神様だけにバカ売れしたカードゲームが、異世界で超優秀な特殊能力に生まれ変わりました(ターゲットブレイク)

十 的

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3 荒野その3

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 2 やはり異世界といえば冒険だろう。

 目が覚めた。朝、のはずだが、居住地が地下なので火の明かりしか光源が見当たらない。よって、今はまだ本当に朝がきたかどうか判断できない。まあ、たぶん朝だな。俺の体内時間は正確な方だ。
「グルルル」
 起き上がると、ベッドにしていたウッドルフも動いた。他の皆も、既に動き始めているようだ。キリなんて今、木の板を生み出して床にしきつめている。気がつけば木桶や木皿なんかも置いてある。おかげで居住地が改善されていく。ありがたい、是非もっとやってほしい。
「おはようございます、マスター」
「おはようスイホ、ウッドルフも。他の皆は?」
「それぞれ好きなように動いています。私は、マスターが起きるまで待っておりました。お目覚めの水はいかがですか?」
「ありがとう。もらうよ」
 スイホから水をもらって、喉を潤し、顔を洗う。ふう、さっぱりする。
 そういえば、夢で神様が新たな力をくれるって言ってたけど、とっ君、説明お願いできる?
「イエスマスター。今日からマスターは、新たに三つの力を使えます。一つはチャンスカードの力。今日よりマスターは、チャンスカードを一枚使って、クリーチャー一体のパワーアップ、既に召喚しているクリーチャーの呼び出し、新たに5コストを使えるようになるまでの時間十秒短縮のいずれかの力を使えます」
「へー。え、それ強くない?」
 ターゲットブレイクのカードには、チャンスカードを何枚か使って発動する。という効果があった。昨日ヒロードラゴンやダイヤモンドワイバーンが使った力もそれが元となっているはずだ。
 そのカード独自の効果を無視して、たった一枚でパワーアップというのは、結構良い力な気がする。
「そのパワーアップって、一人のクリーチャーに重ねがけできる?」
「ノーマスター。パワーアップは一段階のみです。そのかわり、チャンスカードを使う程パワーアップ時間が延長されます。チャンスカード一枚のパワーアップは、約一分程です」
 ふむふむ。なるほど。そういう感じか。
「既に召喚しているクリーチャーの呼び出しっていうのは?」
「簡単に言うと、瞬間移動です。どんなに離れていても、既に召喚しているクリーチャーを目の前に呼ぶことができます」
 おお、それも便利そうだ。主に護身の力だな。
「五コストを使えるようになるまでの時間を短縮っていうのは、つまりチャンスカードを六枚使えば、60秒待つ必要がなくなるの?」
「イエスマスター。なお、既に召喚しているクリーチャーの数を確認したい場合は、私をお頼りください。目の前に召喚リストを用意します」
 とっ君がそう言うと、突然目の前に半透明の、カードリストが現れた。イルフィン、ダイヤモンドワイバーン、スイホといった名前がある。おお、これは今俺が召喚しているクリーチャーの情報か。む、二枚だけ赤色になって大きな×印がしてあるカードがあるな。メタルギアジャイアントとヒロードラゴンか。これは昨日、恐竜アンピスノに倒された印だな。うん、既に倒されているクリーチャーのことも、ちゃんと憶えておこう。
「ありがとう、とっ君。この召喚リストは消しておいてくれ」
「イエスマスター」
 すぐに目の前の召喚リストが消える。
「二つ目の力は、即座にチャンスカードを使用できる力です。マスターは残っているターゲットを、即座にチャンスカードに変えることができます」
「おお。それは便利だ。守りの力を消費するのはもったいない気がするけど、チャンスカードを使いたい機会の方が多そうだから、これはありがたいな」
 ターゲットブレイクのルールでは、ターゲットを壊さない限りチャンスカードは増えない。というか壊れたターゲットがチャンスカードになる。その条件が若干変わるというのは、うれしい変化だ。
「三つ目の力は、召喚クリーチャーを全消滅させ特殊能力をリセットした時でも、事前に一人だけクリーチャーを選んでおけば、そのクリーチャーだけ消滅されずにすむという力です」
「うむ、つまり?」
「召喚能力を終了させ、新たに召喚能力を発動させるまでの一時間を、一人のクリーチャーが守ってくれます」
「それってすごくありがたくね?」
 俺の特殊能力の弱点の一つは、能力再使用までの一時間という長い時間だ。そのタイムをクリーチャー一人が守ってくれるというのは、ものすごくうれしい。
「なるほど。これでいつでも気楽に特殊能力をリセットさせられるな」
「なお、新たに特殊能力を使った時、その時点でまだクリーチャーが現実に残っていれば、そのクリーチャーが一人目の召喚クリーチャーとして認識されます。その点はご注意ください」
「うむ、わかった」
「神様からいただいた新たな力は、以上です」
「ありがとう、とっ君。これだけの力をもらえれば、すごく助かるよ。また何か困った時は助言よろしく」
「イエスマスター」

 さて、キリから朝ごはんのバナナをもらって食べた後、地上に出て朝日を浴びる。
 キンカは、何やら作業をしている。あれは、もしかしたら俺が頼んだ剣の作成かな。すごくうれしい。
 だが、他のクリーチャー達はヒマそうだ。皆地下居住地から離れないが、特にやることもないといった様子。それじゃあ、何か指示を出すか。
 というか、俺、折角だから冒険したい。ここは荒野で、一見何もないけど、それでも地下居住地を拠点にして冒険したい。それくらいしかやることなさそうだし、やろう。
「キンカー、あとキリはそのまま作業を続けててくれー。他の皆は、集まれー。一度冒険、いや、探索にいこー」
 俺が声をかけると、皆集まってくれた。おお、こうして見ると結構多いな。
「えっと、それじゃあ。ダイヤモンドワイバーン、確か西は海だったんだよな。どのくらい離れてるかわかるか?」
「ギヤアアーン!」
「マスター。ダイヤモンドワイバーンは、一日ではたどり着けないだろう。と言っております」
 スイホが言う。
「そうか。それじゃあ、スイホ。昨日恐竜がいた方角は、どっちだった?」
「西です」
「もろかぶりだ」
 俺は思わず両手で顔をおおった。
「いや、待てよ。恐竜くらい、もう倒せるかも。レベルも上がってるし、神様から新たな力ももらっている。上手くすれば、いけるか?」
 ちょっと考えて、それから首を横に振る。恐竜と戦うとしたら、チャンスカードは9枚フルに欲しい。補充するには現在の召喚状況をリセットする必要があるけど、今いる皆を消すことは抵抗があるし、キリとキンカは作業をしてくれている。だったら別に今召喚状況をリセットしなくても良いと思う。
 となると、当分海の塩は諦めて、西以外の方向を探索だな。
「ダイヤモンドワイバーン。南の森と北の山、どっちの方が近い?」
 東の国は、まだ早いと思う。行くにしてもイルフィンやダイヤモンドワイバーンは置いていくことになるだろうな。できるだけ全員人型で訪れたい。
「ギヤアアーン!」
「マスター。ダイヤモンドワイバーンは、ここからなら南の森の方が近いと言っています」
 スイホが言う。なるほど。じゃあ森に向かおうか。どっちにしろ行くあてなんかないし。気の向くままに探索するとしよう。
「よし。それじゃあ南に向かおう。このメンバーで南に行くぞー!」
「だったらマスター。移動を始める前に、今の戦力を増やしておかないか?」
 ヒイコがそう言う。
「賛成。昨日みたいに恐竜が現れたら、マスターを守るのは難しい」
 ドキまで言う。うーん、だったら、そうしておこうかな。
「わかったよ。でも、特に用がないのに呼び出したら、怒ったりしないかな?」
「誰もそんなことで怒りません」
 皆にそう言われた。なので、大人しくクリーチャーを召喚する。
「よし。そこまで言うなら召喚しよう。メタルギアジャイアント、召喚!」
 俺の目の前に一枚のカードが現れて、それがメタルギアジャイアントに変わった。これでメタルギアジャイアントは二人召喚したことになる。
 サイズは、昨日よりも若干大きいな。うん、やっぱりロボがいると頼もしい。
「メタルギアジャイアント。お前は強敵が現れた時の備えだ。それまでずっと護衛をしてくれ」
 メタルギアジャイアントが腕を上げる。おお、了解してくれたか。良いやつだ。
「それじゃあ、再召喚は一分後か。待ってるのもなんだから、移動しながら召喚しよう」
「キュッキュー!」
「ワオン!」
「おお、ウッドルフ。背中に乗せてくれるか。ありがとう。それじゃあ、出発!」

 こうして、俺の冒険が始まった。といっても、日没までには居住地に戻って来るつもりだけど。
 ウッドルフに乗って、荒野を駆ける。おお、速い速い、快適だ。そして皆も速い。全員送れずに走る。いや、正確にはメタルギアジャイアントの移動速度に合わせて走っている。
 そして、大体一分経ったな。と思った頃。俺はフレイムピラージャイアントを召喚した。
 次に、スイボツジャイアント。
 そんでもって、フォレストジャイアント。
 最後に、アースジャイアント。
 新顔はこの五人。これだけ召喚したのだから、もう周囲は賑やかだ。特に五人の巨人が存在感が凄い。地面をドシンドシン響かせながら走っている。これなら、恐竜にも勝てるかな?
 そう思いつつ、ひたすら南へ。ところで皆、ずっと走ってるとつかれたりしないかな?
 しばらくしたら、休憩を入れよう。無理はよくないからな。

 砂をかぶって埋まっている虫を時折踏みつぶしながら、結構南下した。ちょっと暇になってきたかなー、とも思う。そして、どうやら皆は休憩がいらないらしい。クリーチャーだからつかれないとのことだ。クリーチャーって凄い。
「キュ!」
 その時、イルフィンが何かに反応した。
「キュッキュッキュッキュー、キュー!」
「お、なんだ。どうしたイルフィン!」
「マスター。イルフィンは何か見つけたって言っている」
 ドキが俺にそう教えてくれた。
「そうか。イルフィン。それはどこだ?」
「キュー!」
 イルフィンがついてこいとばかりに行先を変える。俺達はそんなイルフィンについて行った。
 するとその先には、新たなモンスターがいた。
 見た感じ、土人形だ。俺と同じくらいの大きさの、人型。それが数体、それなりに集まっている。
 あと、土人形達の近くに、一つの石がある。妙に四角いから、人工的なものかもしれない。
「イルフィン。見つけたのはあれか?」
「キュー!」
 うなずくイルフィン。ただ、土人形達に動きは無い。ひょっとすると、モンスターではなく本当の人形かもしれない。
「プシュー!」
 そう思った矢先のこと。イルフィンが口から水を吐いて土人形を攻撃した。哀れ土人形は爆砕飛散する。
「お、おい、イルフィン。いきなりそんなことしていいのか?」
「キュー!」
「マスター。イルフィンはあの土人形を生物だと言っている。それに、このようなところにいるのだから、まず倒してもいいだろう」
 ヒイコも好戦的なことを言う。
「いやでも、いきなり攻撃するってちょっとよくなくない? 後で実は大切なものでした。みたいなことになったら」
「水の槍」
「土の槍」
「火の槍」
「皆もう総攻撃してるー!」
 皆の攻撃により、どんどん土人形が壊されていく。
 すると、この地に変化が起こった。
 なんと、地面からどんどん土人形が現れたのだ!
「こ、これ、魔法? ひょっとしたら、攻撃すればするほど無限に増えるとかじゃ」
「とにかく攻撃してみよう。火の竜巻」
 ああっ、ヒイコが火の竜巻を生み出してどんどん土人形を壊していくー!
「ウッドルフ。ひとまず俺は、土人形達を遠くから見てることにする」
「ワン!」
 どうやらウッドルフはずっと俺を背に乗せて待機してくれるらしい。ありがたい護衛だ。
 ジャイアント五人衆も土人形破壊を始めて、目の前では味方の一方的な攻撃の嵐が始まった。
 あ、あれ。土人形も、少しは動いてる?
 なんなんだろう。ここ。あ、そういえば、あんな土人形、初めて見たな。つまりここは、あの土人形達にとって特別な場所なのではないか?
 そう思っていると、土人形は全て倒され、かわりに新たな土人形が現れた。
 ただし、今回の土人形は強そうだった。今までのより若干大きく、更に剣と盾を持っている。あの剣、斬れるのかな?
 そう思っていると、すぐに皆の魔法によって土人形が爆砕された。
 次は、今倒したやつと同じで、剣と盾は持っているが、そのかわり普通サイズの土人形が、たくさん現れる。
 な、なんだここ。本当になんだここ。やっぱり、モンスターが無限に湧いたりするのか?
 でも、モンスターの形が変わったな。ということは、ひょっとしたら、どんどん敵が強くなっていってる、とか?
 もしそうだったとしたら、どうしよう。現れる敵が強くなりすぎて手遅れになる前に、逃げた方が良いかもしれない。
「み、皆、一旦攻撃やめ!」
 慌ててそう言うと、皆大人しく攻撃をやめる。
 けどそのかわり、敵からの攻撃が始まった。
 土人形が剣を振る。三人娘、イルフィン、ダイヤモンドワイバーンはかれいに回避し、巨人達は当たってもダメージにすらなっていないみたいだが、なんだろう。ここを去るなら今な気がする。
「とにかくさ、ここはなんだか不気味だから、離れた方が良いと思うんだけど」
「しかしマスター。敵は見ての通りザコだ。この程度、恐れるに足らぬのではないか?」
 そう言ってヒイコが向かって来た土人形を蹴ってひっくり返す。
「私も、ヒイコと同意見。それに、ここは嫌な感じがしない。危険な場所ではない」
 ドキもそんなことを言っている。彼女達の意見を聞いても良いのだろうか。答えがわからん。
「あ、では。ここを去るとしてもその前に、あの石を調べてみるというのはどうでしょう。もしかしたら何かわかるかもしれませんよ?」
 スイホがそう言って石を指さす。うーん、確かにここの手がかりが何かあるのなら、それを知ってからでもいいな。
「わかった。では、誰かあの石を調べて来てくれ。俺が行ってもいいけど、その時は皆護衛してくれ」
 そういえば、土人形達はある程度離れている俺とウッドルフには全く攻撃してこない。もしかしたら、本当にここは危険ではない、のかもしれない。ううむ、判断に迷う。
「では、私が調べる」
「いや、ここは私が調べよう。ジャイアント共、石を調べている間私を守れ」
「あ、待ちなさい二人共、抜け駆けは許しませんわ!」
 美少女三人が言い争いしながら石に近づく。抜け駆けってなんのことだろう?

 数分後。
 石を調べ終わった三人が報告をしにこっちへ来た。すると、土人形達は三人娘に近寄らなくなった。
「マスター、それではわかったことをお伝えしますわ」
「待ったスイホ。その前に、全員あの土人形から離れて。ある程度離れたら攻撃されなくなるんだったら、それを確かめておいた方が良いから」
「そのことも含めて、説明する」
 ドキにそう言われる。
 あれ。ということはつまり、この子達は既におおまかなことを知っている?
「まず、あの石についてだが、どうやら石はこの場所、修行の場の制御装置らしい。あの石はこの場所でモンスターを生み出す機能と、それについてを説明する機能を持っていた。具体的に言うと、上の面がスマホみたいになっていた」
 ヒイコが言う。えっ、あの石そんな高性能だったの?
「ここは修業の場として、ある魔法使いが弟子を育てるために作った魔法の地らしいですわ。まず最初に、レベル1の土人形が百体現れる。次に、レベル11の中ボスモンスターが一体現れる。それを倒したら、今度は十レベルのモンスターが百体現れる。その次はレベル21の中ボス、と、そういう仕組みになっているらしいんですの」
 スイホが言う。なるほど。だからほぼ無限湧きみたいに見えるのか。
「最後の敵は、レベル99のラスボス。それを倒せば、豪華な景品がもらえる」
 ドキが言う。景品って、なんだかアトラクションみたいだな。
「そして、ここが重要なのだが、百体現れるモンスターは修業の場の内側にしかいられないが、一体だけ現れるボスは倒されるか、逆にこの修行の場にいた全員が倒されない限り、存在し続け、おそいつづけるらしい」
 ヒイコが言う。
「え、それってつまり、逃げても追いかけてくるってこと?」
「まあ、そういうこと」
 三人がうなずく。
「ですが、それさえ気をつけていれば、ここは安全なレベル上げの地とも言えますわ。ちなみに、しばらく放置しておくと、修行の場はまたレベル1のモンスターからリスタートとなるらしいです」
 スイホが言う。
「だから、別に危険ではない」
 ドキが言う。
「私達が知ったことは以上だ。さあ、どうするマスター?」
 ヒイコが言う。そ、そうだなあ。じゃあ。
「わかった。危険じゃないなら、もうしばらくここにいてもいい」
「ということは、モンスターを倒しまくれということですのね?」
 スイホが顔を輝かせる。
「了解。マスターは戦闘の続行をお望み」
 ドキが言う。まあ、危険じゃない程度の戦闘だけできるのなら、やった方が良いのかなあ?
「わかった。それではマスター、石を調べてきた褒美として、ほめていただきたいのですが」
 ヒイコがそう言って、どこか期待する瞳で俺を見る。ほ、ほめる?
「あ、ありがとう。ヒイコ。ヒイコのおかげで助かったよ」
「うむっ。その通りだっ。これからももっと私を頼ってほしい!」
「あ、ヒイコだけずるいですわ。マスター、私も、私もほめてくださいまし!」
「私も、ほめるの」
「あ、う、うん」
 こうして俺は、なぜか妙にほめられたがる美少女三人をほめるのだった。
 そしてその後すぐに、この場にいる味方全員に、土人形を可能な限り破壊することを命じた。

 レベル21の土人形は、両手剣を持っていた。レベル20の百体モンスターは、その小さい版。
 レベル31の土人形は、四足獣型だった。レベル30の百体モンスターは、その小さい版。
 ここで、俺のレベルが1上がった。これでレベル32だ。おお、ここでなら簡単にレベルを上げられる気がする。
 けど、次の土人形はレベル41だ。これはひょっとして、ここら辺で終わりにした方が良いか?
「皆ー、そろそろやめにしよう。次のモンスターはきっと手強いから!」
「マスター、まだまだこの程度では余裕だぞ。きっともう一段階強い方が、良い相手になる。もう少し戦いを続けたいのだが?」
 ヒイコが言う。そう言われても、一体だけ現れるモンスターは地の果てまで追ってくるんだろ。そんなやつに勝てなかったら、俺の身が終わるんだが。
「マスター、危険を避けて強くなることはできませんわ。私も更に強くなりたいのです。どうかもっと戦わせてください!」
 スイホ、お前まで。
「マスター。もうちょっとだけ」
「キュッキュー!」
「ギヤアアーン!」
「ワオン」
 しまいにはウッドルフまで戦いたそうにする。まったくもう、仕方ないな。そこまで言うんなら、皆、やってくれ。
「わかったよ。それじゃあレベル41のモンスターを倒したら、ここを去ろう。でも、皆十分気をつけるんだよ」
「イエスマスター!」
「キュー!」
「ギヤアアーン!」
「ワン!」
 ジャイアント達は、俺に向かって手を振る。皆自信ありすぎるけど、不安だなあ。そうだ、今ならもう一体くらい増やしてもいいかな。
「じゃあ、ゴールドラゴン召喚!」
 目の前に一枚のカードが現れ、それが金色の竜に変わる。ゴールドなドラゴンだからゴールドラゴン。きっとこいつならタフに戦ってくれるだろう。
「いけゴールドラゴン。皆に加勢しろ!」
「ゴオオオーン!」
 ゴールドラゴンが一鳴きして戦いに加わる。するとそこでタイミングよく、修行の場にレベル41の土人形が現れた。
 またしても四足獣型だが、頭と尻尾が二つある。俺とのレベル差は9だから、これだけ数の差があっても皆が苦戦するかもしれないな。
 三人娘とイルフィンが空中に浮かびながら属性攻撃。その間に入っていくように、ダイヤモンドワイバーンとウッドルフ、そして五体のジャイアントが土人形に迫る。ゴールドラゴンは、空を飛んで金属片の雨を浴びせている。あれはとてつもなく強力な属性攻撃だろう。
 最初土人形は半分以上の属性攻撃をかわしていたが、やがてジャイアント達によって視界が遮られ、俺がいる所からでは見えなくなる。やっぱり、こっちには数の差が結構あるな。きっとこれだけいれば、レベル41にも勝てるはず。そうでなければ困る。
 と思っていると、十数秒後。戦いの結果が出た。
「レベルが上がりました」
 とっ君の声が聞こえた。よし、どうやら皆無事のまま倒せたみたいだな。俺のレベルも35。レベル的には、これくらいあればもう十分かもしれない。
 続いて修行の場に、新たな土人形が湧くのを確認した。今回の土人形の形も、双頭の四足獣だ。あれ一体一体がレベル40か。きっと俺が近づいたら、瞬殺されてしまうんだろうな。
 よし。それじゃあ流石に、次の51レベルは危険だろう。もう皆を、ここから撤退させないと。
「よーし、それじゃあ皆、そろそろ次に行くよー。一旦戻ってきてー」
「イエスマスター。ではその前に、40レベルのモンスターを百体も放置しておくのはもったいないので、最後に、とっておきの攻撃をして終わりにしますねー!」
 すると、目の前の戦場からそんなのんきな声が聞こえてきた。そして。
「水の暴風!」
「ずるい、スイホ。私も活躍する。土の暴風」
「それなら私だって、火の暴風!」
 目の前の光景が、水、土、火が混じる巨大竜巻で埋め尽くされた。
 あ、あの、これは一体?
 あ、よく見ていると、巨大竜巻の中に金属片と木片も混じりだした。ひょっとして、巨人達もこの巨大竜巻に自分たちの攻撃を加えたのか?
「ギヤアアーン!」
「キュッキュー!」
 まずダイヤモンドワイバーンやイルフィン、それから少し遅れて残りの皆が巨大竜巻から飛び出してくる。どうやら皆無事らしい。
「ふうう。少しやりすぎました!」
 スイホが言う。
「でも、スッキリした」
 ドキが言う。
「ああ。気持ちの良い技だったな」
 ヒイコが言う。
「まったくもう。皆、おどかすなよ。俺はずっとお前達のことを心配してたんだからな?」
 俺が皆に言う。
「ごめんなさい、マスター。でも、ちょっとしたドッキリだから、笑って許して?」
 スイホにそう言われる。
「あはははは、あはははは!」
 ヒイコが突然笑い始める。
「あはははは、あはははは!」
 スイホもドキも、笑い始める。
「キュッキュッキュ、キュッキュッキュ!」
「ワオワオワオーン、ワオワオーン!」
「ギヤアアーン、ギヤアアーン!」
「まったくもう。皆、仕方ないなあ。あはははは、あはははは!」
 俺もつられて、笑い始める。ジャイアントもドラゴンも笑う。
 すると。
「レベルが上がりました。レベルが上がりました」
 数十秒後。やっと巨大竜巻が消えて。
 修行の場を見ると、そこに一体の巨大な鳥型の土人形がいた。
 あー。あれ、たぶんレベル51の中ボスだよな?
 たしか、どちらかが倒れるまでずっと戦いを求めてくるっていうやつ?
 そこで、皆の笑い声が止まる。
「マスター、危険です、下がってください!」
 スイホにそう言われる。
「俺はもうやめろって言ったんだぞ、もうやめとけって言ったんだぞ!」
 パニクっている間に、土人形がこちらへ突進してきた。
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