真夏の館

十 的

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倉中一夜1

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 急にものすごい力で部屋の中に入れられた。
「おい、誰だ、押したの」
 バタン。ドアが閉まる。俺は部屋の中からドアを開けようとする。
「っ、ダメだ。開かない。これはひょっとして、あのイスのひもみたいな力か?」
 皆でこの部屋を調べようと思っていたのに。とんだ想定外だ。
 ふう。一旦おちつこう。まずは、この部屋がどんなところかはっきりさせるんだ。
 部屋を見渡すと、部屋はちらかっていた。
 キリン、ワニ、カバ、イタチ。他にもいろんな人形が床に置かれている。けれど、人形は一か所に集められているわけではなく、床に描かれたいくつもの四角の中に、一つ、もしくは二つずつ入れられている。ちなみに床の四角は白と黒の二色があった。
 この人形に、意味はあるのか。ひとまず撮影しておこう。
 あと部屋にあるのは、ドア近くに置いてある金庫と、テーブル、そしてテーブルの上にあるチェス盤くらいだが、今は人形を撮影することにする。どうせ今はここから出られないかもしれないのだ。だったら撮影を優先する。
 とはいえ、気分はすぐれない。なにせ、この館に入る前までは、友達に危害は加えないつもりでいたからだ。しかしこの館には何かがいるようで、季目はそれにさらわれてしまった。更に俺達は今閉じ込められている。こうなったのもつれてきた俺の責任だろうから、何も感じてないわけじゃない。
 でも、だからって何ができるっていうんだ。きっと、今の俺にできることは少ない。だから、できる限りれいせいでいよう。友達に謝るのは、無事にここを出た後だ。
 そんな時。人形を半分以上撮影したところで、どこかから音楽が聞こえてきた。あの、鳴っている間にイスに座れと言う音楽だ。
 だが、この部屋にイスはない。
「これは、ひょっとして詰んだか?」
 そう思いながら、とっさにテーブルを映す。するとテーブルには、紙が一枚置かれていた。
 こんな時でもカメラごしに見る。本当はそんな余裕ないかもしれないが、もし無事に出られたらこのカメラにおさめた映像は宝になる。できるだけ貴重な映像を撮り続けたい。
 テーブルの紙には、こう書かれていた。

 ネズミをどかす玉は消えたキングが隠した。消えたキングを見つけろ。

「キング?」
 紙の横を見てみれば、チェス盤にはほとんどの駒が初期位置に並んでいるようだったが、一駒だけ無かった。俺はチェスはわからないが、きっとこのぽっかり空いている位置にあるはずの駒がキングなのだろう。
「この部屋のどこかにキングがいるってことか。ん?」
 俺はそこで、キングがいるはずのマスが少し上にとびだしていることに気づく。
「なんだこれ?」
 俺はそのマスを押す。すると。
 なんと、チェス盤の1マスが、ぐぐぐーっと上にとびだした。
「おお、すごいしかけだ」
 そこで俺は、ピンとくる。
「このとびだしたマスに駒は乗っていない。しかし、このチェス盤のマス目が、床の四角と関係しているのなら、チェス盤のとびだした位置と同じ、床の場所を調べればいいってことなんじゃないのか?」
 指を離すと、とびだしたマス目は元に戻る。だが、それでもいい。とびだしたマスの場所は憶えている。そしてチェス盤は、ぴったり床の線と同じ向きになるように置かれている。これはもう、間違いないだろう。
 俺はそのチェス盤が示した通りの位置の床にあるカバの人形を、持ち上げた。
 すると。
「ん、紙?」
 俺はカバをどかして、見つけた紙を見る。紙には、こう書かれていた。

 ここにキングはいない。

「じゃあどこにキングはいるんだよ」
 そう思いながら、紙をひっくり返す。
 すると裏にも、言葉が書いてあった。

 キングは、いつもすぐにどこかへ行ってしまう動物が隠している。

「なんだ、なぞなぞか?」
 そう言って、俺は再び部屋の中にあるいろんな動物の人形を見る。
 コアラ、カンガルー、モモンガ、サル、バク。
「ん。サル、か」
 俺はカバから少し遠くにある、サルの人形を拾う。すると。
 サルの下から、キングと思わしき駒が見つかった。その下には、鍵がある。
「よし。どうやら正解みたいだな。どこかへ行ってしまう、つまり去るからサルってか。簡単ななぞなぞで良かった」
 キングをどかして、鍵を手に入れる。おそらくこの鍵は、部屋の金庫を開ける鍵だろう。
 試しに金庫にさしてみると、ほら開いた。
 中には確かに、白い玉が入っている。そしてその時、部屋のドアが勝手に開いた。
「これでクリアってわけか。他の部屋もこんな感じになってるのかな」
 そう思いながら、玉を持って急いで部屋を出る。今はいつ止まるかわからない音楽が鳴っているのだ。心に余裕はない。
「よし、出られた。そして、ネズミよ、どけ」
 そう言って玉をネズミに見せると、ネズミはことんとイスの上から落ちた。そして、持っている玉が砕け散る。
「うおっ。おどろくなあ。けど、これで座れる」
 俺はすぐに座る。すると黒いひもがかってに動き、俺の体をイスにしばりつけた。
「うおおっ。く、忘れてた。最初は罠だと思ったが、ほんと、なんてしかけだ」
 けど、これでこの音楽が鳴り終わっても大丈夫だろう。そこで俺はようやく余裕を取り戻し、他の仲間がどうなっているのか気にすることができた。
 さて、俺が部屋に閉じ込められていた間に、あいつらは何をしていたかな。俺がいなくて悲観にくれてなきゃいいけど。
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