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26 王主国その2

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 屋敷の中は、見た目通り広かった。
 まず、扉を開けて中に入った瞬間、目の前が軽くダンスホール状態。百人くらい余裕で踊れそうだ。
 あと、ここでも靴は玄関で脱がないんだな。雪山の屋敷でもそうだったけど、文化の違いに軽くショックを受ける。
 そして俺の部屋は、中央階段を上がってすぐ右。結構入り口からすぐ近くの場所にあった。
「私とロリッチの部屋はどこでもかまいません。ただ、隣同士にしてください」
「かしこまりました」
 アムヌがクレバナさんとロリッチさんの部屋を案内する。ビナがフォレストジャイアント君の部屋を紹介した。
 その時ビナに、こう言っておく。
「ビナ。俺の召喚クリーチャー用に、部屋をひとまとまり取っておいてほしい。最大で、30人常駐する可能性があるから」
「かしこまりました」
「部屋数、足りそう?」
「はい。ギリギリいけます」
「そう、良かった。あ、でも。とっ君を入れたら31人かな?」
「それには及びません。マスター。私は出来る限りマスターの中にいます」
「わかった。ありがとう、とっ君」
「? では失礼いたします」
 では俺も、自分の部屋を見てみる。
 部屋には大きなベッドや鏡台、本棚やテーブルがあり、そのどれもが豪華な装いだった。
 床に敷かれた絨毯はふわっふわ。いいんだろうか、こんなんで。
「いかがでしょうか。お部屋のご様子は」
 ここまで案内してくれたバトソンも入って来る。彼は心なしか、少し緊張しているかもしれない。そう見える。
「豪華すぎる。不満なんてないよ」
「そうでございますか。豪華な点は、慣れてください」
 慣れたら庶民に戻れなくなってるかもしれないなあ。
「ありがとう、バトソン。そうだ、バトソン。一つ頼み事をしてもいい?」
「はい。初めてのご用、なんなりとお申し付けください」
「できれば今夜、皆でパーティーをしたい。用意できるかな?」
「もちろんでございます。しかし、呼ばれる方とはいったい?」
「俺の仲間達だよ。フォレストジャイアント君と会っただろう。彼みたいな人を、あと29人呼びたい。いや、やっぱり30人だ」
 折角だから、とっ君にもパーティーを楽しんでもらおう。彼にはかなりお世話になったからな。
「かしこまりました。パーティーの準備は必ずいたします。そのお客様をお呼びするのは、いかがいたしましょう?」
「ああ、それは俺が呼ぶよ。バトソン達はパーティーの準備だけしてくれればいい。ああそれと、バトソン達もパーティーに加わってね。皆で楽しもう」
「は、いや、しかし。それはいかがでしょうか?」
「ぜひ参加してくれ。どうせだから、皆との顔合わせパーティーも兼ねよう。ここで仲良くなれれば、今後も良い関係を築けるじゃないか。クレバナさん達や、俺が奴隷にしてしまった三人も追加だ」
 きっと皆も、文句はないだろう。
「サバク様がそれでよろしいのなら、承知いたしました。それでは、そのように各自にお伝えしておきます」
「うん、ありがとう。それじゃあ、あ、そうだ。皆ともパーティーについて詳しく話し合おうかな。スイホ召喚」
 俺の目の前にカードが現れ、それがスイホになる。
「お呼びでしょうか、マスター」
「うん。これから皆でパーティーの打ち合わせをしよう」
「イエスマスター!」
「な、人が突然現れた?」
 バトソンが驚いているので、俺はバトソンに言った。
「バトソン。これが俺の力なんだ。これからもいきなり人が増えたり減ったりすると思うから、あまり驚かないでね」
「は、はい。かしこまりました。流石は、神の使い様です。では俺は、パーティーの準備に向かいます」
「うん、よろしく」
 バトソンが去る。
「ねえ、マスター」
「ん、なんだい、スイホ」
「私、マスターとパーティーができるなら、エッチなパーティーがしたいです!」
「ダメー」
 本当この子はたまにどうしようもないなあ。
「そこをなんとかあ。私の背中を、つつー、つつうーって指でなぞるだけでもご褒美になりますからあ」
「ダメー」
「ご主人様、失礼いたします!」
 ここでゴワゴワ服を着た美女三人が現れた。皆慌てていて、スイホを見ている。
「な、ご主人様の、つれの女?」
「探知した反応は、彼女?」
「あの、ご主人様。こちらの方は一体」
 美女三人があっけに取られているので、俺が説明する。
「ああ、皆。この子はスイホ。俺の仲間だ。他にも新しい人がいっぱいいきなり現れるだろうけど、気にしないでくれ」
「は、はい。わかりました」
「しかし、どうやって突然現れたんですか?」
「私達はこの屋敷の警備も行っています。今探知魔法でスイホさんの反応を察知したので、こうして駆けつけた次第です。よろしければ、なるべく緊急事態だと疑うような反応は、あまり起こしてほしくないのですが」
 美女三人がそう立て続けに言う。
 ふむ。屋敷の警備か。それなら確かに、いきなり人が現れたら意表を突かれてしまうかもな。
「そうか。でも、これが俺の力だから。皆、納得して?」
「はい、ご主人様」
 三人一気に言われる。これはこれでたじろぐなあ。
「ところで、君達の名前はまだ聞いてなかったけど、名前は?」
「す、すみません。ご主人様は既にご存じであると思ってしまっていて、つい。うっかり失念していました。申し訳ございません」
 そう言って銀髪の女性が頭を下げる。
「あ、マスター。私この人知ってますよ。名前は確かアビス。城で夜中にマスターの命を狙った命知らずですわ」
「ああ」
 俺が寝ている間に襲ってきたという、あの。
「はい。私はアビスです。先日はご主人様に御無礼をはたらいてしまい、大変申し訳ありませんでした。しかしご主人様に助けていただいたこの身、今は全力でご主人様のために捧げる覚悟です。どうか可愛がってください」
「あ、ああ。はい」
 これが暗殺者?
 そうには見えない。普通に美女だ。あ、でも色気はともかく、たたずまいとかは戦闘のプロみたいな感じがするかも。
「ご主人様。私はヘヴンでございます。私もアビス同様、ご主人様に誠心誠意お仕えする所存です。どうかよろしくお願いします」
 紫髪の美女がそう言って頭を下げた。
「ああ、はい。よろしく」
「ご主人様。私はヘルでございます。私も二人と同様、ご主人様の命令をなんでも聞く犬となった者でございます。どうかよろしくお願いします」
 桃色髪の美女がそう言って頭を下げた。
「ああ、はい。よろしく」
 なんか三人とも、えらく忠誠心が高いけど、皆あれから周りの人に何かされてないだろうか?
 不安だ。いや、ちょっと心配する。
「ま、まあ。皆そう肩に力いれないで。俺はあまり皆にどうこう言う気はないから、できるだけ楽にしてていいよ。また問題を起こしたりしないようなら、このまま平和に暮らしてていいから」
「もったいなきお言葉、ありがとうございます」
 また三人とも平身低頭。ちょっとやりづらいな。
「ところで、三人とも。その服、着づらくない?」
「いえ、これは奴隷用の服なので、私達は必ず着用しなければいけません。なので、お気遣いは不要です」
 アビスにそう言われる。
「そ、そうか。でも、首に首輪もつけてるし、大変なようなら言ってね。奴隷っていっても、解放される条件はあるんでしょ?」
「いいえ、私達はご主人様という重要人物の殺人未遂という重罪を犯したので、奴隷解放はありえません」
「ご主人様には、便利な犬程度の扱いをしていただければ幸いです」
 ヘヴンとヘルにもそう言われてしまう。これは困る。
「そう言わないで。ひとまず今夜、三人もパーティーに参加してね。奴隷なんて身にはなってしまったけど、それでも君達は人間なんだから、人間らしく楽しいことをしていいんだ」
「寛大な扱い、ありがとうございますご主人様」
 三人にそろってそう言われる。その時俺は、この前王様に言われたことを思い出した。
「あの、ところで皆は、サバク教をおこしたって聞いたんだけど」
「はい、その通りでございますご主人様」
「あの、そんなことしてもご利益はないから、程程にね?」
「承知しました。ですが、これからも敬うことには変わりありませんので」
「あー、うん。あ、そうだ。三人とも、フォレストジャイアント君の場所知らない? 知ってたら教えてほしい」
「それでしたら私がご案内いたします」
「いえ、ここは私がおつれいたします」
「私もお供いたします」
 三人ともグイグイ近づいてくるな。
「あなた達からあさましいメス犬の臭いがします。絶対マスターに触らないように。憶えておきなさい」
「スイホ、そんなひどいこと言わないで。とにかく、まずはフォレストジャイアント君と会おう」
 こうして一度部屋を出て、そこで丁度こちらへ来ていたフォレストジャイアント君と合流。
 けど、全員召喚するならやっぱり、個室では狭い。結局踊り場に出て、更にキリを召喚した。
「ところで、ドラゴンやジャイアント達はよく二人同時に頑張ってもらっていたけど、パーティーにも二人呼んだ方がいい?」
「いえ。私達の記憶は二人分共有されています。例え二人呼び出せるとしても、一人がそれを体験していればオーケーです」
 フォレストジャイアント君からそのような言葉をもらい、俺はこのまま一人ずつ召喚することを決める。
 そしてここで、新たな事実が浮上した。

 ドラゴン五種、ジャイアント五種、ワイバーン五種、ウルフ五種、1コスト達五種、女の子達5コストが五人。4コスト五人。
 合計で35人だ。
 あああと、ウェルカムドアも入れて、36人か。
 とにかく、一回で召喚しきれない。
「パーティーは二日連続にすべき?」
「それが妥当ですね。となれば、今日は一体誰を召喚するべきか、ですか」
 キリが言う。
「私と少女タイプが召喚されたのですから、そのまとまりでひとまず、15人召喚でいいのではないですか?」
 フォレストジャイアント君が言う。
「うーん。まあそれでいいか。けどとなると、後15人は、どうするか。ドラゴンはいっぱい頑張ってくれたから、呼ぶとしてえ。あとワイバーン達、ウルフ達、1コスト達か」
「1コスト達は雪山でちょっと呼んだだけでしょう。あとイルフィンが少々。彼らは後回しでいいのでは?」
「う、うーん」
 確かに、キリの意見を採用すればそれで決まりだ。
 でもイルフィンは俺が最初に召喚したクリーチャーだし、それにいっぱい命をかけて頑張ってくれたんだよなあ。
 いや、それを言うなら、命をかけてくれてたのは他の皆も一緒だけど。
「あ」
「いかがしましたか、マスター?」
 スイホに訊かれる。
「いや、雪山といえば、ジャナカ元気かなって。パーティーやるなら、彼女も呼べれば良いんだけど」
「今は難しいですわ。また後、運よく会えたら誘えば良いと思いますよ?」
 スイホがあっけらかんとそう言った。
「うん、そうだね」
 とにかく今は、皆と騒ぐ予定を決めよう。
「そろそろ一分経つか。次の仲間を召喚しよう。ドキ召喚」
 目の前にカードが現れて、それがドキになる。
「お呼びでしょうか、マスター」
「うん。ここでパーティーしようと思うんだ。ドキは何かパーティーでの催しの案ない?」
「なら、イスとテーブルを私が出してもいい。石の出来栄えで良ければだけど」
「なるほど。確かに皆にパーティーの準備をやってもらってもいいな」
「お待ちください。それならイスとテーブルは私が用意いたします。いいですね、マスター?」
「ああ、わかった。キリ、頼む。フォレストジャイアント君も、お願いできるか?」
「イエスマスター、お任せを」
「よし。でも各自動き出す前に、パーティーで何か希望があれば言ってくれ。なるべく取り入れよう」
「では、音楽が欲しいでしょうか」
「キリ、ナイスだ。楽器を、皆で使って演奏会か、もしくはミュージシャンを呼ぶかか。CDとか蓄音機とかは、あるかわからないからな。ひとまず皆はどっちがいい?」
「マスターの好きな方で!」
「スイホ。俺は皆の意見を参考にしたいんだ」
「マスターが望むなら、演奏をする。任せて」
「ドキ、ありがとう。それじゃあこの案は、更に皆の意見を聞くことにしよう。最終的に多数決で。あと26人召喚しないとね。あ、とっ君はどっちがいい?」
 ここでとっ君が自分の意思で召喚された。
「はい。私は自分達で演奏するのが良いと思います。ミュージシャンを招くと音楽はこの世界のものが定番になってしまいますが、私達なら元の世界の音楽を奏でられます。それに、パーティーはまだ何も決まっていません。それでしたら、演奏会にする方が良いかと提案します」
「なるほど。パーティーをいっそのこと音楽縛りにするわけか。それも良いかもしれないな」
「別に演奏だけをすると決める必要もありませんが、テーマは一つ決まるかと」
「よし、わかった。ありがとうとっ君。けど、一応他の人の意見も聞こう」
「かしこまりました」
 ここでとっ君が消えた。
「さて、他に誰か意見がある人ー」
「はいっ。私はマスターと王様ゲームをやりたいですわ!」
「却下。はい次ー」
 こうして皆の意見もまとめて、順調にパーティーの準備が出来ていった。
 そして30人全員召喚し、各自動き出すと、皆ものすごく頑張った。
 木属性の皆が、一気にイスとテーブル、楽器やいつものフルーツを生み出していく。
 金属性の皆は、豪華な食器や金管楽器を作り出す。
 火属性の皆は、踊り場のいたるところに、空中に浮かぶ燃え移らない炎を生み出す。更に天井辺りをフワフワ漂わせて、幻想的な光景を生みだした。
 水属性と土属性の皆は手持無沙汰だったが、我先にと楽器を練習しだす。皆が作った笛やヴァイオリン(弦は植物繊維)を鳴らして、ものの二、三分で曲を奏でられるようになる。
 俺はカスタネットを選ぶ。無理も背伸びもしない。できそうなことをやる。
「こ、これは、どういうことでしょうか?」
 楽器の練習音を聞いて来たバトソンに、俺が説明。むしろ、皆もどうかと、マラカスやトライアングル等をすすめる。ここでパーティーは二日連続でやることも伝える。しかし二日目は、各自好きに出席、楽しむで良しとする。
 そしてお昼ごはんを踊り場まで運んでもらい、皆で食事。その後キリが野菜等を融通してくると言って、厨房へ向かった。
 そして皆は、すぐにパーティー用の曲を仕上げる。その後はまだ日中だったので、折角だから庭を見て回ることにする。
 花や木が生い茂る庭を皆で散歩。そこでスウェードと会い、仕事をほめる。
 馬小屋に停めていた馬車は、もう城に戻っていた。
 庭をくまなく歩いたら、折角なので屋敷探索。
 これは31人でぞろぞろ歩くわけにもいかないので、各自散開。
 小部屋なんかは見ないけど、トイレや風呂場、食堂なんかはちゃんと確認。
 宝物庫には、文字通り目がくらむ程の金貨が山となって積まれていた。鍵はバトソンが所持とのこと。
「あの程度の金なら、私達がすぐに出せます」
 メタルギアジャイアント君が怖いことを言ったので、絶対にやめておけと念を押しておく。
 屋敷の窓から眺める風景はきれいだった。庭がきれいだと、景色が最高になる。
 これ全部、俺がもらっちゃったんだよな。やっぱり、何かお礼を考えておかないといけないかな。
 なんて考えている内に、日が暮れてきた。
 踊り場に戻ってみると、バトソンやビナ、奴隷美女達が踊り場の飾りつけを行ってくれていた。
「皆、ありがとう」
「いえ、これも仕事の内です。それに、テーブルや催し等は、既にサバク様方がご用意してくださいましたからね。こちらのやることなんて、片手で余る程ですよ」
「そう言ってくれると助かる。そうだ、俺達も手伝うよ」
「いえ、こちらは全て我らにお任せください」
 バトソンにそう言われ、それでもごねていると、クリーチャーの皆が集まってくる。
 そこで皆が、更に豪華にこの場を飾り付けしだした。
 金属性の皆が金の像を作り、それを宝石で飾り付けする。
 土属性の皆が石造を作り、それを木属性の皆が花冠等で飾りつけする。
 水属性の皆が石の皿の上に氷細工を作っていく。
 火属性の皆は火で動物を形作り、まるで生きているかのように動かす。
 皆のおかげで、あっという間にパーティー会場は更に幻想的な空間となった。
 この光景を見たら、なんだか盛り上がってきたぞ。
「皆。折角だから、もうパーティーを開始しようか。使用人達は皆まだ集まってないけど、演奏を始めちゃおう」
「イエスマスター」
「とっ君も召喚!」
 ここで、とっ君も召喚される。
「よし。それじゃあ皆で演奏だ!」
 俺はカスタネット。とっ君はシンバルを持つ。ドキはなぜか銅鑼。
 そして、皆で演奏を始めた。
 皆、俺が知っている曲を、しかし俺が記憶している以上に正確に奏でる。俺はその皆の邪魔をしない程度に、カスタネットを鳴らす。
 ヴァイオリンの旋律が重なる。笛の音が合わさって音が豊かになる。
 オーケストラ、Jポップ、演歌、アニメゲームの音楽。
 いろんな演奏をしていくうちに、屋敷の皆が集まっていた。
 いつの間にか、料理もテーブルに運ばれている。
 俺は演奏が一区切りついたところで皆を止めて、言った。
「皆。いつも俺を支えてくれてありがとう。今日は皆が主役だ。飲んで食べて、楽しんでくれ!」
「イエスマスター!」
「演奏は一旦中止。まずは食べるぞー!」
「イエスマスター!」
「さあ、皆。それぞれグラスをとって。バトソン達も、アビス達も、皆だ!」
 そして楽器を置いて、それぞれテーブルに置いてあるグラスを取り、その時俺が気づく。
「あ、これワインだ」
 ワインはまずい。記憶がとんでしまう。
「マスター、この杯を」
 そこでキンカが、金の杯を俺に見せた。
「では今、至高の聖水をおつぎいたしますわ」
 スイホがそう言って、金の杯にキラキラした水をそそぐ。
「ありがとう。では、気を取り直して」
 全員が杯を持ったことを確認してから、声高らかに宣言した。
「皆のおかげでここまでこれたことに、乾杯!」
「かんぱーい!」
 その後俺達は、とっても楽しいひと時を過ごした。

 バトソンのアカペラ。
 アムヌの手品。
 エットーのスイカアート切り。
 スウェードのりんごのお手玉(なんと八個まとめて投げ続けた)。
 ヘヴン、ヘル、アビスの、魅惑的なダンス。
 俺の仲間達の、属性魔法全開によるいつもの凄技。
 そしてまた演奏。
 料理はたくさんあって、お腹いっぱいになる程食べた。
 まあ、ドラゴンやジャイアント達は、胃袋の大きさが人とは違うみたいだったけど、そんな感じで皆適度に食事。
 そしてパーティーの終了間近には、皆からのこんなサプライズもあった。
「マスター。どうかこれをお飲みください」
「スイホ。これは普通の水?」
「いいえ、不老不死水です。飲むと寿命と健康寿命が延びます。ぜひどうぞ」
「それはどうかなあ。俺、長生きは普通程度が良いと考えてるんだけど」
「しかし、マスターの寿命が私達の寿命でもあります。どうか少しでもお力になれればと思い、用意した所存です」
「そう言われると飲まないといけない気になってきた。わかった。ありがとう。もらうよ」
「ありがとうございます、マスター」
「ではマスター。こちらもお食べください」
「キリ、その見たことのない果物は?」
「不老不死の実です。食べると寿命と健康寿命が延びます」
「えっ、二つ同時に摂取?」
「これからは毎日お出ししますね」
「えっ」
 そんなこともあって、皆終始楽しい。終始笑顔。
 俺も、仲間達も、屋敷の皆も、皆明るく騒いだ。
 けれど、夜もふければ、楽しい時間も過ぎていく。
 ひと段落したら、パーティーももう終わり。
 皆順番にお風呂に入って、それぞれ部屋に行って、気分が良いまま眠る。
 そして、翌日。朝。
 コン。コン。
「サバク様。失礼します。お城からの使いの者が現れました」
 コン。コン。
「サバク様。どうかお目覚めになられてください。入ってもよろしいでしょうか?」
「待ちなさいバトソン様。ご主人様を起こすなら、我らにお任せを」
「ん。奴隷が何を言う。お前達はお前達の仕事をしていろ」
「ご主人様はきっと、美女に起こされてお目覚めになられる方がうれしいに決まっています。つまり、これは我らの仕事です」
「ご主人様。失礼ながら、お部屋に入らせていただきます」
「こら、お前達。勝手に俺からマスターキーを奪うな!」
「ご主人様」
「起きて。ねえ、起きて。ご主人様あ」
「ご主人様、お願です。どうか、起きてくださあい」
 ん、なんだ。なんだか今起きないと、とってもまずい気がするぞ。
「んー。ふぇっ!」
 目を開けたら、視界内に三人の美女がいた。しかもヘヴンはベッドに乗って、俺の上にまたがっている。
「あ、ご主人様。お目覚めになられましたか」
「な、なにが、え?」
「ご主人様。お客様がお見えになっておられます」
「あ、ああ。そう。うん、わかった。ありがとう」
「はい!」
 三人とも、良い笑顔だ。
「こら、お前達。すみませんサバク様。今後このようなことはないよう注意しますので」
「いや、いい。起こしてくれたことは、助かった。けど、普通に起こして」
「かしこまりました。ご主人様!」
 大丈夫なんだろうか、これは?
 いや、たぶん大丈夫だろう。そういうことにしておこう。

 ひとまずパジャマ姿で失礼しながら、お客様のところへ行く。
 見ると、玄関先に兵士が二人、立っていた。
「これは、サバク様。おはようございます!」
「ああ、おはよう。ええと、何があったんでしょうか?」
「そんな、サバク様。そうへりくだらないでください。昨日王様が決定なされた、終戦記念パレードの招待にまいりました。パーティーはその後に行われます。ささ、サバク様。まだ時間はあります。ゆっくり支度をなさってください。その後、我らが馬車でお送りいたします」
「ああ、はい。ありがとうございます」
 となると、早くでかける準備をしないとな。それと、皆を一度、召喚終了させておこう。まさか、皆でぞろぞろ行くわけにはいかないもんな。
 そういえば、皆はどうしているんだろう。そう思っていると、ここへヒイコ達火属性の皆がやって来た。
「マスター、おはようございます。早速ですが、マスターに贈り物があります!」
「おはよう、ヒイコ、皆。贈り物って?」
「はい。こちらは聖なる炎をマントにした、聖火のマントです。皆の力を合わせて作りました。これがマスターには似合います。どうぞ、使ってください!」
「う、うわあ。ありがとう。うれしいなあ」
 それは、赤い生地に、ゆらめく炎が映ったマントだった。
 見ているだけで、熱い。いや、マント自体がポカポカ温かい力を放っている。
 これを、俺に、つけろと?
 いや、これはきっと火属性の皆が作ってくれた大切な物だ。見た目凄すぎて使えない。とは、言いづらい。
 結局、俺は聖火のマントを普段使いにすることにした。
「マスター、おはようございます!」
 と、ここで、スイホ達水属性の皆がやって来た。
「おはよう、スイホ。皆。ところで、その手に持っているものは?」
「はい。この世で一番素晴らしい水、世界天水を凝縮し、冷えない氷にして作った、世界天水の指輪ですわ。皆で力を合わせて作りました。これを身に着けているだけで、マスターは常に最高のコンディションを保っていられます。どうぞ、お使いになられてください!」
「あ、ああ。ありがとう。大事にするよ」
 次は、キリ達木属性の皆がやって来た。
「マスター、おはようございます」
「おはよう、キリ。と皆。ところで、その手に持っているものは?」
「はい。これは世界樹よりも上質な木、レジェンドウッドの実の繊維から作った、レジェンドウッド服です。皆で力を合わせて作りました。これを身につければマスターは何時でも健康、そして清潔。常に清らかかつ穏やかな時間を過ごせます。これをマスターにお贈りいたします!」
「あ、ああ。ありがとう。大事にするよ」
 とても上等な服をプレゼントされてしまった。サイズも俺にピッタリっぽい。これも、ありがたくもらっておこう。
 と、ここで、ドキ達土属性の皆がやって来た。
「マスター、おはよう」
「おはよう、ドキ。と皆。ところで、その手に持っているものは?」
「これは凄まじい力を宿す石、世界石で造られたベルト。皆で作った。これを使っていれば、マスターはあらゆる攻撃を受けない。これをマスターにつけていてほしい」
「あ、ああ。ありがとう。大事にするよ」
 なんだか、とてつもない装備をもらいまくっている気がする。
 と、ここで、キンカ達金属性の皆がやって来た。
「マスター、おはよう」
「おはよう、キンカ。と皆。ところで、その手に持っているものは?」
「これはウムオリハルコンで出来た剣と鞘だ。鞘のひももワイヤー状に加工したウムオリハルコン製だぞ。皆で作ったんだ。この最高の武器こそ、我らがマスターに相応しい。ぜひ受け取ってくれ」
「あ、ああ。ありがとう。大事にするよ」
 こうして俺は、皆から最高級装備をもらい、それを身に着けて城に行くことにした。
 派手な見た目してるって、陰口叩かれないだろうか。それだけが心配だ。
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