勇者さまは私の愚弟です。

私の彼は、愚弟でした

約束は守るもの

あの後ラヴィニスは高熱を出して寝込んでいる。
無茶な生活がたたって出た！高熱だそうです。

ラヴィニス！私が居ない間、お前はどんな生活を送っていたんでしょうか？
そして何故、ラヴィニスの高熱の原因が私なんですか？
納得がいきません。
身に覚えがあっても、納得できません。

しかも、ラヴィニスの高熱の原因は沢山あり過ぎますが、それでも、それでも・・・・私が原因？ですか？

違いますよね？

えっ？ヤッパリ私が悪い？

そうですか？私ですか！私が全て悪いのですね。

・・・・・ふふふ！

屋敷の誰に聞いても、答えは同じ！
私の問いにセドリックさんは、いつも以上に困った顔をしています。

ジルさんは・・・・見なかった事にして良いですか？

だって、ジルさんは拳の指をポキポキと鳴らして、一歩また一歩と近付いてきます。
しかも、ジルさんは笑顔を絶やさず・・・いいえ、引きつる笑顔がメッチャ怖いです。

逃げよう！
本能が危険だと叫んでいます。
emergencyと叫んでいます。

逃げる寸前にジルさんに両肩を掴まれてしまいました。
残念ですが・・・本当に残念です。もう逃げられません！頬を殴られる覚悟をしないと・・・って！殴られる覚悟なんて出来ませんよ！ジルさん！マジ怖いっす。
嫌な汗が私の額を流れていきます。
「ジルさんも私が悪いと思っていますか？」
恐怖で両足がガクガクしています。
「うふふふふ！奥様？いけませんよ！私とのお約束！忘れましたか～？」

「何のを約束でしょうか？オホホホ」

何か約束をしたでしょうか？
もしかして、出て行く時は一言、言ってから出て行くということでしょうか？
それだったら、１発殴られるだけでは済まないのかもしれません！

「本当に奥さまったら冗談がお好きですね？まさか！まさか！お忘れになってはいませんよね？」
私の顔を両手で挟んでいる、ジルさんの顔がメチャクチャ近いです。息がかかるほどの近さです。

「すっ、すみません！ごめんなさい！正直！思い出せません！ホント、ごめんなさい」

ジルさんの目に、逆らうな!と書いてあります。
私にはそう見えます。
幻覚でも見えるんです。

「はぁ？何の冗談？ですか？奥様！」
ジルさんの首がカクンと横に倒れました。しかも、笑顔が張り付いたように笑っていますよ！これってホラー映画ですか？ジルさん止めて、夢に出てきそうです。


「いっ、いえ冗談なんかじゃありません！」
私、半分泣いています。相変わらず足はカクカク笑っていますし、こんなに怖い思いをした事がありません！寝ているラヴィニスに助けを求めそうになっています。

こんな私を見て、ジルさんは頭を振り「やっぱり忘れていたんですね・・奥様・・・私・・・・楽しみにしていたのに・・・・」
「・・・へっ？」
「本当にひどいじゃないですか・・・奥様のバカ・・・私・・・物凄く楽しみに・・・していたのに・・・」

「なにを？」
「やっぱり忘れている・・・！美味しいという噂のパンケーキのお店に一緒に行く約束したじゃないですか！！」

ええーーーーーーー！そこーーーーーーー？ジルさんが言っていた約束って！そこですか？

「あは・・・ははははははは・は・は・は」
私の口から乾いた笑い声が、単調に流れて行きました。
ラヴィニスのことで叱られると思っていたので、拍子抜けです。

ーーーーーーこっ腰抜けた。