玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす

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第10章 レイコさんは自重しない

第10章第008話 譲位と立太子

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第10章第008話 譲位と立太子

Side:ツキシマ・レイコ

 「ふう。金や土地はまだしも、人が足りんし鉄も足りんしマナも心許ない。ただ、何が足りなくなるのかが分かったのだから、足りるようにしていく…まぁ当面はそんなところか」

 「大変と言えば大変ですし、人材はすぐに揃う物でもありませんが。まぁ、今までやってきたことをそのまま継続拡大ですな」

 「いままで自重しておりませんでしたからな。はははは」

 ああ、それはもう止めて。
 …言われてみれば、せいぜい火薬武器を黙っていた程度で。はい、好き勝手やってましたよ。できるのにやっていない
ことは…世界征服くらいですか? 席巻はしても支配はしませんよ?

 「レイコ殿。火薬や火筒の研究を容認されると言うことは…戦争の可能性は容認されるということなのでしょうか?」

 まぁ、戦争が起きそうなら私は止める…と思われているでしょうしね。今後もそうなら、軍は要らないって事になってしまいますが。

 「火薬は土木工事にも使えますし。火筒は魔獣や害獣相手に有用です、ロトリー国はそれで、ハーティーと呼ばれる狼の魔獣から南の大陸を奪還していますしね。あと衛兵に持たせて治安維持にも」

 守る為の武器。私としては、自衛と抑止力と危機管理の範疇の武装まで否定するつもりはないのです。
 なんなら花火を作ってもいいですよね。エイゼル市納涼花火大会 …あ、本当に検討しよう。アイリさんに浴衣作って貰って。マーリアちゃんに似合いそう。

 「もちろん略奪や圧政のための侵略的戦争とかは認めませんが。…国民が望まないと戦争が出来ないような仕組みというか、国民が望むのなら戦いも致し方無しというか。ダーコラの時は、降りかかった火の粉でもありましたけど。そこに生きる人達の自決まで否定していくべきではないと思っています」

 地球でも昔は、国には戦争を起こす権利があるとまで考えられていました。他国からの理不尽に武力で対抗する…まぁこの世界ではまだ十分あり得る話でもあります。もちろん、その決断の結果や責任も込みですけどね。

 「…そういうことが、"地球"でもあったのですか? "地球"でもそれを止めることは出来なかったと」

 ザイル宰相が興味を持ったようです。

 「人類の持つ英知が増えたとしても、個々の人に関しては急に変わらない…ってことなんでしょうかね。この大陸で全面戦争だなんて最悪な事態はもちろん避けたいですが… ただ、全てを巫女パワーで解決しても、この星に生きる者達の為にならないと思うのです」

 私が生きていたころの地球。平和を賞賛しつつも、結局は戦争が無くならない世界でした。国やイデオロギー単位でまとめようとするより、民族単位で区切った方が平和になったのでは?…とはお父さんの言です。
 もちろん、虐殺とか最悪な場面には手を出すことになると思いますが。兵士達で戦闘をするレベルなら、本来私が口を出すことではないのではないか?と。

 「出来ればこの世界の人々だけで解決を、文明に見合った精神的成長を期待したいのです」

 「文明的精神か…たしかに。アイズン伯と陛下がいなければ、われわれもまだ疑心暗鬼の沼の中におったのじゃろうな。…帝国のレイコ殿が何に苦労したのか、分かるような気がするわい」

 「…委細承知した。ネイルコード国の国王として、この血統が続く限りレイコ殿に協力することを誓おう」

 「ありがとうございます、陛下」

 クライスファー陛下がまとめてくださいました。
 手を出すことと手を出さないこと、線引きが難しいですね。積極的に関与しつつ、精神的には関与しない。ちょっと…かなりずるい気はします。



 「それでさっそくであるが。一つレイコ殿にも協力して戴きたいのだが」

 「はい?」

 クライスファー陛下が身を正します。

 「まずわしは、国王を退位してアインコールに譲位したい。わしもそろそろ六十歳だし、アインコールも三十代半ばだ。とっとと即位させて、王としての経験を積ませたい」

 正直、三十代で王子様ってどうなんだろ?とは思ってました。ごめんなさい。
 ただ、王様が六十歳で引退なら、王子様もそんなものかな?という感じもします。
 …ニコニコと嬉しそうですね、陛下。…それは、肩の荷を下ろせるって笑みですね。

 「同時に、カルタストを立太子させたい。十三歳だし、ちょうどよかろう」

 こちらでは十三歳で成人あつかいです。ただ、商法や刑法上は成人として扱われはしますが、社会では二十歳くらいまでは未熟者扱いもされますけどね。
 もちろんいきなり王太子としての実権がいきなり全部渡されるわけではないでしょうが。カルタスト殿下にも弟が出来ましたので。成人したのなら、継承順位と明確化と実務経験はさせたほうが良いという判断ですか。
 ただまぁ。
 
 「それは… お二方、おめでとう…ございます?」

 なんか神妙なお顔のお二人です。

 「はっはっは。レイコ殿は彼らの気持ちが理解出来るようだ。」

 カステラード殿下が大笑いしています。単純にめでたいかというと。アインコール殿下もカルタスト殿下も…やっぱりあまり気が乗らないみたいですね。

 「私としては、今からでも弟を説得してくれると嬉しいのだが…」

 半分本気のアインコール殿下。

 「今のネイルコードなら、兄上が最善です。私も全力でお支えしますよ、"陛下"」

 こちらもニコニコ…いや、ニヤニヤしているカステラード殿下。
 ちなみに、カステラード殿下を次の王に…という勢力はまだ僅かながら居るそうです。殿下の血筋を頼って…というより。先代時代の古い価値観の貴族が権力拡大のために殿下を神輿にしたいという意図なのでしょうが。まぁ今のところはうまく捌いているようです。

 「権力が欲しい者も多いのだろうがな。一人に集中すると…本当に重たいぞ。…早く、王を必要としない政が成せるようにならない物か… 私の代では無理だろうが」

 アインコール殿下がぼやきます。

 「レイコ殿が話してくれた民主化というやつか。ちと寂しい気もするが。民自身で政が成せるようになるまで国を育む、それが今の王侯貴族の役割なんじゃろうな」

 「武力や権威で威張り散らすだけの時代じゃなくなるのは明白ですからね」

 ネイルコードの教育水準考えると、そう遠くも無いとは思いますが。善政を布いている王室を国民が手放そうとするか…あたりの方が問題になるかも?

 「もう一つ。アイズン伯爵を法衣侯爵として王宮に召し上げたい。さすがに正教国以西まで目を配るのなら、エイゼル領伯爵では身代が軽いのでな」

 「…アイズン伯爵は良いんですか? 身分が重たくなると自由が出来なくなるっておっしゃっていたような」

 トップから一歩下がったところで、内政に勤しむのがアイズン伯爵の趣味みたいな物ですからね。

 「鉄道と海運は、国を跨ぐからの。一領主では難しいところがいろいろ出てきた所じゃ。アイズン伯の位の方はブラインに。クラウヤートを伯嫡に。わしの新しい立場は、新設される経済運輸大臣だそうだ」

 「もともと街道整備や鉄道等はマラート内相下の業務だったので。彼の直下に付いて貰うことになる」

 さもありなんという人事ですね。むしろ今までエイゼル市に籠もっていられた方が変とも言えますが。

 「…私としては、内相を代わって戴いても良かったのですけどね」

 「いやじゃぞ。めんどくさい」

 一蹴するアイズン伯爵です。嘆息するマラート内相。
 ああ、面倒なところは全部マラート内相に押しつけて。自分はやりたいことだけやるつもりですね。

 …なんでこうネイルコードの要人ってこう、地位に執着無いんでしょうかね?

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