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2章
失いたく無いもの3
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ミズキとジンがこの部屋にきて、3日が経った。
この3日でミズキの背中の傷は跡形も無く消えた。
封魔の黒真珠が体の隅々まで浸透している。
ジェリドはこれで良かったと思っている。
女の子の身体に傷なんて無いにこした事はない。
目が覚めたミズキは傷が薄皮一枚で繋がっていた事に驚いていた。
2日目には、完全に傷は消え跡形も無くなっていた。
更に3日目には傷口が引きつる痛みも無くなっていた。
流石にミズキはジェリドを疑いだした。
こんな事有り得ないと。
「ジェリドさん何したの?」
目が座ったミズキが訝しげにジェリドを問い詰めてきた。
どうやらミズキはダリルや他の連中より俺を疑っている様だ。
背中の傷が治ったのだから気にする事は無いのにと思って、ジェリドはミズキに笑って薬を飲ませたと言ったら、ミズキは素直に信じてきた。
そして『ありがとう』とか『お薬高かったでしょう?』とか言って、何度もお辞儀をして、久し振りにミズキの屈託のない笑顔が見られた。
ダリルでは無く、自分に向けられた柔らかい笑顔はジェリドの心を暖かい鎖で戒めていく。
余りの心地良さに癖になりそうだ。
この笑顔は俺だけのものにしたい。
誰にも取られたく無い。
欲が膨れ上がる。
ミズキをベッドの中でぐずぐずに甘やしたらどんな顔をするだろうか?
そんな表情も見て見たい。
想像しただけで今すぐミズキに襲いかかりそうだ。
下半身が熱を持ち。
視線はいつの間にかミズキが入って行った部屋のドアに釘付けになっていた。
のどがゴクリと鳴る。
この状況はまずい。
非常に不味い状況だ。
頭を振って気持ちを切り替える。
煩悩の塊になる訳にはいかない。
ミズキはまだ怪我人だ・・・怪我人じゃ無くても、護衛の延長でミズキはここに居るだけ。
そうでなければ、今ここにミズキが来る事をダリル、キャサリン、ギルドの連中が黙っちゃいない。
実際・・・黙ってはいなかったが、・・・言いくるめる事は出来た。
『傷を負ったのは自分の責任だからミズキが回復するまで面倒は見る』
早くミズキを休ませたいからと言って、ジェリドはミズキを連れてサッサとその場からいなくなった。
だがキャサリンとミルディンは直ぐにジェリドの跡を追ってきた。ジンを連れて。
ミズキがジンを引き取ったのだから一緒に連れて行けとキャサリンは言って、少しためらって、言いにくそうに「傷が開いただけのミズキにアレを飲ませて、あんたそれで良いの?」と言った。
キャサリンの問いにジェリドは気がついた。ミズキが死にそうになっている事を、キャサリンもダリルも気が付かなかったのだ。
「あれがただの傷が開いただけだと思っていたのか?俺が治癒魔法を使っても傷が閉じなかったんだぞ」
その言葉にミルディンとキャサリンは驚いてミズキの顔を見た。
「そうですね確かにミズキ様はここ最近ご自分の命を粗末に扱っている様に思われましたが・・・一体ミズキ様に何があったのでしょうか」
少し考えた様子のミルディンは頭を振り『やはりわかりませんね。まるで死にたがっている様にしか思えません。死にたがるなんて・・・こんな事・・・』と言ってキャサリンを連れて元来た道を戻っていた。
ミルディンの言葉が気になったが、無茶ばかりするミズキを誰かが守ってやらないとずっと思っていた。
今回だって前々から無理をしていたミズキの体は悲鳴をあげる様に熱があった。
それなのに自分の体の事を考えずにエマを救出に行ったのだ。
挙句に傷が開いて自分の力ではもう生命を維持する事も出来ない。
当然の結果だ弱りきっているミズキの身体に体力などある訳がない。
ミズキの蒼白な顔を見た瞬間、ジェリドは自分の持っているもの全てをミズキに差し出す事を決めた。
ミズキの耳にはジェリドが送った封魔の黒曜石がある。ジェリドの血が混ぜてあったコレをミズキが飲めばジェリドの生命力を分け与える事が出来る。
直ぐにミズキの口の中に無理矢理押し込んで封魔の黒曜石を飲ませるとミズキの顔色が少しずつ戻って来た。
これでミズキは助かる。
希望が確信に変わった。
ミズキをつなぎとめることが出来た事にジェリドはあんどした。
目を覚ました時ミズキにそばにいてやりたい。
そして今度こそミズキの信頼を得たい。
ミズキに再開してからジェリドの一貫した想い。
なけなしの理性を総動員し、なんとか衝動を抑える事が出来た。
ため息をつくと、ジェリドは片手に持っていたグラスの中身を見つめてから一気に呷った。
ジェリドの口から離れたグラスは、カランと中の氷と氷がぶつかる音がした。
「ふぅ」
琥珀色の液体は喉にくる刺激が心地よかった。
今まで家の中で酒など飲んだ事が無かったが・・・これもたまには良い。
ミズキのを作るつまみを肴に飲む酒は心と胃を満たしてくれる。
「・・・」
ジェリドはミズキの入って行った部屋の扉を見つめると顔が緩むのを自覚せずにはいられない。
ずっと続けば良い。
ジェリドは上を見上げて目を瞑った。
ずっと続けばいい・・・。
ジェリドはしばらく目を瞑っていると、ドアが開く音がして音の方へと顔を向けるとさっき寝たはずのミズキが出てきた。
パジャマ代わりのユッタリとした薄桃色のワンピースを着て、眠い目を擦ってドアから出てきたミズキは俺を見るなり
「ジェリドさんなんだまだ寝なかったの?」
ミズキが寝てから結構時間が経ってた様だ。
「結構時間が経っていたんだな、もう寝る」
ジェリドはグラスに残っていた琥珀色の液体を飲み干して、テーブルにグラスを置いた。
「ちょうどいいか」
ミズキはジェリドの向かいに座ると、さっきまで眠そうに目を擦っていたとは思えないほどハッキリとジェリドの顔を見た。
「どうした?眠れなくなったのか?」
「ジェリドさんにお願いがあるの元の世界に帰れる方法を探して欲しいの」
この3日でミズキの背中の傷は跡形も無く消えた。
封魔の黒真珠が体の隅々まで浸透している。
ジェリドはこれで良かったと思っている。
女の子の身体に傷なんて無いにこした事はない。
目が覚めたミズキは傷が薄皮一枚で繋がっていた事に驚いていた。
2日目には、完全に傷は消え跡形も無くなっていた。
更に3日目には傷口が引きつる痛みも無くなっていた。
流石にミズキはジェリドを疑いだした。
こんな事有り得ないと。
「ジェリドさん何したの?」
目が座ったミズキが訝しげにジェリドを問い詰めてきた。
どうやらミズキはダリルや他の連中より俺を疑っている様だ。
背中の傷が治ったのだから気にする事は無いのにと思って、ジェリドはミズキに笑って薬を飲ませたと言ったら、ミズキは素直に信じてきた。
そして『ありがとう』とか『お薬高かったでしょう?』とか言って、何度もお辞儀をして、久し振りにミズキの屈託のない笑顔が見られた。
ダリルでは無く、自分に向けられた柔らかい笑顔はジェリドの心を暖かい鎖で戒めていく。
余りの心地良さに癖になりそうだ。
この笑顔は俺だけのものにしたい。
誰にも取られたく無い。
欲が膨れ上がる。
ミズキをベッドの中でぐずぐずに甘やしたらどんな顔をするだろうか?
そんな表情も見て見たい。
想像しただけで今すぐミズキに襲いかかりそうだ。
下半身が熱を持ち。
視線はいつの間にかミズキが入って行った部屋のドアに釘付けになっていた。
のどがゴクリと鳴る。
この状況はまずい。
非常に不味い状況だ。
頭を振って気持ちを切り替える。
煩悩の塊になる訳にはいかない。
ミズキはまだ怪我人だ・・・怪我人じゃ無くても、護衛の延長でミズキはここに居るだけ。
そうでなければ、今ここにミズキが来る事をダリル、キャサリン、ギルドの連中が黙っちゃいない。
実際・・・黙ってはいなかったが、・・・言いくるめる事は出来た。
『傷を負ったのは自分の責任だからミズキが回復するまで面倒は見る』
早くミズキを休ませたいからと言って、ジェリドはミズキを連れてサッサとその場からいなくなった。
だがキャサリンとミルディンは直ぐにジェリドの跡を追ってきた。ジンを連れて。
ミズキがジンを引き取ったのだから一緒に連れて行けとキャサリンは言って、少しためらって、言いにくそうに「傷が開いただけのミズキにアレを飲ませて、あんたそれで良いの?」と言った。
キャサリンの問いにジェリドは気がついた。ミズキが死にそうになっている事を、キャサリンもダリルも気が付かなかったのだ。
「あれがただの傷が開いただけだと思っていたのか?俺が治癒魔法を使っても傷が閉じなかったんだぞ」
その言葉にミルディンとキャサリンは驚いてミズキの顔を見た。
「そうですね確かにミズキ様はここ最近ご自分の命を粗末に扱っている様に思われましたが・・・一体ミズキ様に何があったのでしょうか」
少し考えた様子のミルディンは頭を振り『やはりわかりませんね。まるで死にたがっている様にしか思えません。死にたがるなんて・・・こんな事・・・』と言ってキャサリンを連れて元来た道を戻っていた。
ミルディンの言葉が気になったが、無茶ばかりするミズキを誰かが守ってやらないとずっと思っていた。
今回だって前々から無理をしていたミズキの体は悲鳴をあげる様に熱があった。
それなのに自分の体の事を考えずにエマを救出に行ったのだ。
挙句に傷が開いて自分の力ではもう生命を維持する事も出来ない。
当然の結果だ弱りきっているミズキの身体に体力などある訳がない。
ミズキの蒼白な顔を見た瞬間、ジェリドは自分の持っているもの全てをミズキに差し出す事を決めた。
ミズキの耳にはジェリドが送った封魔の黒曜石がある。ジェリドの血が混ぜてあったコレをミズキが飲めばジェリドの生命力を分け与える事が出来る。
直ぐにミズキの口の中に無理矢理押し込んで封魔の黒曜石を飲ませるとミズキの顔色が少しずつ戻って来た。
これでミズキは助かる。
希望が確信に変わった。
ミズキをつなぎとめることが出来た事にジェリドはあんどした。
目を覚ました時ミズキにそばにいてやりたい。
そして今度こそミズキの信頼を得たい。
ミズキに再開してからジェリドの一貫した想い。
なけなしの理性を総動員し、なんとか衝動を抑える事が出来た。
ため息をつくと、ジェリドは片手に持っていたグラスの中身を見つめてから一気に呷った。
ジェリドの口から離れたグラスは、カランと中の氷と氷がぶつかる音がした。
「ふぅ」
琥珀色の液体は喉にくる刺激が心地よかった。
今まで家の中で酒など飲んだ事が無かったが・・・これもたまには良い。
ミズキのを作るつまみを肴に飲む酒は心と胃を満たしてくれる。
「・・・」
ジェリドはミズキの入って行った部屋の扉を見つめると顔が緩むのを自覚せずにはいられない。
ずっと続けば良い。
ジェリドは上を見上げて目を瞑った。
ずっと続けばいい・・・。
ジェリドはしばらく目を瞑っていると、ドアが開く音がして音の方へと顔を向けるとさっき寝たはずのミズキが出てきた。
パジャマ代わりのユッタリとした薄桃色のワンピースを着て、眠い目を擦ってドアから出てきたミズキは俺を見るなり
「ジェリドさんなんだまだ寝なかったの?」
ミズキが寝てから結構時間が経ってた様だ。
「結構時間が経っていたんだな、もう寝る」
ジェリドはグラスに残っていた琥珀色の液体を飲み干して、テーブルにグラスを置いた。
「ちょうどいいか」
ミズキはジェリドの向かいに座ると、さっきまで眠そうに目を擦っていたとは思えないほどハッキリとジェリドの顔を見た。
「どうした?眠れなくなったのか?」
「ジェリドさんにお願いがあるの元の世界に帰れる方法を探して欲しいの」
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