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この国の王子でも、やっぱり私にとっては、愚弟でした。
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「何度言っても、断る愚弟!!シッシッ」
のら犬を追い払う様な仕草をしても、愚弟は毎日、毎日、飽きもせず、『城での生活を』と言って来ます。
正直、『うざい』と言う言葉がぴったりです。
この世界にきて、一番パニクッたのは、お恥ずかしいながら、私でした。
始まりは、荷物運びとして、愚弟を引き連れ、私は可愛い悠馬は抱っこし、優馬のミルクと、紙おむつを買いに近くのドラッグストアに買い出しに行来ました。
買い物をしているうちに、突然、悠馬を抱っこした私の足元に、赤い光の呪文のような文字が浮かび上がり、店内だというのに、突風が舞い上がって店の商品が、渦を撒いています。悠馬を抱っこしている私の周りだけを。こんな光景は、初めて見ました。
私の周りだけ、暴風注意報です。
自然現象でこんな事って、あるんですか?
いやいやいや、あり得ないでしょう?不思議すぎるでしょう?悪意が感じられるでしょう!
訳も分からず、右左を見ても、根っこが張っているように私の足はまったく動きません。
悠馬は、私を励ましてくれるかの様に、キャッキャ、キャッキャと笑って慰めてくれます。
半分、泣いていた私は、悠馬に勇気づけられて、何とか愚弟の名を呼ぶ、と言う暴挙に出ないで済みました。
「一花!」
紅蓮は、オムツと粉ミルクを抱え込んだ姿で、私の居る暴風の中に入ってきました、あんな暴風の中どうやってとは思いましたが、あの時の私は、気が動転していました。
私の勇気も、ここで、こと切れました。
ーーーーーーーー絶対にそうです。
私は「紅蓮」と言って、愚弟に、しがみ付いてしまったのだから・・・。
愚弟は、私が、しがみ付いてくるとは思っていなかったようで、落ち着かせようとしたのでしょうか?
私をギュっと抱きしめてきました。
愚弟、苦しいです。
ほかに方法は無かったのでしょうか?疑問です。
思い出したくもない。あんな羞恥プレイ二度とゴメンです。
そして、空間と言った方が良いでしょう、『ぐにゃり』と歪んだと思ったら、景色が一転し、そこはまるで、教会みたいな所でした。
だって、ステンドグラスからの光が、とても綺麗で、幻想的だったのだから・・・・。
私たちの周りには、白いフードを深々と被っていた6人の老人達が、立っています。
後でわかったのですが、ここに居る6人の老人たちは、この国の6賢者たちでした。
白いひげの爺をはじめとして、赤、青、黄、緑、黒の精霊の力を借りて、この国を支える6人でした。
まるで、戦隊ものの。ヒーローの様です。
それはそうと、すでに私の精神は、キャパを超えていたのでしょう、益々、愚弟にしがみ付いてしまいました。
愚弟も、私に応えるように、強く抱きしめてきました。
あの時、愚弟を『頼もしく』感じたことは、墓場まで持っていくつもりです。
恥ずかしいというより・・・・・恥です!!
愚弟は、一人の老人をジッと見つめていました。
「これはどう言う事だ、ジョルジュ!一花は関係ない」
不思議な事に、愚弟はもう慣れた態度でした。
それより、知り合いですか?白鬚おやじこと、ジョルジュと?
謎は、深まっていくばかりです。
「こうでもしないと、殿下は、あちらの世界から、お戻りにならないでしょ」
「だからって、こんな事をして・・・・兄上の命令なのか?俺はまだ、向こうの世界で、しなきゃいけない事が・・・」
愚弟は、一瞬私を見て、口を閉じました。
・・・・此方の世界?あちらの世界?どういうこと?
「はい、陛下の指示で、この方を召喚させていただきました。何時まで経てもこちらに戻らない、殿下を心配しての配慮です」
恭しくお辞儀をする老人に、愚弟は苦虫を潰したような顔を向けていました。
「一花、ゴメン、こんな事になって・・・・・こちらのゲートが閉まってしまって、あちらの世界のゲートも、完全に閉まってしまった、、、みたいだ」
「・・・どういう事・・・紅蓮・・・何が、ゲートって<あちらの世界って?どうなっているの?家に帰ろうよ・・・ねぇ、紅蓮?」
愚弟は、頭を左右に振るだけで、何も言ってくれません。
ーーーーーそれは・・・つまり・・・ここは、私の世界ではなく、紅蓮の世界という事なの?それに帰れない?って事?
『ぶちっ』と、私の血管に切れる音が聞こえました。
「さっきから聞いてれば、ふざけるな!!愚弟!!!愚弟の、都合で私まで巻き込むな。帰せ!私と悠馬だけで良いから帰せ。お前はずっとここで、あの爺の様に白いひげが地面に着くまで、この世界を堪能しろ。って言うか、愚弟、あんた一体何者?こいつら、誰?あんたの知り合い?」
「小娘!殿下になんて言う事を、殿下は一体どうしてこのような者が宜しいのでしょうか?この、凶暴な小娘を、早くここから追い出せ!衛士を呼べ、衛士!」
「うるさい、くそ爺!私はいま!愚弟と話してるんだ引っ込んでろ」
ーーーーーもう訳が分からなかった。
ーーーーー早く答えが欲しかった。
ーーーーー何とか言ってよ愚弟。
ーーーーー頭がおかしくなりそう。
縋る様な目で愚弟を見ていたと思う。
「少しの間・・・・辛抱して欲しい・・・・必ず・・・・必ず返してあげるから」
愚弟は一言、辛そうにいった。
「・・・それっては、帰れないって事?」
頭の中が、怒りで何も考えられない。
「うん、まだね・・・一花は、北の森にある・・・俺の所有している、屋敷に滞在してもらう・・・それまで悠馬は、俺が育てるよ」
言うなり、愚弟は私の腕から、悠馬を取り上げた。
「ふざけないで、悠馬を帰せ、バカ愚弟、返せ」
噛み付く勢いで食ってかかった。
「ここには、粉ミルクは無いから、悠馬は乳母が育ててくれる、これが、一花と悠馬のためなんだよ」
困った笑顔・・・・
愚弟が、本当に困ったときに浮かべる顔でした・・・。
「衛士、一花を、北の森の屋敷に案内しろ、粗相のないように、丁重に」
ここは、大人しく、言う事を聞いてやる愚弟!・・・だが、覚えてろ、この地でしっかり自活してやる!お前の力は借りん!!
憎しみの籠った力拳を、高々に上げて私は宣言しました。
それから数日後、愚弟は魔王討伐に、悠馬を背負って、行ってしまいました。
こうして、私の異世界ライフが、始まりました。
のら犬を追い払う様な仕草をしても、愚弟は毎日、毎日、飽きもせず、『城での生活を』と言って来ます。
正直、『うざい』と言う言葉がぴったりです。
この世界にきて、一番パニクッたのは、お恥ずかしいながら、私でした。
始まりは、荷物運びとして、愚弟を引き連れ、私は可愛い悠馬は抱っこし、優馬のミルクと、紙おむつを買いに近くのドラッグストアに買い出しに行来ました。
買い物をしているうちに、突然、悠馬を抱っこした私の足元に、赤い光の呪文のような文字が浮かび上がり、店内だというのに、突風が舞い上がって店の商品が、渦を撒いています。悠馬を抱っこしている私の周りだけを。こんな光景は、初めて見ました。
私の周りだけ、暴風注意報です。
自然現象でこんな事って、あるんですか?
いやいやいや、あり得ないでしょう?不思議すぎるでしょう?悪意が感じられるでしょう!
訳も分からず、右左を見ても、根っこが張っているように私の足はまったく動きません。
悠馬は、私を励ましてくれるかの様に、キャッキャ、キャッキャと笑って慰めてくれます。
半分、泣いていた私は、悠馬に勇気づけられて、何とか愚弟の名を呼ぶ、と言う暴挙に出ないで済みました。
「一花!」
紅蓮は、オムツと粉ミルクを抱え込んだ姿で、私の居る暴風の中に入ってきました、あんな暴風の中どうやってとは思いましたが、あの時の私は、気が動転していました。
私の勇気も、ここで、こと切れました。
ーーーーーーーー絶対にそうです。
私は「紅蓮」と言って、愚弟に、しがみ付いてしまったのだから・・・。
愚弟は、私が、しがみ付いてくるとは思っていなかったようで、落ち着かせようとしたのでしょうか?
私をギュっと抱きしめてきました。
愚弟、苦しいです。
ほかに方法は無かったのでしょうか?疑問です。
思い出したくもない。あんな羞恥プレイ二度とゴメンです。
そして、空間と言った方が良いでしょう、『ぐにゃり』と歪んだと思ったら、景色が一転し、そこはまるで、教会みたいな所でした。
だって、ステンドグラスからの光が、とても綺麗で、幻想的だったのだから・・・・。
私たちの周りには、白いフードを深々と被っていた6人の老人達が、立っています。
後でわかったのですが、ここに居る6人の老人たちは、この国の6賢者たちでした。
白いひげの爺をはじめとして、赤、青、黄、緑、黒の精霊の力を借りて、この国を支える6人でした。
まるで、戦隊ものの。ヒーローの様です。
それはそうと、すでに私の精神は、キャパを超えていたのでしょう、益々、愚弟にしがみ付いてしまいました。
愚弟も、私に応えるように、強く抱きしめてきました。
あの時、愚弟を『頼もしく』感じたことは、墓場まで持っていくつもりです。
恥ずかしいというより・・・・・恥です!!
愚弟は、一人の老人をジッと見つめていました。
「これはどう言う事だ、ジョルジュ!一花は関係ない」
不思議な事に、愚弟はもう慣れた態度でした。
それより、知り合いですか?白鬚おやじこと、ジョルジュと?
謎は、深まっていくばかりです。
「こうでもしないと、殿下は、あちらの世界から、お戻りにならないでしょ」
「だからって、こんな事をして・・・・兄上の命令なのか?俺はまだ、向こうの世界で、しなきゃいけない事が・・・」
愚弟は、一瞬私を見て、口を閉じました。
・・・・此方の世界?あちらの世界?どういうこと?
「はい、陛下の指示で、この方を召喚させていただきました。何時まで経てもこちらに戻らない、殿下を心配しての配慮です」
恭しくお辞儀をする老人に、愚弟は苦虫を潰したような顔を向けていました。
「一花、ゴメン、こんな事になって・・・・・こちらのゲートが閉まってしまって、あちらの世界のゲートも、完全に閉まってしまった、、、みたいだ」
「・・・どういう事・・・紅蓮・・・何が、ゲートって<あちらの世界って?どうなっているの?家に帰ろうよ・・・ねぇ、紅蓮?」
愚弟は、頭を左右に振るだけで、何も言ってくれません。
ーーーーーそれは・・・つまり・・・ここは、私の世界ではなく、紅蓮の世界という事なの?それに帰れない?って事?
『ぶちっ』と、私の血管に切れる音が聞こえました。
「さっきから聞いてれば、ふざけるな!!愚弟!!!愚弟の、都合で私まで巻き込むな。帰せ!私と悠馬だけで良いから帰せ。お前はずっとここで、あの爺の様に白いひげが地面に着くまで、この世界を堪能しろ。って言うか、愚弟、あんた一体何者?こいつら、誰?あんたの知り合い?」
「小娘!殿下になんて言う事を、殿下は一体どうしてこのような者が宜しいのでしょうか?この、凶暴な小娘を、早くここから追い出せ!衛士を呼べ、衛士!」
「うるさい、くそ爺!私はいま!愚弟と話してるんだ引っ込んでろ」
ーーーーーもう訳が分からなかった。
ーーーーー早く答えが欲しかった。
ーーーーー何とか言ってよ愚弟。
ーーーーー頭がおかしくなりそう。
縋る様な目で愚弟を見ていたと思う。
「少しの間・・・・辛抱して欲しい・・・・必ず・・・・必ず返してあげるから」
愚弟は一言、辛そうにいった。
「・・・それっては、帰れないって事?」
頭の中が、怒りで何も考えられない。
「うん、まだね・・・一花は、北の森にある・・・俺の所有している、屋敷に滞在してもらう・・・それまで悠馬は、俺が育てるよ」
言うなり、愚弟は私の腕から、悠馬を取り上げた。
「ふざけないで、悠馬を帰せ、バカ愚弟、返せ」
噛み付く勢いで食ってかかった。
「ここには、粉ミルクは無いから、悠馬は乳母が育ててくれる、これが、一花と悠馬のためなんだよ」
困った笑顔・・・・
愚弟が、本当に困ったときに浮かべる顔でした・・・。
「衛士、一花を、北の森の屋敷に案内しろ、粗相のないように、丁重に」
ここは、大人しく、言う事を聞いてやる愚弟!・・・だが、覚えてろ、この地でしっかり自活してやる!お前の力は借りん!!
憎しみの籠った力拳を、高々に上げて私は宣言しました。
それから数日後、愚弟は魔王討伐に、悠馬を背負って、行ってしまいました。
こうして、私の異世界ライフが、始まりました。
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