神様だけにバカ売れしたカードゲームが、異世界で超優秀な特殊能力に生まれ変わりました(ターゲットブレイク)

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28 王主国その4

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「ふむ。国、か。しかし、王主国とは、一体?」
 この場で唯一、王様だけが質問を投じる。
「王主国とは、アッファルト王国とバウコン帝国を従える、王達の主、即ちマスターサバクの国。という意味です。サーバークが誕生すれば、アッファルト王国はサーバークに属する、一つの王国。バウコン帝国は、サーバークに属する、一つの帝国、という立ち位置になります」
「な、バウコン帝国を従える気でいるとは、正気か!」
「お前、そのような無礼をこれ以上言うと、即刻侮辱罪として罪を裁くことになるぞ!」
 クレバナさんとロリッチさんが怒っているが、まあそれくらいのことを、とっ君は言ったと思う。
「クレバナ、ロリッチ。お二人には、皇帝から承諾の意をもらってきていただきたい。そしてワッシ王からも、我がマスターが偉大なる王主であることをお認めいただきたい」
「な、な、な」
「無礼な、無礼な!」
 クレバナさんとロリッチさんは、顔を赤くしている。
 一方、王様は。
「ふむ。よかろう。ワシ、ワッシ、オーデ、エライノは、サバク殿を仕えるべき王主であることを認める」
「王様!」
 ここで一番驚いたのが俺だった。
「父上、それは真ですか?」
「王様、お気を確かに!」
 皆も王様を見る。しかし。
「皆のもの、心を落ち着かせてよく聞け。ワシはそもそも、サバク殿に王位に就いてもらっても良かったのじゃ。神の使いであるサバク殿が間違った選択をするわけがなかろう。皆はもっと、サバク殿の光を。それがもたらす希望を信じるのじゃ」
 い、いえ、王様。とうの本人である俺が一番。そんなの信じられるわけないんですけど。
「ふむ。確かに、俺もサバク殿なら信じられる。なぜならサバク殿は、俺の妹が夫と認めた御仁なのだからな」
 お、王子様も無茶ぶりに乗り気になったああああ!
「わ、私は反対ですぞ。いきなりこんなこと、認められるわけがない!」
「そ、そうだそうだ!」
 軍師の方達はこう言ってるけど。
「黙れ。滅ぼすぞ」
 とっ君のその言葉で、場が凍り付いた。
「あ、あの、とっ君。暴力は、やめてよ?」
「イエスマスター。ですが、暴力以外の制裁で相手を無きものにすることはたやすいことです。水属性なら千日も雨を降らせれば国は洪水のあまり腐り堕ちますし、火属性に任せれば高熱によって地が渇き水を失います。木属性の者に任せれば毒や重度のアレルギーを簡単に引き起こすことができるでしょう。金属性の者が鉄の箱を作り、それで王都全体を暗闇に閉ざすこともできます。土属性の者が地を崩落させれば、彼らに住む地はありません。そして何より、かの者達はマスターがそれらを容易くやってのける者であることを、理解しなければなりません」
「いや、そんなことやらない。絶対やらないから!」
 とは言ってみるものの、視線を巡らせれば皆の熱は下がりっぱなしだ。
「マスター、私、やってみせますよ!」
「イルフィン君、ここで変なこと言わないでいい!」
「さて。アッファルト王国については、王自らが認めているとおっしゃっているので、よしとしましょう。後は、バウコン帝国の方です」
 とっ君がクレバナさんとロリッチさんを見ると、二人共ビクッと震えた。
 と、とっ君がおそれられてるううううう!
「さて、二人共。先程言った通り、ぜひ皇帝からの承諾をもらいたく存じます。もちろん是非の問いについては、皇帝自らが考慮されると思いますので、まずはその場にウェルカムドアでお送りいたします。どうか迅速にご意見をうかがってきてください」
「わ、わかりました」
「て、帝国に帰れるのなら、ひとまず何も言うまい」
 二人は声を震わせながら、うなずいた。
「お、俺の仲間達は、皆ハートフルで温かいやつらですよ?」
 ダメだ。何を言っても皆の表情が変わらない。
「さて。ではそろそろ、この場を失礼させていただきたいのですが。ああ、王主国の果樹園には、果物を王国の兵士達が取りにきてもよいですよ。準備ができ次第、報告させていただきます。それで、他に何か話し合うことはございますか?」
「い、いえ、特には」
 王様が力なくそう言った。
「ご、ごめんなさい、王様」
「マスター、こちらが謝る必要はありません。さて、それでは行きましょう。ウェルカムドア、ここでドアを開けますか?」
「ウェルカーム」
 ウェルカムドアはうなずいて、この場でドアになり、すぐに俺達のためにドアを開けた。
 俺達は、妙な気分のままそのドアをくぐる。
 その後もとっ君は、俺の中へ消えずについてきた。
 とっ君。おそろしい子。ひょっとしたらうちの中ではとっ君が、一番怒らせてはいけない存在なのかもしれない。

 ウェルカムドアを通って、バラックスの前までやってきました。
「む。お前たちは」
 あ、バラックスは書斎で書類仕事をしていたようだ。
「皇帝陛下。突然の訪問をお許しください!」
「サ、サバクさんの面妖な力にて、瞬時に王国から移動してまいりました!」
「そうか。ご苦労。して、余に何か言う事があるのでは?」
 バラックス、全然動揺しないな。凄い。
「そ、そのことなのですが、突然サバクさんの仲間が、なんとも恐れ多いことを言いだしまして」
「恐れ多いとな?」
「ひい!」
 クレバナさん、凄くビビってる。
「サ、サバクさんがアッファルトの王と皇帝陛下を従える存在、王主となり、王主国サーバークを建国するという話です。皇帝陛下、どうかご考慮ください!」
 おお、ロリッチさんが言い切った。凄い。
 そして、こんなことを言いだしたとっ君はここでも平然としている。凄い。
「ほう、王主に、王主国か」
 バラックスは俺を見て、ニヤリと笑った。俺は思わず緊張する。
「バ、バラックス。別に無理にとは言わないんだ。ただこれは、なりゆきで」
「よかろう」
「へ?」
「こ、皇帝陛下?」
「今、なんと?」
 俺とクレバナさんとロリッチさんは、思わず間の抜けた表情をしてしまった。
 ここでとっ君とイルフィン君だけが、無言でガッツポーズをしている。
「条件次第では、余はサバクを王主と認める。余のかわりに世界を統一し、世界を平和へと導いてくれるのだからな。それくらいのことは認めよう」
「バ、バラックス」
 ひょっとしたら、バラックスは思ったよりも悪いやつではないのかもしれない。
 一瞬そんなことを思ってしまった。
「して、王主と王主国とは、余にどのような影響を与えようというのだ?」
「そうですね。では、こういうのはどうでしょうか?」
 ここでとっ君が、またもやスラスラと述べた。
「まず第一に、王主国は世界平和をかかげ、同時に世界統一をなさんとする国である。王主国に属する国は、皆王主国の世界平和計画に協力し、そして王主国に属する国同士で戦争を起こしてはならない。ひとまずは、このくらいでしょうか。後のルールは、国家間首脳会議を起こして、その中で決めます。基本採用案は多数決ですが、最終決定権は王主にあります」
「ふむ。いいだろう」
 俺達がここに来たのは急にだけど、それなのにバラックスはあっさり、うなずいた。
「余は王主国サーバークを認め、王主国に属する。これからはサバクを王主と認めよう」
「は、ははー!」
 ここでクレバナさんとロリッチさんがひれ伏した。
「は、ははー」
 俺も、なんとなく頭を下げる。
「サバク、いや王主殿。これからもよろしくな」
 その後、クレバナさんとロリッチさんが少しバラックスに現状報告して、いくつか意見を交換し合った後、俺達は屋敷に帰った。
 とってもびっくりして、とっても疲れる一連のイベントだった。

 どっと元気を失ったような気分になりながら、屋敷に戻って来た。
「マスター、お帰りなさいませ!」
 踊り場にテーブルをいくつか残し、そこでスゴロクで遊んでいた一コスト四人が集まって来る。
「皆、ただいま。それと、今からやることができた。ひとまず、クリーチャー達皆を一度集めたい。呼んできてくれるかな?」
「イエスマスター!」
 イルフィンも加わり、一コストの五人皆が散開する。俺はこの場で、クレバナさん、ロリッチさんと共にしばらく待った。
「ま、まさか、我らが帝国が一人の男の前に屈するとは」
「皇帝陛下は、一体何をお考えだというのだっ」
 二人共心が乱れているようだが、俺も結構乱れているので、お互い様だと思う。
 ただ、今は果樹園を成功させることだけを考えよう。それがありきで、王主国なんていう案が進んでいるんだし。
 わずか数分で、皆集まる。俺はきっちり30人集まったことを確認して、それから言った。
「皆。かくかくしかじかで、これから荒野に果樹園を作ることになった」
「イエスマスター!」
 皆、のみこみが早くて助かる。
「一応ここで確認しておくけど、皆、できる?」
「イエスマスター!」
「よし。それじゃあ皆。ウェルカムドアで瞬間移動だ。ウェルカムドア。俺達を西の荒野までつれていってくれ」
「位置的には、どのあたりにいたしましょうか?」
「王様の前でも言った通り、王都の南門から西に行ったところの、荒野の始まりかな。そこにつれていってくれ」
「ウェルカーム」
 すぐにウェルカムドアのドアが開き、俺達は荒野の入り口にやって来る。
「ここがレキの大荒野ですか」
「では、お手並み拝見といこう」
 クレバナさんとロリッチさんもついてきたので、俺達は二人の前で作業再開。
「木属性の皆、早速木を植樹してくれ」
「イエスマスター。種類はどういたしましょうか?」
「そうだなあ。まずは、リンゴ、バナナ、ブドウあたりかな。わかりやすいように、一列に。いや、十列ぐらいにして、バババーッと西の方へひたすら植えよう。土属性の皆は、その木の列の、十個間隔の左右に石の道路を作ってくれ」
「イエスマスター」
「他の属性はー、やることないから、チェンジするか」
「お待ちくださいマスター。私達金属性は、王主国サーバークに必要なお城を建造します!」
 ここでバートリー君がそう言って、皆うなずいた。
「お、お城?」
 いきなり関係ないものがとびこんできたぞ。
「いやいや、お城なんて必要ないから。王主国なんて、言うだけだって。ただの会話の上で便利なパーツっていうだけだから」
「いいえ、絶対お城は必要です!」
 バ、バートリー君に力拳を握られ、力説されてしまう。そして皆もうなずく。
「お城が作れるのなら、確かにあった方が良いでしょう」
 クレバナさんまでもが、そう言う。
「城の無い国に我らが帝国が恭順していると思われるのも、心外だ。どうせ王主国を名乗るなら、果樹園だけでなく、他のことも全て盛大にやってくれ」
 ロリッチさんにも、そう言われてしまう。
 俺は、仕方なくもうなずいた。
「わ、わかった。皆がそこまで言うなら、お城を作ってくれ。でも、お城なんてどこに作ろう?」
「お城を作る場所なら、とっておきの所がありますよ!」
 イルフィン君がそう言った。
「お、どこだ。イルフィン君」
「マスターと共に夜を過ごした地下ホームです!」
 あそこかあ。地下居住空間。
「うーん。あそこなら王都とも離れてるし、まあいいかな。わかった。それじゃあそこでお城を建造してくれ。どのような城かは、皆に任せる」
「イエスマスター!」
「では、先に金属性の皆の移動を済ませる。ウェルカムドア。金属性の皆を俺がかつて生活していた地下居住空間の前まで送ってやってくれ」
「ウェルカーム」
 ウェルカムドアがまたドアを開けた。そこを金属性の皆が通過する。
「あ、マスター。お城が完成次第戻ってきますので、それまでご用がなければ私達を放置しておいてください。食事や睡眠等は一切いらないので」
「わ、わかった。けど、頑張りすぎないでね?」
「イエスマスター!」
 皆が移動し終え、ウェルカムドアが閉まる。なんだかどんどん大変なことになっていく気がするな。
「ほ、他の皆は夜になったら屋敷に帰ろうね」
「イエスマスター!」
「それじゃあ次は水属性の皆だけど」
「はい。それについては私達にも考えがあります!」
 ここでイルフィン君がシュタッと手を上げる。
「はい。イルフィン君。どうぞ」
「私達は、百レベルボーナスを得て新たに、同属性の生き物を生み出すことができるようになりました!」
「え、それは凄い。本当?」
「イエスマスター。時間はかかりますが、作りやすい種族であれば一日で何百体も生めます。その生物達を利用して、毎日木に水をあげる係にしましょう。そういう習性を持った生物を生み、増やします!」
 皆うなずく。それは凄い。では、やってもらおう。
「わかった。それじゃあ水属性の皆。よろしく頼む。では最後に、火属性の皆。皆はどうする?」
「私達は、木に近づくモンスターを倒す生き物を生みます」
 カメトル君がそう言った。おお。なるほど。
「それが生み出せれば、かなり助かる。ぜひやってくれ」
「はい。しかし、人には危害をなるべく与えないように生むため、盗賊等は解決できません。そのかわり、強く、そして少しでも美味しく生み出します」
 お、美味しく?
「わ、わかった。それじゃあ頼む、皆。ウェルカムドアは、俺と一緒に皆の仕事を見ていよう」
「ウェルカーム」
「それでは皆、作業開始!」
「イエスマスター!」
こうして四属性の皆も、各作業に入った。
まず、土属性の皆がスタタターっと走りながら、目の前に石の道路の一本道を作って行く。そしてその隣を、木属性の皆がスタタターっと走りながら、目の前に木の列を一瞬で生み出していく。
しかも木には、もう既に果物が実っている。
そうして二チームとも、あっという間に遠くへ行ってしまった。
その間、クレバナさんは何も言わなかった。
「ありえん」
 ロリッチさんだけ、そう一言呟いた。
 水属性と火属性の皆は、両手で丸を作るようにして、うんうんうなっている。
 その手の間には、白い光が発生。しばらくすると、光は卵に変わり、皆それを地面に置くと、また新しく白い光を生み出し始めた。
「卵は放置でいいの?」
「ウェルカーム」
 答えてくれたのはウェルカムドアだったけど、どうやら大丈夫そうだ。
 そして卵は三分ぐらいで自然に割れ、中から新生物が誕生する。
 水属性の皆の卵からは、小さなブラキオザウルスが。火属性の皆の卵からは、耳の先に火が灯ったブタが生まれた。
「ブラー!」
「ブブー!」
「おお、生まれた」
「可愛い!」
「か、かわっ、かわっ!」
 俺もクレバナさんもロリッチさんも、喜ぶ。
「さあ、お前達。存在理由はわかっているな。植物を大切に。モンスターが来たら戦って勝つ。けれど人はおそわない。命令は絶対だぞ」
「ブラー!」
「ブブー!」
 カメトル君の言葉に、卵からかえった者達は返事をすると、それぞれ木がある方へと歩き出した。
「ところで、彼らは何を食べるの?」
 俺のそこはかとない疑問。
「空気と日光と、愛です」
「そ、そっか」
 カメトル君の回答がステキすぎる。
 だが、これで皆の活躍ぶりは見させてもらった。
 金属性の皆の働きだけはまだ見てないけど、ある意味確認するのが怖くもある。
 それじゃあ、果樹園の方は問題なさそうだし、今木に実っている果物をお城の兵士達に回収してもらおうか。
「ウェルカムドア、またお城に行きたい。そこで果樹園の準備がほぼ終了して、果物がもうとれるって知らせたいんだ」
「ウェルカーム」
「お待ちください。この果物、帝国に持って行くこともお許しください」
 クレバナさんにそう言われる。
「そ、そうだ。王国にだけ渡すのは、不公平じゃないか?」
 ロリッチさんにもそう言われる。
「え、うーん。まだ果樹園は増やしてる途中だし、それに帝国への出荷ルートも確保できてないから、まだやめておきたいんだけど。ウェルカムドアで持って行くのも、ウェルカムドアを働かせすぎだと思うから、遠慮したいんだ」
 どうせなら、皆は準備だけして、後は他の人達でどうにかできる環境を作りたい。
「ウェルカーム」
 ウェルカムドアも、俺に同意してくれた。
「わ、わかりました。では、今のところは我慢しておきます」
「だが、この良質な果物を帝国へ届ける計画は、優先して進めるんだぞ」
「はい、わかりました。それじゃあ、ウェルカムドア。お城へつれていって」
「ウェルカーム」
 その後、俺の報告とお願いを聞いた兵士の人達が、今日中に荒野に、荷馬車と共に現れて、俺の手伝いを遠慮しながら果物をたくさん取って持って帰った。その後今度は商人さんもつれてきて、更に一往復。
 そこで夕暮れになったので、俺は戻って来た四属性の皆と共に、ウェルカムドアで屋敷へ帰還。今日は、なんとも濃く慌ただしい一日を送ったのだった。
 金属性の皆。本当に無理しないでね。

 その日の夕ご飯。
 食堂でごはんを食べていると、俺の前にイルフィン君とエットーコックが現れた。
「サバク様。お食事中に申し訳ありません。ですが、どうしてもお話ししておきたいことがございまして、こうしてご相談にまいりました」
 エットーが深刻そうな顔をして言うので、俺は何事だと内心慌てた。
「どうしたんだ、エットー。早速話してくれ。こちらが悪ければ、即時対応しよう」
「いいえ、サバク様が悪いわけではありません。ですがこれは私のプライドにかかわる重要なお話しなのです。実は」
 実は?
「このイルフィン君が、もう私の作った料理などいらないと言ってきたのです。そして、これからはクリーチャー達の分は作らないようにとも。このような話、私にはあんまりです!」
 あー。
 確かに今までの俺達は、食事も全部自分達でどうにかやってきたものなあ。
「私達はそもそも食べる必要がありませんし、何かを食べるとしてもそれは木属性が生んだ果物だけで十分なんです。食事代にはマスターのお金が使われているようですし、そこら辺をセーブするためにも、私達クリーチャーは食事を辞退したいと、そう伝えたのです。今。なう」
 イルフィン君の発言は堂々としたものだった。何も後ろめたいことはないのだろう。
 でも、だからといって、はいそうですか。と、俺だけ真っ当な食事をするというのも抵抗がある。いや、皆の果物が真っ当じゃないとは絶対言わないけど。
 それに、エットーさんが怒っているということは、きっとくやしいのだろう。自分の料理がいらないと言われたことが。
 エットーさんを雇ったのは俺じゃないけど、エットーさんを雇っているのは俺だ。だから俺は、イルフィン君に言った。
「イルフィン君。正直に答えてほしい」
「イエスマスター」
「エットーさんの料理と果物、どっちが食べたい?」
「果物」
「ぐはあ!」
 ああっ、エットーさんが崩れ落ちた!
「そうか。イルフィン君の言いたいことはわかった。気がする」
「気がするでもいいので、マスターも私達と意見を合わせてください」
「イルフィン君。確かに君達の考えも尊重すべきだ。けどその意見に賛成できない人もいる。それが彼、エットーだ。そうですね、エットー」
「は、はい。サバク様。私は私の料理をいらないという者を、許せない。だから、なんとしても料理で見返してやりたい!」
「というわけで、イルフィン君。そして、他の仲間達にも、一言申しつけておく」
「イエスマスター」
「俺は皆の肩ももちたいし、エットーさんの肩ももちたい。だから、普段は皆、エットーさんの料理を食べなくてもいい。けど月に一回くらいは、エットーさんの料理を味見する、審査の時を設けるべきだと思う」
「審査の時」
「審査の時?」
 イルフィン君とエットーが呟いた。
「この味審査で合格した時は、その後も皆エットーの料理を毎日食べてほしい。もちろん味が落ちたと思ったら、また不合格判断を下してもいい。けど、これで両者の思いがちゃんと真っ向から激突するようになる。二人共、俺の案を認めてくれる?」
「イエスマスター!」
「チャ、チャンスをもらえるのなら、私はそれでかまいません。絶対イルフィン君達に、私の料理は美味しいと言わせてみせます!」
「うん。じゃ、そういうことで」
「イエスマスター。お食事中にすみませんでした!」
「サバク様、今回の采配、真に感謝いたします。イルフィン君。見てなさい。早速明日の朝、審査の時です!」
「えー、早すぎない?」
 と、こんなことがあったのだった。
 ちなみに翌朝。
「ちっくしょおおおおおおおお!」
 本気でくやしがっているエットーさんを見て、他の使用人の方々は皆首をかしげていた。

 20 スポーツをやろう

 果樹園作り二日目。
 朝がきて、今日も皆との果樹園作りが始まる。
 土属性と木属性の皆は、また荒野の端、スタート地点から新たな果樹列を作る予定。それも既に始まって、水属性と火属性の皆が生み出す新生物も、今日は鳥タイプが生み出されていた。
それを俺は、ただ眺めているだけ。
「俺だけ暇だー」
「いいではないですか。暇を持て余す者などそう多くはいません。皆日々の忙しさの中で、休むことを忘れながら生きていますよ」
 クレバナさんにそう言われる。彼女が言うと、なんだか言葉に重みがあるなあ。
「暇なら、仕事を見つければいい。何もできないでいる人間はただの愚鈍だ。仕事を待つなど三流の生き方よ」
 ロリッチさんもどことなくやり手な意見だ。伊達に子爵じゃないって感じだなあ。
「そうだなあ。それじゃあ、ええと。果樹園以外のこと。そう、世界平和について考えよう。その話をちょっとでも進めよう。というわけでクレバナさん、ロリッチさん。何か良い案ある?」
「他国侵略」
「富と幸福は他人から奪い取る」
「ダメだ、議論の余地がない」
「サバクさんは、他国への介入をせずしてどうやって世界統一を果たすのですか?」
 クレバナさんは大真面目でそんなことを言ってくる。
「別になんでかんで力で一つになろうとしなくても、皆で平和について考えて、平和への道を歩き続ければ、いずれ平和にはなるんだよ」
「それができると思っているのか?」
 ロリッチさんが人を小ばかにしたような表情を見せてくる。容姿がまだあどけないのに、そういう反応してほしくないなあ。
「そういう人達が集まれれば、できる」
「ふむ。では仮にできると仮定して、どうやってその者達を探します?」
 う、それはあ。
「説教を説きますか? ビラでも配って探しますか? どれも具体的ではありません。待ち人をただ待つだけなど、愚か者でもできます。そのようなやり方もありますが、私達がすべきはただ一つ。世界統一への道を進むこと。その一点です」
「世界平和ね」
「武力で叶えぬのなら、武力以外の道を示してもらわなければ、私達は一歩も動けん。サバク、さん。お前にはそれができるのか?」
「うーん。あ、武力以外の道なら、一応候補はあるよ」
「それは本当ですか?」
「聞くだけ聞いてやってもいいぞ」
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 ここで、ターゲットブレイクだよ。と言わなかった自分、少し偉い。そして少しくやしい。
「スポーツ?」
 二人共可愛く首をかしげた。
「あの、サバクさん。スポーツとはなんですか?」
「体を動かす遊びだよ。特に複数の人数で競い合い、勝敗を決めるゲームだ」
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「そのお遊戯が、お金になり、仕事になり、人生になる」
「?」
 二人共首をかしげるのが可愛い。
「簡単に一例を言うと、スポーツをやる、もしくは見る人が、会場に入るために、お金を払う。そして優勝者等に、賞金を配る。それを国家間で大体的に行って、競い合い、それを国民が応援する。これがスポーツで作れる平和だ」
「なるほど。要するにコロシアムや戦士同士の決闘ですね」
 クレバナさんがうなずくと、ロリッチさんもうなずいた。
「なるほど。その金の動きを国が推奨し、国民の生活の一部とするのか。しかし、はたして遊戯で人心を得られるのか?」
「そう思うなら、試してみよう」
「?」
「折角ヒマだし、今からお城に行って兵士を十人くらい集めて、ドッジボールをやってみよう」
 ボールくらい、きっとあるだろう。
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【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

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