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四
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茜と別れた後の銀は、足取りも軽く、ぴょんぴょんと跳び跳ねながら、巣穴へと向かいます。
生まれてから初めて友達ができ、その上お誕生日会にまで呼ばれた銀は、嬉しくてたまりません。
銀には、両親がいません。
銀は物心ついた頃から、村人達相手にいたずらをし続けて、自分の寂しさを紛らわしてきました。
あのね、いたずらをして、人をこまらせるより、こまっている人がいたら、たすけてあげるの。
そっちのほうが、すてきじゃない?
こらーっ!っておこられるんじゃなくて、ありがとう、って笑ってもらえるんだよ?
木の下で並んで話した時の茜の言葉が、銀の心の中で次々と浮かんでいきます。
巣穴に戻ってまるくなった時もまだ、銀は幸せそうに微笑んでいました。
温かくうきうきとした銀の心とは裏腹に、夜半から山に重く湿った空気がたちこめました。
(雨の匂い…………)
銀はひげをぴくりと動かして、少ししょんぼりとしっぽを丸めましたが、気を取り直したようにつぶやきました。
「茜ちゃんのおかたづけ、早く終わったら、それだけそれからたくさん、こころおきなく遊べるかな……!?」
そうだ!その間に、茜が喜びそうなものや場所をたくさん見つけよう!
その思いつきに銀は顔をほころばせ、今度は機嫌良さげにぱたぱたとしっぽを揺らせ、またゆっくりと眠りについていきました。
次の日。
銀の思った通り、明るくなる前から、しとしとと霧のような雨が降りだしました。
巣穴からちょこん、と頭を出した銀の表情は、少し残念そうなものから、きりりと気合いのこもったものへと変わりました。
「これくらいの雨なら、だいじょうぶ」
銀はその小さな身体を生かして、木立の中を駆け回り、美味しい木の実やきれいな石を集めたり、絶好の遊び場などを調べたりしました。
次の日、その次の日も雨でした。
雨足はだんだんと強くなってくるみたいです。
銀は何度も空を見上げてはため息をつき、それでも同じように、茜を喜ばせる贈り物や遊び場所を求めて過ごしていました。
巣穴の中はもう、茜への贈り物でいっぱいです。
銀はそれをうっとりと眺めながら、どれが一番茜のお誕生日の贈り物に相応しいか、考え始めます。
外の雨はずいぶんと激しくなってきていました。
「……あと三日たったら、茜ちゃんのおたんじょう日。おたんじょう日になったら、雨でも会える」
銀はまた一つため息をつき、心を切り替えたように残りの三日間は巣穴の中で、ああでもない、こうでもないと茜への贈り物を選んで過ごしました。
雨が降り続いた六日目。
銀が巣穴で茜への贈り物を選んでいた頃、茜の住む村にある、唯一の橋が流されました。
隣の村へと行き来する、大切な大切なたった一つの橋です。
この橋がかかっている川は、流れがひどく急なため、橋を作るのは大変でひどく手間も時間もかかります。
けれども、大雨による増水で何度も流されてしまうのです。
今回流された橋は、今度こそ、と村人達が知恵を出し合い、力を合わせて作り上げた橋だっただけに、村人達の落胆ぶりはひどく、困り果てていました。
銀はその頃、巣穴の中から空を見上げ、
「明日のおたんじょう日には、雨もやみ、からりと晴れればいいなぁ」と声に出し願っていました。
生まれてから初めて友達ができ、その上お誕生日会にまで呼ばれた銀は、嬉しくてたまりません。
銀には、両親がいません。
銀は物心ついた頃から、村人達相手にいたずらをし続けて、自分の寂しさを紛らわしてきました。
あのね、いたずらをして、人をこまらせるより、こまっている人がいたら、たすけてあげるの。
そっちのほうが、すてきじゃない?
こらーっ!っておこられるんじゃなくて、ありがとう、って笑ってもらえるんだよ?
木の下で並んで話した時の茜の言葉が、銀の心の中で次々と浮かんでいきます。
巣穴に戻ってまるくなった時もまだ、銀は幸せそうに微笑んでいました。
温かくうきうきとした銀の心とは裏腹に、夜半から山に重く湿った空気がたちこめました。
(雨の匂い…………)
銀はひげをぴくりと動かして、少ししょんぼりとしっぽを丸めましたが、気を取り直したようにつぶやきました。
「茜ちゃんのおかたづけ、早く終わったら、それだけそれからたくさん、こころおきなく遊べるかな……!?」
そうだ!その間に、茜が喜びそうなものや場所をたくさん見つけよう!
その思いつきに銀は顔をほころばせ、今度は機嫌良さげにぱたぱたとしっぽを揺らせ、またゆっくりと眠りについていきました。
次の日。
銀の思った通り、明るくなる前から、しとしとと霧のような雨が降りだしました。
巣穴からちょこん、と頭を出した銀の表情は、少し残念そうなものから、きりりと気合いのこもったものへと変わりました。
「これくらいの雨なら、だいじょうぶ」
銀はその小さな身体を生かして、木立の中を駆け回り、美味しい木の実やきれいな石を集めたり、絶好の遊び場などを調べたりしました。
次の日、その次の日も雨でした。
雨足はだんだんと強くなってくるみたいです。
銀は何度も空を見上げてはため息をつき、それでも同じように、茜を喜ばせる贈り物や遊び場所を求めて過ごしていました。
巣穴の中はもう、茜への贈り物でいっぱいです。
銀はそれをうっとりと眺めながら、どれが一番茜のお誕生日の贈り物に相応しいか、考え始めます。
外の雨はずいぶんと激しくなってきていました。
「……あと三日たったら、茜ちゃんのおたんじょう日。おたんじょう日になったら、雨でも会える」
銀はまた一つため息をつき、心を切り替えたように残りの三日間は巣穴の中で、ああでもない、こうでもないと茜への贈り物を選んで過ごしました。
雨が降り続いた六日目。
銀が巣穴で茜への贈り物を選んでいた頃、茜の住む村にある、唯一の橋が流されました。
隣の村へと行き来する、大切な大切なたった一つの橋です。
この橋がかかっている川は、流れがひどく急なため、橋を作るのは大変でひどく手間も時間もかかります。
けれども、大雨による増水で何度も流されてしまうのです。
今回流された橋は、今度こそ、と村人達が知恵を出し合い、力を合わせて作り上げた橋だっただけに、村人達の落胆ぶりはひどく、困り果てていました。
銀はその頃、巣穴の中から空を見上げ、
「明日のおたんじょう日には、雨もやみ、からりと晴れればいいなぁ」と声に出し願っていました。
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