴族なら飼い殺しにでもすればいいと思っておった。ダーコラ国にしても、富むように援助はしてもしばらくはネイルコードと差が出るからな。以西の国々との断衝として国体は保持するのが良いとローザリンテ殿下と合意していたしな。しかし…大陸をどうするのか。正教国より西、いや大陸全土にネイルコードという"波"が到達したときに何が起こるのか。犠牲が必要かもしれないということを深刻に考えていなかったように思う。さらには海の向こうの国々、そしてラクーンか…」
「ダーコラ国はそのうち、ユルガルム等の同じような辺境候領としてネイルコードに統合されるだろうな。現ダーコラ国王はネイルコード王室との血縁もあるし。となると、正教国との関係がさらに重要になってくるか。ただただ、ネイルコードが矢面に立たないということだけ考えるわけにもいかないか…」
「ネイルコード王国は、大陸をどうしたいのか。十年単位でどうこうなる話でも無いですが。今からいろいろ考えておく必要があると思います」
あとは覚悟ですか…
全体としては、大陸は良い方向に進むとは思いますが。それでも着いてこれない国や人による小競り合い、不幸になる人が皆無とは行きません。
寿命のない私は、その多くの人生に関わらないと行けないことがほぼ確定しているわけで… いや、関わることは義務じゃ無いけど…今更無視も出来ないしなぁ。大陸に住む人、ラクーン達。これらの未来に私が責任持たないと行けないの?
今回、ムラード砦で亡くなった人たちを思い出します。…最初から全部を私がやってしまえばいいという訳では無いのは理解していますけど。どうしても、手の伸ばし方は考えてしまいます。
「…うう…」
「ん? どうしたのかねレイコ殿?」
「ワフンッ!」
目の前のバール君のもふもふに飛び込みます。ついでにレッドさんもギューっと。
「…うわーんっ!。赤井さんっ、これも見越して私をここに寄越したんだ~っ!」
「レイコ殿っ?」
「そりゃ私が居れば文明は発展するし、戦争なんてそうそう起きないし、アライさん達ラクーンだって調停できるだろうけど。そのために今、私をここに放りこんだの?赤井さんっ!」
「レイコ殿、どうしたのかね?」
でかいバール君の上をゴロゴロ転がります。
「…赤井さん…赤竜神が、なぜ今私をここに送り込んだのかって理由を考えると。やっぱそういう諸々に関わらせるためなんだろうって。でも重いっ! 責任重すぎですよっ!赤井さんっ! あ~っ!わたしは庶民なんだ~っ!」
ゴロゴロ。
チートな体と知識でスローライフが望みなのに。なんて難しい問題に関わること前提でこの世界に放り込んだんだ赤井さんはっ!
「わたし、多くの人生に責任もつなんて、無理ですよ~っ!」
ゴロゴロゴロゴロ。
「地球大使の面目躍如だな。戦力として頼るつもりはないが、いろいろと期待はしているよ」
転がる私を見て、カステラード殿下がニヤニヤしています。…私を便利に使うってより、自分が楽すること考えてますね?その顔。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
「ガニメデの優しい巨人」でガニメアン達がなぜ地球を去ったのか。最近になってやっとその深刻さが理解出来ました。ガニメアンは、政争とか無縁の世界の住人のはずなのに、その知見によくたどり着いたなという感心。
36
あなたにおすすめの小説
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい
あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。
誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。
それが私の最後の記憶。
※わかっている、これはご都合主義!
※設定はゆるんゆるん
※実在しない
※全五話
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
魔法物語 - 倒したモンスターの魔法を習得する加護がチートすぎる件について -
花京院 光
ファンタジー
全ての生命が生まれながらにして持つ魔力。
魔力によって作られる魔法は、日常生活を潤し、モンスターの魔の手から地域を守る。
十五歳の誕生日を迎え、魔術師になる夢を叶えるために、俺は魔法都市を目指して旅に出た。
俺は旅の途中で、「討伐したモンスターの魔法を習得する」という反則的な加護を手に入れた……。
モンスターが巣食う剣と魔法の世界で、チート級の能力に慢心しない主人公が、努力を重ねて魔術師を目指す物語です。
ペットになった
ノーウェザー
ファンタジー
ペットになってしまった『クロ』。
言葉も常識も通用しない世界。
それでも、特に不便は感じない。
あの場所に戻るくらいなら、別にどんな場所でも良かったから。
「クロ」
笑いながらオレの名前を呼ぶこの人がいる限り、オレは・・・ーーーー・・・。
※視点コロコロ
※更新ノロノロ
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる
六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。
強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。
死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。
再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。
※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。
※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる