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2章
決意
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リヨンは片手を上げて、周りの歓声に応えていた。
そして、リヨンはミズキとグレンを見つけると、大きく手を振ってきた。
そう、この歓声は、リヨンが少年の部で見事1位になった事への歓声だった。
しかも、最年少での1位は、体格の差を、軽々と凌駕する、スピードと剣さばきで、勝ち取った。
いつもの、ミズキなら、すぐにリヨンに駆け付け、「えらいわ、リヨンえらかったわ」と言っていただろう。
ミズキは、軽く手を振るだけにとどまった。
グレンは相変わらず片手をあげるだけだった。
「顔色が悪いようだ、リヨンも勝てた様だし、屋敷に戻るか?」
「・・・・そうね・・・少し一人になりたいから、先に帰ってるわ・・・グレン、あなたは、リヨンに付いていてあげて・・」
「いや、おれは、お前の護衛だ・・・さっきのような、失態はする気はない」
ミズキが、陛下の従者と名乗った男に連れて行かれた時、気づけなかった、陛下の従者なら腕章に金の刺繍を施していることを、気づくのが、遅くなって、かなり探し回った。
見つけたのは、人通りが少ない、闘技場の片隅で、ミズキは小さくなって、咽び泣いていた。
依頼人を、危険な目に合わせてしまったと、グレンは舌打ちをした。
乱暴でもされたと思ったが、服装の乱れもなく、ケガもない、まずは一安心だったが・・・。
「あの従者に、何かされたのか?」
グレンの声は、低く闘技場の片隅に響いた。
ミズキは、顔を左右に振り、「違うと」いった。「知り合いに合っただけ」だと、小さな声で呟いた。
ばつが悪いのだろうか、ミズキは目をゴシゴシと腕で、目をこすった。
「自分で決めた事だから・・・」そして、聞こえないように呟いたのだろうが、しっかりとグレンの耳に届いた。
何が、自分で決めた事なのだろうか?それに、知り合いに会っただけで、なぜ、声を殺して嗚咽していたのだろうか?
全て、俺が、ミズキから離れた事が原因だ。
興味本意で、護衛を雇っている訳ではなさそうだ。どうやら俺は、このミズキと言う口の悪い女を少し誤解していた。
気を引き締めないといけない。
グッと、手を握りしめた。
そして、ミズキは話しかけてきた。
「私の事は、気にせずリヨンと、美味しいものでも食べに行って・・・」
「断る」
「一人に・・・」
「断る」
「賃金アップ・・・」
「それは、頂く」
「断りなさいよ・・」
「お前に鍛えられた・・・」
「・・・・まっ、まあいいわ・・・、それから、気を使ってくれて、ありがとう。でも、もう平気だから・・・」
ミズキはお礼を言うとソッポを向いた。
「ミズキ様、お話しのところ申し訳御座いません」
ミズキの後ろから、声が聞こえた。
声をかけたのは、ギルドのミルディンだった。
滅多にギルドから出て来ない彼が、ここにいる事に不安がよぎった。
「何かあったの?」
「はい、少々面倒な事が・・・」
ミルディンはチラッとグレンを見る。
「彼は信用していいわ」
そして、リヨンはミズキとグレンを見つけると、大きく手を振ってきた。
そう、この歓声は、リヨンが少年の部で見事1位になった事への歓声だった。
しかも、最年少での1位は、体格の差を、軽々と凌駕する、スピードと剣さばきで、勝ち取った。
いつもの、ミズキなら、すぐにリヨンに駆け付け、「えらいわ、リヨンえらかったわ」と言っていただろう。
ミズキは、軽く手を振るだけにとどまった。
グレンは相変わらず片手をあげるだけだった。
「顔色が悪いようだ、リヨンも勝てた様だし、屋敷に戻るか?」
「・・・・そうね・・・少し一人になりたいから、先に帰ってるわ・・・グレン、あなたは、リヨンに付いていてあげて・・」
「いや、おれは、お前の護衛だ・・・さっきのような、失態はする気はない」
ミズキが、陛下の従者と名乗った男に連れて行かれた時、気づけなかった、陛下の従者なら腕章に金の刺繍を施していることを、気づくのが、遅くなって、かなり探し回った。
見つけたのは、人通りが少ない、闘技場の片隅で、ミズキは小さくなって、咽び泣いていた。
依頼人を、危険な目に合わせてしまったと、グレンは舌打ちをした。
乱暴でもされたと思ったが、服装の乱れもなく、ケガもない、まずは一安心だったが・・・。
「あの従者に、何かされたのか?」
グレンの声は、低く闘技場の片隅に響いた。
ミズキは、顔を左右に振り、「違うと」いった。「知り合いに合っただけ」だと、小さな声で呟いた。
ばつが悪いのだろうか、ミズキは目をゴシゴシと腕で、目をこすった。
「自分で決めた事だから・・・」そして、聞こえないように呟いたのだろうが、しっかりとグレンの耳に届いた。
何が、自分で決めた事なのだろうか?それに、知り合いに会っただけで、なぜ、声を殺して嗚咽していたのだろうか?
全て、俺が、ミズキから離れた事が原因だ。
興味本意で、護衛を雇っている訳ではなさそうだ。どうやら俺は、このミズキと言う口の悪い女を少し誤解していた。
気を引き締めないといけない。
グッと、手を握りしめた。
そして、ミズキは話しかけてきた。
「私の事は、気にせずリヨンと、美味しいものでも食べに行って・・・」
「断る」
「一人に・・・」
「断る」
「賃金アップ・・・」
「それは、頂く」
「断りなさいよ・・」
「お前に鍛えられた・・・」
「・・・・まっ、まあいいわ・・・、それから、気を使ってくれて、ありがとう。でも、もう平気だから・・・」
ミズキはお礼を言うとソッポを向いた。
「ミズキ様、お話しのところ申し訳御座いません」
ミズキの後ろから、声が聞こえた。
声をかけたのは、ギルドのミルディンだった。
滅多にギルドから出て来ない彼が、ここにいる事に不安がよぎった。
「何かあったの?」
「はい、少々面倒な事が・・・」
ミルディンはチラッとグレンを見る。
「彼は信用していいわ」
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