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ホタル

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2章

八つ当たり

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へろへろになりながら、なんとか、城の中にたどり着きました。
体が、フラフラします。

まあ、あれだけ馬に揺られれば当然ですね。

それにしても、グレンは、あの揺れで、なんともないみたいです。

筋肉の化け物め!!

あっ、目まいが・・・・。

ガシッと、グレンに脇を支えられた。
「大丈夫か?顔が真っ青だぞ!」

「グレンの、馬の揺れに参ったのよ!もう少し安全運転してよね」
「すっ済まなかった・・・・安全運転って、何だ?」
「安全運転は、安全運転よ!馬があんなに揺れるとは、知らなかったわ、今度、乗馬を教えてね、あんたと一緒の馬には乗りたく無いわ!」
「・・・・なんて女だ、良くそれだけ、暴言が言えるものだ・・・」
「それより早く、行かないと・・・・」
ミズキとグレンは、直ぐにランスロットの執務室に行かず、何故か、グレンの控え室に来た。
「どう言う事だ、ここに何の用だ!陛下の所に行かないのか?」
「グレンの私物検査!」
「うっぐ!!」
グレンの顔が、歪んだ。

あの、顔の歪みっぷりは、何かやましい物でも、あるわね~、今度、本当にグレンの私物検査をしようっと。

ミズキはニンマリと考えた。

「って言うのは、冗談で!ランスロットの側近の服を用意して欲しいの?ほら金の刺繍が入ったやつ」

「・・・あぁ、あれか?どうしてそんな物が必要んなんだ!陛下に言えばいいだろう?」

「あんた、バカ?敵は、私がまだ、捕まっていると思い込んでいるのよ。それを利用しない手は無いのよ・・・それに、黒幕もあぶり出したいしね・・・私はこれ以上、後手に回る気は無いのよ」

本当の黒幕は、きっと別のところにいる事でしょうけどね。

私の考えが正しければ、あの穀潰し!考え無しのあの男なら直ぐに動くわ。

私を、誘拐した事を後悔させてやるわ、ギルバルド ・フォン・オーエングリム!あと、芋ずる式にほかの、反乱分子も捕まえられれば良いけどね~無理かな?

今は、きっと勝ち誇っているでしょう!
今回は、あの男をギャフンと言わせるだけで、良しとするわ。


ミズキは、グレンの持ってきた、服を身に付け、髪の毛をかきあげて、帽子を被った!

「・・・お前、もう少し・・・恥じらいというのが無いのか?俺も一応、男だぞ!子供じゃないんだから、少しは、服を着替えるときは物陰に行け、そんな堂々と人前で着替えていたら、嫁の貰い手が無くなるぞ!」

「冗談じゃ無いわ!こんなトコで嫁なんてならないわよ。そんな暇は無いの、私、絶対に帰ってやるんだから!!絶対に帰るんだから・・・・家に!!」
俺の言葉にミズキは、反応した。
泣きそうな勢いで!

そして、腹いせとばかりに、毒を吐く。

「グレンのスケベ、変態、色魔・・・私の体を舐めるように見ないで、目でもつむっていたら?そうだ・・・・良い事・・・思いついちゃった・・・グレン?私の裸を見たんだから、バツゲーム!決定!!ムフフフ、うふ!」

そして、何か思いついた様に、ニンマリと笑った。

悪魔の微笑み!

「おまえ、『舐めるようにって』お前の体なんか、興味が・・・・ないって・・・なんだその気持ち悪い笑顔は・・・・・」


グレンは知っている!この笑顔を見たら、逃げ出さなければ・・・・被害を被るのは目に見えている。

そして、逃げ道も無いことも、知っていた。


「・・・・」



そして、グレンは、絶望の淵に立っていた。


「・・・なんで・・・・」

「ほら、動かない、こっち向いて!」

「・・・どうして・・」

「喋らないで、リップが塗れないでしょう」

「・・・かんべんしてくれ・・・」

「ねぇ、私の言う事聞いてるの?動くなって言ってるんだけど!」

「無理に決まってるだろう?俺が、お前に化けるのなんて、出来るわけが・・」

「うるさい、やってみなくちゃ、わからないでしょう?やってみなくちゃ!」

「いやいやいや、男と女では、体つきが・・・」

「黙れ!次はコレだ」
「はい・・・・」

鼻歌交じりで、俺に化粧を施すミズキは、とても綺麗で、綺麗で、悪魔の様な所業で、俺をいつも追い詰める。

それを知っていて、逃げる事が出来るのに、逃げずに、されるがままの俺は、何処かおかしいのだと思う。

「完~璧!」

ミズキの笑顔が憎い!!

こういう時ばかり、生き生きしている、だが、顔色はさっきより悪い、呼吸も、だんだん浅くなってきている様だ。

早く休ませないと・・・・・。

鏡を見て、俺は絶句する。

筋肉もりもりの、マッチョが、無理やり、ドレスを着て、化粧をしている。
化け物だ!化け物がそこに、立っている。

鏡に映っている俺は、化け物だ!!

俺の方が、ミズキより先に倒れそうだ。

頭が痛くなってきた・・・・気分の悪い・・。


「そろそろ、お遊びは終りね、でも残念だわ~、写真にとって、リヨンに見せたいわ」
ふふふと、にっこり笑って、「もう着替えていいわよ」と言った。
「えっ?変装して陛下の前に行くのでは・・・・・・。」

「グレン、あなた、そんな格好で、ランスロットの前に出たいの?貴方の趣味を、咎めるつもりは無いけど、それはやめた方がいいわよ!さすがに気持ちが悪いわ~~ホント、無いわ~」

この女は・・・・・一度絞め殺してやろうか!おまえが、変装と言ったから・・言ったから・・罰ゲームと言ったから・・・・こんな格好も、我慢したのに・・・・なんだ、その言いぐさは・・・・。

「おま・・」
「しっ!!グレン、黙って、案の定、氷の貴婦人の偽物が登場よ。楽しくなってきた!」
楽しそうに、ミズキは紅蓮の唇に、人差し指をたてた。

「グレン、あの女!あれはきっと男ね!紅蓮とは、雲泥の差ね、ぷぷぷ・・・そうそう、ランスロットに手を掛けそうになったら、止めてね、私は、チョットそこまで証拠探してくるわ・・・」

「何、危ないことを言ってるんだ、証拠探しは、俺が、行ってくる、お前は大人しくここで休んでろ」
「・・・・グレン、そ姿で、言っても、なんの説得力もないわ~ぷぷぷぷ」
片手を口元に持ってきて、挑発するような、笑い・・・もう慣れた。

「それじゃ、ランスロットの事よろしくね」
身をひるがえして、居なくなった。


頭が痛いし、意識がボーっとする。不味いな~、こんなところで、倒れるわけにもいかない。さっきまで、紅蓮をオモチャにしていたから、意識は保てたけど、さすがに気を緩めると、体が斜めに倒れそうになる。

あと少しの辛抱だ!
これが、終わったら、少し休暇をもらおう、この王都を離れて・・・・南の港町で、のんびり過ごそう、そう、それが良い。
少しだけ気分が良くなった。

そして、ミズキは、宰相ギルバルド ・フォン・オーエングリムの執務室にもぐりこんだ、ミズキは、書類を探した。

他国とのやり取りの書類は、何処だ・・・今しかチャンスがない・・・わたしが、さらわれて安心しきって、緩んでいる今しか・・・。

「ん?」

宝石の散りばめられた、豪華な箱しっかりとカギがかかってある、でも大丈夫!昔ダリル兄さんに、宝箱の開け方を、教わっています。

今考えると、泥棒のスキル?だったんですねこれって!ダリル兄さん、叩きこまれたスキルは、シーフのスキルだったと、今初めて知りました。

喜ぶべきか、悲しむべきか?悩むところです。

簡単に開いた箱の中身は、大ビンゴです。

西の大陸のギアラム帝国の書状でした。

結構よからぬ事を、書いてありました。

これを持って、ランスロットとグレンの居る所へ。

「こんなとこにネズミが、いたのかよ」

後ろを振り向くと、片目がつぶれている、大柄な男が立っていました。

今更後悔しています。

何故、私は、グレンを連れてこなかったんでしょう。

ため息をついて、私は男に向かって、にやりと笑いました。

「ネズミじゃなくて、泥棒ですよ!そう言うあなたは、強盗ですか?」

「ネズミが、言いやがる・・・まぁ、暇だから教えてやるか?俺はな、ここで、番をすれば、無罪方面だ、そうだ」

なるほど、この男が、「重犯罪者リカルド」か、それにしても片目がつぶれているって、物騒な顔だな~。

ここで、正体をばらしても、私を生きて帰すつもりが無いと、言う事ですか?これはこれで、困りました。

「無罪放免になったら、あなたはどうするつもりですか?」

「そんな事、知って、どうする?今ここで、お前が、旅立っていくのに・・・天国にな!!」
言い終わる前に、重犯罪者リカルドは、剣を抜き、ミズキに向かって、振り下ろした。
ミズキはギリギリ、何とか、リカルドの剣をかわす事ができた。

ハァハァと大きく、息をする、

ミズキは熱で、かなり体が動かなくなっていた。

ダリル兄さんや、ジェリドさんの剣よりだいぶ遅いはずなのに、体の動きが鈍くて、やっとの思いで剣をかわす。

二度、三度、同じ動きをするリカルドに、ギリギリの間合いで、何とか剣先を、かわして行くが、頬に、腕に血が、滲んでいく。

精神力も体力も、底をついているミズキには、次の攻撃をかわせるか?
きっともうかわせないだろう、そんな事、自分が一番知っている。

もう、次は無い!!

最後の体力をつかって、リカルドの間合いに入り、思いっきり、ネコだましをはなった。

一瞬だけ、リカルドが惚けた瞬間に、リカルドの背後にある、扉から、執務室の部屋をでた。

部屋を出た瞬間、背中に痛みと、熱い熱を感じた。

ミズキは、そまま床に倒れた。

床に這いつくばって、腕を、手を動かして、リカルドから逃げたが、全然、前に進まない。
諦めかて、目を閉じようとして・・・・。

剣と剣が、ぶつかる音がしたが、ミズキは振り向く力も残っていなかった。

ミズキは暗闇の中へ、沈んでいった。


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