勇者さまは私の愚弟です。

ホタル

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異世界ライフ2

恋の首吊りロープ

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「一花、少し、落ち着いた?」
私と、反対側に座った、ラヴィニスは、コーヒーを口に一度付けてから、何かを見極めようとした目で、私を睨んでいた。

「なに?」
平静で答える私、えらいです!
この調子で、ラヴィニスに私の恋心がバレません様に、絶対に意地悪するんでしょう?

今までの愚弟の行動を着てきた私はお見通しですよ!

ふふん!

ーーーーーはぁ、何で好きになっちゃったのかな~。

よりにもよって、あのラヴィニスですよ。ボブ爺さんの言っていた。『夜の帝王』の、いまいち、意味が解りませんが、良い事は言ってない、事だけは分ります。

むなしい、初恋が意地悪な、ラヴィニスだなんて、初恋なのにすでに失恋決定ですよ。

・・・・勝てるわけありませんよ。
・・・・恋の駆け引き?
・・・・とんでもない!!したことがないのに、どうやれと・・・・。

あの、ラヴィニスですよ、女性関係が派手で、狙った獲物淑女を、ちぎっては投げ、ちぎっては投げ!の、巷では良い噂は聞きませんでしたよ。

「どうして、下ばかり、見ているの?」
怪訝そうに、ラヴィニスは、私を観察している。

『恥ずかしくて、顔が見れません』なんて言った日には、どんな羞恥プレイが待っているか!



『ラヴィニス、恐ろしい子』

そう、あの漫画のように。
ここは、何としてでも、ガラスの能面をかぶらないと。


「別に、いいでしょう、それより質問って、何?早くしてよね?」
私は、ラヴィニスの顔も見ずに、あの、見事な庭園の、窓へと視線を向けた。

「・・・・・・」

「・・・ラヴィニス?話が無いなら、私、そろそろ、お暇するわ」
ドキドキが、加速します。私はもう、値を上げていいですか?
私、頑張りましたよ!
逃げても、いいですよね?


さっきまで、黙っていたラヴィニスは、バァァン!と突然テーブルを叩き、身を乗り出した。
「ここは、一花の家で、この部屋は一花の部屋だよ、どうして、どうして、出ていく必要がある?」


「びっ、びっくりした~、ラヴィニス、驚かせないでよ、それに、本気で言ってるの?私の家は、ボブ爺さんのとこの、小屋よ、こんな豪華な場所じゃ、向こうの世界に戻ってから大変だわ」
私は、無理やり笑顔を作る。
ほんと、離れる事を考えなきゃいけない、初恋って、何なのよ。不毛だわ。


「驚かせて、ごめん・・・一つ目の質問・・・やっぱり一花は、向こうの世界に戻りたい?」
ラヴィニスは、ソファーに座ると、両手の指を絡め、祈るように一つ目の質問をした。


質問の意味が、解りません!なに、当たり前のことを言って来るんでしょうか?


「もちろんよ、ラヴィニス、悠馬を連れて、帰るわ、あなたはこの世界の人だから、たまには、私達の世界にも、遊びに来てよね!・・・・ラヴィニス!あっ、でも無理か?ラヴィニスは勇者様だから、周りの女の子たちが、方ておかないか?憎いね~、色男!!」




言っていました。
自分で自分の首を絞めました。

好きな男をほかの女達にリボンを付けて好きにして、と言っている様なものでは無いですか?


それにきっとラヴィニスはその子たちを美味しく綺麗にご馳走さまって、食べちゃうんだ!
だって、夜の帝王だもの!!
やだ、見たくない。
そんな、ラヴィニス、見たくない・・・・。



恋の駆け引きどころか、引くは引くでも、思いっきり首吊りロープで首を引いている状態です。


『泣けるよ、私、自分の愚かさに、涙が出そうです』


「・めだ・・・・だめだ・・・・・だめだ・・・・だめだ、だめだ、だめだ!」
ラヴィニスが、おかしくなりました、突然叫び出しています。


「一花、ダメだ、帰るな、いや、帰らせない、一花はずっとここに居るんだ、そうだ、それが良い、誘拐されてばかりだし、あんな、セキュリティの無い小屋なんかに、帰すものか!それに一花だって、ここは気に入っているんだ、・・それが良い」



「旦那様、ぶしつけとは思いましたが、そのように声を荒げては、奥様も驚いてしまっているご様子です。今日はこのまま、こちらに、お泊り頂いて、明日奥様にお考え、なおしてもらってはいかがでしょうか?」


家令の人が、間に入ってくれて、私は、ホッとしました。
さっきのラヴィニスの顔が、特に目が怖かったです。

そう、ラヴィニスの目つきが、猛禽類でした。

「一花、そうして、コックも腕によりをかけて、作る料理だから、一花に食べていってほしい」

「うん、分った。まだ、明るいから、バラ園にでも行ってきていいでしょう、ラヴィニス?」
「あぁぁ、でも遠くには、行くなよ」

「それでしたら、メイドの、ジルをおつれ下さい、もちろん案内は得意ですから」
「お願いします。えっと、家令の・・・・」
「セドリックでございます、奥様」
「ありがとう、セドリックさん」

よかった、ラヴィニスの表情が、元の戻った。
何か、私はラヴィニスの逆鱗に触れたみたいでした。
男心は、良く分らない。

私は、行ってきますと言って、メイドのジルさんと一緒に、バラ園に行きました。





※※

ラヴィニスは、一花の隣の部屋、主寝室の窓を見ながら、薔薇庭園を散策する、一花を見ていた。

「ラヴィニス様差し出がましい事をして、申し訳ございません」
家令の、セドリックは、ラヴィニスに深々と、頭を下げました。

「いや、助かったよセドリック、あのままだったらまた一花を怒らせるだけっだった、礼を言う」

「勿体無いお言葉、微力ながら私共屋敷の者はラヴィニス様のお力になりたいと思っております」
「そうか、宜しく頼むよ」
「はい、お任せください」
「それから、奥様のお部屋はあのまま、あそこで、宜しいのでしょうか?」
「あぁあそうしてくれ一花以外考えられない」
「かしこまりました。」
一花が、案内された部屋は、この屋敷の女主人、奥様用の寝室、屋敷の主、ラヴィニスとの部屋と、一枚のカギのかからないドアで、仕切られた、部屋になっている。

「一花の警備も、よろしく頼む」
「分かっております。ですから、奥様には、万が一のことがあってはいけませんので、ジルを付けました」
「ジルなら、安心だ」
「はいジルならどんな攻撃や誘拐を阻止できます。私達きっての隠密です。ご安心を」

「その点は心配はしていない、なにせお前たちは先王の父の親衛隊だからな安心しているさ」

「それから、お小言とを少々宜しいでしょうか?」
「なんだ、ハッキリ言え」
「それでは、奥様を愛しておいでならもう少し」
「寛容になれだろ?、そんなの知っているさ、一花相手だとどうしても上手く気持ちをコントロールできない・・・・」
「そうでございましたか、差し出がましい事を申しました」
「それから、もう一人の密偵が帰ってまいりました、何でも10キロ沖の海で突き落とされてここまで、やっとの思いで帰ってきた様子で、今日はこのまま休ませてよろしいでしょうか?」
「それは構わないよ、お前の判断で、決めてくれ」
「かしこまりました」

「それと一つ、余計な事でしょうが、旦那様が思っているほど、奥様は、旦那様を嫌っては、おりませんよ!それでは私は夕食の準備が、ございますので、このまま下がります」


ラヴィニスは、セドリックの言葉が、教会の鐘のように、頭の中で、鳴り響いていた。
もう一度着、聞こうとした時は、すでにセドリックの姿は無かった。


「一花が俺の事を、少しは好いてくれているのか」







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