至高の光玉

ホタル

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狙われて

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浮かれていたのは確かだった。
グイドに連れて行かれた宿屋には精霊が居た、久しぶりに精霊と話が出来て嬉しかった。
嬉しくて、つい警戒するのを怠った結果がこれだ。
無様に地面にころがって、買ったはずの上等の酒は、地面へと吸い込まれていった。

高かったのに・・・。

泥の付いた頬を拭うと酒瓶で顔を切っていたようで、血がぽたぽたと地面に向かって落ちて行った。
ステフは起き上がろうとして頭を掴まれてまた、地面に叩きつけられた。
「おい、てめぇ!!俺のものを返せよ!!」

頭を押さえつけられているせいで男の顔は見えないが、擦れて酒でつぶれた声、この声は昼間聞いたことがある声だ。
それは昼間ステフを追いかけて来た男だった。
チッ!厄介な奴に捕まった。もっと警戒をすれば良かった。
今更ながら後悔した。

「放せよ!!この豚野郎!!この酒高かったんだぞ!!弁償しろよな!!」
後悔した事をわざわざ知らせる事もない。
ステフは負けじと怒鳴り返す。


「威勢だけはいいな、このクソガキ!!自分の立場が解っちゃいねぇようだな」
男はにんまり笑うと、ステフの頭を押さえつけていた手はそのまま、ステフの髪を掴んで人気の居ない小屋に入っていった。

小屋の奥に入ると掴んでいたステフの髪を持ち上げて、奥へとステフを放り投げた。

ドスンと部屋の隅に投げ出されステフは強く背中を打った。
あまりの痛みに小刻みに震えるステフを男はニヤニヤと歪んだ笑みで見下ろしていた。

そして周りを確認する様に見渡すと「へっへっへっ!どうやら・・・あの野郎は居ねえようだな?助かったぜ。あの野郎が居たんじゃ、俺のものを返してもらえないからな・・・・」

痛みが引く様にステフの頭に一人の男が浮かぶ。

短く切った赤い髪で目付きが悪い癖に、金にもならない子供ステフの為に一緒にヴォルダーの町まで付いて来てくれるにお人好しのグイド。
ほんと馬鹿な男だと思う。
そんなグイドがステフの脳裏に浮かんだ。

『野郎?』どうやら昼間の男はグイドの事を言っているみたいだった。

「どうやって・・・あの野郎をたぶらかした?それだけ綺麗な顔をしてるんだ・・・あの野郎の一物でもしゃぶったか?それとも、もうケツの穴にでもぶち込んでもらったか?・・・」
さっきまで、怒り狂っていた男の目は、色欲に歪んでいた。

グイドを馬鹿にする言葉にステフは訳のわからない怒りを覚えた。

グイドを馬鹿にして良いのは私だけ。他の者がグイドを蔑むのは許さない。

「なに馬鹿な事を何言ってるんだ・・そんな訳無いだろう!お前と一緒にするなよ腐れ豚!!」

「うるせえよ!!このクソ餓鬼そんな減らず口言えねぇ様にしてやるよ」

男はステフに覆いかぶさると酒に酔っぱらっているせいで、おぼつかない手つきでステフの胸を太ももをまさぐりだした。

気持ちが悪い。
「汚い手で触るな豚野郎!!」
ステフが抵抗しだすと、生臭い吐息がステフの顔にかかり、面白そうにステフを見下ろすと男の舌がステフの頬をベロンと舐めた。


気持ち悪さがステフの心に宿り始めた。
「やっ、止めろ!どこ触っているんだ・・・バカ・・変態止めてったら・・・いや・・・やめて・・・」
暴れてもビクともしない男に恐怖すら感じる。
そんなステフを見て益々興奮する男はステフの臀部を揉み始める。

「暴れんじゃねぇよ!クソ餓鬼・・・それにしても細っこいケツだな小僧・・ここは何人の男を受け入れたんだ?まぁ俺もこれからぶち込んでやるがよ!!楽しみにしてろよ・・ひぃひぃ言わせてやるからな!楽しみにしてろよ」
舌をなめずりながら男の声は欲でうわずっていた。
これからの事を思う事で男の股間は盛り上がっていた。
「たまんねぇ~なぁ~」
ヨダレがステフの頬に落ちる。

なんとかしないと!
こんなふうに力でねじ伏せられるなんて嫌だ!
僕は・・・あの頃の僕じゃ無い!
あの頃より強くなった!
強くなった筈だ!
だから・・・だから・・・動けよ体!動いてよ!!
ここから逃げないと豚野郎の餌食になってしまう。
ステフの意思を過去の記憶が邪魔をする。

優しい日々に決別したその日、炎の中やっとの思い出逃げ出した。そして一人で途方に暮れている時に世話になった夫婦の夫に突然森の中で襲われかけた・・・。
大きな赤い髪の男がその時助けてくれたが、そのあと高熱を出して顔は思い出せなくなっていた。

過去の出来事がフラッシュバックする。

やだ・・・怖い・・・助けて・・・助けて・・・グイド・・さん・・・助けて・・・。

グイドさん
「助けてーーー!!!イヤーーーー!」

「女みたいに暴れるんじゃねぇよ!女を犯してるみたいに興奮するんじゃねぇかよ!」
ステフを殴りステフが静かになったのを確かめると、男は舌を舐めずりベルトのバックルを外してたぎっている欲望を見ズボンの中から出した。
さらにステフのズボンのバックルに手を伸ばしズボンの中をまさぐっていると男はニタァ~っと笑った。

「おまえ・・・女だな?こりゃ~いい!小僧のケツの穴より女の穴の方が気持ちがいいからなぁ~。たっぷり遊んでやるからなぁ~堪んね~なぁ~」

終わりだ・・・こんな奴にバレるなんて・・・こんな事で体が動かないなんて・・・。
全然・・・強くなってなんかなかった。
強くなったなんて勘違いだった。
愚かだ・・・本当に私は愚かだ・・・。

ステフの目から涙がとめどなく溢れては溢れてった。

涙で視界が霞みかかって・・・。
組み敷いている男の後ろに赤い髪の男が・・・立っていた。

赤い髪!
そう思った途端、体が自由に動くことが出来た。どうして?

ステフにまたがっていた男は部屋の端に転がっていた。ピクリとも動かない。

涙でを拭うと目の前に立って居たのは赤い髪の男。

「・・・グイドさん・・・どうして・・・ここに?なんで?」

グイドは直ぐにステフの元に来るとさっきまでの険しい表情が柔らかくなった。

「遅いから迎えに来たぞ!どれだけ心配したと思っているんだ!顔が腫れているし切れているな?宿に戻ったらまずは消毒だ!」

「・・・・・」
「・・・返事は!」

「・・・どっどうしてここに?」
声が震える。

「当たり前だろ?お前に呼ばれた!『助けて』って言ったろ?」

「・・・確かに言いましたが・・・」
確かに言ったが本当に助けて貰えるなんて思っても見なかった。

「ステフが無事で良かった」
グイドはユックリとステフの頭を撫でた。

「・・・俺が怖く無いか?」
「・・・えっ?どうして?」
「・・・いや・・・あのゲスに襲われて居ただろう?・・・もしかして俺も怖いんじゃないかと思ってな?」

「確かにそうですね・・・グイドさんは怖く無いです。もしかして、心配してくれたんですか?」
「・・・当たり前だろ?一応保護者だしな?」
「あはは!保護者って・・・痛っ!」
頬を切っている事を忘れて笑うと傷が痛

「さて、帰って消毒するぞ!立てるか?」
「・・・たっ立てますよ!失礼ですね」
ステフは立ち上がろうとしたが上手く立てなかった。

グイドは『ヤッパリな』と言って、ステフの前に来て後ろ向いて屈んだ。

「何をしてるんですか?グイドさん?」
「何ってお前・・・おぶってやるんだよ!おぶって!」

「・・・本当にお父さんなんですね!グイドさん」
「・・・ステフ、せめてお兄さんだろ?お父さんて・・・俺ショックで心臓止まりそう!」
「・・・ふふふ止まりませんよ!グイドさんの心臓なら止めようたってそう簡単に止まりませんよ」
わざと明るい口調で慰めるグイドにステフの心がほっこりと暖かくなった。

「・・・確かに違いない!ほらおぶされ」
「・・・はい」
グイドの背中は広くて、暖かくて、ステフは今日会ったばかりのグイドに対して家族の様な暖かを求めていた。

「・・・お前、軽いな?帰ったら飯を食え!」
「・・・・・」
「おいステフ?・・・寝ているのか?」
「・・・・・」
「・・・まったく心配ばかりかけやがって・・・本当に無事で良かった」
グイドは小さな溜息をついた。


ステフを探している時に女の悲鳴が聞こえたような気がして、声のした薄暗い小屋で見た光景は、グイドの心臓を止めそうになった。
ステフが下半身を露出して居た男に跨られて居た。

瞬間的に男に対して殺意が湧いた。
ステフに跨った!それだけで殺すのに十分の理由になった。

勢いよくステフから男を引き剥がしただけで、頭の打ち所が悪かったのか?そのまま気を失った。

グイドはやり場の無い怒りを持て余すと思ったがステフの縋るような顔を見た途端に、この子を守らないと庇護欲が刺激されたのだろうか?さっきまでの怒りは霧のように消えていった。

「困ったな~」
これじゃ~まるで・・・・。
まるで父親だな。
グイドは頭を左右に振った。
まだ結婚もしていないのに、ステフを見ていると危なっかしくて心配が尽きない。

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