異世界へようこそ

ホタル

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2章

追跡1

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馬車の後を追って、だいぶ経って来たが、一向に馬車は見つからなかった。
道を間違えたかと、頭をよぎる・・・。

だが、ここまでは、一本道で、道を間違えるわけが無かった。

夜もだいぶ更けてきた、仕方がないここでいったん休憩か・・・。

さすがに、夜は火がないと堪える。

たき火をしても、相手が、ミルディンだと思うだけで、心どころか体まで冷えてしまうような感覚に陥る。

「ランスロット陛下が、即位してばかりの時に、一度だけ戦争になりかけた事は、覚えていますか?ジェリド様」
「・・・・」
話などしたくもない、俺をどん底に落としれた恨みはそう簡単なものでは無かった。
返事もしないでいたら、ミルでインは、また、話し始めた。






【あの時は本当に大変でした。
氷の貴婦人が、ランスロット陛下の懐刀になったのもあの時からですね・・・・。
あの時ほど、情報が武器になると思ったことは有りませんでしたよ、この、アルモニカ王国を狙って、北はベルモーゼ国と西のギアラム国東のインバラ国が同盟を結び、ランスロット陛下が王位を継承したばかりのこの国を、攻めてくるのをただじっと待つしかなかった・・・・。
誰もがそう思っていました。

私達ギルドは、氷の貴婦人の手足となって、ありとあらゆる情報を、彼女に提供しました。
その中から、彼女は見事に三国同盟のほころびを見つけました。

まず彼女の指示は、北の国のベルモーゼがアルモニカと内通して、東の国インバラを攻めると言う嘘の情報を、東のインバラに流す事が1つと、西のギアラムが東のインバラ手を組んで、北のベルモーゼを滅ぼすとこちらも嘘の情報を、流す指示を受けた。

このときは彼女の言っている事が、分らなかった。
そう簡単に事が進むはずがないと私達ギルドでさえ、思っていたのだから・・・・。

ところが、彼女の指示した通りに動いた、3日目から、同盟の均衡が壊れ始めて、北のベルモーゼと西のギアラムと東のインバラが小競り合いをはじめ、その三国は、アルモニカを攻める状況どころか、自国を守るので精いっぱいになった。

余りに上手くいったので、私は彼女に、どの情報で、こんな作戦を立てたか聞きました。

彼女は、そんな事が知りたいの?なんて言って、すぐに教えてくれましたよ。


三国とも、このアルモニカに攻めるのに、『兵を出し渋っていた!』事と『戦争終了後の、この国の豊富な資源の分配方法が決まっていなかった』事からかな?アルモニカを滅ぼしても、資源を巡って、今度は三国同士で争いが起こる事を計算に入れて、兵を出し惜しみしたから、この作戦は成功したのよ~~~~。ふふふ」って笑っていました。



この作戦で、彼女は、氷の貴婦人は、ランスロット政権の懐刀と言われ始めました。私はそうあるべきだと思います。

それもそうでしょう、彼女は、アルモニカ兵を、誰一人殺さず、この戦いに勝利したのだから、蔑まれるどころか、賞讃を受けてもいいほどなのに・・・・誰もが、口をそろえて、ランスロット陛下をたぶらかす、悪女と、罵るのを黙って見ていかなければいけないなんて、・・・とても理不尽だと思いませんか?】


ミルディンは、ジッとジェリドをみすえた。








何?訳の分からない事を言っているんだ。

ジェリドは、ミルディンを見たが、丁度、顔の半分が影でどんな表情か見えなかった。

こんな奴の話なんてどうでも良い!
噂に聞いていたが、氷の貴婦人とは、ランスロット陛下の愛人では、無かったのか。
噂とは、信用出来ないな。

だが、そんな女、俺とは何の関係の無い。
そんな話をしても、無意味だ。


いまいち、ミルディンの考えが分からない。


「ところで、ジェリド様、これから貴方は、どうされますか?」
「どう言う意味だ・・・」

「申し訳ないのですが、私は、一旦、ギルドに戻ります。お嬢に報告をしなければいけません」
「そう言う事か・・・」

「はい、そう言う事です!一緒に戻りますか?」

「・・・・・・いいや、俺はこのまま、ミズキの乗った馬車を探す」
「・・・・・それでは、コレを、ミズキ様が、怪我や命の危険があると、この玉が光ります。コレをお渡しします」
ミルディンはポケットの中から、お守りのような、木の札を取り出して、『身代りの護符』を、ジェリドに渡そうとした。



「いや、それは必要ない・・・持っている」
ジェリドは、左手の小指に付いている指輪を左手でさすった。
「それは『塊封の白真珠かいほうのしろしんじゅ』ですね、この世に存在していたんですね」


「・・・・・・」


「・・・・それではミズキ様の左耳のピアスは、対の封魔の黒真珠ですね、、色が若干違っていたので、私も見落としていました。・・・・そんなに大事でしたら、どうして、ミズキ様を信じないのでしょうか?」



「・・・・・」誰のせいだと思っているんだ、お前が、ミズキの腰に手をまわしている姿は、今でも忘れられずにいるというのに・・・・、ミルディンにだけは、言われたく無い。


ジェリドの眉間に力が入る。

「それでは」と、ミルディンは、元来た道を、もどっていった。


これでやっと静かになった。




少しだけ、ジェリドは目をつむった。


目をつむると・・・・風が草を通り過ぎる音や、鈴虫の鳴く音がジェリドの耳をくすぐる。


ジェリドは、ゆっくりと左手の小指にはめてある指輪をもう片方の手でさすっていた。
ミルディンの言っていた、『塊封の白真珠かいほうのしろしんじゅ』がジェリドの小指にはまっている。



ジェリドはユックリと深呼吸をした。






~~~~~


がさ、がさ、と遠くの方で、草が揺れる音がした。
動物が走っている様な音が聞こえる。

いや、動物にしては、草を揺らす音が、不自然だ・・・。
動物が、追われているのか?
一体何に?
・・・人か?人に追われているのか?
・・・・・ミズキ?なのか?
・・・・ミズキが逃げ出して追われているのか?



ジェリドは、すぐに、音のする方へ、動き出した。



ーーー真実をミズキの口から聞く・・・・。
この想いだけが、ジェリドを突き動かす。

暗闇のせいか『塊封の白真珠かいほうのしろしんじゅ』がほんのり光り出した。


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