神様だけにバカ売れしたカードゲームが、異世界で超優秀な特殊能力に生まれ変わりました(ターゲットブレイク)

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24 帝国その4

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 17 戦争終結

 ところで、この光る石どうしよう?
「このまま放置しておくと、その内荒野の虫が触ってレベルアップされそうで怖いな。なんとかして光る石を守らないと」
「それではマスター。私にお任せください」
「お前は、ゴールドラゴンだね」
「はい。私が光る石をしまっておくための新しい宝箱を用意します。よろしいですね」
「わかった。任せた」
「では、はああ!」
 ゴールドラゴンが力をこめると、手の中に小さな粒が生まれた。
「マスター。これはウムオリハルコンという、世界で最も頑丈な鉱物です。これで宝箱を作ります」
「そ、そんなに厳重じゃなくてもいいとも思うけど」
「ふんっ、うおー!」
 ゴールドラゴンが更に力をこめ、米粒程度の大きさの鉱石を少しずつ大きくしていく。
 気の遠くなる作業だな。それじゃあ、後はええと。
「それじゃあ、ゴールドラゴンが宝箱を作ってくれてる間に、俺達は少し休憩しよう。ああ、皆を召喚終了して、一度力をリセットした方がいいかな?」
「お待ちくださいマスター。それではその前に、マスターがお休みになられるためのホームを作ります。しばらくお待ちください」
 サガンジャイアントがそう言う。
「ああ、任せた」
 すると皆は、たった2、3分で新築物件を築き上げた。
 前の家同様、大岩をくりぬいてできたような外観だが、それでも形はちゃんとした家だった。中は木材がしきつめられていて、温かみがある。二階建てで部屋もいくつかあり、完全に立派な家だった。明かりは燃え移らない炎を使っているので安心。既に風呂も沸いている。
「マスター。食事の用意ができました」
「ありがとう」
 用意されたのは、いつもより大きいサイズのフルーツと、キラキラ光っている水。どちらも美味しい。これが百レベルになった皆の力なのか。
「皆ありがとう。皆もくつろいでていいよ」
「イエスマスター」
 皆はそう言うが、それでも全く俺から離れず、直立不動のまま。これじゃあ気になる。
「やっぱり、召喚を終了しようか?」
「イエスマスター。では、皆がいない間は、私がマスターの護衛をいたします。このままごゆっくりおくつろぎください」
 今度はとっ君にそう言われる始末だ。
「いや、それはそれで肩身が狭いんだけど」
「では、何かあればすぐに私が召喚されます。それでよろしいでしょうか?」
「あ、うん。それじゃあそれで。皆、ゴールドラゴンを除いて召喚終了。おつかれさま」
 これで俺は、一人になる。いや、ゴールドラゴンは外でずっと宝箱を作っているし、それにとっ君もいるけど、なんだろう。一瞬で皆がいなくなると、少し寂しい気がする。
 そういえば少し前にも、こんなことがあったような。皇帝に挑んだ時も、いや、この考えはやめよう。それは思い出さなくていい寂しさだ。
「次は、絶対に勝てるよ」
「イエスマスター」
 独り言のつもりだったが、とっ君が反応してくれた。
「ありがとう、とっ君」
 今日はもう休もう。そして日が昇ったら、再び決戦だ。
 俺は食べるだけ食べて、風呂に入るだけ入って、ジュレイドラゴンが用意してくれていた上質なパジャマに着替えてから、ベッドで寝た。

 目覚めた。
 朝だ。窓から光が差し込んでくる。
 うん。
 ちょっと俺、寝すぎじゃない?
「なんか時間を無駄にした気がするう!」
 慌てて飛び起きる。
「おはようございますマスター」
「うん、おはようとっ君!」
「早速、誰かを召喚しますか?」
「そうだね。あいや、待って。その前に着替えて、その後は、ゴールドラゴンと合流しよう!」
 朝の支度を終えて、俺は家から出る。
 すると、家の隣には小さな祠があって、そこにゴールドラゴンがいた。
「おはようございますマスター」
「うん、ゴールドラゴンおはよう。そのキラキラ光っている祠は何?」
「はい。ウムオリハルコンより数段劣る、ジレオリハルコンでできた宝箱入れです。これでいかなる者も光る石を手に入れることができません」
「あ、ありがとう。そうだ、ゴールドラゴン。ちょっと訊きたいことがあるんだ。いいかな?」
「なんでしょうか、マスター」
「ゴールドラゴンは今の人モードの時でも、十分強い?」
「はい。強いですよ」
「正直、皇帝と戦えそう?」
「はい。一人では難しいでしょうが、十人、いや、五人もいれば皇帝にも楽に勝てるでしょう。少なくとも、通常時のドラゴン形態よりもパワーが数段劣るということはありませんよ」
「そう。それを聞いて安心したよ。それじゃあ、今から皇帝を倒す準備をしよう。まずはあと28人呼び出すよ。それまでここで待機しててくれ」
「イエスマスター」
「じゃあ、ヒロードラゴン召喚!」
 こうして俺は、時間をかけて仲間達を召喚する。
 まずはドラゴン十人。ジャイアント十人。あとはスイホ、キリ、ドキ、キンカ、ヒイコと、ワイバーンを木属性以外、4属性召喚。
 スイホ達以外も皆人の姿に。特に二人召喚しているドラゴンとジャイアントは男女の姿になり、待機してくれた。
 その戦力を見渡したところで、俺はまず謝る。
「皆、ごめん。俺は今まで無謀な勝負をしかけ続けて、これまで何度も皆を危険なめに合わせてきた。昨夜の99レベルの相手だってそうだ。もう少しで全滅するところだった。負けて消滅した仲間もいる。俺は君達に非情な命令をしていることを、ここで詫びる。皆、本当にごめん!」
「そんな、マスターが謝ることはありません!」
「マスターの命令こそ絶対。マスターの命令が至上の喜びなのです!」
「どうか、我らに頭を下げないでください!」
「マスターが無事なら、我らは本望です!」
「マスターに非があるとするならば、それは我らの非。改まるのは我らの方です!」
 皆、やさしい。皆が俺を、守ってくれる。君達は、最高の存在だ。
 でも、だからこそ、もう危険な戦いは、これで終わりにしよう。そう思う。
「皆。皇帝を倒して、俺達の戦いを終わりにしよう」
「イエスマスター!」
 ああもう、皆、本当に良いやつらだ。
「もう、皆の力は戦いを必要としないし、戦わずに穏やかに暮らせる領域にまでいきついている。後は、戦いに区切りをつけるだけだ。それを、今から行う。皇帝を倒したら、後は皆で遊んで、笑いあって、残り一生を楽しく使い切る。そんな暮らしをしよう!」
「イエスマスター!」
「それでは、皆。今回も、戦いは任せた。全員で全力で、なんとしてもあの皇帝を取り押さえろ!」
「イエスマスター!」
「よし。それでは早速、新たな力で俺達の戦場へと赴く。とっ君、クリーチャー創造を発動。どこにでも行ける移動能力持ちクリーチャーを創造してくれ!」
「イエスマスター。マスターの想像のままに、クリーチャーを創造します」
 こうして、俺達にまた、新たな仲間が生まれる。その名も!
「ウェルカムドア!」
「マスター。無属性クリーチャー、ウェルカムドアの召喚が可能になりました」
「召喚!」
 俺の目の前に一枚のカードが現れ、それがウェルカムドアになる。
「ウェールカーム!」
 よし。まずは思い通りのドアクリーチャーを生み出すことに成功!
「ウェルカムドア。お前のドアを通った先を、バラックス皇帝がいる目の前へとつなげてくれ!」
「ウェールカーム!」
 ウェルカムドアはうなずき、ドアを開く。
「よし、皆、乗りこめー!」
「イエスマスター!」
 こうして29人の仲間を引き連れ、俺は再び皇帝の元まで行った。
 するとそこは、おそらくは帝国の城の庭内。
 そこに、皇帝と数万の兵がいた。
 俺達は彼らを睨みつけ、相対する。
「ほう。神の使いよ、また来たか」
 すると昨日よりも立派な服を着たバラックスが、俺達に向かって歩を進めた。
「ああ。俺達は今度こそお前を止めに来た」
「できるのか。お前が、余をくだせるとでも?」
「やってやるさ。そのために俺達は、力を得た」
「何?」
 そこでバラックスが、俺達の力に気づく。
「そうか。その面妖な移動方法、百レベルボーナスの一つか」
「理解が早くて助かる。バラックス、バウコン。今、お前を捕らえる。そして戦争の終了を宣言してもらうぞ!」
「皇帝陛下に近づく国賊を排除せよー!」
「おー!」
 その時、誰かの号令で、この場にいる敵軍全員が俺達に殺到する。
「ウェルカムドア召喚を終了。ウッドワイバーン召喚。俺を乗せて空域へ離脱。その他の皆、敵を死なない程度に無力化しつつ、皇帝を捕まえろ!」
「イエスマスター!」
「余は神に、曇りなき祈りを捧げる」
 こうして、皇帝も本気を出し、俺達は全戦力でぶつかり合う。
 決して負けられない大勝負が始まった。

 ウッドワイバーンの背に乗りながら、皆の戦いを見守る。
 戦いは熾烈なものとなった。
 まず木、土、水属性の皆が、波となって押し寄せるバウコン帝国兵達を魔法で拘束していく。その拘束スピードは、何千何万の相手がおそいかかってくるスピードとほぼ互角だった。
 そして金、火属性の皆が、皇帝におそいかかる。
 皇帝は二刀流でこちらと戦う。皇帝は強くて、やはりこちらのクリーチャーと互角以上に戦った。
 けれど、それは一対一での話だ。人の姿とはいえドラゴン達、ジャイアント達、そしてキンカとヒイコに囲まれると、流石の皇帝も劣勢となった。
 皇帝は強い。それは常人をはるかに凌駕した力だ。きっと彼を止められる人は、俺達しかいない。
 運よく百レベルになり、こうして止めにこられたことに。その幸運に、今とても感謝する。
「く、うおおお!」
 皇帝は物凄い形相で剣を振る。
 けれど俺の味方には、戦いの中にいてもまだ余裕があった。仲間がいるから生じる余裕だ。仲間を信じられるから生まれる余裕だ。その余裕を武器に、冷静に格闘し、あるいは魔法で拘束を試みて、少しずつ皇帝の力をそいでいく。
 やがて、周囲でバウコン兵が半数近く、数万人は拘束された頃。
「今だ!」
「捕まえろ!」
「必殺、金剛枷連結!」
 金属性の皆が皇帝を縛り上げ、火属性の皆が皇帝の剣をけりとばした。
 やった、皇帝に勝った!
 ありがとう、皆。後は、俺も頑張る番だ!
「バウコン帝国の全員につぐ。皇帝は我らが捕まえた。皇帝の身柄はこちらのものだ。お前達は負けた。使えるべき主を失った。皇帝のためを思うなら、帝国の未来を思うなら、抵抗をやめろ。戦いをやめろ。もう戦争を終わりにするんだ。戦いは、終わりだ!」
 俺はバウコン軍の頭上を飛び回りながら、叫ぶ。
「皇帝は倒れた。争いはやめろ!」
 それを叫び続ける。
 もう、戦いは終わりだ。終わったんだとうったえ続ける。
 それでも、まだ何人かのバウコン兵が突撃してきたけど、それも皆が拘束。
 こうして、俺達の戦いは、終わった。

 皇帝の元まで来る。
「まさか、昨日逃げ延びた人間がここまで強くなるとは。流石の余も予期できなかったぞ」
「皆の思いが、お前の力を上回ったんだ。皇帝。今すぐ戦争をやめろ。それを全員に伝えてくれ。お前からも終戦を宣言するんだ」
「そうして、余を捕まえて、どうするつもりだ」
「どうもしない。ただ、平和を望むだけだ」
「お前の言う平和は、真の平和ではない」
「お前の望む戦争は、平和を生み出さない。むしろその逆だ。そのくらい、わかるだろ」
「お前は真の平和を見すえていないから、そう言えるのだ。この地全員の、完全なる平和。それを見られぬ今に、興味はない。余は、最後まで今と戦い続ける」
 なんでそんなこと言うんだ。
 何を見ているんだ、お前は。
「いい加減目を覚ませ。戦争で死んだ人たちを、お前は生き返らせられるのか? 幸せにできるのか? できないだろう。これ以上取り返せないものを作るな!」
「勝って得ることしかできぬ未来があるのだ。彼らはその道を切り開くために逝ったのだ。それはある意味幸せだ。人は意味なく死んでいく者の方が多い」
「じゃあ、俺が全員に意味を与えてやる!」
 きっとこの皇帝は、もう人ではないのだ。心を失ってしまった、悲しい風見鶏なのだ。
 なら、俺が彼に、人の心を見せてやりたい。そう思った。
「俺が平和を見せてやる。俺が皆を幸せに導いてやる。皇帝、お前じゃ無理だ。だからかわりに俺がやってやる。それで、満足しろ!」
 数秒の間、静寂。
 その時になってようやく俺は、自分が何を言っているか自覚した。
 そして、重々しく皇帝が言う。
「お前が、余の意志を継いでくれるのか?」
「いや、えっと、それは」
「それができなくば、余は兵を退けん。お前が余の望みを叶えるというのならば、余はお前に力を貸し、友と認めよう。それ以外の道は、ただ敵同士。それだけだ」
 こ、こいつ。それ程までに。
 それ程までに、今の世界が気に入らないのか?
 そうまでして、国民を戦いにいかせたいのか?
 なら、俺も覚悟を決めよう。
 バウコン帝国の人達を守るために、もう少しだけ頑張ろう。
「わかった。ここからは、俺がお前に見せてやる。争いのない、真の平和を」
 幸い、俺には皆がいる。
 それは完全におんぶにだっこ状態だけど、でも、それでもこの場を収められるなら、俺は首を縦に振る。
 そして、皇帝と約束する。
「皇帝にかわって、俺が世界を平和にしよう」
「わかった。それでは余は、戦争をやめ、これ以上の戦争を起こさないと誓おう。その間、余はお前が作る平和を見届ける」
 こうして、バウコン帝国の侵攻は終わった。
 そして俺は、新たな目的をもってしまったのだった。
 めでたしめでたし。で、終わればいいなあ。

 皇帝の拘束を解き、まずはこの場にいる帝国兵達を引き揚げさせる。
 皆が拘束した人達も、すぐに解放し、帰れるようにする。
 ただし、皇帝だけは帰らせない。彼にはまだ、ベイクトにいるバウコン兵達を退却させるという役割がある。むしろそれが一番の目的だ。
「折角皇帝陛下自らが遠征に出ようとしていたというのに、まさかこんな形で終わるとは」
「帝国の世界統一が、でたらめな強さの不審人物少数の前に散ってしまった。これは悪夢か」
 帝国兵の方達がそのようなことを言いながら引き上げていく。こ、このタイミングでこれて良かった。こんな大軍が皇帝と一緒に大陸中を練り歩いていたら、すぐに全国支配されるところだった。
「皇帝。今からベイクトという都市に行って、そちらの兵達を引き上げさせてくれ。そこまで俺達がつれていく」
「余の呼び名はバラックスでよい。して、どうやってその都市まで行くというのだ?」
「俺の仲間に頼む。ウッドワイバーン召喚終了。そしてウェルカムドア二人目を召喚!」
 俺の指示でウッドワイバーンがウェルカムドアに変わった。
「ウェルカーム」
「ウェルカムドア。こことベイクトの都市をつないでくれ」
「ウェルカーム」
 ウェルカムドアが扉を開ける。流石ウェルカムドアだ。仕事が速い。
「さあ、バラックス。ドアをくぐってくれ」
「ああ、わかった」
「行くぞ、バラックス」
「行きますわよ、バラックス」
「お前達は神の使いの配下だろう。皇帝陛下と呼べ」
「バ、バラックス。俺のことは、沙漠でいいから」
 こうして俺達は、都市ベイクトへと瞬間移動した。
 これでベイクトの市民が解放されたらいいな。

 俺達がベイクトに来ると、周囲の人達は立ち止まって、俺達を見た。
 というか、ここ町中だよな。う、酷い。皆見るからにやせ細っている。バウコン兵に虐げられているのか?
「俺達は、バウコン帝国の皇帝を倒し、戦争を終わらせた。皇帝もここにいて、共に終戦を宣言する。バウコン軍は即刻ベイクトから退去せよ。これは決定事項だ!」
 俺は叫ぶ。そして何度も言う。
 するとすぐに兵がやって来て、俺達に剣を向けた。
「暴徒が出たか。む、なんだこいつら。こんなやつらこの都市にいたか? とにかく、鎮圧する!」
「ここは余に任せてもらおう」
 皆身構えたが、バラックスが前に出たので助かった。
「暴徒め、これでもくらえ!」
「未熟者が」
 兵士は素手のバラックスにあっさりやられる。
「うわあ!」
「たわけ者。余はバラックス、バウコンだ。お前は余の配下皆に伝えろ。戦争は終わりだ。即刻全員バウルコンへ戻れとな」
「な、そ、その服と指輪の紋章は、本当に? し、失礼しました。直ちに上官に報告してまいります!」
 一度集まった兵士達は慌てて散る。これは良い。流石敵国のトップ。本当に上手くベイクトを開放してくれそうだ。
「ここが余の野望の終点地か。ふむ、感慨深いな」
 そう言ってバラックスが街並みを見る。
「すぐにここにいる人達に、笑顔と元の生活を取り戻させてみせるさ」
 俺はそう言って、ひとまず待った。
 帝国軍が近くにいっぱいいると思うと落ち着かないけど、それも少しの間だけだ。と思った。

 しばらくすると、土で拘束された男が神輿に乗せられてやって来た。
「そ、そのお顔は、まさしく皇帝陛下、ははーっ」
 その男は神輿の上でかしこまる。
「その顔、余も憶えておるぞ。確か、リーアと言ったか。ここまでの遠征、ご苦労だったな」
「はっ。そのお言葉、ありがたき幸せでございます。しかし、陛下のお力になれずにこのような情けない姿をさらすことになったことを、どうかお許しください。お前達、俺を地面に移動させろ。このままでは陛下を見下ろす形となってしまうではないか!」
「は!」
 配下の人達が神輿から、縛られた男、リーアをおろす。なんだか、賑やかだな。この人。
「しかし陛下。我らはまだアッファルト王国攻略の最中なのですが、真に引き上げてよろしいのでしょうか?」
「よい。余はこの神の使い、サバクに負けた。よって余の野望は、このサバクに託すことにした」
「どうも、沙漠でーす」
「こ、こんなどこのパンピーとも知れぬ輩に。陛下、それは真ですか?」
「くどい。余に二度も同じことを言わせるな。即刻退却の準備だ。他の攻め落とした地からも兵を退け。よいな」
「はっ。かしこまりました!」
「これでよいな。サバク」
 バラックスに見つめられると、ちょっとビクッとする。まだこの人に慣れてないな。
「ああ、うん。ありがとう、バラックス。あ、それじゃあこの人の拘束を、解いてあげるよ。ううん、全員の拘束をとろう。皆、拘束してあるバウコン兵の皆を開放してあげてきて。バウコン兵の皆は、拘束されてる兵の元まで、彼ら彼女らを案内してあげて」
「イエスマスター」
「であるそうだ。お前達、すぐに拘束されている者をこの者らに開放してもらえ」
「はっ!」
「それと、リーア」
「はい、なんでございましょう陛下」
「退却する前に、お前が信用できる者二名を選び、ここにつれてこい」
「はっ。御意に!」
 バラックス、何をするつもりなんだろう。
「あ、荷物が多くなければ、今ならうちのウェルカムドアで帝国まで一瞬で帰れますよ。よければ使ってください」
「ウェルカーム」

 しばらくして。
 リーアが二人の女性をつれて帰って来た。
「陛下。仰せの通りに信用できる部下を二名選び、つれてまいりました!」
「クレバナ、グンシーです。陛下への拝謁が叶うとは、真に光栄であります!」
「ロリッチ、ビーナです。陛下への拝謁を賜るこの栄誉、真に光栄の極みであります!」
「クレバーな軍師とロリチビ?」
 思わず口から言葉がもれた瞬間、やって来た二人の女性から絶対零度の如き視線をもらった。
「ごめんなさい。本当すみません」
「クレバナにロリッチ。今からお前達に、余から特命を言い渡す。本日よりこのサバクと共に行動し、密に補佐し、同時に我が国へサバクの動向をつぶさに報告してほしい。よろしく頼む」
「はい、了解いたしました!」
「その栄誉、謹んでお受けいたします!」
 こうしてクレバナとロリッチは手軽に敬礼した。
 あいや、ちょっと待って。
「ちょっと待って。バラックス、この二人を、俺にどうしろと?」
「何、余からのちょっとしたプレゼントだ。きっとこの二人は、なかなか使えるであろう。気に入ったら妻の列に加えてやってよい。何より、彼女達からの報告が、お前が余をたばかっていないかの判断材料になる。くれぐれも、真摯に世界平和を目指してくれよ?」
 い、言われてしまったあ。しかも、見張りつきだあ!
「つ、妻とかよくわからないけど、それ以前に俺の計画は、そんなにスピーディーなものじゃないよ?」
「それでよい。余は気長にお前の世界平和の進展を眺める。だがあまりにも進まないようであるならば、余にも考えがある。わかったな?」
「は、はい。わかりました」
「サバク、これからよろしくお願いします」
「サバク、私達はこれよりあなたと行動を共にしますので、今日から我らに衣食住を提供していただきたい」
 そう、クレバナとロリッチに言われる。
「は、はい。わかりました」
 どうしよう。勢いに流されて、とんでもない子達を任されてしまったかもしれん。
 いや、でもこれも、これ以上戦争を行わないためだ。彼女達くらい、立派に抱えてみせよう。
 それに、俺には皆がいる。皆の力を借りれば、きっとこの逆境もどうにか乗り越えられるに違いない。

 こうして、バウコン兵はほとんどウェルカムドアから帰り、馬や大きな荷物等を陸路で持ちかえる者達だけが、ベイクトから出発した。
「サバク。では、この世界を任せたぞ」
「ああ。バラックスは、しばらくゆっくりしてくれ」
「そうできたらいいな」
 こうして、バラックスも帝国へ帰る。
 あと残されたのは、俺達と、バウコン兵が皆帰って安堵したベイクト市民達と、クレバナとロリッチ。
「さて。サバク。これからどうするのですか?」
「次の予定をお聞かせ願いましょうか」
 二人からの視線が突き刺さって少し痛い。
「と、とにかく、まずは王様達にこのことを報告しに行こう。そしたら」
「そしたら?」
「皆をねぎらうために、パーティーだ!」
 俺がそう言って拳を振り上げ、皆を見回す。
「そ、そうですわ。マスターとパーティー、楽しみですわ!」
「やっと一息つけるんだな。さあ、マスター。はしゃごう!」
「パーティー。隠し芸。頑張る」
 よし、皆やる気になってくれたぞ!
「こ、こんな方達とこれから行動を共にするのですか」
「陛下。早速の報告は、あまり良い内容とはならなそうです」
 新しく加わった女の子二人は、あんまり良い顔をしてないけど。
 俺達はやっと、戦争終結という偉業を成し遂げたんだ。それを喜ばないでどうする!
 世界平和も大事だけど、まずは俺達が笑顔になろう!

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