引きこもり☆新婚生活

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 赤ちゃん達が順調に育っていく。皆ちょっとずつ喋れるようになってきた。
 まだ乳を飲んでいるけど、好奇心旺盛。つかんだ玩具はよくなめる。
 皆、おしゃぶりを常にくわえている程だ。
 そして、皆も母という雰囲気を身にまとってきた頃、エレガンが言った。
「清太様。そろそろ私、清太様のお母さまに御挨拶したいと思うのですが」
 その言葉を聞いた時、俺の思考は止まった。
「あ、私も清太のお母さんに会いたい!」
「私も、挨拶ぐらいはしておきたいなあ。それに、赤ちゃんも見せたいし」
「わ、私も会えるなら、会いたいです!」
 ネーリ、オーハ、リリメもそう言う。
 というか、さあ。
「俺、帰れるの?」
「はい。わが社のユーフォーに乗って、ちょっと地球に旅行してみましょう。永愛旅行もまだでしたし」
 そうか。地球に帰れるのか。
 それは凄い。
「でも、俺は引きこもれてれば満足だから、行きたいなら皆で行って来て」
「何言ってるの、清太も来ないと意味ないじゃん!」
「清太様、私達をお母さまに紹介してくれないのですか?」
「清太、折角の旅行だよ。一緒に行こうよ!」
「清太様、清太様のお母さまへのご挨拶、どうか付き合ってください!」
 ネーリ、エレガン、オーハ、リリメにそう言われる。
 ううー。仕方ないなあ。
「わかった。じゃあ、戻れるなら、地球に行こう」
「ありがとう、清太!」
 皆にそう言われて、ちょっとたそがれる。
 ああ、また移動かあ。外に出るの嫌だなあ。
 でも、もしかしたら母も父も心配しているかもしれない。ちょっと顔見せるくらいは、するか。

 エレガンの会社の地球旅行計画は、結構大がかりになった。
 まず、オールガール星に来ている地球人全員に、旅行の募集をかけた。なお、それなりに旅費はもらうとのこと。
 そして地球と交流するため、政府も旅行に口を出し始めたそうだ。そのため、出発日は余計に遅れる。
 更にエレガンは、俺の母にプレゼントを渡すと言って、何やら大量の衣服を用意した。オールガール星にしかない素材を手あたり次第にあげるわけにはいかないが、服や帽子等の品なら差し出せるということらしい。別に持って行く必要はないと思ったが、エレガンは止まらなかった。
 そして、ネーリの娘、セーリが立てるようになった頃、俺達の地球行きが決まった。
 他の旅行者達と一緒に、大型ユーフォーに乗って瞬間移動。すぐに地球に来れた。
 地球って、簡単に帰れる場所だったんだな。ちょっと感動。

 大型ユーフォーは東京湾に到着。そこで俺達が降りる。俺、ネーリ、エレガン、オーハ、リリメと、彼女達の赤ちゃん達、そしてイーニエの十名だ。更に他の日本人もちらほら降りる。
 ただ、大型ユーフォーはすぐに飛び立つらしい。日本人以外の地球帰還者もすぐ家へ送り届けるために、奔走するらしい。地球に降り立った俺達は、警察にリムジンでつれてかれて、俺の実家の一軒家まで来る。
 なんてわけのわからない事態だ。しかもこのリムジン、家の前で止まったままらしい。近隣住民が見たら驚くぞ。
 そして俺の母は、玄関前で待っていた。事前に帰って来ることを連絡しておいたのだ。だが母はリムジンを降りた俺達を見て、困惑している。
「せ、清太?」
「ただいま、母」
「その声は清太。随分変わったわね。一瞬、あなただってわからなかったわ」
「そう」
 俺としては変わったはず、変わったはず。ちょっとは内面変わったか。ジュエルラビットをなで続けたせいか、外での活動も大分慣れてきた。今では外にいても普通にいられる。
 ああ。あと、投資先から送られてきた美容液とかが効いているのかな。向こうの星でのきちんとした食事も効果があったかもしれない。
「あなたが清太のお母さんですか。初めまして! 私、ネーリです。清太の本妻です!」
 まずネーリが元気よく挨拶した。
「私はエレガンですわ。清太様には随分お世話になっております」
 エレガンがすらすらとそう言う。お世話されてるのは大体俺だよなあ。
「私はオーハ。お母さん、会えて光栄です。清太とは運命の出会いでした!」
 オーハも元気だ。けど、運命の出会いという程のものではなかった気がする。まあ、うささんが引き寄せた出会いだったから、それっぽくはあるけども。
「私はリリメです。女子高生ですが、立派に清太様の子供を育ててみせます!」
 リリメは一言余計だった。そこ、女子高生をアピールしなくてよろしい。
「ごきげんよう。私はイーニエです。主にエレガン様の護衛兼世話係です。どうか私のことは気にせずお過ごしください」
 イーニエはスカートをつまんでお辞儀をする。本当、結構な大所帯で帰ってきてしまったなあ。
 というか。あれ、なんか皆、日本語をしゃべっている気がする。
 いつもの翻訳機に助けられてる感が、今は全然しなかった。
「皆。もしかして日本語、できてる?」
「うん、清太。私達、この日のために覚えたからバッチリだよ!」
 ネーリが断言した。なぜ、というかどうやって?
「清太様、私達は事前に清太様のお母さまと話ができるように、地球語をマスターしていたのです。日々の時間の合間を使って」
 エレガンにそう説明を受ける。そうか。でも、それだけで日本語はマスターできるもの?
「オールガール星には、意識をネット世界に移して、時間の流れを百分の一にする機能があるから、結構短時間で学べるんだよ!」
 オーハに更に説明される。なるほど。そういえば、ゲームの中もそうだったな。
「日本語って難しかったです。でも、清太様のために頑張りました!」
 リリメにそう言われる。まあ、皆、ありがとう。
「皆、ありがとう」
「えへへ」
 皆照れる。その時、母が俺の肩を引っ張った。
「ねえ、ちょっとちょっと、清太」
「ん。どうしたの、母さん」
「清太の奥さんって、皆さん?」
 ん、あー。
「ネーリは完全にそうだけど、他の皆は、どうだろう?」
「何を言っているのですか清太様。私達は、永愛式をやった仲ではありませんか!」
 エレガンがそう言う。
「そうだよ。もう私も清太の奥さんだよ!」
 オーハがそう言う。
「私は、永愛式なんて恐れ多いですけど、清太様を愛する気持ちはいっぱいあります!」
 リリメが言う。
「うん。わかった。じゃあ皆、俺の奥さんっていうことで」
「清太、とりあえず説明しなさい」
 母に言われて、俺はちょっとたそがれた。
 まあ、仕方ないか。確かに、はたから見たらありえない展開だし。
「ああ、清太様のお母さま。お話も良いですが、それよりも私達の永愛式の時の映像も持ってきましたの。まず見ていただけませんか?」
 エレガンがそんなことを言った。
「永愛式?」
「母、ダメ。絶対見ちゃダメ!」
 俺は慌てる。
「この星でいう、結婚式なんだよね!」
「まあ、そうなの。それじゃあ私、見てみたいわ」
「あー!」
 ネーリ、なんていうことを言うんだ!
「それじゃあ、家の中にお邪魔してもいいですか!」
「はいどうぞ。狭い我が家ですが。お茶菓子もたくさん用意してありますよ」
「どうぞ、おかまいなく!」
 リリメがそう言ったのを皮斬りに、皆家へと入っていく。
「まあ、赤ちゃん可愛いわね!」
「はい。この子はセーリです。私と清太の、愛の結晶です!」
「私の自慢の娘は、エレールですわ」
「私の子は、オリーブ。清太が名前をつけてくれたんだよ!」
「私の娘はルルモです」
「まあ、清太。本当にこの子達を産んじゃったのね」
「母。俺の部屋、残ってる? もう、引きこもりたい」
「ああ、清太の部屋なら荷物置き場になってるわよ」
「それでもいい。ずっとそこにいる」
 とにかくやっと、家の中に入る。
 地球の実家に帰ってきたら帰ってきたで、大変だ。
 ああ、新婚って大変なんだなあ。

 皆はリビングで待機。俺は元自室にひきこもる。母はお茶菓子をお客様に用意している。父は仕事でいない。
 元自室は物がそれなりに置いてあったが、俺がいられるだけのスペースはあった。なので安心してここにいることにする。
 そして俺が元自室で一息ついていると、母が突然入ってきた。
「母。ノックするか、声をかけてから入ってよ」
「清太。あなた本当に大丈夫なの? 突然帰ってきたと思ったら、赤ちゃんが四人よ。ちゃんと面倒見れるの?」
「ああ。まあ、お金は一応大丈夫。俺、結構お金かせいでいるんだ。だから、お金の苦労はしてない。そこだけは本当に平気」
「そうなの? まさかあなたが仕事をできるなんて。一体なんの仕事をしているの?」
「ウサギの飼育」
「そ、それだけで、本当に妻四人娘四人を養っていけるの?」
「うん。結構稼いでいるんだ。むしろ、お金は余り過ぎてるぐらい」
 そのせいでリリメと、いや、ネーリ以外の皆とも出会っちゃったわけだけども。
「そういわれても、信じられないわ」
「うん。じゃあこれ以上はネーリ達から聞いて」
「わかった。そうする。でも、清太。お帰り。よく帰ってこれたわね」
「う、うん。俺も驚いている」
「もう会えないものだとばかり思っていたから、うれしいわ」
「俺はそれほどでも。でも、母が元気で良かった。父も元気にしてるでしょ?」
「ええ。それじゃあ、私はあなたの奥さん達を待たせているから、もう行くわ。ゆっくりしていってね」
「うん」
 母が部屋を出る。自分の実家なのに、ゆっくりしていってね。か。もうそれが、当然じゃないんだな。
 それもそうか。俺はもう、あまりここにいられないんだし。
 でも、最初は不安だったけど、今はなんとかなって良かったって思ってる。これも、ネーリのおかげだ。
 きっと一歩間違ってたら、俺は以前のまま何もできなかっただろう。
 俺は自分の運命に感謝して、ひとまず今の静かな時間を満喫した。

「ねえ清太、入るよー!」
 そう言って、ネーリが俺の部屋に入って来た。
「ん、ネーリ、どうしたの?」
「あのね、私達今、清太のアルバムを見てきたの。小学生までの清太しか見れなかったけど、清太かわいかったよ!」
「ああ、そう」
 母、そんなものまで出したのか。
「男の子って、子供の時はあんなに可愛いんだね。今はこんなにかっこいいのに!」
「ありがと、ネーリ」
「だからねえ、清太。あっちで皆と、清太の昔話を聞かせて?」
「そう言われても、話すことなんてないよ」
「いいの。お願い、きて?」
 俺はネーリに手をひっぱられ、仕方なく部屋を出る。
 はあ、実家にいてもずっとくつろげるわけじゃないんだなあ。

 リビングで母は、四人の孫に囲まれて幸せそうにしていた。
 そして俺は、四人に自分が子供の頃の話をする。といっても、話すことなんて特にないけど。すぐに話し終えると、今度は皆が自分の子供の頃を話し始めた。
 ネーリはガキ大将だったらしい。ケンカは負けなしだったそうだ。
 エレガンは生まれ持ってのセレブ。優雅に毎日を過ごして、すぐに経営も学び、大人が舌を巻く程の手腕を見せたらしい。想像通りだ。
 オーハは組の皆に囲まれ、一国の姫のように育ったらしい。そしてすぐに水泳に出会い、才能が出たので、それ以降は組が一丸となってオーハを水泳に関わらせたらしい。
 リリメは、普通の子。夢はお金持ちになることで、今は借金まみれだが、お金持ちの男とお姉さま方を捕まえられて良かったとにっこり微笑んでいる。
「まあ、皆個性的ね。それに、仲が良いのね」
「はい!」
 母が指摘した通り、皆仲が良い。たまに俺の取り合いはするが、それでも仲が悪くなることはない。
 オールガール星人は男がいない人種。なので、オスはできるだけ平等に利用する習性があるらしい。
 皆が俺の子作り、俺の貸し出しに甘いのはそのせいらしい。おかげで俺は大変だけど、彼女達は皆幸せそうなので、なんとも言えなくなる。
 と、そう話をしていたら、ひと段落したところで、エレガンが言った。
「そうでしたわ。お母さま。私達お母さまに会いに来たついでに、お土産をお持ちいたしました」
「あら、何かしら?」
「一万着の服と、二千点の帽子、靴ですわ。どれかお母さまがお気に召すものがあれば良いのですけど」
「い、一万着?」
 母がおったまげる。
「そんなにいらないわ」
「そうだとしても、もらってください。当初の予定では、ここから近い貸し倉庫に全ての品を届けることになっていますわ。倉庫のレンタル料もこちらがもちます。お母さまは自由にお使いください。もちろん不要な物はお売りいただいて結構ですわ」
「そんなこと言われても。清太、どうしましょう?」
「俺に訊かれても困るよ。オールガール星に持って帰るのも困るから、そっちでなんとかして」
「そう、ね。それじゃあとにかく、実物を見てみるわ」
「はい。明日には用意ができると思いますわ」
「あ、そうだ。お母さん。私、折角お母さんと会えたから写真撮りたい!」
 ネーリがそんなことを言いだした。他の皆もうなずく。
「そうだね。私もお母さんとの写真、欲しいな!」
「あの、お母さま。よろしければ撮りませんか?」
 オーハとリリメも便乗して、母につめよる。
 母は一瞬遅れてから、笑顔でうなずいた。
「そ、そうね。折角だから、撮りましょうか」
「よろしいのですか。カメラはありますから、私のを使いましょう」
 エレガンがそう言うと、皆立ち上がる。
「じゃあ俺は、部屋にいるから」
「何言ってるの。清太も一緒に撮るんだよ?」
 ネーリにそう言われ、腕をつかまれる。
「え」
「え、じゃないよ。はい。でしょ。さあ、いこ!」
「清太様、どうかお母さまと一緒に並んでください」
「折角だから庭で撮ろう!」
「ルルモも、しっかり映ろうね!」
 ネーリ、エレガン、オーハ、リリメが立て続けに言う。
「清太。あなたがいないと意味が無いでしょ」
 母にまでそう言われる。
「はあ、わかったよ」
 まあ、ちょっと庭に出るだけだから、いいけどさ。
 そう思ったところ、母がそれぞれの赤ちゃんを抱いた写真、俺がそれぞれの赤ちゃんを抱いた写真を平等に撮って、少し長い写真撮影が行われた。
 やっぱり俺、娘を作りすぎてしまったかもしれない。

 外に出たついでに、皆が俺が住んでいた町の景色を記憶に残したいと言い出した。
 それに母がうなずいて、皆でリムジンに乗り込む。だが俺は元自室に引きこもる。
 引きこもっていられるなら、できるだけ引きこもりたい。それが俺の生き方だ。
 皆はそれを了承してくれたし、母が、ここは任せろ。と言い出した。なので、その申し出を甘んじて受け入れる。
 俺はやっと静かな時間と部屋に戻ることができ、一安心。
 そうしてボーッとしていると、自然と眠たくなってきた。
 実家にいるからだろうか。俺は眠気に逆らわず、目を閉じた。

「清太。入るわよ。あら、眠ってる」
 声が聞こえたので、起きた。目の前には母がいた。
「わ、母。どうしてここに?」
「それはここがあなたの実家だからよ。ふふ、元自分の部屋はそんなに居心地が良かった?」
「うん。向こうでも良くしてもらってるけど、ああでも、ここの方が静かでいいな」
 ふと、このままこっちで住むというのはどうだ? と思う。
 けど、もし皆が反対したら、俺の意見を押し通すのは無理だと思われる。だって俺は引きこもり。発言権は強くない。
 まあ、一応言ってはみるかな。そう思った時、母が言った。
「清太。ネーリさん達、とっても良い子ね」
「そうだね。でも、エレガンとかは母さんよりも年上だよ」
「あら、そうなの? とにかく、私、今日とっても安心したわ。あなたはニートのひきこもりだから、向こうに行ったら大変なめにあうんじゃないかと心配してたけど、むしろ逆。行って良かったみたいね」
「ああ、うん。そうかも」
 一応、地球にいる時よりは役に立っているとは思う。
「けど、ずっと引きこもっていられないから、やっぱり大変だよ」
「それは、我慢しなさい。もうお父さんなんでしょ?」
「うん」
「とにかく、私に孫を見せてくれてありがとう。それも四人も。ちょっと多すぎだけどね」
「努力はした。最初はネーリとだけだったはずなんだ」
「もうヤることヤったんでしょ。今更言い訳しない。さて、そろそろあなたの奥さん達、帰るって。あなたも帰るんでしょ?」
「え、そうなの。なんなら、しばらくここにいてもいいんじゃ?」
「何言ってるの。あなたはあの子達の父親なのよ。父親がそんなんじゃいけないわ」
「はい」
「大丈夫。清太はもう、あの子達と生きていける。もっと自信持ちなさい。それであの子達を幸せにするのよ」
「はい」
 結局、俺はまたこの部屋から追い出された。まあ、仕方ないか。俺はもう一つの帰る場所へ行こう。
 よく考えれば、俺なんかを歓迎してくれるのは彼女達くらいしかいない。俺、幸運なんだな。

 そしてその後。
「ねえ、皆。このまま地球に住むっていうことは、できないかな?」
 一応そう言ってみた。
 すると。
「仕事があるからダメ」
「学校があるからダメです」
 そう言われて却下された。
 だよね。

 夜を高級ホテルで過ごして、翌日。
 皆が、リムジンに乗って母を迎えに行った後、ユーフォーから倉庫におろされたはずの衣服類を身に行くと言った。
 俺は、いってらっしゃい。って言ったんだけど、皆は首を横に振る。
「折角のお母さんと会えるチャンスだよ。逃したらダメだよ!」
 俺は別にそんなこと思わなかったが、イーニエに引きずられるようにして、俺もリムジンに乗ってしまった。
 予定通り母をつれて、港の倉庫密集地へと向かう。
 そしてつれられた倉庫の中には、やはりというか、驚くべきというか、一万点以上のお土産をしまう透明なケースが並んでいた。
 ケースにはドアがあって、小さな部屋のようになっている。そして外からでも、中の物がよく見える。
「手前に帽子二千点、靴二千足が置かれていますわね。洋服一万着はその奥のようです」
「エレガンさん。本当にこれを、私一人がもらっちゃっていいの?」
「はい。全てお母さまのものですわ」
「ありがとう。といっても、驚きすぎて戸惑っているわ。こんなにあっても、どうしましょう」
「ひとまず、いらないものは売ってしまいましょう。お母さまの体型がわからなかったので、いろいろなサイズの物を用意しましたが、この星でも女物のアイテムは売れるでしょう。というわけで、ささ、お母さま。手前から見ていってください」
「はあ。まあ」
 母はおそるおそるといった調子で、倉庫内を歩く。そしてまず靴が並んでいるケース部屋に入ると、すぐに顔を輝かせていった。
「まあ、これステキね。あら、これも。あらあらまあまあ、どうしましょう。いっぱい目移りしてしまうわ」
 母はもうお土産の品定めをし始めて、いろいろ見たり、持ったりしている。これは、釣れてしまったな。うちの母。
「やったあ。お母さま、楽しんでる!」
 ネーリが喜ぶ。
「ですが、気持ちはわかります。こんなにもステキな物が全部自分のものだって言われたら、皆うれしくなりますよ!」
 リリメが言う。
「まあ、ちょっとしたお店よりも品揃え多いしねえ。サイズ違いのかぶりはいっぱいあるけど、それでも一日じゃ見切れないよ」
 オーハが言う。
「あの、俺、この間帰ることとかはできないの?」
 俺が言うと、皆は口をそろえて言った。
「清太はまだここにいて」
「はい」
 大人しくしている。
 まあ、何もしないのは得意だから、ただ立っていればいいか。
 そして俺をおいて皆は、母の元に行って、目の前の物を見ながらああでもないこうでもないと言い始めた。

 ふと気が向いたので母の動向をチェックしてみると、今母はスマホで目の前の品をひたすら撮っていた。
「何してるの?」
 俺はつい近づいて、訊いてみる。
「ああ。清太。やっぱりサイズが違ったり、好きじゃない色のがあったりするから、早速売っちゃおうと思って。エレガンさんには悪いけど、この倉庫をいつまでも私のために使わせてもらうのは悪いでしょ。だから、欲しい物を百点くらいにしぼって、後は景気よく売り払おうと思うの」
「百点はもらうんだ」
「だってエレガンさんが私のためにくれたのよ。できるだけ持っていないと悪いでしょ。ふふふ」
 そう言う母は、楽しそうだ。
「あ、欲しい物は全部清太の部屋に入れるから。そういうことで」
「はあ。わかった」
 俺はちょっとうんざりして、すぐに母から離れた。
 あーあ。早く帰れないかなあ。

 それからしばらくして、昼ごはん時になったので、皆でホテルに戻った。
 ここでいう皆の中に、母も入っている。
「悪いわね。私もおじゃまさせてもらっちゃって」
「いいえ。清太様のお母さまですもの。大歓迎ですわ」
「お母さんと長くいられて、幸せです!」
 エレガンやネーリがそう言う。笑顔を浮かべているので、心からのものだとわかる。
「まあ、なんてこと!」
 そして皆でのごはんが終わった頃、母がスマホを見て驚いた。
「どうしたの、お母さま?」
「ネットマーケットに出品したオールガール星の物の落札額が、全部一点ずつ百万円を超えてるのよ!」
「はあ?」
 俺は普通に驚いた。
「まあ、普通に買ってもそれくらいはしますわね。オールガール星とは通貨の価値が違うでしょうから、正確な差はわかりませんが」
 そしてエレガンがとんでもないことを言う。
「むしろきっと安いくらいだよ。ここにある服。皆ブランド物だし」
 オーハもとんでもないことを言う。
「良かったですね、お母さん!」
「おめでとうございます!」
 ネーリとルルモがそう言った。
「どうしよう。こんな大金、エレガンさんに返した方が」
「いいえ。あれらは全てお母さまのものです。どうかお受け取りください」
「で、でも」
「でしたら、次にまた来た時にたくさんおもてなしをしてくださるとうれしいです。ね、皆さん?」
「うん!」
「はい!」
 皆元気にうなずいた。すると母は、負けたように笑った。
「はい。わかりました」
 お金持ちって凄いなあ。
 こうして母は、一日にしてお金持ちになった。
 けど、無駄遣いはしてほしくないな。俺が言えた義理じゃないけど。

 その後母と別れた皆は、地球観光をした。
 流石に俺は観光に興味が無かったので、辞退した。すると、今回は皆わかってくれた。
 そして、皆それぞれお土産や記念写真を得ながら、すぐにオールガール星に帰る日になる。
 帰る間際にもう一度、母と会えることになった。
「それじゃあ、清太。元気でね」
「うん。母と、父もね」



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