勇者さまは私の愚弟です。

ホタル

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異世界ライフ2

見上げてごらん夜の星を

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夜だというのに、この世界では、星が自らが輝きを競うかの様に、輝き、夜の闇を嫌うかの様に世界を照らしています。
そして、この世界と、私のいた世界の決定的な違いが有ります。それは自ら光る月が2つるという事です。


初めて、この2つの月を見た時、私は、一粒の涙がこぼれました。
それは、何故だか、未だに私には、分りません。


太陽の光を浴びるのではなく、自ら光輝くふたつの星、赤い星がイシス、黄色い星がラシス。
イシスとラシスは生と死の双子の女神の名前だそうです。


赤い星がイシス、が誕生の女神。
新しい物や、生命、生み出す力の源。

黄色い星がラシス、が終焉の女神。
苦痛や、生を、終わらせる力の源。


この二人の女神の力と均衡によって、この世界は存在すると、この前ジルさんから、この世界のおとぎ話を、教えてもらいました。


ジルさんから、おとぎ話を聞いたせいでしょうか?私はこちらの世界の方が、幻想的であり、神秘的でもあると思います。



あちらの世界では、溢れんばかりに、星々が光り輝く星を見た事がありません。中学3年生の時に、家族と神無月のおじさんと行った、天文台に行っても、この世界で見られるほどの輝きを見る事は出来ませんでした。


そう言えば、紅蓮、いいえ、あれはぐれんラヴィニスでしたね、彼はこの星空を知っていたのに、わざわざ、私達と一緒に天文台で星空を見ていました。
こちらの星空の方がとても綺麗だったのに・・・。


私に嫌がらせをして楽しんでいましたね・・・・。


もっと綺麗な星空があると言って、私にウソを吐き、人気のいない所まで連れて行きましたね。


私は、あまりの暗さと、「あそこに誰か立っている」という、ぐれんの言葉を信じて、ぐれんの腕のを掴んで離しませんでした。だって、こんな所で、ぐれんに置いて行かれたらと考えるだけで、足がすくんでしまいますし、泣いてしまいます。


ぐれんは知っていたんです。私が、水と幽霊が怖い事を!


そんな私を見て、ぐれんは若気ていました、私が、ぐれんに抱きついて「もうやめて」と降参するまで、怖い話をずっとしていました。


思い出すだけでも、腸の煮えくり帰る事!


あの恐怖が、たまに、夢に出るんです。
ぐれんに「ごめんなさい、許してと」懇願する夢を!!


・・・でも、その後、私は足を滑らせて、崖下に落ちました。落ちた先は真っ暗で、木々が生い茂り、星の光すら入らない真っ暗な場所で、私は、怖くて怖くて、泣いていました。怪我は擦り傷程度でしたが、良くない事に近くから、獣の鳴き声が聞こえ、その鳴き声が近づくに連れて、私の心臓も、体の震えのように、徐々に早くなっていくのが分りました。
ガサガサと、後ろの方から聞こえ、私は益々、体を縮め、脅えていました。


ガサガサと、草木を分けて、私の前に出てきたのは、ぐれんでした。それも、泥だらけになりながら私を探しに来てくれたみたいで。私はぐれんの顔を見たとたんに、泣きながら、ぐれんに走り寄りました。
もう、独りぼっちにしないでとか、側に居てくれなきゃ嫌だとか、それはもう、今、思い出しと恥ずかしくなる位の言葉を並べたと思います。

ぐれんは「一花ゴメン」と言って、私をおんぶして、家族の所まで、帰る事が出来ました。

後で、知ったのですが、ぐれんは、私を探すときに捻挫をしていたそうです。

捻挫の事を知っていたら、自分で歩いたのに。
どうして、ぐれんは黙って、私をおんぶしてくれたのでしょうか?
未だに謎です。



※※

私は、部屋のバルコニーから、今にも降りそうな、夜空の星々を見ながら、ラヴィニスの事を考えています。
恋心は、燃え尽きても、未だにくすぶっているのが、現状です。

あんなひどい振られ方をしたのに、未だに、捨てきれないこの私の不甲斐無い事。

私は、ふと、星を見上げていた顔を、薔薇の園に視線を向けると、ラヴィニスが、外を歩いていた、こんな夜更けに?とも思ったがここはラヴィニスの屋敷で、私は居候の身で、ラヴィニスにとやかく言う権利も義理もない。

ーーーー義理も無いが、気になります、まさか、ラヴィニスは、好きな人でもいて、このままその人の所にでも行くのだろうか?まさか?でも、こんな夜更けに会うという事は・・・・道ならぬ恋かもしれない。



私が、こんなに不幸なのに、ラヴィニス一人幸せなんて、させるものか!

そうだ、この際、今までのうっぷんを晴らすように、ラヴィニスに嫌がらせを・・・・。

バカみたい。

もう一人の一花が、口を出す。

バカじゃないの?本当は、相手の女が誰だか知りたいくせに・・・。

そんなに気になるなら、さっき、ラヴィニスを部屋から追い出さずに、泣いて縋ればよかったじゃない?

「私を、家族じゃなくて、一人の女と見て」って、言えばいいじゃない。

そして、叫んだ。

ーーーーーーーー臆病者!

そんな事、出来るわけないじゃない!

「・・・・・・仕方ないだろう。相手は、一花だぞ、ほかの女達とは、まったく違うんだ!」

あの一言は、私を、家族に戻すための言葉、家族に告白されて、気の地が悪いと、遠回しに言っている様な物。


私は、ラヴィニスの後姿が見えなくなるまで見つめて、姿が見えなくなってから、今にも降ってきそうなくらいに目の前に広がる星たちを眺めていた。


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