神様だけにバカ売れしたカードゲームが、異世界で超優秀な特殊能力に生まれ変わりました(ターゲットブレイク)

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27 王主国その3

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 ひとまず皆は一旦召喚終了。ただし、護衛ということでスイボツジャイアント君を共につれていく。
 馬車に揺られ、しばらくすると。俺は今日も城の庭にやって来た。
 そしてそこで、たくさんの兵士達が整列していた。
 馬車から降りると、俺はまず兵士達の前、王様と王妃様の隣へつれていかれる。リキュア王女様達三姉弟の姿もあった。
「サバク殿。見ての通り、既にパレードの準備はできておる。サバク殿もこれから神輿に乗って、王都中を移動してもらう」
 王様に突然そう言われた。
「えっ」
「皆の者。たった今神の使い、サバク殿が到着された。我らを脅かしたバウコン軍は、この方の腕の一振りにて全て返り討ちにされた!」
いや、俺そんなこと一度もしたことないけど。
「今我らは、感謝の気持ちをここで表す時。一同、この国を救ってくれた救世主に、最高最大の感謝を示して。敬礼!」
 ババッと、兵士の皆が一度に敬礼する。
 大変なことになったぞ。
 そして王様の号令は続く。
「そしてこの喜びを、この足で、この身で、この王都の民達へ伝えるのじゃ。それ、パレード開始ー!」
「おー!」
 まさか、こんな展開になるとは。
 パー。パカパー。パカパー!
 楽士隊が演奏を始め、皆足踏みしだす。
「ささ、サバク殿。あちらの神輿に乗ってくだされ」
「は、はい」
 これ、断る選択肢はないんだろうなあ。
 王様と兵士数名の方の誘導に従い、俺は一つの神輿に近づく。
 すると俺用の神輿にはなんか、真正面にデカデカと、救世主。って書かれてあった。
 恥ずかしい。
 一方スイボツジャイアント君は、涼しい顔をしながら俺の横に控えてくれている。
 そして楽器を鳴らす楽士隊と、兵士達数十名の列が進軍を始めてから、王様と王妃様が乗られた神輿、次に、リキュア王女様方三姉弟が乗られた神輿、そしてここで、俺の神輿が移動し始めた。
 い、いつ終わるんだ、これー。
 思ったより大変なことになった。と、思ったのだった。

 行軍スピードは人の歩くスピードなので、ゆっくりゆっくりと移動する。
 まず、城から出た先は貴族街。いくつも大きな屋敷がある通りを、まっすぐ進む。
 やがて俺の屋敷の隣も通ると、そこでこちらをうかがうクレバナさんとロリッチさんを見つけた。
 は、恥ずかしいいい。
 さっと目を合わせないようにする。これは全然慣れないぞ。どうせなら俺も行軍したい。
 でも、今は降りるに降りられないし。そう思っていると、すぐに道の端端に国民が詰め寄って、俺達を見物し始めた。
 け、見物人がいっぱい増えた。やばい、やばい!
 変な緊張していると、皆の視線が俺に集まっていることに気づいた。
 え、俺、何、目立ってる?
 いや、確かにこんなところにいたら当然目立つだろうけど、皆、見ないでー、俺を見ないでー!
 と叫びそうになる中、ふいにこんな声が聞こえてきた。
「救世主様、ばんざーい!」
「神の使い様、ばんざーい!」
「神の使い様、ありがとうございます、ありがとうございます!」
 一瞬、頭の中が真っ白になる。
 そして遅れてやっと、彼ら彼女らを呼び寄せたのは、俺が原因なんだと、自覚する。
 このパレードも、戦争が終わったからできることなんだ。
 そう思うと、俺は途端に彼らに、何か答えたくなった。
 もう戦争は終わったんだよ。脅威は去ったんだ。
 そんな、今更なことを言おうとして、でもここでそんなことを言っても場違い感しかないので、黙っておく。
 でも、俺はもっと、彼らに何かをしてやりたい。
 今向けてくれている笑顔に、応えてあげたい。
 そう思いながら、まだ恥ずかしくありながらも、パレードを見に来た人達に手を振った。
 前を進む王様達が手を振っていたようだったから、俺もマネをすることにした。
 彼らが、俺達が守った人の数なんだ。その笑顔なんだ。そう思うと、誇らしくなった。

 パレードは終わった。王都の出口門まで来たところでUターンした時は驚いたが、夕暮れ前にまた城まで戻って来る。
 そこで神輿を降りて、俺は言った。
「俺も、皆のために何かしたい。バートリー、ウッドワイバーン召喚!」
 俺の目の前にカードが二枚現れ、それが人型のバートリーとウッドワイバーンになった。
「お呼びでございますか、マスター」
「お呼びでございますか、マスター」
「バートリー、ウッドワイバーン、そしてスイボツジャイアント。俺は今日のパレードに合わせて、皆に何かを与えたい。ウッドワイバーンは果物を、バートリーは鉄の器を用意して、スイボツジャイアントがそこに、治癒水か聖水を出してくれないか?」
「イエスマスター。お任せください!」
「よし。ありがとう、皆。兵士の皆。パレードお疲れ様。俺の仲間達が皆をねぎらうために、水と果物を分けてくれると言ってくれた。いや、きっと国民皆の分もあるぞ、どうかもらってくれー!」
 俺がそう叫ぶと、早速皆は動き始めた。
「それ。リンゴを一秒に百個生み出しますよ!」
「蛇口付きのタンクを用意します。それー!」
「バートリー、タンクの上半分に私が乗れるようにしてください。上から聖水をそそぎますよ。バートリー、どんどんタンクを大きくして!」
 俺の周囲で巻き起こる魔法を見て、兵士達がどよめく。
「あ、あんなに大量な果物と大きな物が、しかもどんどん増えていくぞ。このままいくと、本当に山が築かれる!」
「は、早くもらうんだ。せめて果物があふれかえる前に、皆でもらってしまうんだ!」
 兵士がリンゴの山に殺到する。よし、いいぞ。この調子だ!
「チャンスカードを使って次の召喚までの時間を短縮。新たにウッドルフ、サルンキー、ネズットを召喚。ウッドルフはブドウの山を、サルンキーはバナナの山を築くんだ。ネズットは石のコップを生み出して、皆が聖水を飲めるようにして!」
「イエスマスター!」
「果物がー、果物が山になったー!」
「何事だー、何事だー!」
 うははは。皆、喜べー!

 数分後、王様が俺の前まで来て、言った。
「サバク殿。ご厚意はありがたいが、もうちょっと加減して」
「は、はい。すいませんでした」
「ひとまず、果物は民にも配ろう。これだけの量を、兵士だけで消費するのは難しいからな。折角用意してもらったものを、腐らせるわけにもいかんし。明日中には民達に消費してもらう。聖水の方は、大変な量じゃな。貴重な品じゃが、これも民達に配ろう。サバク殿からの配慮じゃからな」
「ありがとうございます、王様」
「ところで、この巨大タンクは、ここにあると不便じゃから、使い終わったら壊してもいい?」
「ああ、はい。それはもちろん。大きいですよね。なんならこちらでなんとかしましょうか?」
 金属性の皆に頼んだらなんとかしてくれそうだし、ドラゴン達に頼んで荒野にまで運ぶというのも手だ。皆の力なら、なんとか片付けられそうだけど。
「いや、折角サバク殿からの贈り物なんじゃ。こちらで解体しよう。見たところ、純度の高い鉄のようじゃしな。このタンク一つで鉄がどれだけ補充できるのやら、軽く恐ろしいくらいじゃ」
「そうですか、わかりました」
「それと、サバク殿。今後このようなことをする時は、必ずワシや兵士にでも知らせてほしい。くれぐれも、そのようにしてくれ」
「は、はい。わかりました。ごめんなさい」
「なに、サバク殿からの贈り物じゃ、うれしいことはあっても、困ることはない。じゃが、やはりやることが人の常識とはかけ離れているから、一度言ってくれ。そういうことじゃ」
「わかりました」
「では、サバク殿。これより兵達と、パレードのねぎらいをするために、盛大なパーティーをするのじゃが、お主もどうじゃ。ここで夕飯を一緒にせぬか?」
「王様。折角のご厚意ですが、俺にも新しい家族ができました。実は昨夜に続き今夜も屋敷でパーティーをする予定だったのです。ですので、今夜も屋敷でごはんを食べたいと思いますが、よろしいでしょうか?」
「そうか、わかった。ならば仕方ない。ここからはサバク殿無しで盛り上げるとしよう」
「本当にすみません、王様」
「いいのじゃ。では、サバク殿。良いパーティーを」
「はい。ありがとうございます」
 王様が去って行く。さて、それじゃあこちらも、帰るとするか。
「ウェルカムドア召喚!」
 目の前に一枚のカードが現れ、それがウェルカムドアになる。
 よし。なんとか屋敷内に通じても問題なさそうな大きさにできたぞ。
「ウェルカーム」
「ウェルカムドア。俺の屋敷の踊り場へと移動させてくれ」
「ウェルカーム」
 俺とスイボツジャイアント君、サルンキー、バートリー、ネズット、ウッドルフ、ウッドワイバーンがウェルカムドアを通って屋敷内に戻る。
 そこで俺は、一度ドアを閉じたウェルカムドアに言った。
「それと、ウェルカムドア。今日はパーティーをするんだ。だからウェルカムドアにも、俺の仲間として楽しんでほしい」
「はい。わかりました」
「お前普通に喋れたの?」
「はい」
 こうして他にも、イルフィンやカメトルも呼んで、二日連続でパーティーをやった。
 30人限界まで呼んで、フルでパーティーを楽しむ状態だ。騒ぐなら大勢の方が良いだろうからね。
 ウェルカムドアも、とっ君も、人の姿でごはんをもくもくと食べている。
 バトソン達も、クリーチャー達と仲良くやっている。いや、クリーチャー達がちょっかいをかけている?
 あんまりからむのはやめなさい。と、注意しておくべきか。と思ったところ、ここで奴隷美女三人に迫られた。
「ご主人様ー。私もっと、ご主人様とパーティー楽しみたいです!」
「ご主人様ー。お飲み物おつぎいたします!」
「ご主人様ー。お疲れのところはございませんか。私がマッサージいたしますー!」
「え、えっとお」
 困ってるところに、仲間達が来て、美女三人を追い払う。
「く。侵攻が成功していれば、あのパレードの軍全てが帝国のものだったのに」
「聞いた話によれば、サバク、さんが来たのは本当に王都攻略の直前だったという。もう少し早ければ、今頃は」
 クレバナさんとロリッチさんは、おつまみとジュースを飲みながらくだをまいていた。
 申し訳ないが、今日のパーティーはお酒が出ない。俺が飲めないとわかったところで、そういうルールとなってしまった。
 俺は皆が飲みたいなら別にいいとは言ったけど、バトソンとエットーが、屋敷の主をさしおいて飲酒とは言語道断。と意見をそろえた。なのでもうこの屋敷では、お酒は出ない模様。
 そして今回のパーティーは演奏分低め。音楽が気に入った仲間は演奏しているが、それ以外の者は自由。食べて騒いで、楽しいひと時を過ごした。
 皆、夜遅くまで騒ぐ。
 そして空気が静かになってきたところで、終了。皆お風呂に入って、眠りについた。
 今日も、ぐっすり眠れそうだ。

 19 王主国サーバーク

 目覚めた。
 朝だ。起きよう。
「おはようございます。ようやく起きましたか」
「まったく。遅いぞ、ぐうたら、げふんげふん。サバクさん」
 食堂に来ると、そこでクロスワードを広げていたクレバナさんとロリッチさんに言われる。
「ごめんごめん。きっと、昨日は夜遅かったから。おはよう、クレバナさん。ロリッチさん」
「ところで、今日は何か予定はありますか?」
 クレバナさんに、そう訊かれる。
「ん、いや。たぶんないと思うけど」
「たぶんないのなら、そろそろ本題にとりかかってもらおうか」
 ロリッチさんにそう言われたが、俺にはロリッチさんの言いたいことがわからなかった。
「本題というと?」
「決まっています。世界統一のことです」
「決まっている。世界統一の予定だ」
 二人にそう言われて、俺は、先日自分が言ってしまったことをやっと思い出した。

 屋敷に書斎があったので、そこに俺、クレバナさん、ロリッチさんが集まる。
「さて。それじゃあ世界平和についてなんだけど」
「世界統一です」
 二人同時にそう言われたので、俺は確かめる。
「いや、俺は確かに世界平和を約束したんだよ。統一も似たようなことかもしれないけど、たぶん大きく意味が違う。だよね?」
「しかし皇帝陛下は、世界統一をかかげてました」
 クレバナさんにそう言われる。
「世界統一はおまけのようなものだよ。少なくともバラックスは、そう言っていた。そして俺も、そう言う。まあ、平和実現の過程に、世界統一もあるかもしれないけど」
「そうだ。世界統一をしなければ、世界平和などありえない。だからまずは、世界統一だ」
 ロリッチさんにそう言われる。
「いや、だから俺が目指したいのは、世界平和なんだって。まずは、平和。これを実現していきたい」
「ふむ。では、他国へ侵攻はしないのか?」
 ロリッチさんがそう言う。
「しない。絶対。俺は全部平和な政策で解決するつもりだ。世界統一をするにしても、戦争無しの方向性でいきたい」
「それが可能なのですか?」
 クレバナさんがうさんくさそうに俺を見る。
 俺は悩んで、それからうなずいた。
「幸い俺は、異世界人だ。戦争の無い平和を多少は知っているし、戦争ではない他国との接し方も少しはわかる。皆の力と、クレバナさん、ロリッチさんの協力があれば、きっと今以上にバウコン帝国を豊かにできると思う」
 ここで一応、帝国のことをよいしょしておく。
「ほう」
「では、具体的な策を述べてください」
「うん。国と国を豊かにするのは、貿易だ。俺は貿易を主に行って、国家間の関係をとりもち、国民の幸福レベルを押し上げたい」
「その貿易とは、どのような物を売りつけようというのですか?」
「うーん。まず言えるのは、昨日もやったことだけど、皆が生み出せる果物と水を輸出したいなあ。と」
「果物と水、ですか。ふむ」
「果物と水ごときで平和が実現するとは片腹痛い、とは言いたかったが、あの質の良い果物ならば、確かに。全てが献上品にもなる出来栄えなのだから、最初の目的としては、まあまあか」
 クレバナさんとロリッチさんから、合格かどうか微妙な雰囲気をもらった。
「ね、どうだろう二人共。果物や水が世界中の人にいきわたれば、皆も少しは暮らしが豊かになるでしょ。他国への貿易品としても、優秀だと思うんだけど」
「ですが、それを常に輸出し続けるというのなら、それ相応の用意が必要です。それはどうするのですか?」
「それは、あ」
 クレバナさんの質問に、俺は答えられなかった。
 皆に出してもらうのは簡単だが、それだと常に皆の力に頼り続けることになる。それは皆をこき使ってるのと同じことだし、何より皆の努力の上でしかなりたたない平和だ。そんな事態は避けたい。
 では、そこをなんとかすべきだ。でも、皆の協力なしに、果物は得られない。
 そう思っていると、この場にとっ君が現れた。
「ひ、人が急に現れたぞ!」
「なんですか、あなたは?」
「ロリッチさん、クレバナさん。彼はとっ君。俺の味方だよ」
「はい。私はとっ君です。以後お見知りおきを。そしてマスター。事情は聴いていました。その上で、私に考えがあります」
「言ってくれ、とっ君」
「果物なら、木属性の皆さんに力を貸してもらい、木を植樹すればいいのです。木が何度も作物を実らせれば、後は我ら以外の者が回収し続ける。それがよろしいかと」
「ああ。なるほど」
 その手があったか。そういえば、最初にキリがそんなことやってくれてたなあ。
「ありがとうとっ君。それじゃあその手でいこう」
「お待ちください、サバクさん。植樹するといっても、一体どこへ?」
「その点はご安心を。荒野に行って植樹をすれば、広大な果樹園が作れます」
 そのとっ君の回答は、完璧だった。

 早速王様に相談だ。
「ウェルカムドア、お城の庭に行きたい。つなげてくれ」
「ウェルカーム」
 俺、クレバナさん、ロリッチさん、そして護衛に、イルフィン君がつく。この四人で城の庭に行った。
「ウェルカムドア、一緒に行こう」
「ウェルカーム」
 こうしてウェルカムドアが人の姿に変わる。
「相変わらず便利ですね。この力は」
「うん。俺の自慢のクリーチャーだ」
 クレバナさんにそう答えながら、皆で城の入り口へと歩く。そうしていると、兵士がすぐに駆け付けてくれた。
「やはりサバク様でしたか。今日はどのようなご用件で?」
「ああ、王様に相談したいことがあるんだ。西の荒野を、果樹園にしたいんだよ。それを王様に了承してもらいたくて。王様とは今、会えますか?」
「しょ、少々お待ちください。その間サバク様はいつものように、ロイヤルスイートルームでおくつろぎください」
「はい」
 まあ、すぐに会えるとは思ってなかった。いきなり来たのはこっちだし、ゆっくり待たせてもらおう。
 そしてロイヤルスイートルームに来ると、すぐにリキュア王女様がやって来た。
「ようこそ、サバク様!」
 そう言ってリキュア王女様が、俺にとびつく。
「わあ、おはようございます、リキュア王女様」
「サバク様。私達の結婚式はいつになさいますか?」
「いや、その日取りはちょっと、決められないかなあ」
「む。ところでサバク様。こちらの女性達は、サバク様とどういったご関係でしょうか?」
 ここでリキュア王女様はクレバナさんとロリッチさんに気づくと、目をしかめた。
「こんにちは、王女様。私はクレバナ、グンシーです。今はサバクさんの補佐を任されております。今のところは、その程度の関係です」
「同じく。私はロリッチ、ビーナ。子爵である。今はクレバナ同様、サバクさんの補佐を務めている。今の所まだ、それ以上の関係ではない」
「そうですか。ただのサバク様の部下ですか。では、今のところは、まだ安心ですね。私はリキュア、オーデ、エライノ。この国の第二王女にして、サバク様の未来の妻です。こちらこそよろしく」
 リキュア王女様は目から火花をバチバチ放っているような気がしたが、対する二人はどこふく風だ。
「ま、まあ、皆。仲良くしてよ」
「はいっ、サバク様!」
 リキュア王女様はそう言って、俺の腕に顔を寄せる。
 その時、リキュア王女様が俺の服を見て言った。
「ところでサバク様。この衣服、とても手触りが素晴らしいのですが、誰が用意したのですか?」
「ああ、これは俺の仲間が用意してくれたものです。服だけでなく、マントや指輪もそうなんですよ」
「まあ、凄い。流石はサバク様のお仲間ですわ!」
「ところでサバクさん。その服等は、帝国に輸出できないのですか?」
 クレバナさんにそう言われる。
「いや、どうだろう。皆やってくれるかなあ?」
「いいえ、それはありえません。これらの装備は、マスターのためだけの装備。唯一無二にして我らの信頼の証です!」
 イルフィン君にそう言われた。そしてイルフィン君もリキュア王女様の反対側から、俺にだきつく。
「だそうだ。ごめんね、クレバナさん」
「いえ。ムリを言ったのはこちらです。その品は十分価値があるものだということは、見てわかっていたことですから」
 ここでビナが、俺達を呼びに来た。
「サバク様。王様がお呼びです。今回は作戦会議室におこしください」
「あ、はい」
 作戦会議室?
 なんだかよくわからないが、きっと凄い所に呼ばれたぞ。

 作戦会議室は広く、横に長いテーブルがいくつもあった。そして皆が席に座っても見られるように、奥の壁にこの国周辺の大地図が貼られてある。
 椅子の一つに、王様が。その隣の席には、王子様の姿もあった。そして他数人の偉そうな方々も椅子に座って、俺を視線で威圧していた。
「よく来てくれた、サバク殿。イスに座ってくれてもよいが、立ち話でよければこちらに来て説明してくれんか。地図も用意した。どうかサバク殿の説明を聞かせてほしい」
「あ、はい。わかりました」
 それではとばかりに、俺は集まってくれた人達を通り越して、壁に貼られた地図の隣まで来る。イルフィン、クレバナさん、ロリッチさんもついてきて、俺の隣に控えた。
「えっと。俺は荒野の、そうだな。王都ファルトアに近い場所に、果樹園を作りたいと思います。場所は、ここあたりかな」
 俺はファルトアの真西の、間近なところに人差し指をおく。
「ふむ。それで、規模はどれくらいのものになるだろうか?」
 王様がそう言った。そうだなあ。
「えっと、ひとまず足りるだけ。実際に試してから、だんだん場所を拡大していこうかなと。必要ならば、全部」
 俺はここで、レキの大荒野と書かれたあたりをぐるっと指で空中なぞりする。
「そのようなこと、できるわけがなかろう!」
 すると一人、きっと偉いであろうおじさんがそう言って立ち上がった。
「できない、イルフィン?」
「マスターのご命令とあらば、それくらいのこと仲間にさせてみせます。任せてください!」
 イルフィン君がどんと胸を叩く。相手が水属性のイルフィン君だから、信憑性は高くないけど、まあ、きっとやれちゃうだろう。だって、皆だし。
今までだってかなりとんでもないことをやってきたんだ。きっとこれくらいやれるさ。
「ということで、やれるそうです」
「な、こ、この不埒物が、でたらめを!」
「まあまあ、コーフ軍師。ひとまず座れ」
 王様にそう言われて、コーフさんが座る。
「サバク殿ができるというのなら、できるのじゃろう。それに、コーフ殿も見たじゃろう。あの果物の山を。いや、大山を。きっとサバク殿には、この程度造作もないことなのじゃ。ワシらの基準で物を言うのでない」
「も、申し訳ありません、陛下」
「もしサバク殿が荒野に果樹園を作ってくれるというのならば、我らとしては助かる。あのような甘い果実を定期的に手に入れられるなら、貴重な財産となるだろう」
 リフンス王子様がそう言ってくれた。
 しかし、すぐにこう続ける。
「だが、そうなると自然と課題も生じる。一つが輸送手段。二つ目は人件費。三つ目は警備に関して。一つ目、二つ目は、商業ギルドに依頼を送れば問題はないかもしれん。だが警備だけは、はっきりしておく必要がある。それは、王国が管理し、兵士が守る国の直轄地であるか、もしくは冒険者ギルドや傭兵等に守ってもらう私有地であるかだ。サバク殿は、荒野をどのように扱いたいのだ?」
「うっ」
 か、考えたことなかったあああ。
 いや、でも、俺はどうすればいいんだ?
 一体どうすれば上手くいくのか。ええっと、ここは誰かに丸投げしよう!
「王様は、どのようにすればいいと思われますか?」
「うむ。まあ、無難に選択すれば直轄地にするべきじゃな。その方が問題も起きずらく、仕事の内容も全てこちらで任される。もちろん人件費等はもらうが、それも果物の代金でまかなうようにしよう。それならサバク殿は果樹園を作れさえすれば、何もしなくてもお金を稼ぐことができる」
「じゃあ、それで」
 ここはおんぶにだっこで。王様に従う方が楽なら、それにこしたことはない。
「ちょっと待ってください」
 ここで、クレバナさんが出張った。
「その荒野は現在、誰の管理地でもないわけですね?」
「っ、そ、それなら、我らバウコン帝国の直轄地にしてもよいではないか!」
「え、ロリッチさん、何言ってるの?」
「いえ、ロリッチの言う通りです。サバクさんは皇帝陛下の友。であるならば、皇帝陛下の友が作った果樹園を、帝国の物と主張しても良いはずです。サバクさん、あなたが作る果樹園を、帝国の直轄地であると宣言してください」
「そんなたわごと、通じるわけがなかろう!」
 またコーフさんが、そう言って席を立つ。
「あなた達こそ、身をわきまえなさい。皇帝陛下が戦争を終わりにしたのは、ただサバクさんを友と認めたから。それだけの理由でしかありません。そしてサバクさんは世界統一の野望を叶えるため、その一石として果樹園を起こすのです。決して、あなた達が富を得るために行うのではないのですよ」
「え、えーっと、クレバナさん。一応、皆儲けて、それで皆幸せになったら、それで良いんですけど」
「であるならば、サバクさんは帝国のことをまずお考えください。もしこの件が決まれば、私達は直ちに皇帝陛下へこのことを報告し、サバクさんの果樹園が帝国の直轄地であることを認めさせていただきます」
「そうだそうだ!」
「このおお、言いたい放題言いおって。恥を知れ帝国の犬!」
「その発言、侮辱として受け取ってもかまいませんのよ?」
「そこのお前、私達を愚弄する気か!」
 あああ。コーフさんとクレバナさんと、ロリッチさんがヒートアップしてしまう!
 な、なんとかならないの。こんな時どうすれば。助けて、誰か!
「お任せください。マスター。この一大事、この私がまるっときれいに収めて御覧にいれます」
 その時、目の前でとっ君が召喚された。
「な、なんだお前は!」
 コーフさんがテンプレな台詞を言う。
「私はとっ君。マスターの従者です。私はこの場で、果樹園の在り方として最良な形とは何か、宣言いたします」
 その一言で、皆が黙る。凄いぞ、とっ君。この調子で、なんとか場を解決してくれ!
「私はこの場で、レキの大荒野にマスターの国。王主国サーバークを建国することを宣言します」
 しーん。
「え」
 ええええええええええええええええええええええ!
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  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

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