神様だけにバカ売れしたカードゲームが、異世界で超優秀な特殊能力に生まれ変わりました(ターゲットブレイク)

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9 王国その1

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 その後、俺は王女様達と共に夜を過ごした。
 サガンドラゴン二人、ロックワイバーン、ドキの力で王女様達用の地下居住地を作ってもらい、小一時間でそれが完成。その間、木属性のジュレイドラゴン達が食料となる果物や、馬用の干し草を出したり、金属性のゴールドラゴンがドラム缶風呂を増やしたりして、にぎやかな時間を送った。
「まあ、サバク様、凄いです。このように多才なクリーチャー達を従えるなんて、やはりサバク様は神の使いです!」
「いやいや、そんなことはありませんよ王女様。これらは全て、クリーチャーの皆がいなければ実現しなかったことです。俺の力とは呼べません」
「またご謙遜を。サバク様。私達をこんなにも歓迎してくださり、真に感謝いたします」
 王女様にそうおだてられながら、皆でご飯を食べる。俺達はお礼にと、干し肉と硬いパンをもらった。久しぶりの肉とパンだったので、俺は感動した。
「サバク様、私達が住んでいたアッファルト王国の王都、ファルトアは、ここより東の地、馬車で移動して三日程の場所にあります」
「ああ、やっぱり。話には聞いてました。ここから東に、国があるということは」
「そうでしたか。ファルトアはとても良い所です。民はいつも笑顔で、食べ物も美味しい。絵や建築物等、芸術も多岐にわたります。しかし、今はバウコン帝国からの軍が迫っていて、その大切な全てが失われる危機に瀕しています。そんな中こうしてサバク様とお会いできたのは、正に神からの救いに違いありませんわ」
「あー、そうかもしれませんね」
 実際に神様を見た手前、否定しにくい。ひょっとしたら神様も、こんな出会いが起こるとわかっていて俺を荒野にワープさせたのかもしれないし。
「ちょっと、王女。あまりマスターに近づかないでくださる?」
「マスターに色目を使うのは、許さない」
 そして楽しい食事をしたいのだが、美少女達が常に俺を囲いながらも、王女様を睨んでいるので、空気が悪い。
「いえ、しかし、私はもうサバク様の奴隷ですので。サバク様。彼女達のような美しい少女達に囲まれていては、私のような者など眼中にないかもしれませんが、それでも私も、今日からサバク様のお役に立てるように、日々精進したいと思います。どうですか、折角サバク様の好きにできるのです。今夜は私とエッチなことでもいたしませんか?」
「ちょっと待って。俺は王女様を奴隷にした憶えなんてないから。エッチなんてしませんよ絶対。そういうこと言うのはやめてください!」
「何をおっしゃいます。私はアッファルトをお救いくださるサバク様のしもべ。それはもう決まったことです」
「いや決まってないから。しもべとか欲しくないから。というか、言いにくいけど、俺はできるだけ協力するんだからね。絶対に国を救えるわけではないからね!」
「ええ、それは十分に承知しています。はっ。もしやサバク様は、私のような女ではなく男性の方が好みなのですか。それならば早く言ってくだされば」
「言ってない。俺はちゃんと女の子が好きだから。ただこの状況でそういう雰囲気になれないだけだから。男なんて紹介されても困るだけだから、だから騎士の皆さんは照れないでください!」
 こうして、異世界に来てから、一番焦る出来事があったりしつつ。
 翌朝。俺達は皆でアッファルト王国に向けて移動した。

 王女様つきそいの騎士から、替えの服をもらった。
 今まで着の身着のままだったので、ありがたくそれを貸してもらう。今まで着ていた服は、家に置いておくことにしよう。
 王女様達は馬車で、俺達はほぼ歩きで移動する。俺は一人のジュレイドラゴンの背に乗せてもらった。今はドラゴンが五種類二人ずついるので、各ドラゴンをA、Bと呼称する。俺が乗っているのはジュレイドラゴンAだ。
 二人いるワイバーンは俺達の上空を旋回するように移動し、美少女五人もそれぞれドラゴンに乗った。後は馬車を守りながら、兵士の先導に導かれて東へ行く。
 昼、夜、朝、の途中休憩の最中に、俺は王女様達からいろんなことを聞いた。
 曰く、国には電気がないらしい。ただし魔法や魔法道具が発展しているので、照明やクーラー等の設備は整っている。
 乗り物は基本馬車。珍しいもので魔獣車。どうやらモンスターのことを魔獣とも呼ぶらしく、魔獣車は馬車よりスピードが出るが、育て方や扱いが難しいらしい。
 そして、ファルトアが備える兵力はおよそ5万。対してバウコン帝国の兵力は十万以上とのことらしい。偵察部隊が探ってきた報告なので、まず間違いないとのこと。
 そして、バウコン帝国は今まで他の国も侵略していて、必ず征服した国の王は処刑、その親族は全員奴隷にされるとのこと。なので絶対、父であるワッシ王を助けてほしいと、そう言われてしまった。
 なんか話を聞けば聞く程、俺への責任が増してく気がする。だがまずは様子見だ。バウコン帝国と戦うにしても、勝てる相手でなければ挑み損である。
 だから、正直居心地の悪さを感じながらも、王女様達と一緒にファルトアを目指した。
 そして、王女様達と出会って三日後。
 俺は遠めに、王都ファルトアの光景を目にした。

 8 戦場とドラゴン。

 ファルトアは、高い壁に囲まれていた。
 きっと五十メートルはあるだろう。なんとも立派な壁である。それが右から左へズラリ、大きな国を囲うようにそびえ立っている。
「あれがアッファルト王国の王都、ファルトアか」
 パッと見、とても攻め落とせる場所とは思えない。それでも、負けてしまうのだろうか。
「ドウォーン!」
 更にある程度近づいたところで、ロックワイバーンが俺の元まで下りてきた。
「ん、どうしたんだ、ロックワイバーン」
「ドウォーン!」
「マスター。ロックワイバーンは、国の外側に、人の群れが見えると言っている」
 ドキが翻訳してくれた。ん、人の群れ?
「たくさんの人っていうことは、もしかして、軍隊?」
 もしロックワイバーンが見つけたものが、アッファルト王国の軍隊なら問題ない。いや、問題は少ない。
 けど、バウコン帝国の軍隊だった場合、今、非常にピンチなのではないだろうか?
「ジュレイドラゴン、騎士の1人と話がしたい。近づいてくれ!」
「グオオーン」
 ジュレイドラゴンは一鳴きして、近くを移動する馬車の一つに近づく。俺はその馬車を操る騎士に声をかけた。
「俺のクリーチャーが、アッファルト王国の外に密集する人の集団を発見しました。もしかしたら敵国の、バウコン帝国のものかもしれません。急いで確認してください!」
「っ、わかった。すぐ確認する!」
 そう言うと騎士は、まず全ての馬車を止める。そして一頭だけ馬を馬車から外すと、騎士一人だけが乗馬し、一気に駆けた。
 俺達は、その騎士を追う。その騎士は俺に言った。
「申し訳ないが、サバク様。もし前方にバウコン帝国の軍隊を確認できた場合、すぐにでも我らに味方し、敵を一掃してもらいたい!」
 一掃という言葉に抵抗を覚えるものの、俺はうなずいた。
「わかった。もし戦争が始まっていたら、大変だ。その時は俺もクリーチャー達に頼む」
 できることなら、戦いなんてしたくない。というか、人と戦うなんてまっぴらだ。
 けれど、現実はそんな俺の甘さを咎めた。
 その内、俺にも大軍の姿が見えてきたのだ。そして、馬に乗った兵士が俺に言った。
「あの隊列に、旗の色。間違いありません。彼らはバウコン帝国軍です!」
「そんな。もう、ファルトアを攻めに来たのか」
 まさか、相手の動きがこんなにも早いとは。いや、リキュア王女様がギリギリのタイミングで国を出たのか?
 とにかく、もう戦争は起こっている。俺はとっさに、皆に命令した。
「ドラゴン、そしてワイバーン達。頼む、戦ってアッファルト王国を助けてくれ。けど、逃げる人達は追わなくていい。女の子達は、ここに待機して、そのまま俺達の護衛。ジュレイドラゴンA、俺をおろしてから戦いに向かってくれ!」
「イエスマスター!」
「ガオオオーン!」
 俺はジュレイドラゴンAの背から降ろしてもらう。そうしている内に、それ以外のドラゴンとワイバーンが急発進して、バウコン帝国軍へと向かって空を飛んだ。
 ジュレイドラゴンAも、俺を降ろした後すぐに飛びたち、あっという間に遠くへ行く。その間に、五人の美少女は俺を囲むようにして集まった。
「マスター。戦いを早く終わらせたいのなら、私達も何人か向かわせるべき」
「ドキ、そんなわけにはいかないよ。だって君達は、女の子じゃないか。俺はドラゴン達には人殺しの命令をだしてしまったけど、君達にまでやれとは、言えないよ」
「イエス、マスター」
「しかし、サバク様がいてくださり、助かりました。あのドラゴン達の力があれば、アッファルト王国は救われるでしょう。ところで、あのドラゴン達の強さは一体どの程度なのですか?」
 馬上の騎士にそう問われる。
「全員が、俺と同じくらいのレベルだ。今の俺のレベルは、61だ」
「それは凄まじいですね。基本、一般兵はレベル30程度です。指揮官クラスになれば60レベル台も見られるようになりますが、しかしこちらは61レベルのドラゴンが十以上。これでは圧勝でしょう」
 そうだと良いのだが。
 遠くで、ドラゴン達が属性攻撃を上空から地上へと放っている。ここからでは遠くていまいち見えにくいが、どうも軍を圧倒しているようにも見える。
 一応、召喚リストを開いて味方の生死を判断できるようにしておこう。
 そう思っていると、すぐにウォーターワイバーンが死亡した。驚いていると、遅れてロックワイバーンも死亡する。これでワイバーン戦力が全滅してしまった。
 やっぱり、軍隊を相手にしたらこっちも厳しいんじゃ。と思っていると、それ以上のこちらの被害はなく、ずっとドラゴン達が属性攻撃を降らせる光景だけが続いた。
 そして、しばらくすると。
「レベルが上がりました」
 とっ君からの報せを聞いて、俺は自分が62レベルになったことを知った。
 ひょっとしたら、このまま勝てる?
 そう考えると、それはそれで良い気分がしない。俺達は今、人を相手にしているのだ。その影響で今、レベルも上がった。
 つまり、俺達は今人を殺しているんだ。
 あまり気分が良いとは思えなかった。
 しばらくして、上空のドラゴン達が更に遠くへ行く。もっと遠くにも敵がいたのか?
「戦場に近づいた方がいいかな?」
「ノーマスター。戦いは全てドラゴン達に任せればいいのです。私達はゆっくり彼らが帰ってくるのを待ちましょう」
 キリにそう言われる。確かにそれも手だ。俺が向こうへ行っても、できることなんて限られているし。
 そう思っていると、ドラゴン達がどんどんやられた。
 ヒロードラゴンとスプラッシュドラゴンが一人ずつ、立て続けにやられる。
 内心ヒヤッとしたが、その後、ゴールドラゴン一人がやられて、そこでこちらの被害が止まった。
「レベルが上がりました」
 しばらくすると、ドラゴン七人がこちらへと戻って来た。今俺は、63レベルだ。
 三人減ってしまったが、まだドラゴンは七人いる。戦いへの不安がようやく消えて、安心した。
「シュレアー!」
「マスター。スプラッシュドラゴンは、生き残った敵全員がファルトアとは反対の方向へ逃げていくと言っていますわ」
 スイホが言う。そうか。相手は逃げているのか。
 良かった。本当に良かった。敵の中にも、生き延びた人がいるんだな。そのこともうれしい。
「ありがとう、皆。ドラゴン達のおかげで助かったよ。やられた皆には、申し訳ない思いでいっぱいだけど」
「マスター、マスターが申し訳なく思う必要はない。皆、マスターの命令を忠実に全うしたのだ。マスターは胸をはっていてくれ」
「ガオオオーン!」
 キンカに言われ、ドラゴンの皆もうなずいている気がする。けどやっぱり、俺には重いよ。今回のことを、軽くは考えられない。
「本当は、人と戦いたくなんかなかった。けど皆が俺の代わりに全部やってくれたから、俺は無事でいられる。本当に、俺は皆に助けてもらったよ」
「ガオオオーン!」
「あの、バウコン帝国軍は全員逃げたのですよね?」
 馬上の騎士が、そう確認をとる。
「ああ、そうみたいです。ドラゴン達、間違いないな?」
「ガオオオーン!」
「そうですか。サバク様、本当に我らの国をお救いくださり、心より感謝いたします。では俺は、このことをリキュア王女様に伝えてきます!」
 すぐさま兵士が馬を翻し、後方の馬車の方へ走る。
 これで、なんとかなったか。皆が事前に、積極的にレベルを上げてくれていたおかげだな。
「そういえば、やられた皆は一体どうやってやられたんだ?」
「ゴロオーン!」
「強力な魔法や武器が飛んできて、やられたらしい」
 俺は皆と更に話をしながら、やがてやって来た王女様達の馬車と合流した。
 そしてそのまま、ファルトアへ行く。

 バウコン帝国軍がやられた場所は避けて、王国の南門へ行く。
 西門は無かった。まあ先が荒野しかないから当然か。もし門があっても全然使う人がいないだろう。
 南門に近づくと、門壁にある窓から声がかけられる。
「こ、このドラゴン達は一体どうなっているのだ。こちらは説明を求む!」
「このドラゴン達は全て、神の使いであるサバク様の使い魔だ。我らはアッファルト王国の危機を救うため、こうしてサバク様と共に窮地に馳せ参じ、見事敵軍を退かせたのである。すぐに我らを国内に入れよ」
 こちら側の、馬車を引く騎士の一人がそう言った。このまま話し合いで通してもらえたらいいな。
「神の使いとはどういうことだ。説明を要求する!」
「その説明をするために、一刻も早くワッシ王へお目通りを願いたい。案ずるな、このドラゴン達は全てサバク様の命令に従う。それよりも、神の使いであるサバク様とリキュア王女様の通行を妨げるというのならば、その無礼、重罰は免れんぞ!」
「お、王女様の安否を確認したい!」
 その後、王女様が顔を出し、すぐに門が開けられた。
「ドラゴン達は、ここから先に入ったらまずいかな?」
 中をドラゴンが歩いていたら、きっと皆驚くし、混乱するかもしれない。よし、ここからはドラゴン達を置いて、歩いていこう。
「ドラゴン達は王都の外で待機していてくれ。もしまたバウコン帝国の軍が戻ってきたら、迎え撃ってほしい」
「ガオオオーン!」
 そう言ってドラゴンから降りると、五人の美少女もドラゴンから降りた。そして俺の元へ集まる。
「マスター。ここからは我らが護衛をします」
 ヒイコが言った。
「うん、ありがとう。でも、きっと危険はないと思うから、気を楽にしてていいよ」
「あの、サバク様。もしよかったら、私の馬車にご一緒しませんか?」
 王女様に言われるが、俺はやんわりと断る。
「いいや、そこまでお世話になるわけにはいかないよ」
 流石に王女様と一緒の馬車に乗ることは、はばかられる。
「では、サバク様は騎士の馬車へお乗りください。二台以上使えば、お嬢様方も全員乗れます」
 騎士にそう言われて、俺はうなずく。
「わかった。それじゃあ皆。それぞれ騎士の馬車に乗せてもらって」
「それはいかんぞマスター。そうしたらマスターの護衛が手薄になろう」
「そう。そんな危険をおかすくらいなら、ずっとドラゴンに乗っていた方が安全」
 キンカ、ドキにそう言われる。
「そう言われてもな。騎士さん。馬車一台に何人くらい入れますか?」
「一台に三人は入れます」
「じゃあやっぱり皆馬車に乗せてもらおうよ。俺はなんでかんで一人になるわけじゃないみたいだし」
「それでは私がマスターと一緒に乗ろう」
「では後は私がお供します。これで三人ですね」
「そんな理屈ありませんわ。マスターにご一緒するのは私ですわ!」
「私がマスターとご一緒する」
「お前達では不安が残る。ここは私がマスターの隣にひかえるべきだ!」
 ここでちょっと皆がいざこざを起こす。
 そしてじゃんけんの結果、スイホとキリが俺と一緒に馬車に乗ることになった。
 後の三人は、それぞれバラバラに馬車に乗った。
 こうして、俺達はようやくアッファルト王国に入国した。

 9 王都ファルトア一日目

 馬車からは国内の様子が見えるけど、国民の誰もかれもが俺達の馬車に注目している。なので、非常に顔を出しにくい。
 少なくとも今は、馬車の中に隠れていた方が良さそうだ。
 そのまましばらく揺られていると、やがて馬車が止まった。
「サバク様、城前まで来ました。これから駐車スペースに行きます。もう少しでお降りになられます」
「ああ、わかった。ありがとう」
 そうか、もう少しか。ちょっとだけ気分が晴れる。
 あと、ここぞとばかりに俺の体にだきついてくるスイホとキリが悩ましい。この場をやりすごすためにも、早く目的地に到着してほしいな。
 そして、やっと俺達は馬車から降りる。
「リキュア王女様。無事にお帰りになられたこと、我ら一同、真にお喜びいたします!」
 王女様の馬車の近くでは、たくさんの兵士達による盛大なお出迎えがなされていた。
「出迎えご苦労。しかし今は、私よりも神の使いである、サバク様の歓迎をする方が先です。さあ、サバク様は長旅でお疲れのご様子。すぐにロイヤルスイートルームにご案内しなさい」
「はっ。戦の報告は既に届けられております。すぐにサバク様を、ロイヤルスイートルームにお連れいたします!」
「あ、サバク様。こちらです!」
 ここで王女様が俺を見つけて、小走りで駆け寄ってきた。そして俺の腕に細い両腕をからめてくる。
「サバク様。ここが王城でございますわ。これからサバク様歓迎のパーティーの準備をいたしますので、サバク様はしばらくの間、部屋でゆっくりお休みになられてください!」
「え、パーティー? 聞いてないんだけど」
「ええ、今言いましたから。お連れの淑女の方達にも、それぞれ部屋を用意いたしますわ」
「何を言っているんですの。私達は常にマスターと一緒にいます。離れ離れになどなりませんわ!」
「その通りです。我らとマスターを引き離す計画を企てているのなら、容赦いたしませんよ」
 スイホとキリが凄む。すると王女様は笑顔でうなずいた。
「わかりました。ではそのように手配いたします。さあ、そこの者、サバク様方をロイヤルスイートルームにお連れして!」
「はっ。命に代えてもその任を全うします!」
 いやいや兵士さん、そんな大層な事言わなくても。普通に案内してください。よろしくお願いします。
 そんなことを思いながら、俺達はあれよあれよという間に城の中へ招待された。

 部屋はゴゥジャッスだった。
 ふっわふわな絨毯。精密な花や動物の姿が彫られたイスや机。大きなベッド、真っ白い石積みの壁。
 どこを見ても高価そうな物が目に入る、なんとも贅沢な空間に招待された。庶民の感覚しかもたない俺としては正直ビビる。
「サバク様、部屋はこちらでございます。お連れの皆様も一緒にお泊りになられるということでしたが、人数分のベッドの用意は難しいはず。しかし、出来る限りはご用意いたします」
 俺達をこの部屋に案内した兵士が言う。俺が部屋の内装にビビっている間に、ドキが兵士に向かって言った。
「いい。私達は、浮いて寝る」
「は? はっ。承知いたしました」
 兵士さん。本当に部屋、ここで合ってますか?
 思わずそういった目を向けると、兵士は俺を見て、戸惑いがちに言った。
「あの、ところでサバク様。サバク様の使い魔であるドラゴンが、敵軍を全て退かせたというのは本当でしょうか?」
「え、あ、ええ。本当ですよ」
 大軍が去って行く光景は、この目で確認した。だから事実だろう。
「そうですか。すみません、あまりにも荒唐無稽な報せだったので、未だに自分の中では信じがたく。サバク様、この国をお救いくださり、真にありがとうございました」
「ああ、はい。しかし俺も、敵の大軍をただ遠くから眺めていただけなので、あまり実感がありません。もしよかったら、国の外で待機しているドラゴン達を後でねぎらってやってください」
「はい。ではこれで、失礼いたします。後でメイドが来るので、用があれば彼女にお申し付けください」
「はい」
 メイドと話をするなんて、初めての体験だ。ちょっと緊張する。王女様と話をするのとは別の緊張感だ。
「ふう。とんでもないことになっちゃったな。皆、これからどうしよう?」
「それはマスターが決めることだ。だが、確かにここならマスターに快適な生活をもたらすだろう。なんだったら、気のすむまでいたらいい」
 ヒイコが言う。
「流石にそんなわけにはいかないよ。この王国に住むとしても、俺はまだこの王国のことを何にも知らないんだから。王女様達には悪いけど、まだ本当に良い国かどうかも確認し終えてないしね」
「イエスマスター。では、私はマスターの目となり耳となり、この国の様子を調べてみるとしよう」
 キンカが言う。
「うん、それがまず俺達がすべきことかもしれない。けど部屋を出るにしても、まずメイドさんを待とう。誰かに外出するって伝えておかないといけないはずだし、それにメイドさんに頼めば、観光案内くらいはしてもらえるかも」
「わかった。待つ」
 ドキがうなずく。
 こうして俺達は、それぞれ思い思いにくつろいだ。

「見てくださいマスター。完全コピー」
「キリ、本当に調度品と同じテーブルが作れちゃったね。見た目がそっくりだよ。俺じゃあ見分けがつかないなあ」
 俺達が適当に時間を潰していると、この部屋に一人のメイドがやって来た。
「お待たせしました、サバク様。お連れの皆さま。私はこの部屋で小間使いをいたします、ビナと申します。なんなりと御用をお申しつけください」
「あ、こんにちは。ビナさん。それじゃあ早速なんだけど、俺達、この国に来たのが初めてだから、外の様子を見てみたいんだ。早速外出してもいいかな?」
「外出、ですか。しかし、本日サバク様はこの後、王様と謁見するご予定がございます。なので恐れ入りますが、本日の外出はお控えください」
「あ、はい」
「それと、私のことはビナとお呼びいただいて結構です。私に敬語はつけないでください」
「は、はい」
「ありがとうございます、サバク様。なお、王様と会われる際には、現在のお召し物では場にそぐわないかと思われます。ですのでサバク様とお連れの皆様方には、只今よりお召し物の着替えをしていただきたく思います」
「着替え。わかった。オーケー」
「私達の着替えも必要なのか?」
 ヒイコが問う。
「はい。そうせよと指示を受けております」
「別に着替えくらい構わないが、しかしその際も私達は常にマスターのそばにいるぞ」
「え?」
 これには俺が驚く。
「私達はマスターの護衛も兼ねている。隙は見せない」
 ドキが言う。
「あ、ええと。ビナさん、じゃなくてビナが困るなら、無理は言わないけど」
 俺はドラム缶風呂に入る際、何度も彼女達から視線を受けているので、少しは彼女達の前で脱いだり履いたりといったアクションには慣れている。
 でも、それでも女の子達を引き連れて着替え、なんていうのは、ちょっと勘弁かな。なんて思うわけだけど。
「もちろん、着替えはサバク様方の望む形ですませられて構いません」
 ビナにそう言われてしまった。
「ですが着替えの前に、湯あみをしていただきたいと思います。王様の準備が整い次第、すぐに謁見を行いたいとのことなので、早速入ってもらってもよろしいですか?」
「はい、わかりました。皆、お風呂だって。行こう」
「イエスマスター」
 しかし、王様と会うのか。少し緊張する。
 でも、王様って王女様のお父様なんだよね。普通の人だったらいいなあ。
 だって、また強引なこと言われても、困るだけだから。
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