異世界へようこそ

ホタル

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2章

指輪の光

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『大人しく待ってろ!これが、最大の譲歩だいいなミズキ』

ジェリドはそう言って紅い目の男を担いで暗闇に消えていった。

男を担いだその手の小指が光っている。
反射する光も無いのに、ジェリドの小指の指輪が薄っすらとだが確かに指輪が光っていた。


自ら光る指輪。

その光を見るとミズキの心がむず痒い気持ちになった。

小さい頃、オネショがバレて母親が見て見ぬフリをした時の様なむず痒い感じ。

居た堪れない。

恥ずかしい気持ちになる。


ジッと見つめていた光は、ジェリドが暗闇に消えるまで、ジェリドの居場所を教えるように光っていた。


光がジェリドと一緒に暗闇に飲み込まれると、ランタンの光だけがミズキを照らしていた。

※※

洞窟の入り口に着くと気を失った男を下ろしジェリドはそのまま森の中に入って行き、すぐに戻ってきた。
手には皮袋の水筒を携えて。

気を失った男の乾いた口元に水を一滴垂らし少し湿った唇が少し開く、そこにもう一滴水を垂らすと紅い目が瞼から覗いた。

意識が戻った男の目は目の前に有る水筒に口を付けて飲んだ。

「ゆっくり、ゆっくり飲め」ジェリドは貪るように飲む男に言ったが男は夢中になって水を飲んで!むせた。

「だから言っただろう」
呆れる様な口振りでジェリドは言った。

「・・・すまん・・・・助かった」
男はむせながらもジェリドに礼を言うと立ち上がりヨロヨロと暗闇に消えていった。


男を見送ったジェリドはまた洞窟に入っていった。

ミズキの元へ。

もう二度と手放すつもりは無かった。


真実を知って、益々ミズキへの想いは膨らみみ続けている。

後は、ミズキの口から真実を、自分の調べた情報を照らして合わせるだけだった。
後もう少しだ。

もう少し!もう少しの辛抱だ。

ランスロットから取られたミズキは必ず取り戻す。

騙され続けた5年間も忘れられずに想っていた。
今思えば、『愛しい』と思う気持ちを『憎しみ』という隠れ蓑にしてミズキへの想いをユックリと確実に温めていた。


早くミズキ元へ。

※※

「早く戻って来ないかな?」
ジェリドと別れて、5分位経ったのだろうか?
それとも、もっと時間が経ったのだろうか?
物凄く長く・・・長く感じる。

ポケットの中にあった懐中時計を見たが、ジェリドと別れた時間が分からないから意味が無かった。

大人しく待っていますよ!ジェリドさん!!だから早く戻ってきって。

不安!心もとない!寂しいし!
今まで感じた事のない、いろんな感情をミズキを支配する。

今までは1人で居る事なんて何とも無かった。

だが、今は違う。
ジェリドさんが側に居なくて寂しい!と思ってしまう。
不安になる。
早く顔を見たい、伸びきった毛むくじゃらで触ると柔らかい髭!

あの髭に触りたい。

そして、ジェリドはミズキの事を調べ上げたのだろう!『全てを許す』と言ってくれたジェリドに友情以上のものを感じた。

ミズキは彼には感謝している。
ジェリドとはこれからもいい友人でいられる。私が元に世界に帰るその日にきっとジェリドは喜んでくれるだろう。

それにしても、ただジッとジェリドさんを待つのは苦痛でしか無い。
早く戻ってこい。
今すぐ帰ってこい!
だって!

静かなんだもの・・・。
・・・メッチャ静かなんです。
・・・どうしてこんなに静かなんだ。
・・・嫌だな~。この雰囲気!!
こんな暗闇の中に・・・と言ってもジェリドさんのランタンを置いていってくれたからそんなに暗く無いけどね・・・。

・・・・・・。
正直に言おう!
私は寂しいのだ。
当たり前でしょう?こんな所に2人きり!

この場所に居るのは、私とミイラ!2人だけなのよ!

ミズキは、敢えてミイラを1人として考えた。

屍であっても、元は人間だ。差別してはいけない!差別しては・・・いけない。
けど、・・・・気になる・・・メッチャ気になる。
ミイラの存在を背中イッパイに感じる。
だっ、大丈夫あいつは動かないし動きようがない!屍だから。

カラン

もしかして、まさか・・・ミイラが・・・。
壊れたブリキの様にミズキの首がギギギとミイラに向いた。

然もミズキの目は恐怖で血走っていた。

・・・真っ暗で何も無い。
ミズキの頬がヒクリと引きつった。

ここに居てはいけない!

ジェリドさんには悪いけど先に行きます。

アディオス!ジェリドさん!流石にここでは待てません。

私の精神衛生上よろしくありません。
お化けは小さい頃から怖いんです。

ミズキはランタンを持ってミイラを後にした。

あっという間に屋敷の隠し扉の前に着いた。
ミズキはユックリと扉の鍵穴を後探し、ランタンをかざした。

コレはいける。
楽勝ですね~。

簡単にドアが開いた。
ドアを開けると暖炉の中に出た。
どうやらこの部屋には誰もいない様だ。
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