Re:Late

悠木 旭

文字の大きさ
上 下
2 / 14

しおりを挟む
155 :名無しの星光さん:20xx/xx/xx(日) 22:36: ID:Zm5UnIOX
日本史の菅原ってどこの学校にも1人いる40代前半の独身ババァって感じ
女としての品がなくて既に手遅れな状態なので常に強気、そのくせ諦めきれないのか焦りと嫉妬で情緒不安定なので女子生徒に意味不明ないびりをしたと思えば男子には物わかりのいい風を装って点数稼ぎ


156:名無しの星光さん:20xx/03/30 (日) 22:38: ID:dHhLutQ0
2-Bの竹中ってマジでうざいな
あのキモイ話し方でわざわざ自慢話
弟が小学校お受験をひかえてて親の年収2000万なんだとさw


157:名無しの星光さん:20xx/03/30 (日) 22:45: ID:qwHTnIOX
>>155
あのババァうざいし気持ち悪いから晒してもええわw

>>156
うぜぇとは思うけど実名だすほどじゃない


158:名無しの星光さん:20xx/03/30 (日) 23:12: ID:jBzvtr61
2年の石塚とかいうデブ必死すぎだろw 
お前みたいなドン臭いデブは一生イジメの対象ってレッテル貼られ続けるんだからそれが嫌なら退学してやり直せば?w 
せいぜい次の学校ではイジメられないよう言動に慎めよw


159:名無しの星光さん:20xx/03/30 (日) 23:58: ID:5mcMy/Y6
数学の桜井が女子生徒に手出してたって噂あるんだけどまじ?


160:名無しの星光さん:20xx/03/31 (月) 00:00:  ID:eeF2qwHT
>>159
2年の某有名女子
今度3年になるな


161:名無しの星光さん:20xx/03/31 (月) 00:02: ID:oXT0Awf+
>>160 
有名女子って誰だよw
実名とソースはよw 
ソースがなきゃ冤罪


162:名無しの星光さん:20xx/03/31 (月) 00:02: ID:fG8dr410
>>161
はいはい、ソース厨は消えろください

桜井って最近テレビに出まくってるあいつだろ? 全校集会で「数学ができないやつは成功しない」とか言ってた。
てめえの価値観押し付けんなって思った。


163:名無しの星光さん:20xx/03/31 (月) 00:05: ID:epc5rCC/P
>>うぜぇとは思うけど実名だすほどじゃない

本人降臨乙


164:名無しの星光さん:20xx/03/31 (月) 00:09: ID:eeF2qwHT
>>162
あれはまじで聞いてて胸糞悪かった。んで自分は生徒に手出してたんだろ?
死んでいいよ。

165:名無しの星光さん:20xx/03/31 (月) 00:12: ID:fTF9pjTM
桜井の話で思い出した。最近噂になってる動画(ヨクバリサイトだっけ?)にその桜井が映ってたって部活で噂になってた。
見たやついたら情報くれ

166:名無しの星光さん:20xx/03/31 (月) 00:17: ID:7iBB/Tdr8
ヨクバリサイトって公式に直リン貼られて、それ見れたら理想の自分になれるとかってやつ?
どう考えてもありえないし、だいたい俺の周りに見た奴ひとりもいないし、俺も見たことない。ガセに決まってる。



 * * * *


 瞼の裏に射し込む光で、葛城かつらぎそうは目を覚ました。
 開ききらない目蓋のまま、ゆっくりと回りだした頭を整理するべく周囲を見渡してみる。
 控えめの照明。中央に人が一人通るのがやっとの狭い通路と、その通路を挟んで両サイドに二席づつ、規則正しく配置された回転式のリクライニングクロスシート。
 座席のリクライニングを一杯まで倒して眠っている信楽焼きのタヌキっぽいサラリーマン風の男性や、携帯電話を操作しているロングヘアーの若い女性、仲睦まじく談笑している老夫婦の姿が目に止まった。

「ああ、そういえば……」と、葛城はそこでようやく、自分が特急列車に乗っていたことを思い出した。
 穏やかな陽光と、リクライニングシートから伝わってくる揺れを心地よいと感じているうちに、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
「んー」っと大きく伸びをしてから、倒していたリクライニングを元の位置に戻す。
 車窓から外に目をやれば、傾き始めた太陽と青い空の下、所狭しと隙間なく立ち並んだ鉄筋コンクリート製の建築群と、網の目のように張り巡らされたアスファルトの道路に溢れていた。

「……ほんと、何度見ても驚くな」
 感慨深くため息がこぼれる。
 線路脇を通り過ぎる高層ビルや高架道路、道路同士や列車線路と道路の立体交差を見ては、その都度「はぁ……」と感嘆の吐息が零れる。
 人の持つ底力を見せつけられているような、建築技術としてそれが可能だという事を頭で理解していても、こうして目の当たりにすると、いったいどうすればあんな天にも届くような高い建造物が建てられるのか、まるで想像がつかない。

 というのも、彼、葛城が生まれ育ったところは、有体に言ってしまえば地方も地方、農村といえばまだ聞こえはいいが、頭に『ド』が二つ三つ付いてもおかしくないほど小さな田舎の集落なのだから仕方がない。
 葛城の実家である八剱やつるぎ村は、周囲を山岳地帯に囲まれた平野の少ない、全村民を合わせて三百人に満たない土地だ。取り立てて名所があるわけでも、温泉が湧いているわけでもなく、インターネットはおろか携帯電話の電波すら届かない。
 山、時々畑に田んぼ、所により一時民家。
 そんな自給自足が当たり前の場所で生まれ育ち、生活を送ってきた葛城にしてみれば、都会はこれまでの常識がまるで通用しない、全てにおいてスケールが異なるまさに未知の別世界なのだ。

 それでも三ヶ月前に所用で初めて訪れたときの驚愕と困惑に比べれば、二度目の来訪になる今回は心の準備が出来ていた分、いくらかはマシだった。
 いっても「心中いくらかマシ」な程度で、やはり知らない土地に来た感は中々に拭い難いのも事実である。
 そもそも、なぜ葛城がこうして列車に揺られているのかと言えば、当然相応の理由があってのことだ。
 目が覚めてしまえば特にすることもない車内。手持ち無沙汰にしていた葛城の目に、正面の網棚に差してあった一冊のパンフレットが目に留まる。取り出して膝の上でそれを開いた。
 もう穴が開くほど読み込んだ、明日から彼が通うことになる”私立星光学院高等学校”の入学案内である。

 パンフレットに記載されている内容曰く、都市沿岸の海上を埋め立てた広大な臨海地区に近年建設されたばかりの新設校で、中規模の街程度なら丸々収まるほど広い敷地面積に芸術的な外観の校舎、最先端の技術を取り入れた近代的な学習設備、遠方から来る学生の為に整備された学生寮と充実の周辺設備、さらには豊富な学科や部活動、そして熟練の教職員、講師陣を揃えているという。
 在校生徒数は五千名をゆうに超えており、高等学校としてはかなりの規模を誇る学院になる。
 とはいえ、全校生徒が葛城を含めて六名しかいなかった複式学級しか知らない彼にすれば、五千人などという数字を表記されたところで、天文学的すぎてまるっきりピンとこない。
 そもそも八剱村の総人口ですら星光学院の十分の一にも満たないのだからまったく想像のしようがない。
 余談になるが、小学生から中学生までの他学年がひとつの教室で勉強する複式学級で、葛城のクラスメイト五人のうち、ひとりは一歳年下の葛城の実の妹である。

 元々は中学を卒業したら、そのまま最寄りの高校に進学するつもりでいた葛城だったのだが、そこでひとつの問題が浮上した。
 その”最寄りの高校”が生徒数の減少によって閉校することが決まってしまったのだ。
 では次に近い学校はどうかと調べてみると、これがあまりに遠かった。
 自宅からバスと電車を乗り継いで片道二時間以上、徒歩の時間や往復など諸々を含めると、毎日の生活のうち五時間近くも通学時間に消費してしまうことが分かったのだ。
 家族の間でも、さすがにそれは良くないだろうということになった。
 自宅から通えないとなれば、学校の近くで賃貸物件を借りるか、寮制の学校が視野に入ってくる。
 ただアパートを借りて通学するという案は「高校生の一人暮らしは心配が堪えない」という理由から早々に却下された。
 葛城としても、掃除洗濯は兎も角、炊事の経験がほとんどない。見ず知らずの土地に放り出された挙句に貧しい食生活を送る羽目になるのは勘弁願いたいところだった。
 そうなると必然、寮のある学校という話になる。
 そこで”総の進学先をどうするべきか問題”に関して両親、祖父母、妹による親族会議が開催される運びとなった。

「とりあえず、実家から近い所で」
 そんなやる気のうかがえない葛城の発言から始まった家族会議は、しかして葛城自身も思わぬ形で決着を迎えることになる。
 当初は候補の高校の資料をいくつもあれこれと見比べては、それなりに活発な意見交換がなされていた……のだが、いくつもの資料を読み比べていくうちに出席者の誰もが『なんか、どこも似たり寄ったりに見えね?』という意見に辿り着いてしまったのだ。
 父親にいたっては完全に飽きてしまったのか、日本酒を片手に「かあさん、なんかつまみ」などと言い出す始末だった。
 そしてこれからの葛城の青春時代とも呼ぶべき高校生活が「なんかもう、このへんでいいんじゃね?」といういい加減な父親の発言で纏まりかけたとき―――というより、恐らくはこの頃合を狙い済まして、それまで黙して語ることのなかった妹……葛城桜花おうかが動いた。

『んとさ、もうどっちにしたってお兄ちゃんが寮のある学校に進学することは決まってるわけじゃない? なら、ちゃんとお兄ちゃんの将来を考えて、しっかりと社会勉強が出来る学校を選ぶべきだとあたしは思うわけです』
 可愛い妹様によるこのありがたい余計な一言が、結果として今後の葛城の行く末を大きく変化させる元凶となる。
 ―――ちゃんと将来のことを考えて。
 ―――しっかりと社会勉強も。
 その言葉に大人たちの心が地殻変動のごとく動いた。
 ”将来”と”社会勉強”にイントネーションを強調しているところがミソである。
 ここから”策士“葛城桜花が一気呵成に畳み掛ける。

『それに、やっぱりじいじとパパみたいに男らしくなるには、村の外に出て見聞を広めないとダメだと思うの。どうかな、じいじ、パパ?』
 ああ、げに恐るべきはその上目遣いであろう。
 ―――じいじとパパみたいに男らしく。
 目に入れても痛くないほど可愛がっている孫、娘のこの一言で、祖父と父、ふたりのだらしない”オヤジーズ”は完全に陥落した。

『桜花の言う通りだ! いいか、総。男子たるもの、いつまでも狭い世界に閉じこもっていてはならん!』
 さきほどまでの『なんかもうめんどいから、この辺で決めちゃわね? かあちゃんそろそろ飯』的な態度などどこ吹く風、一転して「日本男子とはかくあるべし!」と始まったオヤジーズ。
 眉尻をだらしなく垂れ下げて『若いころには何をしようかであり、老いては何をしたかである』と拳を振り上げてかの陸軍騎兵隊を創設した人物の言葉を引用したところで、まったくもって威厳の無いこと甚だしい。
 なるほど”手のひらを返す”とはこういう場面を指すのか、と、葛城はひとつ勉強した。
 そんな感想を心のうちで零しているうちに、あれよあれよという間に、母、祖母、と芋ずる式に説得されていき、最後に彼女が、

『そこで提案。あたしはこの学校がお兄ちゃんにピッタリなんじゃないかなって思うわけです』
 桜花がそれまで秘して隠していた一枚のパンフレットをスッと卓上に提出した。
 それが”私立星光学院高等学校”の入学案内だった。
 ちなみにこの時、葛城はすでに桜花の魂胆がどこにあるのか察しがついていた。
 つまり彼女の妙たる計画はこうだ。
 来年は桜花もこちらの中学を卒業して高校に進学することになる。その際、真正面から都会の学校……星光学院に進学したい旨を希望しても、まず家族の同意が得られる可能性は薄い。
 特に父と祖父は絶対に許可しないだろう。桜花をたったひとりで、遠く離れた都会の学校に通わせるなんてことはまず考えられない。確実に反対するのが目に見えている。

 桜花もそれを重々承知しているから、先に兄を星光学院に入学させてしまうことで「お兄ちゃんが居るから」「お兄ちゃんが行ってるんだから」というもっともらしい理由を掲げ、父や祖父が断りづらい状況を作り上げる、謂わばこれは……布石。

 なるほど、話を切り出すタイミング、父と祖父をたった一言で籠絡し、”妥協”という流れに染まっていた会議を”将来と社会勉強”にすり替えて自分の望む方向へと誘導してみせた手腕、そして星光学院のパンフレットを出すまでの一連の流れ。
 先の先までを完全に読み切った、なんとも見事な策士っぷりである。
 
(正直やり方はどうかと思うけど……)
 苦笑いを浮かべつつ、それでも……と、葛城は星光学院の資料を手に取って思う。
 たったひとりの妹が将来に希望をもって、本気でこの学院に行きたいと望んでいるのであれば、それをかなえる手助けをするのもまた兄たる自分の役目ではなかろうか。
 そんな風に考える。むしろこの年になっても将来の目標やら展望やらを見出していない自分の方がよほど問題かもしれない。
 桜花には明確な目標があって、俺にはない。
 ……とはいえ、家族と離れ、慣れた生活を手放してひとりで都会に行く……正直、考えるだけで気が重くなりそうだった。

「総、お前のことだ。お前が決めなさい」
 父親の言葉に、家族の視線が葛城に集まる。
 もちろん“兄”としては極力妹の希望をかなえてやりたいと葛城は思っている。でも生まれ育った土地を離れて、頼れる人もいない遠く離れた場所で新しい生活をすることに不安を覚えてしまう。臆面もなく言ってしまえば……怖いのだ。
 どちらも自分の本心なのは間違いなかった。

(どうするべきかな)
 迷った末、パンフレットから妹に視線を移した葛城に、サイドテールの黒髪を揺らして愛らしく片目を瞑った桜花が、葛城にだけ伝わるよう小さく『お兄ちゃん、お願い』と呟いた。
 それを見て葛城は諦めのため息をつくのだった。

『親父、母さん。俺、ここを受けてみることにする』
 もしもこうして兄が了承するところまで計算に含んでいるのだとしたら……
 葛城桜花……末恐ろしい娘である。

 何はともあれ、進路も決まり、その後の入学試験にも無事に合格を果たした葛城は、晴れてより来年度から星光学院高等学校の新一年生として学院生活を送ることになったのである。
 そして入学式を明日に控えた今日、さながら戦地に出征する兵士のごとく、八剱やつるぎ村の人たちの万歳三唱をもって送り出された葛城は、これからの学院生活三年間において生活の拠点となる学生寮”三日月寮”に赴いているところなのだ。
 出立前、葛城の新たな門出を祝う壮行会に集まった村民を代表して、齢九十をとうに過ぎた村長が涙ながらに送ってくれたありがたい訓示を書いた紙が胸ポケットにしまってある。

『国の為重きつとめを果し得で、矢弾尽き果て散るぞ悲しき、仇討たで野辺には朽ちじ吾は又 七度生まれて矛を執らむぞ……』
 ……果たして俺はどこに送り出されようとしているのか。
 旧陸軍中将が大本営に宛てた最後の電文の一節を読みあげているうちに、感極まって半泣きする村長の邪魔をしないよう丁重に拝聴いたしつつ「……爺ちゃん、たぶん何か勘違いしてるよ」と、心の中でつぶやく葛城だった。

『まもなく、新戌亥いぬいです。京浜東西線、武蔵野南北線、星光学院線、総武川崎線はお乗換えです。お降りのお客様はお忘れ物のないようお支度――――――』
 軽快なチャイムに続いて、車掌のアナウンスが車内に流れた。
 目的地の三日月寮がある星光日影町駅へは、この新戌亥駅で星光学院線に乗り換える必要がある。
 座席から立ち上がった葛城は、荷棚から手荷物のボストンバッグと土産物の菓子を詰めた紙袋を降ろしてデッキに移動した。

しおりを挟む

処理中です...