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2章
計画
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普段は正気で満ちている綺麗なグレーの瞳が虚ろに彷徨っている。
更に瞳の色が鈍く光りミズキの瞳とジェリドの目の焦点が合うとジェリドはニヤリと笑う。
そんなジェリドの顔がミズキに恐怖を与える事をジェリドは気付いていない。
それどころか凄く楽しそうに笑う。
まるで腹を空かせた獣が獲物を見つけた時の様に笑う顔が、今のジェリドの笑顔と重なってミズキの瞳に映る。
ジェリドの瞳を見つめ返す事しか出来ないでいるミズキは恐怖を覚え困惑するばかりだ。
「・・・ジェリドさん?」
不安にミズキはジェリドの瞳を覗く。
ジェリドはいったい何を考えているの?
そしてミズキの目に映る彼の口が大きく見えて、今にも食べられそうに思うのは気のせいで済ませる事がミズキには出来なかった。
喰われる。本能が警告する。
獣の様に見えるこの人が本当にジェリドさん?
ジェリドさんの皮を被った狼の様に見える私はどうかしている。
『喰われる』だなんて思うのはジェリドさんに失礼だと思うのだが、頭からこの想いが消えない。
口は悪いがミズキの事を一番に考えてくれるジェリド。
ただ今ミズキの片思い絶賛中の人。
そして誰よりも家族の様に接してくれる人。
私にとっての家族。
この世界での家族。
ジェリドさんは妹の様に思っている私が告白、もしくはこの想いがバレたらきっと私に幻滅するだろう。
それだけは嫌。
ジェリドさんに嫌われたく無い。
ハッキリとした私の願い。
やっと5年前みたいに話が出来るようになったのに、想いを告白してこの関係をぶち壊せない。
『ジェリドさんが好き』と言う想いを腐って枯れるまで抱きしめて生きていく。
ジェリドは西のギアラムに帰るのだから。
計画通りに事が進んでいる。
計画が進めばジェリドとの別れも近く。
そう、ジェリドとの別れが近付いている。
報われない想いなのだから・・・腐らせるしかない・・・。
それまでジェリドさんの側にいられるだろうか?
ジェリドさんに良かれと思って立てた計画が今ではこんなに苦しいなんて、こんな想い気付かないければ良かった。
「ジェリド・・・さん」
「・・・・」
怖くなりジェリドの名前を呼んだが、相変わらず黙ってミズキの顔を食い入る様に見つめている。
やっぱりジェリドはおかしい。
どうしてもこの結論にたどり着く。
きっとミズキ芝居をして消えてしまった5年前から始まっていたのだろう、少しずつ、少しずつジェリドの精神を壊して行ったに違いない。
そう結論付けると全てが腑に落ちた。
原因を作った私が側に居たらジェリドさんはもっと壊れるかもしれない。
もしそうなったら自分自身が許せない。それだけはなんとかしないと。
やっぱり私はジェリドさんの側にいちゃいけないのだ。
そんな事を考えていると、ガサガサと複数の足音が聞こえてきた。
ジェリドも気がついた様子で周りの気配を探っている様だった。
そして一点を見据えるとジェリドはミズキを背中に隠して「じっとしていろ」
と言った。
「わかったジェリドさん」
ミズキとジェリドに緊張が走る。
※※
「だから、ミズキは攫われたのよ!何度も言わせないでよ」
「ふざけるなよ!あの男は何をしているんだ。
グレンはキャサリンのに詰め寄る。
「しつこい!何度も言ってるでしょ!ミズキは囮りなのよ!」
「どうしてミズキが囮りなんだ、一体何が起きているんだ」
「陛下のご命令だ」
グレンとは正反対に落ち着いたザラが答えた。
「そんな事あるわけがない。どうして陛下が!」
そうだ、どうして陛下が?ミズキをたった1人の友人だと言っていた陛下が、ミズキを囮に使う訳が無い。
「落ち着けよグレン」
なだめる様に言うザラに噛み付く。
「煩い!落ち着ける訳が無いだろう!」
どう言う事なんだ。
頭が混乱する。
「いい加減にしろグレン、お前らしく無いぞ」
「いい加減にしろ?俺が言いたいよ!女を囮に使うなんて陛下はどうかしている」
グレンの本音が漏れる。
「今の言葉は聞かないでいてやる!少し黙って話を聞け」
「・・・・・すまん」
更に瞳の色が鈍く光りミズキの瞳とジェリドの目の焦点が合うとジェリドはニヤリと笑う。
そんなジェリドの顔がミズキに恐怖を与える事をジェリドは気付いていない。
それどころか凄く楽しそうに笑う。
まるで腹を空かせた獣が獲物を見つけた時の様に笑う顔が、今のジェリドの笑顔と重なってミズキの瞳に映る。
ジェリドの瞳を見つめ返す事しか出来ないでいるミズキは恐怖を覚え困惑するばかりだ。
「・・・ジェリドさん?」
不安にミズキはジェリドの瞳を覗く。
ジェリドはいったい何を考えているの?
そしてミズキの目に映る彼の口が大きく見えて、今にも食べられそうに思うのは気のせいで済ませる事がミズキには出来なかった。
喰われる。本能が警告する。
獣の様に見えるこの人が本当にジェリドさん?
ジェリドさんの皮を被った狼の様に見える私はどうかしている。
『喰われる』だなんて思うのはジェリドさんに失礼だと思うのだが、頭からこの想いが消えない。
口は悪いがミズキの事を一番に考えてくれるジェリド。
ただ今ミズキの片思い絶賛中の人。
そして誰よりも家族の様に接してくれる人。
私にとっての家族。
この世界での家族。
ジェリドさんは妹の様に思っている私が告白、もしくはこの想いがバレたらきっと私に幻滅するだろう。
それだけは嫌。
ジェリドさんに嫌われたく無い。
ハッキリとした私の願い。
やっと5年前みたいに話が出来るようになったのに、想いを告白してこの関係をぶち壊せない。
『ジェリドさんが好き』と言う想いを腐って枯れるまで抱きしめて生きていく。
ジェリドは西のギアラムに帰るのだから。
計画通りに事が進んでいる。
計画が進めばジェリドとの別れも近く。
そう、ジェリドとの別れが近付いている。
報われない想いなのだから・・・腐らせるしかない・・・。
それまでジェリドさんの側にいられるだろうか?
ジェリドさんに良かれと思って立てた計画が今ではこんなに苦しいなんて、こんな想い気付かないければ良かった。
「ジェリド・・・さん」
「・・・・」
怖くなりジェリドの名前を呼んだが、相変わらず黙ってミズキの顔を食い入る様に見つめている。
やっぱりジェリドはおかしい。
どうしてもこの結論にたどり着く。
きっとミズキ芝居をして消えてしまった5年前から始まっていたのだろう、少しずつ、少しずつジェリドの精神を壊して行ったに違いない。
そう結論付けると全てが腑に落ちた。
原因を作った私が側に居たらジェリドさんはもっと壊れるかもしれない。
もしそうなったら自分自身が許せない。それだけはなんとかしないと。
やっぱり私はジェリドさんの側にいちゃいけないのだ。
そんな事を考えていると、ガサガサと複数の足音が聞こえてきた。
ジェリドも気がついた様子で周りの気配を探っている様だった。
そして一点を見据えるとジェリドはミズキを背中に隠して「じっとしていろ」
と言った。
「わかったジェリドさん」
ミズキとジェリドに緊張が走る。
※※
「だから、ミズキは攫われたのよ!何度も言わせないでよ」
「ふざけるなよ!あの男は何をしているんだ。
グレンはキャサリンのに詰め寄る。
「しつこい!何度も言ってるでしょ!ミズキは囮りなのよ!」
「どうしてミズキが囮りなんだ、一体何が起きているんだ」
「陛下のご命令だ」
グレンとは正反対に落ち着いたザラが答えた。
「そんな事あるわけがない。どうして陛下が!」
そうだ、どうして陛下が?ミズキをたった1人の友人だと言っていた陛下が、ミズキを囮に使う訳が無い。
「落ち着けよグレン」
なだめる様に言うザラに噛み付く。
「煩い!落ち着ける訳が無いだろう!」
どう言う事なんだ。
頭が混乱する。
「いい加減にしろグレン、お前らしく無いぞ」
「いい加減にしろ?俺が言いたいよ!女を囮に使うなんて陛下はどうかしている」
グレンの本音が漏れる。
「今の言葉は聞かないでいてやる!少し黙って話を聞け」
「・・・・・すまん」
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