勇者さまは私の愚弟です。

異世界ライフ2

何処で間違った？最初から間違えてます！

「・・・・・以上で、この一連の潜伏調査報告です。」


ラヴィニスは、書斎の椅子に座り、報告書に目を通しながら、ギルタスの話を聞いていた。聞いていたが、頭の中には、少しも入ってこなかった。それもそのはず、ラヴィニスの頭の中は、いかに一花の気持ちを取り戻すかお考えていた。

あの時、一花と一緒に夕食を取るために、自ら、一花の居る薔薇園に、呼びに行って声をかけようと近ずいたら、目の前で一花の告白を聞いて・・・時間が止まった。


「ラヴィニスが好き」


この言葉を、どれだけ聞きたかった言葉、すぐには信じられなかった。ずっとずっと、嫌われていると思っていただけに、一花の言葉が、乾いた土に雨が染み入る様に、俺の心をユックリと満たしてくれた、一花の言葉に心が震える。


ーーーそして、すぐに欲が出てくる。


食事？そんな物はどうでもいい、一花に触れたい、抱きしめたい。キスしたい。


　　　　　　　　
　　　　　　
　　　　　　　一花の中に入りたい。



そう思ったら、口の中に唾液が溜まり喉が、ゴクリと鳴った。


今すぐにでも、一花の中に入りたい衝動にかられる。
一歩、一歩、一花に近付こうと、しているのに、一向に距離が縮まらない。
そう、一花も、一歩、一歩、俺から、後ずさりをしていた。


一花を怖がらせたくはなかったが、感情を上手くコントロールできないでいると、一花が怖がり出した。
「ラッ、ラヴィニス・・・怖い」


一花は知っていて俺を煽っているのだろうか？
一花の脅えた顔が、声が、さらに俺の欲望に油を注ぐだけだという事を。
知っていてやってるのなら、天性の娼婦だ・・・。

興奮して、一花にかける言葉も、メチャクチャだ。
俺は、欲の塊になって、この浅ましい欲を、一花にぶつけたくて、さらに、俺の喉が鳴る。

一花の中はどんなに気持ちが良いのだろうか、考えただけで、もう脳が焼け切れそうだ。

一花、一花、一花、・・・・・。



よりにもよって、一花は、ジルの背中に隠れた。

俺から、一花を奪うな、ジル早く退け、俺は我慢できなくなって、「ジル、邪魔だ退け！一花を差し出せ！」と叫んでいた。

ジルが、一花を庇いだした、予想外だった。父の親衛隊全員を相手して、俺でも勝てるかどうか。分らない。

正直に言ったのが、いけないのか？一花は、黙って大粒の涙を流して、ジルは下衆を見る目で、俺を見る。

俺はどこで選択を、間違ったのだろうか？

やっと一花に好きと言われたのに・・・・。

俺の全てを差し出すから、一花の全てが欲しい。過去も未来も、一緒に過ごして欲しい。俺に笑いかけて欲しい、そして、俺を受け入れてほしい。


そして、もう一度、好きだと言って欲しい。


「旦那様、一度、女心を勉強して下さい、あれでは一花様がおかわいそうです。それにあなたは女の敵です」
ジルはすれ違いざまに、俺の耳に聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。

・・・・・・・・・。

「・・・・旦那様？以上で、報告は終わります」
「ああ、済まない」
もう一度、報告書に目を通した。

一通り、目を通すと、一番の気がかりの事を聞く。
『一花に眠り薬』と、報告書には記載されていた。

まさかとは思うが、一花に不埒な事をしていないだろうな？

「ギルタス、お前・・・一花に睡眠薬を使って何をした？」

「何を？と申しますと、旦那様？ご命令通り、奥様には傷つけない様に手首を拘束して、船底に押し込みましたが？」

「それだけか？」

「はい、旦那様？それだけですが」
「そうか、一花に傷でもあったらただでは済ませない。覚えとけ！下がっていい」

ギルタスは、執務室を、出ようとして、ラヴィニスに振り替える。
「旦那様、奥様の事で、少しよろしいでしょうか？」

「どうした？一花に何かあったのか？」

「いえ、これは提案なのですが一度、奥様の魔力テストをしてみてはいかがでしょうか？」
ラヴィニスは、眉間にしわが寄った。嫌な予感がする。
「なぜ？」

「もしかしたら、奥様は、稀にみる、魔力の持ち主かもしれません。これは私の見解ですが」
「その根拠は、何だ？」
「あの紙の蝶ですよ」
「あれが、何だというんだ」
「あの蝶は、魔力を吸って、飛び続けます。お分かりですよね、旦那様、奥様が、あの蝶が、どれだけの時間飛んでいると思います？どう見ても、奥様から溢れて来る魔力を、吸収しているとしか、考えられません」
「溢れるほどの魔力を、一花が持っているという事か・・・・」



「そうとしか思えません」