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2章
忌の紅目
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ミズキが死体だと思っていた紅い瞳の男は鋭い目つきで此方を睨んでいた。
「・・・今更・・・なんの様だ・・・・・何しに来た・・・俺を殺しに来たのか?・・・殺せ!・・・こんな所で鎖に繋がれれば、お前らの思い通りになると思ったか?残念だったな・・・お前らのいいなりにはなるつもりは無い・・・殺せ!」
鎖に繋がれた男はミズキとジェリドを睨んだ。
どうやらミズキとジェリドを何者かと勘違いをしている様だった。
そんな男にミズキは興味を持った。
この男面白い。
昔出会った頃のグレンを思い出す。
そう言えば、牢屋中のグレンも同じ目をしていたわね。
グレンは紅い目では無かったけど、瞳の輝きが同じだった。
本当に面白い。
ミズキは男の様子を観察した。
年齢的にも体格的にも、リカルドと同じくらいだろうか?髪の色は金色でやはり目の色は真紅の瞳 。
本当に綺麗で吸い込まれそうな瞳。
こないだの少年の瞳も綺麗な真紅の目をしていた。
殺されそうになったのに、あの瞳は魔力がある様にミズキの心を掴んで離さなかった。
もう一度あの少年に会いたいとミズキは思った。
会って、話がしたい。
この男は、あの少年の事を知っているだろうか?
同じ紅い瞳だ。きっと知っているだろう?
この世界に来て紅い瞳の人間など見た事が無かった。
それに、この国の人間は紅い瞳を『忌の紅目』と忌嫌っている。
だからきっと、紅い瞳の人間だけのネットワークがあるはずだ。
そして紅い瞳の少年に会って話を聞こう!
何故?私が狙われているのかを!
だからこの男を助けよう!
男は何日も水も食糧も口にしていないのだろう。唇が乾燥してひび割れている、しかも急激に痩せたせいか、頬はこけ綺麗な紅い瞳の周りは窪んでいる。
そして男はジェリドの方を見てニヤリと笑みをこぼした。
何故?紅い瞳の男はジェリドの方を見て笑みを浮かべるのか?と、ミズキはジェリドの方に目をやると、静かに剣を抜いたジェリドが立っていた。
いつの間にか剣を抜いた?ジェリドさん。
鞘から剣が抜ける音が聞こえなかった事に驚いた。
「・・・ああ、言われなくても殺してやるよ、ミズキに手をかけた事を、あの世で懺悔しろ『忌の紅目』」
淡々と話す口調とは裏腹にジェリドが殺意を感じた。
あの嫌みしか言わないジェリドが、こんな殺気をまとっているを初めて目にしたミズキは、声が出なかった。
ジェリドの殺気に体がカタカタと震えてくる。
この人本当にジェリドさん?
イヤイヤイヤ、そんな事を考える暇があれば体を、頭を動かせ!ミズキ!なんとしてでも、紅い瞳の男を助けるのだ。
それに紅い瞳の男は、幽霊では無かったのだから、大丈夫!
怖くない!怖くない!
ミズキは自分に言い聞かせる。
でも、いかんせん腰が抜けて、体を引きずる様にして、紅い目の男とジェリドの間に入った。
「ジェリドさん剣を鞘に閉まって下さい。そんな物騒な物今は必要ありません」
「なに馬鹿な事を言っているミズキこいつらはお前を殺そうとしたんだぞ!」
「・・・鎖に繋がれた人を斬って嬉しいですか?ジェリドさん?」
ミズキの言葉にジェリドは苦虫を潰した様な顔になった。
「だが・・・こいつらはお前を!」
「私を殺そうとした人はこの人ではありませんよ、ジェリドさん」
「・・・確かにそうだが・こいつも紅い目をしている!だから彼奴の仲間だ」
「ジェリドさんらしくありませんね!憶測で判断する人だったんですか?ジェリドさんは」
「・・・・・・だが、こいつらは人殺しの集団だ。ミズキ」
「ジェリドさん本当にそう思っているなら、私はジェリドさんを軽蔑します」
「人殺しの集団なのは間違い無い」
「それを証明するものはなんですか?」
「・・・噂だ」
「噂だけで判断したという事ですか?」
「ああそうだミズキ!それにこいつの仲間にお前も殺されそうになった事を忘れたのか?・・・どうしてそいつを庇うんだ、ミズキ」
「庇ってなんかいませんよジェリドさん」
ミズキは大きなわざとらしいため息を付いて更に話した。
「・・・ジェリドさん?私の噂も知っていますよね!『ランスロットの愛人』」
ミズキの言葉を聞いてジェリドの顔が歪んだ。
ジェリドの表情を見てミズキは更に話を進めた。
「ジェリドさんはこの噂も信じているのですか?」
「・・・氷の貴婦人はランスロット陛下の愛人だと最初は信じていた・・・。だがお前と再会して、お前が氷の貴婦人だと分かってからは、信じられなかった。俺の知っているお前はそんな事が出来る女じゃ無い。・・・だってそうだろう?ミズキ!そんな噂!信じるわけが無いだろう!バカバカしい」
吐き捨てる様にジェリドが言うと、ミズキはホッとした様にジェリドに向けて微笑んだ。
「良かった。ジェリドさんがそんな噂を信じないでいてくれて」
ミズキがジェリドに向ける微笑みはジェリドをミズキに釘付けにするのに十分だった。
あぁ、俺はこの笑顔がとても好きだ。
この笑顔を守るためなら、何だって出来る。何だって。
ミズキ!お前のためならなんでもしよう!
ミズキは熱く見つめるジェリドを見つめ返す事が出来ず視線を背けて話し出した。
「そっ、そうです。噂はあくまで噂です。全て信じる事は出来ません、噂の9割は妬みと嫉妬で出来上がっているからです」
「・・・だから、この男も噂とは違うと?」
ジェリドは剣を鞘に納めながらミズキに言った。
「それは分かりません」
ミズキは首を横に振った。
「今言った事は何だったんだミズキ!」
「可能性の話ですよジェリドさん」
ミズキは真っ直ぐにジェリドを見つめた。
「・・・それで、俺にどうしろと」
「彼をギルドに連れて行って下さいそしてちゃんとした治療を受けさせて下さい」
「何を言うかと思えば、そんな事出来るわけ無い」
「お願いしますジェリドさん」
深く、ミズキは頭を下げた。
「・・・お前はこれからどうする」
「私は計画通りに屋敷に潜入しますよ」
「俺が帰って来るまで待てないか?」
「ハイ、待てません」
ミズキはニッコリと答える。
「どうしてお前は何時も、何時も無茶ばかりするんだ」
ジェリドはため息と一緒に呟いた。
「・・・分かった!俺はこいつを洞窟の外まで連れて行く、その後は直ぐに戻って来る。それまでここで大人しく待ってろ!これが、最大の譲歩だいいなミズキ」
「ハイわかりましたジェリドさん」
鎖は劣化が激しく、ジェリドの短刀でで簡単に千切れた。
ジェリドは紅い瞳の男を担ぐと、元来た道へと帰って行った。
ミズキとジェリドのやり取りを見ていた男は、「お前らバカか?」と言って気を失った。
「お前の為じゃ無いミズキの為だ」
聞こえないであろう!男に向かってジェリドは言った。
「・・・今更・・・なんの様だ・・・・・何しに来た・・・俺を殺しに来たのか?・・・殺せ!・・・こんな所で鎖に繋がれれば、お前らの思い通りになると思ったか?残念だったな・・・お前らのいいなりにはなるつもりは無い・・・殺せ!」
鎖に繋がれた男はミズキとジェリドを睨んだ。
どうやらミズキとジェリドを何者かと勘違いをしている様だった。
そんな男にミズキは興味を持った。
この男面白い。
昔出会った頃のグレンを思い出す。
そう言えば、牢屋中のグレンも同じ目をしていたわね。
グレンは紅い目では無かったけど、瞳の輝きが同じだった。
本当に面白い。
ミズキは男の様子を観察した。
年齢的にも体格的にも、リカルドと同じくらいだろうか?髪の色は金色でやはり目の色は真紅の瞳 。
本当に綺麗で吸い込まれそうな瞳。
こないだの少年の瞳も綺麗な真紅の目をしていた。
殺されそうになったのに、あの瞳は魔力がある様にミズキの心を掴んで離さなかった。
もう一度あの少年に会いたいとミズキは思った。
会って、話がしたい。
この男は、あの少年の事を知っているだろうか?
同じ紅い瞳だ。きっと知っているだろう?
この世界に来て紅い瞳の人間など見た事が無かった。
それに、この国の人間は紅い瞳を『忌の紅目』と忌嫌っている。
だからきっと、紅い瞳の人間だけのネットワークがあるはずだ。
そして紅い瞳の少年に会って話を聞こう!
何故?私が狙われているのかを!
だからこの男を助けよう!
男は何日も水も食糧も口にしていないのだろう。唇が乾燥してひび割れている、しかも急激に痩せたせいか、頬はこけ綺麗な紅い瞳の周りは窪んでいる。
そして男はジェリドの方を見てニヤリと笑みをこぼした。
何故?紅い瞳の男はジェリドの方を見て笑みを浮かべるのか?と、ミズキはジェリドの方に目をやると、静かに剣を抜いたジェリドが立っていた。
いつの間にか剣を抜いた?ジェリドさん。
鞘から剣が抜ける音が聞こえなかった事に驚いた。
「・・・ああ、言われなくても殺してやるよ、ミズキに手をかけた事を、あの世で懺悔しろ『忌の紅目』」
淡々と話す口調とは裏腹にジェリドが殺意を感じた。
あの嫌みしか言わないジェリドが、こんな殺気をまとっているを初めて目にしたミズキは、声が出なかった。
ジェリドの殺気に体がカタカタと震えてくる。
この人本当にジェリドさん?
イヤイヤイヤ、そんな事を考える暇があれば体を、頭を動かせ!ミズキ!なんとしてでも、紅い瞳の男を助けるのだ。
それに紅い瞳の男は、幽霊では無かったのだから、大丈夫!
怖くない!怖くない!
ミズキは自分に言い聞かせる。
でも、いかんせん腰が抜けて、体を引きずる様にして、紅い目の男とジェリドの間に入った。
「ジェリドさん剣を鞘に閉まって下さい。そんな物騒な物今は必要ありません」
「なに馬鹿な事を言っているミズキこいつらはお前を殺そうとしたんだぞ!」
「・・・鎖に繋がれた人を斬って嬉しいですか?ジェリドさん?」
ミズキの言葉にジェリドは苦虫を潰した様な顔になった。
「だが・・・こいつらはお前を!」
「私を殺そうとした人はこの人ではありませんよ、ジェリドさん」
「・・・確かにそうだが・こいつも紅い目をしている!だから彼奴の仲間だ」
「ジェリドさんらしくありませんね!憶測で判断する人だったんですか?ジェリドさんは」
「・・・・・・だが、こいつらは人殺しの集団だ。ミズキ」
「ジェリドさん本当にそう思っているなら、私はジェリドさんを軽蔑します」
「人殺しの集団なのは間違い無い」
「それを証明するものはなんですか?」
「・・・噂だ」
「噂だけで判断したという事ですか?」
「ああそうだミズキ!それにこいつの仲間にお前も殺されそうになった事を忘れたのか?・・・どうしてそいつを庇うんだ、ミズキ」
「庇ってなんかいませんよジェリドさん」
ミズキは大きなわざとらしいため息を付いて更に話した。
「・・・ジェリドさん?私の噂も知っていますよね!『ランスロットの愛人』」
ミズキの言葉を聞いてジェリドの顔が歪んだ。
ジェリドの表情を見てミズキは更に話を進めた。
「ジェリドさんはこの噂も信じているのですか?」
「・・・氷の貴婦人はランスロット陛下の愛人だと最初は信じていた・・・。だがお前と再会して、お前が氷の貴婦人だと分かってからは、信じられなかった。俺の知っているお前はそんな事が出来る女じゃ無い。・・・だってそうだろう?ミズキ!そんな噂!信じるわけが無いだろう!バカバカしい」
吐き捨てる様にジェリドが言うと、ミズキはホッとした様にジェリドに向けて微笑んだ。
「良かった。ジェリドさんがそんな噂を信じないでいてくれて」
ミズキがジェリドに向ける微笑みはジェリドをミズキに釘付けにするのに十分だった。
あぁ、俺はこの笑顔がとても好きだ。
この笑顔を守るためなら、何だって出来る。何だって。
ミズキ!お前のためならなんでもしよう!
ミズキは熱く見つめるジェリドを見つめ返す事が出来ず視線を背けて話し出した。
「そっ、そうです。噂はあくまで噂です。全て信じる事は出来ません、噂の9割は妬みと嫉妬で出来上がっているからです」
「・・・だから、この男も噂とは違うと?」
ジェリドは剣を鞘に納めながらミズキに言った。
「それは分かりません」
ミズキは首を横に振った。
「今言った事は何だったんだミズキ!」
「可能性の話ですよジェリドさん」
ミズキは真っ直ぐにジェリドを見つめた。
「・・・それで、俺にどうしろと」
「彼をギルドに連れて行って下さいそしてちゃんとした治療を受けさせて下さい」
「何を言うかと思えば、そんな事出来るわけ無い」
「お願いしますジェリドさん」
深く、ミズキは頭を下げた。
「・・・お前はこれからどうする」
「私は計画通りに屋敷に潜入しますよ」
「俺が帰って来るまで待てないか?」
「ハイ、待てません」
ミズキはニッコリと答える。
「どうしてお前は何時も、何時も無茶ばかりするんだ」
ジェリドはため息と一緒に呟いた。
「・・・分かった!俺はこいつを洞窟の外まで連れて行く、その後は直ぐに戻って来る。それまでここで大人しく待ってろ!これが、最大の譲歩だいいなミズキ」
「ハイわかりましたジェリドさん」
鎖は劣化が激しく、ジェリドの短刀でで簡単に千切れた。
ジェリドは紅い瞳の男を担ぐと、元来た道へと帰って行った。
ミズキとジェリドのやり取りを見ていた男は、「お前らバカか?」と言って気を失った。
「お前の為じゃ無いミズキの為だ」
聞こえないであろう!男に向かってジェリドは言った。
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