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2章
ただ今誘拐中!
しおりを挟む「・・・この女本当に殺すのか?」
「当たり前だろ!生かしておいて何の得があるって言うだよ。それに殺すのは俺たちじゃない、雇い主が直々にこの女に為に特別に用意した殺し方をするらしいぜ」
「どんだけ恨みを買っているんだかな」
「ちがいない」
男の話し声が聞こえる。しかも笑いながら物騒な事を話している。
ふわふわと頭が思うように働かない。
働かない頭の中をグルグルと同じ事が回っていた。
あれだ、あれ!これは夢だ夢!
変な夢だな~。
どうせ夢ならもう少しマシな夢でも見たいな。
物騒な夢を見た後は、そう思うのは当然だと思う。
マシな夢ってどう言うもんだっけ?
・・・アレ?うーん良くわからないや。
熱々のおでんには辛子を付けてハフハフ言いながら食べる事だっけ?
それは違うなぁ~。
でも、美味しい夢だよね。
あれれ?本当に何だっけ?
あぁ~そうだ!ジェリドさんの髭を、一本づつ抜いて痛がるジェリドさんを指差して笑う事?
それも違うなぁ~。
でも面白そうだな ~。
あはは~。
なんか違う!
コレもなんか違う!
あははと笑ってお花畑で蝶々を追いかけてたりしている・・・コレは馬鹿が見る夢だ!
危ない!脳みそが誤作動を起こしている!
モノホンの馬鹿か私は!
私はいったい・・・アレ?
意識がだんだん覚醒すると、突然後頭部に痛みが走り嫌でも夢の住人から追い出された。
痛って~~~!
頭!痛って~~~!
ゴンと思いっきり頭を打ち付けて目が覚め、口に布を押し込められている事に驚いた。
急いで口の中に有る訳の分からない布を取ろうとして手を動かそうとしたが腕がピクリとも動かない。
それどころか手首が痛む。
ミズキは両手足を縛られて馬車の中に転がっていた。
「おい、女の目が覚めたぞ」
「あっ、ほんとだ」
目付きの悪い男とタレ目の男がミズキを覗きこんできた。
「ふごふご」(此処は?)と聞いたつもりが口の布のおかげで息が抜けるだけだった。
「おい見ろよアベルこの女、面白いよな!鼻の穴が大きくなったり小さくなったりしているぞ」
「本当だ面白れぇ~この鼻の穴に綿でも詰めるか?シンドリー」
「面白そうだけどやめておけ、そんな事したら本当に死んじまうだろ?」
「・・・なんだ面白くねぇの」
「仕事だ!仕方がないさ!生きて連れてこいだからな!そろそろ合流場所だぞ!早くこんな荷物!さっさと渡しちまおうぜ!アベル」
「それもそうだなシンドリー」
何が!『仕事だ!』よ!言いたい事言いやがって!
「ふごふご!ふごふご!ふごふごふご!」
手が縛られて、痛む頭を押さえることも口の布を取ることも出来ないミズキは、目の前の男達を口汚く罵った。
なんか虚しい。
相手の反応のない悪口って・・・・疲れるだけだわ。
それにしてもこの状況は不味いわね。
まさか誘拐されるとは・・・・。
※※
ミズキが拐われる数日前。
約束の時間まで待っていたが!いつまで経ってもミズキが現れる事は無かった。
痺れを切らしたグレンはホーエンハイムの別荘からエマの救出するとすぐにミズキをあのジェリドとか言う胡散臭い男から保護しようとした。だが思った以上にエマの衰弱が激しかった。どう考えても衰弱しているエマを薬師のイオルの元に連れて行かないと。
グレンとザラは急いでイオルの元に戻った。
そこで待っていたのはリカルドが片目から涙を溜めてエマをグレンから大事そうに受け取った。
「・・・エマ・・・良く無事で・・・」
愛しい子を腕の中に居るのを確認する様にエマをギュッと抱きしめると、エマの瞳が開き目の前に大好きな父親が居ると分かるとリカルドにしがみついた。
「父ちゃん!父ちゃん!怖かった!エマ怖かった」
「怖かったか?そうか!怖かったか!もう大丈夫だぞ父ちゃんがずっとエマの側にいるからなもう何処にもやらないぞ!嫁にもやらないからな!」
「うん父ちゃん!嫁にもいかない」
二人は涙を流しながら無事を喜んだ。
グレンとザラは『嫁にも行かせない』ってのはいかがなものかと思ったが。久々の親子対面で水をさすのはと思って黙っていた。
「涙の対面はそこら辺にしておいて早くそのお嬢ちゃんを見せてもらおうかの」
イオルは早く治療をと言って屋敷の中へ案内した。
「あぁあすまん、エマを宜しく頼む」
ユックリとリカルドはエマを抱えてイオルの屋敷に入っていった。
二人を見送ったグレンはコレでまたミズキを迎えに行ける。
踵を返そうと振り向く。
「グレン、コレはどういう事かな?」
ランスロットはにこやかにグレンを見つめていたが目は笑っていなかった。
「陛下どうしてここに?」
何故ここに?疑問と陛下に密告したであろうザラの顔を見た。
「すまんなグレン!恨むなよ!コレはお前の為だ」
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