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12 王国その4
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その後、更にしばらくの間、俺は王様、王妃様と共に時間を過ごしていた。
というのも、王様が突然、俺にゲームをしようと提案してきたのだ。
ゲームの内容はジャンマー。
ぶっちゃけ麻雀だった。ちょっとルールが違ったけど、牌の数とか種類とか、そこら辺は全部同じだった。
俺が麻雀とのルールの差異を話すと、その話を王様が詳しく聞いた。
「その異世界ルールはなかなか興味深いのお。ひょっとしたらジャンマー界に新風を巻き起こすかもしれん」
とか話しながら、レッツプレイ。
王様、王妃様、俺、キンカの四人が卓に座り、スイホ、ヒイコが俺の両隣に座って観戦する。すると、ゲームを始めて間もなく、速攻で俺が最下位になった。
最速で王妃様が暫定一着。キンカが二着。王様が三着だけど、三着と俺との点差は大きく離れていた。
もうリーチすらままならない崖っぷち。その時、俺は思った。誰か助けて。と。
直後、俺だけに声が聞こえた。
「お任せください。ここは私がサポートに回りましょう」
とっ君の声だった。
俺は既に心がリタイアしていたので、とっ君に全部任せた。俺はただ指示に従って手を動かすのみ。
すると、どうだろう。
あれよあれよという間に、とっ君が勝っていく。
「サバク殿、なかなか強いのお。最初の勢いが嘘のようじゃ」
王様にそう言われた。
はい。嘘です。どちらかというと今が嘘の状況です。
言い出せなかった。だって、ズルしてでも勝ちたかったから。ボコボコに負ける悔しさはいらなかったから。
そんなこんなで、戦いは終盤戦。とっ君と王妃様の一騎打ちになった。
王様は力不足。キンカは俺のサポートに回った。王妃様ととっ君が、相手の手の内を読み合い、出し抜き合う。
するとやがて、その時がきた。
「王様、並びに皆さま。神の使いであるサバク様の歓迎パーティーの準備が整ったようです」
チャコットさんがそう言った。
現在、ゲームは途中。王妃様が言った。
「もう少ししたら行きます」
「いえ、俺はここで終わりでいいです。パーティー、楽しみだなあ。行きたいなあ」
俺がもう許してとうったえた。
正直、王妃様を勝ちにしてもいい。どっちみち俺はズルをしているのだ。ボコられなければ、それでいい。
「おお、サバク殿が言うのなら、それが良い。では、早速向かうとしよう」
王様が賛成してくれた。ありがとう王様。あなたは良い王様だ。
「そうですか。では、サバク様」
「はい、なんでしょうか、王妃様」
「この決着は、いずれ後日で。ということで」
王妃様の背中が燃えていた。もう、メラメラと。
「手柔らかにお願いします」
俺は、頭を下げるしかなかった。
王様、王妃様より先にパーティー会場へ赴く。二人は更に着替えるらしい。王様王妃様は大変だ。
キリとドキを呼びに行くのは、はばかられた。だって、キリとドキがこちらへ来たら、暗殺者達の処罰が百叩き、鞭打ちになってしまう。それはとっても怖かった。二人には申し訳ないけど、まだ何をやっているか分かっていない拷問の方が安心できる。そう思い、二人に申し訳ないと思いつつ、会場へ来る。
会場には既に人がいて、皆ワイン片手に談笑していた。すぐに何人かの人が俺達に気づいて、近づいてくる。
「ごきげんよう、あなたがサバク様でございますね。私はルガーク。伯爵です。本日はバウコン帝国軍を一掃してくださり、真にありがとうございました」
「ああいえ、俺は大したことはしていません。やってくれたのはドラゴン達です」
「ははは、ご謙遜を。ドラゴンは皆あなたに従っておられるのでしょう。素晴らしい力をお持ちだ。とても心強いですな」
「あはは、そうですね」
「おっと、サバク様のお手元が寂しいですな。今、ワインを持ってこさせましょう」
ルガーク伯爵がそう言った直後、ウエイターが丁度ワインの入ったグラスをお盆に乗せて持って来た。
「あ、いえ。俺、お酒はちょっと」
「ふはは、そう言わずに。まずは一杯どうぞ。この国のワインは美味ですぞ」
ルガーク伯爵がそう言って、笑顔でウエイターが持って来たワインを俺に渡す。よ、余計なことを。
「あの、俺本当に、アルコールには弱いんです。ちょっとでも飲むのはまずくて」
「ひょっとして、アレルギーをお持ちですかな?」
「いえ、そういうわけではないんですけど」
「では、一口どうぞ。楽しい話はワインから。それはどこの社会でも常識ですぞ」
ニッコリとそう言われる。いや、そう言われても、飲むわけには。
「マスター、毒見をいたします」
そう言ってスイホが俺からワインを奪い、一口飲む。
これはチャンスだ。俺は言った。
「スイホ、そのまま全部飲んじゃっていいよ」
「いえ、私はあくまで毒見ですので。ごくん。さあ、どうぞマスター。これはなかなかいけますよ」
スイホからワイングラスを返されてしまった。どうして君達はこう、いつもいつも肝心なところでちゃんと言うことを聞いてくれないんだ。
「サバク様。パーティーの始まりはまずワイン。そう決まっているのです。せめて一杯は空けてもらわねば、パーティーがもりあがりません」
ここまで言われた俺は、そこまで言うんだったら飲んでやろう。という気になった。
何、これは異世界のワインだ。もしかしたら元の世界のアルコールとは違うかもしれない。そう自分をだまして、仕方なく飲んでみることにする。
「では、一口だけ」
そう言って、俺はワインを飲んだ。
その後のことは、憶えていない。
「おお、いい飲みっぷりです。ははは、そうでなくては」
「どうせ」
「はい?」
「どうせ、俺のカードは誰にも買われないんだあー!」
「さ、サバク様、どうかしましたか。うわあ、サバク様に投げ飛ばされるー!」
どーん。パリーン。
「キャー!」
「神様を人にカウントするわけにはいかないだろーっ、けどなあー、ターゲットブレイクは、ターゲットブレイクはあ、神様に面白さを認めてもらった神ゲーなんだぞおー!」
「サ、サバク様が暴れ出した!」
「誰か、誰か止めて!」
「ターゲットブレイクは悪くない、悪くないんだあっ、ただ、時代が追いつかないだけなんだあー!」
「マ、マスター、どうかお気を静めください。いつものマスターではありませんよ」
「マスター、流石にこの場で暴れるのはどうかと思うぞ」
「マスター、乱暴するのならこの私にだけしてください。ですから今はどうか、お控えを!」
「うるさいお前らあ、俺の心のターゲットはなあ、ブレイクされたままなんだよー!」
バターン。
「きゃー!」
ドターン。
「うわあー!」
「うおー、世の中めえ、世の中めええっ。ターゲットブレイクは、最高のカードゲームだあー!」
私はヘヴン。薬のヘヴン。王都ファルトアに潜む、闇ギルドの人間だ。
闇ギルドとは、盗品の売買、国外逃亡の助け、密入国、暗殺、素行調査等を主な仕事とする、いわゆる裏の仕事を秘密裏に行う集団だ。
そんな闇ギルドで優秀な成果を出し続けていた私は、今回、おそらくは過去に無い程重要な仕事を任された。
たった今まで、ファルトアは未曽有の危機にさらされていた。
バウコン帝国による侵略。兵力差は圧倒的。アッファルト王国は滅びるのを待つばかりだった。
闇ギルドはその前線に紛れ、調理班や衛生班に扮して各部隊の隊長の隙を伺い、帝国軍との戦闘中に彼らを暗殺。そういうミッションを受けていた。
既に我ら闇ギルドと、複数人の貴族達は、そういう作戦を事前にバウコン帝国に流し、彼らの味方をしたということで、取り入ろうという思惑を張り巡らせていた。
しかしその作戦は、たった一人の人物の登場によって失敗に終わった。
神の使いの登場だ。
バウコン帝国軍をドラゴンのブレスが焼き払った。命を拾った何割かの者達が帰っていく。
これでアッファルト王国は救われた。
救われてしまった。
これに慌てたのが闇ギルドの頭領。そして国を裏切ろうとしていた貴族達。
確かにこの場は救われた。だが、肝心のバウコン帝国はまだ存在している。
もし、バウコン帝国が再びおそってきたら?
その時、神の使いが再び救ってくださらなければ、私達はどうなる?
決め手の証言として、バウコン帝国をおそったドラゴン達は、その数を減らしてしまったらしい。
つまり、ドラゴン達、神の使いの力は次のバウコン帝国の攻撃に耐えきれない可能性がある。
そう考えた闇ギルドの頭領は、私に次の任務を与えた。
現在ファルトア王城へと向かっている、神の使いを暗殺せよ。
そしてその手柄をもって、闇ギルドと裏切り貴族達はアッファルト王国を捨て、バウコン帝国に逃げ延びる。
それが上が描いた作戦だ。ならば私は、ただ従うのみ。
幸い、王城への潜入ルート等は、貴族からのサポートがあるらしい。単独で仕掛けない分、楽な仕事ではある。
だが最大の問題点は、神の使いがどれくらい腕がたつかだ。
ドラゴンを従える実力者。決して侮ってはいけないだろう。
だが私は、それでも任務に挑戦する。
どのみち、私に選択肢はないのだ。任務の成功か、死か。それしか私に未来はない。
やってやろう。神の使いの暗殺を。私は薬のヘヴン。あらゆる毒を使う薬のエキスパート。私の罠にかからない者はいない。
城に潜入する際に、神の使いが通るであろうルートの候補をメモで見せてもらえる。ふむふむ。これなら、入浴中を狙うのが一番成功率が高いかもしれない。使う毒は、麻痺薬にしよう。お湯に混ぜ、気づかない内に全身を麻痺させ、その隙を突いて始末する。これしかない。私はこの手で、神の使いを殺す。
後は実行あるのみ。魔法で風呂場の天井に張り付き、ターゲットに隙ができるのをひたすら待つ。
その後、私は失敗した。
謎の女達が手強すぎた。まさか一瞬で私が潜んでいる場所を見抜くとは。そして赤髪の女が放った火炎、途中で曲がって私の回避先につっこんできたぞ。どんな高等魔法だ。あんなの反則だ。
緑髪の女も明らかにおかしかった。一瞬で私の体を拘束した。仕方なく自害しようとしたら、一瞬で解毒されてしまった。
これでは、絶望だ。終わった、私の人生終わった。失敗した以上、闇ギルドにも戻れないだろう。もう私は、ただの無力な女でしかない。
取調室につれてこられる。そこで、囚人服に着替えさせられる。目の前には緑髪の女。横に兵士二人。
「さて、あなたは何者です?」
私は黙る。暗殺には無様に失敗してしまったが、かといって喋ることなど何もない。これでも暗殺者の誇りくらいある。こうなったら、ひたすら押し黙り、無様に死ぬ最後の時を待とう。
「しゃべらないつもりでしたら、喋りたくなるようにするしかありません。こちらは、マスターの命が危険にさらされたのです。敵は、全員排除する。それが私達のやり方です」
そう言うと緑髪の女は、一つの種を私に見せた。それを見て、私は一瞬ふるえる。この種はなんだ。今まで見たことがない。知らないという恐怖が、私の精神を削っていく。
「全て言いたくなったら、すぐ言ってくださいね。でないと、永遠に苦しむことになりますよ」
そしてすぐに、私は地獄を見た。
「いやー、いやあーっ、やめろおー!」
「聞きたいのは悲鳴ではありません。真相です。時間が経てば経つ程、あなたは苦しむのですよ」
「やだ、やだ、もう嫌だっ、あんっ、言う、言うから、だからあ、止めてくれえええー!」
私はヘル。魔法のヘル。闇ギルドの暗殺者。
私は急遽、神の使いと呼ばれる男を暗殺することになった。神の使いとは大げさだと思うが、このタイミングでアッファルト王国の味方として現れ、更に強力なドラゴンを何体も従えていた。確かに、神の使いと称されても良い程の脅威だ。そして、この男は私達にとって都合が悪い。早々に消えてもらうのも道理というわけだ。
私の得意分野は、魔法での暗殺。特に魔法陣を使って、遠距離から殺すのが常套手段だ。
ターゲットに魔法陣入りのプレゼントを贈り、それを身につけているところを狙って魔法発動。魔法陣が爆発することで、近くにいたターゲットは爆殺。これが最高に気持ち良い。だから私は、この方法を好んで使う。
今回は服の裏に魔法陣を仕掛け、それをサポーターに渡し、ターゲットが着る服とした。
ターゲットがその服を着て浴場から出てきたところを確認してから、呪文を唱えて爆破。これが今日の私の計画だ。いかに神の使いといえども、私の前では木っ端みじんに吹き飛ぶしかない。そうなる未来が早くも楽しみだ。自然と口が笑ってしまう。
なお、今回の暗殺では、複数人の暗殺者が同じ人間を狙って行動しているらしい。つまり、早い者勝ちの暗殺レースというわけだ。暗殺に成功した者は、破格の報酬を得られるという。面白い。私が他の暗殺者達を出し抜いてやる。
浴場入り口を見張っていると、一度、兵士達がやって来て、暗殺者と思わしき女を連れて行った。ふん、どうやら一人、しくじったらしいな。アホなやつだ。あんなアホがいるから、私のような保険が必要になる。なんなら、最初から私一人に声をかけておけば良かったのだ。
と思っていると、次は魔導士が浴場にやって来て、私が用意した爆発する服を持って行ってしまった。
バカな。まさか、私の計画がバレてしまったというのか。
しかし、私はまだ失敗したわけではない。今魔導士が持って行った服は、王様との謁見用の服でもある。つまり、ターゲットは新たな謁見用の服を求めて、洋服部屋に向かうに違いない。そこで私が、この手で確実に殺す。更に、いざという時の保険もかける。これで神の使いを、暗殺する。
早速私は、ターゲットに先回りして洋服部屋に行き、その試着室で待ち構えた。
久しぶりにドキドキした。自らターゲットを殺すのは本当に久しぶりだ。あの生きた人間の息の根を止める瞬間は、爆発の次に興奮する。そして、テンションも十分上がっている。これなら、最高の状態で最高の暗殺ができるだろう。
しばらく待っていると、やがて、その時が来た。
「マスター。少し待ってください。今、他に気になる服を見つけましたわ」
話し声がここからでも聞こえる。でも、今の言葉は嘘だ。
私は暗殺者。毎日暗殺対象等を観察している。その努力の結果、私は相手が嘘をついている時の特徴等も発見済みだ。今の女の言葉には、隠しようがない程の嘘の響きが多く含まれていた。
ここで嘘を言うということは、おそらく。私の暗殺を、見抜いたということか。
私は五感を研ぎ澄ませ、四肢に力をこめた。そしてその時が、くる。
突然試着室のカーテンが開けられた。しかも開けたのは、女。男じゃない!
これで、私の奇襲が失敗した。
しかし私の心は動じない。これでも私はプロの暗殺者なのだから。奇襲に失敗したのなら、少しでもターゲットに近づくのみ。
今私は、爆発魔法の魔法陣を自分の服に仕込んでいる。これに巻き込められれば、ターゲットも一緒に吹き飛ぶ。ミッションコンプリートだ。
その際私も木っ端みじんになるが、任務に失敗するよりはマシ。やってみせる。
私はまず、ナイフで目の前の女を攻撃した。
しかし私のナイフは空中に浮かぶ土によって防がれ、逆に腕をとられた私は、力強く床に引き倒された。
動く視界の端に、男の姿が映り込む。きっとあいつが神の使いだ。
きっとここまでが、私がターゲットに近づける最短距離。迷っているヒマはない。すぐに魔法を発動させよう。
シュテルレンガバラット。
魔法陣発動の呪文は、最後まで言えなかった。
私の口を、土が塞いだからだ。
呪文が最後まで言えなければ、魔法陣も起動しない。
私の完全敗北だ。
そして私は、全身を土の魔法で拘束されながら取調室へとつれられた。
囚人服に着替えさせられ、拘束されながら椅子に座る。目の前には茶髪の女と、兵士二人。
きっと、私はこれから拷問にかけられる。そして暗殺に関わる事柄を全て吐かせようとしてくるだろう。
だが無駄だ。私はこれでもプロの暗殺者。失敗したら、何も言わずに消えるのみ。そうでなければならない。
「ルールは一つ。あなたは知っていることを喋る。その時間だけがずっと続く」
茶髪の女がそう言うと、突然彼女の手から土が現れ始めた。
その土は魔法を帯びているようで、不気味に、そして怪しく動き出す。
これはまずい。何かがまずい。私は一体、何をされるんだ?
これから起こるであろうことが全く予想できないため、だからこそ私の中で恐怖心が大きくなっていく。
やがて、拷問の正体がわかると、私は一瞬でパニックに陥った。
「や、いや、いやあー!」
やめ、やめて。しゃべる。なんでもしゃべるから、これだけはやめて、許してー!
私はアビス。夜闇のアビス。
私こそ、闇ギルドが誇るナンバーワン暗殺者。当然私が殺せなかったターゲットはいない。
今回のターゲットも、私の実力で排除する。城内で暗殺しないといけないようだが、場所など私には関係ない。
今回殺せと命じられたのは、神の使い、サバク。ドラゴンを操れるようだが、そのドラゴンは全員王都の外にいる。不注意なことだ。折角の力を自分から離しておくとは、よほど慢心しているらしい。
日中の間は、ひたすら情報収集。私の暗殺時間は、決まって深夜だ。
誰にも疑われずに城内に潜伏していると、私より先に仕掛けた暗殺者が二人、取調室につれていかれた。どうやらヘヴンとヘルのようだ。あいつら、しくじったか。ふん、修行が足りないやつらめ。まあいい。やつらの尻ぬぐいは、この私がしてやる。
サバクの登場を祝うパーティーに潜入した。それからしばらくすると、サバクが現れる。サバクの近くには、常に女が三人。どうやらよほどの女好きらしいな。ああいうやつは死んでもいい。女を甘く見ているやつに、女の恐ろしさを味わわせてやる。いや、その恐ろしさの片鱗も感じられないまま、死んでいくといい。
そう思っていると、ワインを飲んだサバクが突然暴れ出した。素早く近くにいた女達が、魔法で男を拘束する。
あの女達、魔法使いだったか。水色の髪の女が手でサバクの口を塞ぐと、すぐにサバクは眠り始めた。
どうやらサバク本人よりも、あの常にそばにいる女達の方が厄介そうだ。
だが、どれだけ周りが強くとも、私の暗殺の方が一枚上をいく。今晩、サバクの命は私がいただこう。
私は夜闇のアビス。夜こそ、私が無敵となる時間。
私が動いたのは、午後11時43分。理想としては、44分44秒にターゲットを始末する。これは個人的な遊びだ。
だが、一つ二つ目標を増やした方が、楽しみがいがあるというもの。それに暗殺なぞ、私にとっては遊びのようなものだ。今日もいつもと同じように、完全なる暗殺をやり遂げてみせよう。
私の魔法は闇魔法。黒き闇を生み出し、誰にも私の姿を拝ませないまま暗殺を済ませ、一切の痕跡なく去って行く。
今も闇魔法を駆使し、サバクの部屋前を見張っている見張り二人の視界を封じる。二人が混乱している間に、私は音もなく扉を開ける。
すると扉を入ったすぐのところに、細い金属ワイヤーのトラップが仕掛けられていた。
侵入時は常時警戒を怠らないし、この程度のトラップで私は止められない。私はすぐに魔法で自身を闇に変えて、黒いもやとなって部屋に侵入する。
これならトラップには引っかかるまい。このまま闇の体でサバクに近づき、その寝首をかくとしよう。
そう思っていると、私がワイヤーを越えようとしたところで、ワイヤーが切れ、甲高い音が鳴った。
バカな、黒き闇となっている私は、ワイヤーなんかに当たっても問題ないはず!
私がうろたえている隙に、その部屋で浮いていた三人が動き出した。
そう、彼女達は宙に浮いていた。ありえるのか、そんな人間が?
「バカめ。私のワイヤーは魔法にも反応する。爪が甘いの、暗殺者」
「しかし、敵の姿が見えないな。火の玉」
赤髪の女が私に向けて、いくつもの小さい火の玉をとばしてくる。
ひいっ、まずい、やめろ。私の闇になっている体は、火の光にさえ簡単に負け、消えてなくなってしまう。このままでは全身が消え失せる!
仕方なく、私は闇と化した体を元に戻した。そして、火の玉に燃やされながらも、ターゲットへと近寄る。
こうなったら、私はもうどうなってもいい。だが最悪、サバクさせ消してしまえば私の勝ちだ!
そう思って剣を装備し、ベッドに寝ているサバクを切りつけようとした時、私の体は動かなくなった。
抵抗する間もなく、水の縄で全身を縛られてしまったのだ。
「全く、油断も隙もありませんわ。ですが、おあいにくさま。私達は第三の暗殺が必ずあると予想し、万全の用意をしていたのです。不安が的中して、良かったとは言いませんが、まあ、マスターは無事守られましたわ」
く、こうなったら!
「ぎりっ、ごほっ」
即座に、口内に仕込んでおいた自害用の薬を飲む。ふっ、完全に私の負けだ。だが、この屈辱忘れんぞ。いずれ地獄で倍返しにしてくれるわ。
「またくり返し同じ手を。はい、聖水ですわ」
「がぼっ、がぼぼが!」
バカな。女から水をくらわされると同時に、毒の効果が消えていく!
「これで三人目。四人目ははたして来るだろうか?」
「さて、どうだろう。まあ何人来ようが、私達の相手ではないがな」
「ヒイコ、キンカ。この女は私が預かりますわ」
「ああ、どうぞ」
こうして私は捕虜となった。
だが、私は何をされても、何も言わないぞ。お前達と話すことなど何もない!
「さて、暗殺者さん。気が向いたら全てしゃべってくださいね。私はいつでも、あなたが話したくなるのをお待ちしてますわ」
取調室で水色の髪の女がそう言うと、その手から何やらウネウネ動く水を生み出した。
その水はひどく不気味で、私の本能がそれを拒絶した。
「よせ、待て、やめろ。その水を近づけるな。ダメ、ダメ、やだ、お母さん、助けて、いやあー!」
10 二日目、ファルトアを発つ
夢。
これは夢だ。
だって、目の前に神様がいるもの。
「うむ。これは夢じゃ」
神様がうなずいた。やっぱり、そうだと思ったよ。
「本来、ワシが誰かにこうしてお告げを与えるのは、よほど特別な事情でもない限り、あってはならぬことなのじゃが、沙漠はターゲットブレイクの制作者じゃからな。特別にまた会いに来てやったぞ」
「神様、ありがとうございます。ところで、俺に会いに来た用って、なんですか?」
「うむ。沙漠はバウコン帝国軍を退けたな?」
「はい」
「実はその中に、ワシ以外の神から力を与えられている者達がいたのじゃ。そして彼らは仲間をひきつれて、いずれお主の元、王都ファルトアまで戻ってくるじゃろう」
そう言われて、俺はピンときた。
「それってもしかして、俺の仲間、ドラゴンやワイバーン達を倒した犯人のことですか?」
「左様。彼ら、バウコン帝国民には、戦神バラーゲルを信仰し、同時に力を授かった者が何人かおる。その力の正体とは、一時的に生命力が減る状況になるかわりに、レベルを大幅にアップさせるというもの。簡単に言うと、彼らは一時的にレベル80以上になれる。そんなやつらを何人も相手にするのは、今のお前では無理じゃ」
「80レベル以上が、何十、何百人も出てこられたら、確かに俺ではかないませんね」
俺の今のレベルは63だ。仲間を最大30人呼び出せるとしても、きっと、80レベルの相手を二人相手にすることすら大変だろう。
「神様、貴重な情報ありがとうございます。では俺も、早速何か対策を講じたいと思います」
「うむ。そうすると良い。ところで沙漠。お前、アッファルト王国が良い国かどうかで悩んでおるな?」
「あ、はい」
「そんなの別にどっちでもいいじゃない」
「へ?」
「良い国に住みたいと思うのは皆の願い。そして悪い部分は正せば良い。そうすれば、どこだって良い国になるじゃろ? 別に良い国を選ばなくても、今いる国を良くすればそれで良いのじゃ」
「神様。ありがたいお言葉すぎる」
正に道徳を説かれている気分だ。
「でも、もし本当に悪い部分があったとして、俺はそこをなんとかできるでしょうか?」
「まずはやってみることじゃ。そして手探りで解決方法を探るのじゃ。沙漠、お前だって最初は王女を見放そうとしたが、その後考え直して協力したじゃろう。人は変わるということを、お前自身が証明したんじゃ。後は、やると決めたことを出来ると信じて、貫きとおせ」
「はい。わかりました神様。俺、頑張ります!」
なんだか神様からありがたいお言葉をいただいて、やる気が出てきたぞ!
「今回はここまでじゃ。じゃあの、沙漠よ。今後も立派に生きるのじゃぞ」
「はい、ありがとうございました神様!」
というのも、王様が突然、俺にゲームをしようと提案してきたのだ。
ゲームの内容はジャンマー。
ぶっちゃけ麻雀だった。ちょっとルールが違ったけど、牌の数とか種類とか、そこら辺は全部同じだった。
俺が麻雀とのルールの差異を話すと、その話を王様が詳しく聞いた。
「その異世界ルールはなかなか興味深いのお。ひょっとしたらジャンマー界に新風を巻き起こすかもしれん」
とか話しながら、レッツプレイ。
王様、王妃様、俺、キンカの四人が卓に座り、スイホ、ヒイコが俺の両隣に座って観戦する。すると、ゲームを始めて間もなく、速攻で俺が最下位になった。
最速で王妃様が暫定一着。キンカが二着。王様が三着だけど、三着と俺との点差は大きく離れていた。
もうリーチすらままならない崖っぷち。その時、俺は思った。誰か助けて。と。
直後、俺だけに声が聞こえた。
「お任せください。ここは私がサポートに回りましょう」
とっ君の声だった。
俺は既に心がリタイアしていたので、とっ君に全部任せた。俺はただ指示に従って手を動かすのみ。
すると、どうだろう。
あれよあれよという間に、とっ君が勝っていく。
「サバク殿、なかなか強いのお。最初の勢いが嘘のようじゃ」
王様にそう言われた。
はい。嘘です。どちらかというと今が嘘の状況です。
言い出せなかった。だって、ズルしてでも勝ちたかったから。ボコボコに負ける悔しさはいらなかったから。
そんなこんなで、戦いは終盤戦。とっ君と王妃様の一騎打ちになった。
王様は力不足。キンカは俺のサポートに回った。王妃様ととっ君が、相手の手の内を読み合い、出し抜き合う。
するとやがて、その時がきた。
「王様、並びに皆さま。神の使いであるサバク様の歓迎パーティーの準備が整ったようです」
チャコットさんがそう言った。
現在、ゲームは途中。王妃様が言った。
「もう少ししたら行きます」
「いえ、俺はここで終わりでいいです。パーティー、楽しみだなあ。行きたいなあ」
俺がもう許してとうったえた。
正直、王妃様を勝ちにしてもいい。どっちみち俺はズルをしているのだ。ボコられなければ、それでいい。
「おお、サバク殿が言うのなら、それが良い。では、早速向かうとしよう」
王様が賛成してくれた。ありがとう王様。あなたは良い王様だ。
「そうですか。では、サバク様」
「はい、なんでしょうか、王妃様」
「この決着は、いずれ後日で。ということで」
王妃様の背中が燃えていた。もう、メラメラと。
「手柔らかにお願いします」
俺は、頭を下げるしかなかった。
王様、王妃様より先にパーティー会場へ赴く。二人は更に着替えるらしい。王様王妃様は大変だ。
キリとドキを呼びに行くのは、はばかられた。だって、キリとドキがこちらへ来たら、暗殺者達の処罰が百叩き、鞭打ちになってしまう。それはとっても怖かった。二人には申し訳ないけど、まだ何をやっているか分かっていない拷問の方が安心できる。そう思い、二人に申し訳ないと思いつつ、会場へ来る。
会場には既に人がいて、皆ワイン片手に談笑していた。すぐに何人かの人が俺達に気づいて、近づいてくる。
「ごきげんよう、あなたがサバク様でございますね。私はルガーク。伯爵です。本日はバウコン帝国軍を一掃してくださり、真にありがとうございました」
「ああいえ、俺は大したことはしていません。やってくれたのはドラゴン達です」
「ははは、ご謙遜を。ドラゴンは皆あなたに従っておられるのでしょう。素晴らしい力をお持ちだ。とても心強いですな」
「あはは、そうですね」
「おっと、サバク様のお手元が寂しいですな。今、ワインを持ってこさせましょう」
ルガーク伯爵がそう言った直後、ウエイターが丁度ワインの入ったグラスをお盆に乗せて持って来た。
「あ、いえ。俺、お酒はちょっと」
「ふはは、そう言わずに。まずは一杯どうぞ。この国のワインは美味ですぞ」
ルガーク伯爵がそう言って、笑顔でウエイターが持って来たワインを俺に渡す。よ、余計なことを。
「あの、俺本当に、アルコールには弱いんです。ちょっとでも飲むのはまずくて」
「ひょっとして、アレルギーをお持ちですかな?」
「いえ、そういうわけではないんですけど」
「では、一口どうぞ。楽しい話はワインから。それはどこの社会でも常識ですぞ」
ニッコリとそう言われる。いや、そう言われても、飲むわけには。
「マスター、毒見をいたします」
そう言ってスイホが俺からワインを奪い、一口飲む。
これはチャンスだ。俺は言った。
「スイホ、そのまま全部飲んじゃっていいよ」
「いえ、私はあくまで毒見ですので。ごくん。さあ、どうぞマスター。これはなかなかいけますよ」
スイホからワイングラスを返されてしまった。どうして君達はこう、いつもいつも肝心なところでちゃんと言うことを聞いてくれないんだ。
「サバク様。パーティーの始まりはまずワイン。そう決まっているのです。せめて一杯は空けてもらわねば、パーティーがもりあがりません」
ここまで言われた俺は、そこまで言うんだったら飲んでやろう。という気になった。
何、これは異世界のワインだ。もしかしたら元の世界のアルコールとは違うかもしれない。そう自分をだまして、仕方なく飲んでみることにする。
「では、一口だけ」
そう言って、俺はワインを飲んだ。
その後のことは、憶えていない。
「おお、いい飲みっぷりです。ははは、そうでなくては」
「どうせ」
「はい?」
「どうせ、俺のカードは誰にも買われないんだあー!」
「さ、サバク様、どうかしましたか。うわあ、サバク様に投げ飛ばされるー!」
どーん。パリーン。
「キャー!」
「神様を人にカウントするわけにはいかないだろーっ、けどなあー、ターゲットブレイクは、ターゲットブレイクはあ、神様に面白さを認めてもらった神ゲーなんだぞおー!」
「サ、サバク様が暴れ出した!」
「誰か、誰か止めて!」
「ターゲットブレイクは悪くない、悪くないんだあっ、ただ、時代が追いつかないだけなんだあー!」
「マ、マスター、どうかお気を静めください。いつものマスターではありませんよ」
「マスター、流石にこの場で暴れるのはどうかと思うぞ」
「マスター、乱暴するのならこの私にだけしてください。ですから今はどうか、お控えを!」
「うるさいお前らあ、俺の心のターゲットはなあ、ブレイクされたままなんだよー!」
バターン。
「きゃー!」
ドターン。
「うわあー!」
「うおー、世の中めえ、世の中めええっ。ターゲットブレイクは、最高のカードゲームだあー!」
私はヘヴン。薬のヘヴン。王都ファルトアに潜む、闇ギルドの人間だ。
闇ギルドとは、盗品の売買、国外逃亡の助け、密入国、暗殺、素行調査等を主な仕事とする、いわゆる裏の仕事を秘密裏に行う集団だ。
そんな闇ギルドで優秀な成果を出し続けていた私は、今回、おそらくは過去に無い程重要な仕事を任された。
たった今まで、ファルトアは未曽有の危機にさらされていた。
バウコン帝国による侵略。兵力差は圧倒的。アッファルト王国は滅びるのを待つばかりだった。
闇ギルドはその前線に紛れ、調理班や衛生班に扮して各部隊の隊長の隙を伺い、帝国軍との戦闘中に彼らを暗殺。そういうミッションを受けていた。
既に我ら闇ギルドと、複数人の貴族達は、そういう作戦を事前にバウコン帝国に流し、彼らの味方をしたということで、取り入ろうという思惑を張り巡らせていた。
しかしその作戦は、たった一人の人物の登場によって失敗に終わった。
神の使いの登場だ。
バウコン帝国軍をドラゴンのブレスが焼き払った。命を拾った何割かの者達が帰っていく。
これでアッファルト王国は救われた。
救われてしまった。
これに慌てたのが闇ギルドの頭領。そして国を裏切ろうとしていた貴族達。
確かにこの場は救われた。だが、肝心のバウコン帝国はまだ存在している。
もし、バウコン帝国が再びおそってきたら?
その時、神の使いが再び救ってくださらなければ、私達はどうなる?
決め手の証言として、バウコン帝国をおそったドラゴン達は、その数を減らしてしまったらしい。
つまり、ドラゴン達、神の使いの力は次のバウコン帝国の攻撃に耐えきれない可能性がある。
そう考えた闇ギルドの頭領は、私に次の任務を与えた。
現在ファルトア王城へと向かっている、神の使いを暗殺せよ。
そしてその手柄をもって、闇ギルドと裏切り貴族達はアッファルト王国を捨て、バウコン帝国に逃げ延びる。
それが上が描いた作戦だ。ならば私は、ただ従うのみ。
幸い、王城への潜入ルート等は、貴族からのサポートがあるらしい。単独で仕掛けない分、楽な仕事ではある。
だが最大の問題点は、神の使いがどれくらい腕がたつかだ。
ドラゴンを従える実力者。決して侮ってはいけないだろう。
だが私は、それでも任務に挑戦する。
どのみち、私に選択肢はないのだ。任務の成功か、死か。それしか私に未来はない。
やってやろう。神の使いの暗殺を。私は薬のヘヴン。あらゆる毒を使う薬のエキスパート。私の罠にかからない者はいない。
城に潜入する際に、神の使いが通るであろうルートの候補をメモで見せてもらえる。ふむふむ。これなら、入浴中を狙うのが一番成功率が高いかもしれない。使う毒は、麻痺薬にしよう。お湯に混ぜ、気づかない内に全身を麻痺させ、その隙を突いて始末する。これしかない。私はこの手で、神の使いを殺す。
後は実行あるのみ。魔法で風呂場の天井に張り付き、ターゲットに隙ができるのをひたすら待つ。
その後、私は失敗した。
謎の女達が手強すぎた。まさか一瞬で私が潜んでいる場所を見抜くとは。そして赤髪の女が放った火炎、途中で曲がって私の回避先につっこんできたぞ。どんな高等魔法だ。あんなの反則だ。
緑髪の女も明らかにおかしかった。一瞬で私の体を拘束した。仕方なく自害しようとしたら、一瞬で解毒されてしまった。
これでは、絶望だ。終わった、私の人生終わった。失敗した以上、闇ギルドにも戻れないだろう。もう私は、ただの無力な女でしかない。
取調室につれてこられる。そこで、囚人服に着替えさせられる。目の前には緑髪の女。横に兵士二人。
「さて、あなたは何者です?」
私は黙る。暗殺には無様に失敗してしまったが、かといって喋ることなど何もない。これでも暗殺者の誇りくらいある。こうなったら、ひたすら押し黙り、無様に死ぬ最後の時を待とう。
「しゃべらないつもりでしたら、喋りたくなるようにするしかありません。こちらは、マスターの命が危険にさらされたのです。敵は、全員排除する。それが私達のやり方です」
そう言うと緑髪の女は、一つの種を私に見せた。それを見て、私は一瞬ふるえる。この種はなんだ。今まで見たことがない。知らないという恐怖が、私の精神を削っていく。
「全て言いたくなったら、すぐ言ってくださいね。でないと、永遠に苦しむことになりますよ」
そしてすぐに、私は地獄を見た。
「いやー、いやあーっ、やめろおー!」
「聞きたいのは悲鳴ではありません。真相です。時間が経てば経つ程、あなたは苦しむのですよ」
「やだ、やだ、もう嫌だっ、あんっ、言う、言うから、だからあ、止めてくれえええー!」
私はヘル。魔法のヘル。闇ギルドの暗殺者。
私は急遽、神の使いと呼ばれる男を暗殺することになった。神の使いとは大げさだと思うが、このタイミングでアッファルト王国の味方として現れ、更に強力なドラゴンを何体も従えていた。確かに、神の使いと称されても良い程の脅威だ。そして、この男は私達にとって都合が悪い。早々に消えてもらうのも道理というわけだ。
私の得意分野は、魔法での暗殺。特に魔法陣を使って、遠距離から殺すのが常套手段だ。
ターゲットに魔法陣入りのプレゼントを贈り、それを身につけているところを狙って魔法発動。魔法陣が爆発することで、近くにいたターゲットは爆殺。これが最高に気持ち良い。だから私は、この方法を好んで使う。
今回は服の裏に魔法陣を仕掛け、それをサポーターに渡し、ターゲットが着る服とした。
ターゲットがその服を着て浴場から出てきたところを確認してから、呪文を唱えて爆破。これが今日の私の計画だ。いかに神の使いといえども、私の前では木っ端みじんに吹き飛ぶしかない。そうなる未来が早くも楽しみだ。自然と口が笑ってしまう。
なお、今回の暗殺では、複数人の暗殺者が同じ人間を狙って行動しているらしい。つまり、早い者勝ちの暗殺レースというわけだ。暗殺に成功した者は、破格の報酬を得られるという。面白い。私が他の暗殺者達を出し抜いてやる。
浴場入り口を見張っていると、一度、兵士達がやって来て、暗殺者と思わしき女を連れて行った。ふん、どうやら一人、しくじったらしいな。アホなやつだ。あんなアホがいるから、私のような保険が必要になる。なんなら、最初から私一人に声をかけておけば良かったのだ。
と思っていると、次は魔導士が浴場にやって来て、私が用意した爆発する服を持って行ってしまった。
バカな。まさか、私の計画がバレてしまったというのか。
しかし、私はまだ失敗したわけではない。今魔導士が持って行った服は、王様との謁見用の服でもある。つまり、ターゲットは新たな謁見用の服を求めて、洋服部屋に向かうに違いない。そこで私が、この手で確実に殺す。更に、いざという時の保険もかける。これで神の使いを、暗殺する。
早速私は、ターゲットに先回りして洋服部屋に行き、その試着室で待ち構えた。
久しぶりにドキドキした。自らターゲットを殺すのは本当に久しぶりだ。あの生きた人間の息の根を止める瞬間は、爆発の次に興奮する。そして、テンションも十分上がっている。これなら、最高の状態で最高の暗殺ができるだろう。
しばらく待っていると、やがて、その時が来た。
「マスター。少し待ってください。今、他に気になる服を見つけましたわ」
話し声がここからでも聞こえる。でも、今の言葉は嘘だ。
私は暗殺者。毎日暗殺対象等を観察している。その努力の結果、私は相手が嘘をついている時の特徴等も発見済みだ。今の女の言葉には、隠しようがない程の嘘の響きが多く含まれていた。
ここで嘘を言うということは、おそらく。私の暗殺を、見抜いたということか。
私は五感を研ぎ澄ませ、四肢に力をこめた。そしてその時が、くる。
突然試着室のカーテンが開けられた。しかも開けたのは、女。男じゃない!
これで、私の奇襲が失敗した。
しかし私の心は動じない。これでも私はプロの暗殺者なのだから。奇襲に失敗したのなら、少しでもターゲットに近づくのみ。
今私は、爆発魔法の魔法陣を自分の服に仕込んでいる。これに巻き込められれば、ターゲットも一緒に吹き飛ぶ。ミッションコンプリートだ。
その際私も木っ端みじんになるが、任務に失敗するよりはマシ。やってみせる。
私はまず、ナイフで目の前の女を攻撃した。
しかし私のナイフは空中に浮かぶ土によって防がれ、逆に腕をとられた私は、力強く床に引き倒された。
動く視界の端に、男の姿が映り込む。きっとあいつが神の使いだ。
きっとここまでが、私がターゲットに近づける最短距離。迷っているヒマはない。すぐに魔法を発動させよう。
シュテルレンガバラット。
魔法陣発動の呪文は、最後まで言えなかった。
私の口を、土が塞いだからだ。
呪文が最後まで言えなければ、魔法陣も起動しない。
私の完全敗北だ。
そして私は、全身を土の魔法で拘束されながら取調室へとつれられた。
囚人服に着替えさせられ、拘束されながら椅子に座る。目の前には茶髪の女と、兵士二人。
きっと、私はこれから拷問にかけられる。そして暗殺に関わる事柄を全て吐かせようとしてくるだろう。
だが無駄だ。私はこれでもプロの暗殺者。失敗したら、何も言わずに消えるのみ。そうでなければならない。
「ルールは一つ。あなたは知っていることを喋る。その時間だけがずっと続く」
茶髪の女がそう言うと、突然彼女の手から土が現れ始めた。
その土は魔法を帯びているようで、不気味に、そして怪しく動き出す。
これはまずい。何かがまずい。私は一体、何をされるんだ?
これから起こるであろうことが全く予想できないため、だからこそ私の中で恐怖心が大きくなっていく。
やがて、拷問の正体がわかると、私は一瞬でパニックに陥った。
「や、いや、いやあー!」
やめ、やめて。しゃべる。なんでもしゃべるから、これだけはやめて、許してー!
私はアビス。夜闇のアビス。
私こそ、闇ギルドが誇るナンバーワン暗殺者。当然私が殺せなかったターゲットはいない。
今回のターゲットも、私の実力で排除する。城内で暗殺しないといけないようだが、場所など私には関係ない。
今回殺せと命じられたのは、神の使い、サバク。ドラゴンを操れるようだが、そのドラゴンは全員王都の外にいる。不注意なことだ。折角の力を自分から離しておくとは、よほど慢心しているらしい。
日中の間は、ひたすら情報収集。私の暗殺時間は、決まって深夜だ。
誰にも疑われずに城内に潜伏していると、私より先に仕掛けた暗殺者が二人、取調室につれていかれた。どうやらヘヴンとヘルのようだ。あいつら、しくじったか。ふん、修行が足りないやつらめ。まあいい。やつらの尻ぬぐいは、この私がしてやる。
サバクの登場を祝うパーティーに潜入した。それからしばらくすると、サバクが現れる。サバクの近くには、常に女が三人。どうやらよほどの女好きらしいな。ああいうやつは死んでもいい。女を甘く見ているやつに、女の恐ろしさを味わわせてやる。いや、その恐ろしさの片鱗も感じられないまま、死んでいくといい。
そう思っていると、ワインを飲んだサバクが突然暴れ出した。素早く近くにいた女達が、魔法で男を拘束する。
あの女達、魔法使いだったか。水色の髪の女が手でサバクの口を塞ぐと、すぐにサバクは眠り始めた。
どうやらサバク本人よりも、あの常にそばにいる女達の方が厄介そうだ。
だが、どれだけ周りが強くとも、私の暗殺の方が一枚上をいく。今晩、サバクの命は私がいただこう。
私は夜闇のアビス。夜こそ、私が無敵となる時間。
私が動いたのは、午後11時43分。理想としては、44分44秒にターゲットを始末する。これは個人的な遊びだ。
だが、一つ二つ目標を増やした方が、楽しみがいがあるというもの。それに暗殺なぞ、私にとっては遊びのようなものだ。今日もいつもと同じように、完全なる暗殺をやり遂げてみせよう。
私の魔法は闇魔法。黒き闇を生み出し、誰にも私の姿を拝ませないまま暗殺を済ませ、一切の痕跡なく去って行く。
今も闇魔法を駆使し、サバクの部屋前を見張っている見張り二人の視界を封じる。二人が混乱している間に、私は音もなく扉を開ける。
すると扉を入ったすぐのところに、細い金属ワイヤーのトラップが仕掛けられていた。
侵入時は常時警戒を怠らないし、この程度のトラップで私は止められない。私はすぐに魔法で自身を闇に変えて、黒いもやとなって部屋に侵入する。
これならトラップには引っかかるまい。このまま闇の体でサバクに近づき、その寝首をかくとしよう。
そう思っていると、私がワイヤーを越えようとしたところで、ワイヤーが切れ、甲高い音が鳴った。
バカな、黒き闇となっている私は、ワイヤーなんかに当たっても問題ないはず!
私がうろたえている隙に、その部屋で浮いていた三人が動き出した。
そう、彼女達は宙に浮いていた。ありえるのか、そんな人間が?
「バカめ。私のワイヤーは魔法にも反応する。爪が甘いの、暗殺者」
「しかし、敵の姿が見えないな。火の玉」
赤髪の女が私に向けて、いくつもの小さい火の玉をとばしてくる。
ひいっ、まずい、やめろ。私の闇になっている体は、火の光にさえ簡単に負け、消えてなくなってしまう。このままでは全身が消え失せる!
仕方なく、私は闇と化した体を元に戻した。そして、火の玉に燃やされながらも、ターゲットへと近寄る。
こうなったら、私はもうどうなってもいい。だが最悪、サバクさせ消してしまえば私の勝ちだ!
そう思って剣を装備し、ベッドに寝ているサバクを切りつけようとした時、私の体は動かなくなった。
抵抗する間もなく、水の縄で全身を縛られてしまったのだ。
「全く、油断も隙もありませんわ。ですが、おあいにくさま。私達は第三の暗殺が必ずあると予想し、万全の用意をしていたのです。不安が的中して、良かったとは言いませんが、まあ、マスターは無事守られましたわ」
く、こうなったら!
「ぎりっ、ごほっ」
即座に、口内に仕込んでおいた自害用の薬を飲む。ふっ、完全に私の負けだ。だが、この屈辱忘れんぞ。いずれ地獄で倍返しにしてくれるわ。
「またくり返し同じ手を。はい、聖水ですわ」
「がぼっ、がぼぼが!」
バカな。女から水をくらわされると同時に、毒の効果が消えていく!
「これで三人目。四人目ははたして来るだろうか?」
「さて、どうだろう。まあ何人来ようが、私達の相手ではないがな」
「ヒイコ、キンカ。この女は私が預かりますわ」
「ああ、どうぞ」
こうして私は捕虜となった。
だが、私は何をされても、何も言わないぞ。お前達と話すことなど何もない!
「さて、暗殺者さん。気が向いたら全てしゃべってくださいね。私はいつでも、あなたが話したくなるのをお待ちしてますわ」
取調室で水色の髪の女がそう言うと、その手から何やらウネウネ動く水を生み出した。
その水はひどく不気味で、私の本能がそれを拒絶した。
「よせ、待て、やめろ。その水を近づけるな。ダメ、ダメ、やだ、お母さん、助けて、いやあー!」
10 二日目、ファルトアを発つ
夢。
これは夢だ。
だって、目の前に神様がいるもの。
「うむ。これは夢じゃ」
神様がうなずいた。やっぱり、そうだと思ったよ。
「本来、ワシが誰かにこうしてお告げを与えるのは、よほど特別な事情でもない限り、あってはならぬことなのじゃが、沙漠はターゲットブレイクの制作者じゃからな。特別にまた会いに来てやったぞ」
「神様、ありがとうございます。ところで、俺に会いに来た用って、なんですか?」
「うむ。沙漠はバウコン帝国軍を退けたな?」
「はい」
「実はその中に、ワシ以外の神から力を与えられている者達がいたのじゃ。そして彼らは仲間をひきつれて、いずれお主の元、王都ファルトアまで戻ってくるじゃろう」
そう言われて、俺はピンときた。
「それってもしかして、俺の仲間、ドラゴンやワイバーン達を倒した犯人のことですか?」
「左様。彼ら、バウコン帝国民には、戦神バラーゲルを信仰し、同時に力を授かった者が何人かおる。その力の正体とは、一時的に生命力が減る状況になるかわりに、レベルを大幅にアップさせるというもの。簡単に言うと、彼らは一時的にレベル80以上になれる。そんなやつらを何人も相手にするのは、今のお前では無理じゃ」
「80レベル以上が、何十、何百人も出てこられたら、確かに俺ではかないませんね」
俺の今のレベルは63だ。仲間を最大30人呼び出せるとしても、きっと、80レベルの相手を二人相手にすることすら大変だろう。
「神様、貴重な情報ありがとうございます。では俺も、早速何か対策を講じたいと思います」
「うむ。そうすると良い。ところで沙漠。お前、アッファルト王国が良い国かどうかで悩んでおるな?」
「あ、はい」
「そんなの別にどっちでもいいじゃない」
「へ?」
「良い国に住みたいと思うのは皆の願い。そして悪い部分は正せば良い。そうすれば、どこだって良い国になるじゃろ? 別に良い国を選ばなくても、今いる国を良くすればそれで良いのじゃ」
「神様。ありがたいお言葉すぎる」
正に道徳を説かれている気分だ。
「でも、もし本当に悪い部分があったとして、俺はそこをなんとかできるでしょうか?」
「まずはやってみることじゃ。そして手探りで解決方法を探るのじゃ。沙漠、お前だって最初は王女を見放そうとしたが、その後考え直して協力したじゃろう。人は変わるということを、お前自身が証明したんじゃ。後は、やると決めたことを出来ると信じて、貫きとおせ」
「はい。わかりました神様。俺、頑張ります!」
なんだか神様からありがたいお言葉をいただいて、やる気が出てきたぞ!
「今回はここまでじゃ。じゃあの、沙漠よ。今後も立派に生きるのじゃぞ」
「はい、ありがとうございました神様!」
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