ガンストライク・オンライン

撫でたココ

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痛い痛い

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『バトルスタート』
 三回戦の始まりを告げる合図。いつになく、テンションが上がっている僕は戦闘がしたくてうずうずしていた。
「君から右斜め45度の位置に敵を確認。音を出さないように近づいて、私の合図で初撃をお願い。もう一人は別の場所にいるから気にしなくていいよ。」
「りょうかい」
 森の中を音を出さないように素早く駆け抜け、敵の背後に近寄る。相手の装備はシールドに片手剣。敏捷性はないが盾と妙に大きい剣のおかげで防御と攻撃はすごそう。これも教えられた通りだ。
「3」
「2」
「1」
「go」 
 彼女の掛け声で間合いを一気に詰め初撃をおみまいする。素早く一撃を食らわせたつもりだったが、相手の反応速度が速く盾に阻まれる。
 初撃をし終えた僕は、言われた通り距離をとり敵を錯乱すべく身を隠す。
 スパァッ
 敵に弾丸が命中した音。
 それを聴き一直線に敵へと向かい鋭利な一撃。
 さっきの影響かよろつきながらも盾を使い華麗に受け流される。
 すぐさま援護射撃。
 間を空けず斬る
 射撃
 斬る
 射撃
 斬る
「うぉーーーーーーーーーーーー」
 低く野太い声。自分の士気をあげるためだろうか。かまわず攻撃を続ける。
 斬る
 身を隠す。
 斬、ろうとしたそのとき
「そぉーーー」
 横一線の一撃に、心臓が縮こまる。身を翻し間一髪のところで回避したが、横腹を軽くえぐられた。 
 敵の援軍。さっきまで姿のかけらもなかった、2人目がどこからともなく現れた。
 さっきの咆哮はそういうことか。
「一旦回避。状況を立て直して。」
「はい」
 片手で滴る血を止めながら敵との距離をとる。彼女の射撃によって、足止めされた彼らをなんとか巻くことに成功した。
「大丈夫?」
「はいまだなんとか」
「君のおかげで、盾持ちはほとんど動けないから私がなんとかする。そのあと応戦するから足止めしておいて」
「りょうかいです」
「死なないでね」
 僕は耳をすませ足音をたどる。
 カサカサ
 後ろの方から草の乾燥した音。確認すると少し距離は遠いいが敵を確認。
 ドクンドクン
 全身に血液が巡る。気づかれないようにゆっくり近づき、体勢を低く足を目掛けて剣を抜く。
 サッ
 命中。よし。
 サッ
 覚えのない二撃目
「うっ、」
 体が足から崩れ落ち体勢が崩れる。ふくらはぎから、全身に痛みが回る。走り抜けたとき後ろから斬られたようだ。

 それでも痛みを一瞬のうちに忘れ、振り向き敵対する。
 ドクンドクン
 見えない緊迫感。一筋の糸を切るようにして同時に駆け出す。
 斬り、斬られる。
 右腕、左足、肩、脇腹
 斬って斬られて、斬って斬られて、斬って斬られて。
 痛い痛い痛い痛い。
 こんな感覚は初めてだ。全身が燃えるように熱くて、とろけそう。
 バスッ
 拮抗しているなか、それをぶち壊したのは一発の弾丸。敵の体に吸い寄せられるようにして着弾したそれによって戦いは終わりを告げた。
「おつかれさま」
 遠くから聞こえるその優しげな声にほっとした。
『フィニッシュ。勝者チーム風車』
 始まりの広場へと戻った。

「おつかれ」
「おつかれさまです」
 傷跡はもうなく痛みもないが、体はだるい。
「なかなかの戦闘ぶりだったよ」
「ありがとうございます」
「思ったより手強かったね。よくやってくれたよ。ほめてつかわそう。」
「疲れました」
「それはそうさ、あれだけのことをしたんだからね。今日は三回戦までだからねゆっくり休むといい。」

 こうして1日は終わる。

 これまでの流れ。走る、馬鹿にされる、褒められる、嬉しい、斬る、斬られる、痛い。
 散々な1日だった。ムカついて、楽しくて、嬉しくて。
 明日もきっとそうなるだろう。
「次のバトルも頑張りますか。」
 
 まだまだ宵風さんに振り回される日々は続く。
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