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三
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どれくらいの時が経ったのでしょう。
茜がふと我にかえり、そっと周りを見渡すと、茜のすぐ側には、まんまるの金色お月さまのような目をした小さな狐が、しょぼくれてちょこん、と座っています。
まんまるの目もふせがちに、天狗のお面をぎゅっと手に握りしめ、うなだれている姿を見ているうちに、何だか茜は可哀想になってきました。
そして、追いかけられて泣かされたことも忘れ、銀ににこっと笑いかけながら、声をかけてしまいました。
「あなたが銀なの?」
茜の問いかけに、茜の笑顔をぼーっと見つめていた銀は、はっとしてこっくりと頷きました。
「どうして、いたずらばっかりするの?」
茜が不思議そうにたずねると、銀はしばらくもじもじしていましたが、やがて顔を上げて、
「みんなにかまって欲しいから…………かも」とだけ言いました。
茜の方を見ながら、そわそわと動くふさふさのしっぽ。感情のままに動く、くりくりとしたまんまるの目。
茜は銀をもう少しも怖いとは思いませんでした。
村人達が言うような、意地悪で悪い狐にも思えません。
そして、茜は考えました。
誰かにかまって欲しくていたずらをする――――それはきっと…………。
「ね、わたしたち、お友だちになる?」
茜にとって、お友達は宣言してからなるものではなかったのですが、この時は何となく先に銀に告げた方が良い気がしたのです。
それを聞いた銀は、まんまるの目をさらに見開き、口も大きくぽかん、とあけました。
「いたずらじゃなくて、いっしょにたくさんあそぼうよ。たくさん、たくさんおはなしもするの」
その考えにわくわくしたかのように、まるで先程子ども達と遊んでいた時と同じように、楽しげに銀に笑いかける茜。
それを見ているだけで、銀の心はぽかぽかと温かくなってきて、ふっと身体中の力が緩みました。
そして、茜の言葉がゆっくりと銀の頭と心にしみわたっていった後、銀はふにゃっと満面の笑みを浮かべて頷きました。
かみしめるように、何度も何度も頷いてから、銀は小さな小さな声で繰り返しました。
「うん。ぼくたち、友だちになる。あかねとぼくは、友だちだ」
それから、茜と銀は木の下に並んで座り、たくさん、たくさんお話をしました。
そして、帰り際に次の約束を取り交わします。
「銀ちゃん、はれたら、またあした。こんどはみんなであそぼうね」
「うん!…………はれたら?くもりだったら、どうするの?」
不安そうな銀の答えに、茜は明るくあはは、と笑います。
「くもりでも、だいじょうぶ!雨さえふってなければ、ね」
「雨?……どれくらいの雨なら、だめなの?」
銀の思いがけない食い下がりに、茜はうーんと声をあげて考えます。
「わたし、この村にきたばかりだし……少しだけでもだめかな?おかたづけも、あるし。あ、でも――!」
茜はぱっと顔を明るくして、声を弾ませます。
「わたし、一週間後におたんじょう日なの!お母さんが、七日後にわたしのおたんじょう日会、してくれるっていってた!」
「おたんじょう日会……?」
首をかしげる銀に、茜は嬉しそうに続けます。
「ね、銀ちゃんもその日はおうちにあそびにきてくれる?きっとお母さんが、おいしいものも用意してくれるし、その日は雨がふってもだいじょうぶ!ぜったいみんなであそべる日だよ」
そうして、茜は一週間後のお誕生日会に銀を誘って別れました。
茜がふと我にかえり、そっと周りを見渡すと、茜のすぐ側には、まんまるの金色お月さまのような目をした小さな狐が、しょぼくれてちょこん、と座っています。
まんまるの目もふせがちに、天狗のお面をぎゅっと手に握りしめ、うなだれている姿を見ているうちに、何だか茜は可哀想になってきました。
そして、追いかけられて泣かされたことも忘れ、銀ににこっと笑いかけながら、声をかけてしまいました。
「あなたが銀なの?」
茜の問いかけに、茜の笑顔をぼーっと見つめていた銀は、はっとしてこっくりと頷きました。
「どうして、いたずらばっかりするの?」
茜が不思議そうにたずねると、銀はしばらくもじもじしていましたが、やがて顔を上げて、
「みんなにかまって欲しいから…………かも」とだけ言いました。
茜の方を見ながら、そわそわと動くふさふさのしっぽ。感情のままに動く、くりくりとしたまんまるの目。
茜は銀をもう少しも怖いとは思いませんでした。
村人達が言うような、意地悪で悪い狐にも思えません。
そして、茜は考えました。
誰かにかまって欲しくていたずらをする――――それはきっと…………。
「ね、わたしたち、お友だちになる?」
茜にとって、お友達は宣言してからなるものではなかったのですが、この時は何となく先に銀に告げた方が良い気がしたのです。
それを聞いた銀は、まんまるの目をさらに見開き、口も大きくぽかん、とあけました。
「いたずらじゃなくて、いっしょにたくさんあそぼうよ。たくさん、たくさんおはなしもするの」
その考えにわくわくしたかのように、まるで先程子ども達と遊んでいた時と同じように、楽しげに銀に笑いかける茜。
それを見ているだけで、銀の心はぽかぽかと温かくなってきて、ふっと身体中の力が緩みました。
そして、茜の言葉がゆっくりと銀の頭と心にしみわたっていった後、銀はふにゃっと満面の笑みを浮かべて頷きました。
かみしめるように、何度も何度も頷いてから、銀は小さな小さな声で繰り返しました。
「うん。ぼくたち、友だちになる。あかねとぼくは、友だちだ」
それから、茜と銀は木の下に並んで座り、たくさん、たくさんお話をしました。
そして、帰り際に次の約束を取り交わします。
「銀ちゃん、はれたら、またあした。こんどはみんなであそぼうね」
「うん!…………はれたら?くもりだったら、どうするの?」
不安そうな銀の答えに、茜は明るくあはは、と笑います。
「くもりでも、だいじょうぶ!雨さえふってなければ、ね」
「雨?……どれくらいの雨なら、だめなの?」
銀の思いがけない食い下がりに、茜はうーんと声をあげて考えます。
「わたし、この村にきたばかりだし……少しだけでもだめかな?おかたづけも、あるし。あ、でも――!」
茜はぱっと顔を明るくして、声を弾ませます。
「わたし、一週間後におたんじょう日なの!お母さんが、七日後にわたしのおたんじょう日会、してくれるっていってた!」
「おたんじょう日会……?」
首をかしげる銀に、茜は嬉しそうに続けます。
「ね、銀ちゃんもその日はおうちにあそびにきてくれる?きっとお母さんが、おいしいものも用意してくれるし、その日は雨がふってもだいじょうぶ!ぜったいみんなであそべる日だよ」
そうして、茜は一週間後のお誕生日会に銀を誘って別れました。
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