暑い景色と冷たい温もり

撫でたココ

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一章

校外学習という遠足

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 毎年、学年が変わるとクラスの人たちと親睦を深めよう的な意味で校外学習もとい、遠足がある。

 班分けはその時によってそれぞれだが、だいたいは出席番号順ということで落ち着く。出席番号順というところが肝なところで、僕にとって一大事なところでもある。

 1班5人の8班編成で、目的地は群馬にあるバーベーキューやらなんやら出来る施設。そこで飯を炊いてカレーを食べよう。みたいな企画らしい。

 言うまでもなく小香花と同じ班である。

 そして、照亜紀も一緒だ。

 あと2人は宇井さんと上原さん。

 遠足に行くにあたって決めることが多々あるようで、バスの座席やら、持ち物や調理の役割分担なんかがそれである。今日の5.6時間目は班で話し合ってそれらを決めようということらしい。

「まずは班長から決めるべきなのかな」

 その他4人に同意を求めるようにして声をかける。

「そうだね。でもまぁ班長は石波くんでいいんじゃない?」

 こう言い放ったのは宇井さん。

「いいと思う」

 それに乗っかるようにして上原さんも賛成票に手を挙げた。

「さすがに逢沢さんを含めてまとめる自信はないわ」

「だよね~~」

 2人の中で初めから意見はまとまっていたようで、示し合わせたようにくすくすと笑い始める。

「まぁいいか」

 ツッコむとめんどうになりそうなので2人には触れず、流されるままに班長となった。

「頑張ってね日南汰」

 そう声をかけてきたのは小香花ではなく、照亜紀だった。

 まだ一言も話していない小香花の方を見てみたが、下を向いていて表情は読み取れなかった。

「それじゃあ次はバスの座席かな。1人余るけど割と座席に余裕があるからそこは1人席ってことらしいけど、まず上原さんと宇井さんってことでいいのかな?」

「「いいよ~」」

「それじゃあ、こっちはどうしようか?」

「僕は別に1人でいいけど・・・」

 照亜紀が半ば空気を読むようにして食い下がった。こうなるとは思っていたからなんとも思わなかったけど。

「ひどいな~照亜紀は。・・・・・・・・・小香花?」

 まだ話さずにいる小香花を不思議に思い軽く顔を覗く。

「・・・っ?!もちろん私は日南汰と隣がいいなっ!」

 ぎこちない間と明らかに動揺が見て取れる言葉。いつものおちゃらけた雰囲気とはほど遠い姿だ。空元気だということが見てわかる。

「どうした?小香花」

「ううん。大丈夫」

「ならいいんどけど・・・」

「次は持ち物なんだけど・・・・・・」

 僕はなぜ彼女があんなに元気がないのか、この時はまだわからなかった。小香花に悩みがあるなんて思いもしなかった。

 遠足の当日にあんな風になってしまうなんて。
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