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ホタル

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2章

噂の貴婦人

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「こんにちわ~、ギルドのから薬師のイオル様のお届けものです」

キャサリンの笑顔と鈴の様な声で、あっさりと、王宮の門番は、書状も見ずに、キャサリンとジェリドを中へ通した。
門番は、ボーッと、いつまでも、キャサリンに見惚れていた。


まるで魅了の魔法「チャーム」を使ったかと思うくらいだ・・・。

嫌、本当に「チャーム」を使っていた。

キャサリンの指には「チャーム」と同じ魅了の力を持つ『ローレライの涙』の指輪をはめていた。

ジェリドはジッと『ローレライの涙』の指輪を見ていると、キャサリンは、「バレちゃった?」と言っていた。

「そんな怖い顔しないでよ。あんたには使わないから」

「・・・と言う事は、誰に使った?」
「ほほほほほ」
キャサリンは、笑って誤魔化そうとした。
「まさか、ダリルに使ったとか?」

「オホホホホ」
更に、笑って誤魔化していた。

ダリルに使ったのか・・・・・。
ジェリドは、キャサリンの誤魔化す笑いで、確信した。

そうしているうちに、ジェリドと、キャサリンは、王宮の衛士の休憩所兼食堂の前にたどり着き、人の少なくなった、食堂のテーブルに、さりげなく腰を下ろした。

ジェリドと、キャサリンは、休憩所で話しをしていた、4人の男達話に耳を傾ける様に座っていたが、男達の声は、食堂の方にも響いていた。

男達はどうやら日頃の鬱憤を、この場所で晴らしている様だった。


「おい、聞いたか?最近の陛下は毎夜、氷の貴婦人の所に通っているそうだぜ」

「聞いた、聞いた、何でも、夜の作法が相当良いらしいぜ、それに、最近は、医師のイオル様から、怪しい薬で、更に、陛下を骨抜きにしているって噂だ。」

「あ~あ!俺も骨抜きにされてみて~な!」

「ああ、俺なんて、こないだの夜勤に陛下があの氷の貴婦人の部屋からの出てくるの見たぜ、その時の陛下の顔は、『げっそり』していたぜ、羨ましいな~!俺も、『げっそり』になってみてー!」

「だけどよ、俺たち下っ端なんか、相手してくれるわけないねぇよ、こっちが、挨拶しても、あの女は、俺たちを見向きもしねえしよ」

「ふざけやがって、こっちは仕事で、あの女に頭下げるけどよ!一言何か言っても良いんじゃねえか?」

「そおだよな、俺なんて、氷の貴婦人が落としたハンカチを拾ってやったのに、礼すら言わねえどころか、見向きもしねえ、お高く留まりやがって、いつまでも、陛下の寵愛があるとは思うなよ、メス豚が」

男達の理不尽な不満は更にヒートアップしていった。

他人の悪口程、聞いていて気分の悪い物は無かった。
ジェリドとキャサリンは、席を立とうとしたところ。

「おいおい、相手にすらして貰えないからって、こんなところで、油売って、良いご身分だな・・」
不機嫌な声が、食堂に響いた。

不機嫌な声の主は、戸口に立っていた男だった。然も男は、見下した様な目で、男達を見下ろしていた。

食堂で休憩していた、衛士たちは、一斉に声の方へと視線を向けた。


「はぁ?なんだ、お前?」1人の男の不機嫌に言った。
もう1人の男は、目を細め戸口に立っている男を見ると「おい、あれ、氷の貴婦人の護衛の、グレンだぜ」と、小声で、仲間同士が、ひそひそと、なのか話しあいだした。

「へぇ~、あれが、噂の、女装趣味のグレンさまかよ?」

男達は、ここぞとばかりに、不満のはけ口として、グレンに攻撃を集中し出した。

「ここにはドレスがございませんので、ほかを当たってくださいませんか?女装趣味のグレン筆頭衛士様よ!!」

「「ヒヒヒヒ」」
周りの男達も、下衆な笑いで、グレンを煽っているのは、端から見ても明らかだった。

「・・・・・言いたい事は、それだけか?」
さっきよりも低い声が、部屋中に響いた。

グレンの気迫に、押されてるのを認めたく無い男達は、更に不満をぶつける様に言ってきた。

「どおやって、取り入ったんだよ。あの女のお陰で、死刑を免れたんだろ?然も、筆頭衛士の称号まで手に入れて、あれは、聖騎士に唯一対抗出来る称号だ。テメエにはもったい無い代物だ」
ふざけんじゃねえと言わんばかりに言った。


「まあ、ここで、油を売っているお前達には無理だろうがな」

「何言いやが・・・・る」
「上級大将・・・」
「おいどうする・・」
上級大将の登場で、一気に顔色が悪く成る男達は、そそくさと、詰所を出て行った。

ジェリドとキャサリン男達の後を追う様に、すぐに、食堂を出て行った。

「本当にこんな警備で大丈夫なのかしら?」

「・・・・・そんなのどうでも良い、早く荷物を届けて、ミズキの所に行くぞ」

「・・だから、あんたを連れてきたくなかったのよ」

「・・・・」

ジロリとキャサリンをジェリドは睨んだ。

「分ったわよ、確か、こっちよ、薬師のイオルの部屋よ」
王宮の奥まった一角の、さらに奥に、温室と、見たことがない植物の毒毒しい花が、咲き乱れている。
きっと、ここで間違いない。

そして、温室の方で、人の声がしていた。キャサリンとジェリドは、温室の方へと足を向けた。

「違う、違う、そうじゃ無いわ、そこの薬品と、この薬品とその薬品を混ぜてだな、良くかき混ぜるんじゃぞ!」
「お師匠様、こうですか?」
「うん、うまい、うまい、そしてこれが、肝心じゃ!」
と言って、黄色くて丸いものを、鍋の中に居れた。

「そこで、一気にまで混ぜる」
「こうですか、お師匠様」
「そう、その調子じゃ!オルバ、手を抜くんじゃないぞ」
「はい、お師匠様!・・でも、腕の力がもう入りません・・・あっ」
オルバの手から、鍋が、落ちた。

「オルバ、なんて・・・なんて・・・もったいない・・事を・・・」
イオルは、落ちた鍋を、いいえ、こぼれた物を、大事そうに手に取った。

「おい、材料は、酢と、油と、卵黄だったな、塩と、コショウも有るな」
ジェリドは手際よく、酢と油を攪拌かくはんさせ、そこに、卵黄を入れて、一気にかき回し。最後に塩とコショウで、味を付けた。
「これで、出来上がりだ」

「おぉぉぉぉぉ、これじゃ、これじゃ、『まよねえず』じゃ、お前さん、どうして、コレの作り方を知っておる?」

「前に俺も作らされた事があってな、作り方を覚えていただけだ」
ジェリドは、懐かしいなと言って、鍋を、オルバに渡した。

「儂は、初めてこの、『まよねえず』を野菜と食べた時は、あまりのうまさに、腰を抜かしそうになったぞい」

「お師匠様は、大の野菜嫌いでしたからね、グレンさんからもらった。氷の貴婦人のレシピ通りに、料理長に作ってもらった、『まよねえず』は画期的でしたね。お師匠様が、野菜をちゃんと食べてくれるようになって、僕も、大助かりです」

「それは、すまんかったの?オルバ」
少しだけイジケル、薬師のイオルであった。

「おい、これを教えたのは、『氷の貴婦人』と言ってなかったか?」

「・・・なまえ、名前はなんていうんだ」
「・・・なまえ?ですか?誰の?」

「氷の貴婦人の名前だよ!」
「知りませんが?」

「・・・・そうか、すまなかったな」

「お役に立ちませんで、済みませんでした」

「キャサリン、荷物を置いて行くぞ!」

「待ちなされ、『まよねえず』のお礼もまだだったのう?

「・・・いいや、急いでいるから別に・・」

「氷の貴婦人に合わせてやると言ってもかの?名前が知りたかったら、直接本人に聞けばいい」

「どうする?お若いの?」

「・・・よろしく頼む」

「決まりじゃ、オルバ、そろそろ行くかの?」

「はい、お師匠様」



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