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2章
迷走
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「ジェリドさん・・・すけて・・た・・て」
暗闇に体を丸めて嗚咽交じりに助けを求めるミズキの姿が遠くに見える。
ミズキ!
こんな所にいたのか。良かった早く帰ろう。
探したんだぞ!このバカが!
ジェリドは手を精一杯伸ばしてミズキを捕まえようとするが、足がいつのまにかぬかるんだ泥の中に埋まって一歩も進めないでいた。
どういう事だ?
早く泣いてるミズキの手を取ってやらないと、人前では泣けない、あの泣き虫は放っておくといつまでも泣いている。
「ミズキ!こっちだ!こっちに来い!」
ジェリドはミズキの向かって手を伸ばす。
「ジェリドさん?ジェリドさんどこ?お願いジェリドさん!怖いの!側にいて!」
ジェリドの声が聞こえたミズキは立ち上がるとジェリドとは反対の方向へ向かって行った。
「ミズキ!そっちじゃない!」
いくら叫んでもジェリドの声はもう聞こえない様だった。
泣きながらジェリドを求めるミズキにいくら手を伸ばしてもミズキに近付くどころか泥の中へと沈んで行く。
沈み行く体がもどかしく早くミズキの側に行けないかと、気だけは焦りジェリドの足は更に深く埋まって行った。
ミズキがジェリドの姿を求めて一歩又一歩離れて行く。
もどかしい。
ミズキは確実にジェリドから離れて行く。
ミズキの進むその先に暗闇の中でも漆黒の闇が渦巻いていた。
ミズキには見えないのだろうか?
その禍々しい漆黒の闇に吸い込まれる様にミズキは離れるどころか吸い寄せられる様に近付いて行く。
とうとうミズキは漆黒の闇から手が伸びいとも簡単に捕まった。
その光景を見てジェリドは息を飲んだ。
ミズキを掴んだ手は一本だけではなく、無数の手が伸びてミズキを掴んで闇の中へと引きずり最後にはミズキは暗闇に消えて行った。
何度も助けてと叫んでいたが誰も助けが来ないと分かるとミズキの瞳がくすみ始め、最後にミズキが発した言葉は「ジェリドさんサヨナラ」の言葉だった。
そしてミズキの表情は闇の中へ消える瞬間笑っていた。
・・・それはもう、全てを諦めた様に。
信じられない光景にジェリドの口はわなわなと震えるだけで言葉を発する事が出来なかった。
・・・ミズキにとって、この世界に未練は無いかもしれない。
だからって、サヨナラは無いだろう?
そんな諦めの言葉を聞きたいんじゃ無い!最後まで助けを求めて欲しい。
諦めないでいてくれたら何があっても必ず助けに行く。
待っていてくれ頼むから。
大事何だよ!お前が!
懇願にも似た想いが溢れる。
小指の光る『開放の白真珠』を見つめると眩しいくらいに輝いていた。
光りにジェリド自身が包み込まれ余りの眩しさに目を瞑って再び目を開けると、宿の天井が見えた。
「夢か」
目が覚めたジェリドは自分の手が頬に触れると頬が濡れていることに気がついた。
睡眠は取れてるはずなのに疲れの取れない体を起こしてベッドから起き上がる。
窓を見るとまだ月が高く真夜中を示していた。
ミズキが誘拐されて3日が経っていた。
何の音沙汰もない。
痺れを切らしてミズキを探し出して、2日、ミズキのいる方角だけは『開封の白真珠』で分かるようになっていた。封魔の黒真珠が教えてくれるとゆう事か。
ジェリドは小指の真珠を見ると光り輝いていた。
今までの様なほんのり光るのではなく力強い光だ。
初めて強い光りを放つ指輪はジェリドを驚かせた。
もしかしてミズキの身に何かあったにだろうか?
慌ててジェリドは小指の指輪でミズキのいる方角を探る。
指輪は西に向けると点滅し出した。
ミズキは西の方角にいる。
ジェリドは真夜に宿を出て行った。
早く!もっと早くミズキの元へ。
※※
あの日もっと早く帰っていれば・・・。
後悔しか浮かばなかった。
ミズキが狙われていたのは知っていた。
だからジェリドは隠れ家の1つにミズキを連れてきた。
誰も居ない森の一軒家。
ジェリドがいれば誰が来ても直ぐに気付けるしミズキを逃す事も出来た。
ジンにはもしもの時の為に釣りに行くついでに逃げ道を教えて居たが、眠りの深いジンは気付かず寝ていた。
※※
ミズキがさらわれたその日。
白で統一した一室、そして贅を施した家具や調度品、その中に3人の男達に囲まれているジェリドがいた。
もうどれくらい経つだろうか?
ジェリドは同じ事を何度も何時間も話しあっている。
最初は会うつもりは無かった。
あったら最後連れ戻される。
正直面倒でしょうがない。
ジェリドには3人の男達には見覚えがあった。
聖騎士時代の同僚の顔ぶれにジェリドの表情は苦虫を潰した様に歪んでいた。
「何度も断っているだろう?もう帰ってくれ・・・俺に・・関わらないでくれ」
「・・・そうはいきません!貴方には是非帰って証言して貰います。貴方が国を追われた事全て」
「いまさらだ・・・俺はもう関係が無い」
「・・・そうはいきません」
「お前達がなんと言おうと戻るつもりが無い。帰ってくれ!俺は帰る」
「お待ちください」
「良い加減にしてくれ!」
最後は怒鳴る様に部屋を出て行った。
外に出ると日はだいぶ前に落ち、日付も変わろうとしていた。
今思えば、ミズキがさらわれると分かっていればかならずっと家にいれば良かったと後悔した。
暗闇に体を丸めて嗚咽交じりに助けを求めるミズキの姿が遠くに見える。
ミズキ!
こんな所にいたのか。良かった早く帰ろう。
探したんだぞ!このバカが!
ジェリドは手を精一杯伸ばしてミズキを捕まえようとするが、足がいつのまにかぬかるんだ泥の中に埋まって一歩も進めないでいた。
どういう事だ?
早く泣いてるミズキの手を取ってやらないと、人前では泣けない、あの泣き虫は放っておくといつまでも泣いている。
「ミズキ!こっちだ!こっちに来い!」
ジェリドはミズキの向かって手を伸ばす。
「ジェリドさん?ジェリドさんどこ?お願いジェリドさん!怖いの!側にいて!」
ジェリドの声が聞こえたミズキは立ち上がるとジェリドとは反対の方向へ向かって行った。
「ミズキ!そっちじゃない!」
いくら叫んでもジェリドの声はもう聞こえない様だった。
泣きながらジェリドを求めるミズキにいくら手を伸ばしてもミズキに近付くどころか泥の中へと沈んで行く。
沈み行く体がもどかしく早くミズキの側に行けないかと、気だけは焦りジェリドの足は更に深く埋まって行った。
ミズキがジェリドの姿を求めて一歩又一歩離れて行く。
もどかしい。
ミズキは確実にジェリドから離れて行く。
ミズキの進むその先に暗闇の中でも漆黒の闇が渦巻いていた。
ミズキには見えないのだろうか?
その禍々しい漆黒の闇に吸い込まれる様にミズキは離れるどころか吸い寄せられる様に近付いて行く。
とうとうミズキは漆黒の闇から手が伸びいとも簡単に捕まった。
その光景を見てジェリドは息を飲んだ。
ミズキを掴んだ手は一本だけではなく、無数の手が伸びてミズキを掴んで闇の中へと引きずり最後にはミズキは暗闇に消えて行った。
何度も助けてと叫んでいたが誰も助けが来ないと分かるとミズキの瞳がくすみ始め、最後にミズキが発した言葉は「ジェリドさんサヨナラ」の言葉だった。
そしてミズキの表情は闇の中へ消える瞬間笑っていた。
・・・それはもう、全てを諦めた様に。
信じられない光景にジェリドの口はわなわなと震えるだけで言葉を発する事が出来なかった。
・・・ミズキにとって、この世界に未練は無いかもしれない。
だからって、サヨナラは無いだろう?
そんな諦めの言葉を聞きたいんじゃ無い!最後まで助けを求めて欲しい。
諦めないでいてくれたら何があっても必ず助けに行く。
待っていてくれ頼むから。
大事何だよ!お前が!
懇願にも似た想いが溢れる。
小指の光る『開放の白真珠』を見つめると眩しいくらいに輝いていた。
光りにジェリド自身が包み込まれ余りの眩しさに目を瞑って再び目を開けると、宿の天井が見えた。
「夢か」
目が覚めたジェリドは自分の手が頬に触れると頬が濡れていることに気がついた。
睡眠は取れてるはずなのに疲れの取れない体を起こしてベッドから起き上がる。
窓を見るとまだ月が高く真夜中を示していた。
ミズキが誘拐されて3日が経っていた。
何の音沙汰もない。
痺れを切らしてミズキを探し出して、2日、ミズキのいる方角だけは『開封の白真珠』で分かるようになっていた。封魔の黒真珠が教えてくれるとゆう事か。
ジェリドは小指の真珠を見ると光り輝いていた。
今までの様なほんのり光るのではなく力強い光だ。
初めて強い光りを放つ指輪はジェリドを驚かせた。
もしかしてミズキの身に何かあったにだろうか?
慌ててジェリドは小指の指輪でミズキのいる方角を探る。
指輪は西に向けると点滅し出した。
ミズキは西の方角にいる。
ジェリドは真夜に宿を出て行った。
早く!もっと早くミズキの元へ。
※※
あの日もっと早く帰っていれば・・・。
後悔しか浮かばなかった。
ミズキが狙われていたのは知っていた。
だからジェリドは隠れ家の1つにミズキを連れてきた。
誰も居ない森の一軒家。
ジェリドがいれば誰が来ても直ぐに気付けるしミズキを逃す事も出来た。
ジンにはもしもの時の為に釣りに行くついでに逃げ道を教えて居たが、眠りの深いジンは気付かず寝ていた。
※※
ミズキがさらわれたその日。
白で統一した一室、そして贅を施した家具や調度品、その中に3人の男達に囲まれているジェリドがいた。
もうどれくらい経つだろうか?
ジェリドは同じ事を何度も何時間も話しあっている。
最初は会うつもりは無かった。
あったら最後連れ戻される。
正直面倒でしょうがない。
ジェリドには3人の男達には見覚えがあった。
聖騎士時代の同僚の顔ぶれにジェリドの表情は苦虫を潰した様に歪んでいた。
「何度も断っているだろう?もう帰ってくれ・・・俺に・・関わらないでくれ」
「・・・そうはいきません!貴方には是非帰って証言して貰います。貴方が国を追われた事全て」
「いまさらだ・・・俺はもう関係が無い」
「・・・そうはいきません」
「お前達がなんと言おうと戻るつもりが無い。帰ってくれ!俺は帰る」
「お待ちください」
「良い加減にしてくれ!」
最後は怒鳴る様に部屋を出て行った。
外に出ると日はだいぶ前に落ち、日付も変わろうとしていた。
今思えば、ミズキがさらわれると分かっていればかならずっと家にいれば良かったと後悔した。
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