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報い
男同士
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相も変わらず、荷物の整理に追われていたある日。
「ああ...。何故いつも俺はこうなんだろう。 」
部屋に身体を縮めて項垂れているのは。
「平助。またそれ千香さん絡みの話だろう。いい加減自分たちで収拾つけてくれないと、私に土方さんの雷が落ちる。 」
「だって...。沖田さん。大事にしようと思うほど、頭では分かってても身体が動いちまうんだよ...。」
藤堂は身を乗り出して、文机で書き物をしている沖田に迫った。それに小さく溜め息を吐きながら、沖田も答えて、
「...平助は、そろそろ己を律することを覚えろ。特に色恋の類いでな。 」
日頃から藤堂の相談を受けているため、沖田は藤堂と千香の仲で知らないことはなかった。それを聞いた上で、この発言をしたのだ。藤堂は余りにも、本能で生きすぎていると話しぶりから伺えるからこそ。
「うう。分かっているんだよ。でも、いざ二人きりになると身体が勝手に...。 」
「このあいだの話では、組が落ち着いて心の準備ができたら。ということだったと思うが。 」
目線すら上げず、淡々と沖田は答える。それに藤堂は機嫌を損ねて、ぷうっと頬を膨らませた。
「もう!沖田さん!ちゃんと俺の話聞いてよ! 」
その言葉で沖田がふと、目線を上げると。
「そういう、子どもみたいな所も直すべきだと思うが。もうお前二二になるだろう。年下の千香さんのほうが、よっぽど落ち着いて見える。 」
すると、余程沖田の言葉に衝撃を受けたのか、今度は部屋の隅へ行き人差し指でのの字を書き始めた。やれやれ、と思いながら手元に目線を戻し、残りの文を書いていく。土方が不在な分、幹部たちに平等に仕事を振り分けたが、やはり個性豊かな者が多く、まともに自分の振り分けられた仕事をやらない者ばかりで、結局その皺寄せが沖田へいっていた。ふう、と一息ついて、書類を書き上げると、藤堂を慰めに行く。
「平助。悪かったよ。すまなかった。お前の話を早く聞くために、書類を仕上げてしまおうと集中していたんだ。きちんと話を聞くから、もう一度話してくれないか。 」
藤堂の隣へ腰を下ろし、沖田は言う。
「沖田さんだって忙しいのに、迷惑かけてた。いつもいつも、頼りすぎだよな。俺こそすまなかったと思います。 」
どうも、この藤堂平助という男は平隊士たちの前では組長らしく振舞っているが、こうして気心の知れた者と一緒になると、途端に子どもの様になるらしい。まあ、そういう顔を自分に見せているということは、信頼されているなによりの証だろうか。
「それで...。平助は、千香さんとどうなりたい。 」
「ゆくゆくは、夫婦になって一緒に暮らしたい。でも、千香は自分は生きている時代が違うからとか、急に帰ってしまって二度と帰らないこともあり得るから、夫婦にはなれそうもないって言ってた。 」
「まあ、妥当な考えだな。第一、一五〇年後から来たと言っていたが、それも自分の意思ではないらしいし。 」
「でも、俺はそんなの関係無いと思ってる。千香が何処に居ようと何年先の世に居ようと見つけ出してみせる。 」
「その考えは、千香さんに伝えたのか? 」
「うん。でも、どこか不安に思っている気がする。時々、悲しそうな顔をして笑うんだ。 」
膝を抱えて、畳を見つめながら藤堂は続ける。
「どうしてだろう。俺の言うことが信じられないからだろうか。 」
「...俺が千香さんなら。 」
藤堂が沖田の方を向いて。
「もし仮に、夫婦になったとして。自分の意思と裏腹に、一五〇年後に帰ってしまったとする。そうすれば、平助を一人にするし、もし子どもが居れば育てる人間が居なくなるだろう。それに、いくら平助がどんなに離れていても必ず見つけると言ったところで、平助が一五〇年後の先の世に行ける確証も方法も無いという訳だ。 」
そこで藤堂は何かには、と気付き。
「...だとすれば、俺ずっと千香を不安にさせてたのかもしれない。ただでさえ、気苦労が多いのに。 」
「恐らく、そういう理由で夫婦にはなれないと言っていたのだと思う。 」
「じゃあ俺、どうすればいいんだ。 」
ぐるぐると頭の中で巡る考えを上手く整理できず、藤堂は頭を抱える。
「平助自身、いつ命を落とすか分からない身の上だろう?だから今は、二人で過ごす時間を大切にするのが一番なのではないかな。 」
「でも、二人きりになると...。 」
「それは、己を律するしかないな。 」
藤堂のくるくると変わる表情に、まるで幼子を見たときの様な微笑ましさを感じてしまう。いくつかしか歳も変わらないというのに、小さな弟を持った様な気分になるのは不思議だ。
「兎に角、土方さんが居ないからといって羽目を外しすぎないこと。それと、本当に千香さんを大切に思うなら、何よりも気持ちを尊重してあげることが重要だと思う。 」
「...ありがとう沖田さん。俺、何とか頑張ってみる。 」
「またいつでも話聞くから、何か迷ったら部屋に来いよ。 」
「うん。」
そうしてまた、一日は過ぎて行く。
「ああ...。何故いつも俺はこうなんだろう。 」
部屋に身体を縮めて項垂れているのは。
「平助。またそれ千香さん絡みの話だろう。いい加減自分たちで収拾つけてくれないと、私に土方さんの雷が落ちる。 」
「だって...。沖田さん。大事にしようと思うほど、頭では分かってても身体が動いちまうんだよ...。」
藤堂は身を乗り出して、文机で書き物をしている沖田に迫った。それに小さく溜め息を吐きながら、沖田も答えて、
「...平助は、そろそろ己を律することを覚えろ。特に色恋の類いでな。 」
日頃から藤堂の相談を受けているため、沖田は藤堂と千香の仲で知らないことはなかった。それを聞いた上で、この発言をしたのだ。藤堂は余りにも、本能で生きすぎていると話しぶりから伺えるからこそ。
「うう。分かっているんだよ。でも、いざ二人きりになると身体が勝手に...。 」
「このあいだの話では、組が落ち着いて心の準備ができたら。ということだったと思うが。 」
目線すら上げず、淡々と沖田は答える。それに藤堂は機嫌を損ねて、ぷうっと頬を膨らませた。
「もう!沖田さん!ちゃんと俺の話聞いてよ! 」
その言葉で沖田がふと、目線を上げると。
「そういう、子どもみたいな所も直すべきだと思うが。もうお前二二になるだろう。年下の千香さんのほうが、よっぽど落ち着いて見える。 」
すると、余程沖田の言葉に衝撃を受けたのか、今度は部屋の隅へ行き人差し指でのの字を書き始めた。やれやれ、と思いながら手元に目線を戻し、残りの文を書いていく。土方が不在な分、幹部たちに平等に仕事を振り分けたが、やはり個性豊かな者が多く、まともに自分の振り分けられた仕事をやらない者ばかりで、結局その皺寄せが沖田へいっていた。ふう、と一息ついて、書類を書き上げると、藤堂を慰めに行く。
「平助。悪かったよ。すまなかった。お前の話を早く聞くために、書類を仕上げてしまおうと集中していたんだ。きちんと話を聞くから、もう一度話してくれないか。 」
藤堂の隣へ腰を下ろし、沖田は言う。
「沖田さんだって忙しいのに、迷惑かけてた。いつもいつも、頼りすぎだよな。俺こそすまなかったと思います。 」
どうも、この藤堂平助という男は平隊士たちの前では組長らしく振舞っているが、こうして気心の知れた者と一緒になると、途端に子どもの様になるらしい。まあ、そういう顔を自分に見せているということは、信頼されているなによりの証だろうか。
「それで...。平助は、千香さんとどうなりたい。 」
「ゆくゆくは、夫婦になって一緒に暮らしたい。でも、千香は自分は生きている時代が違うからとか、急に帰ってしまって二度と帰らないこともあり得るから、夫婦にはなれそうもないって言ってた。 」
「まあ、妥当な考えだな。第一、一五〇年後から来たと言っていたが、それも自分の意思ではないらしいし。 」
「でも、俺はそんなの関係無いと思ってる。千香が何処に居ようと何年先の世に居ようと見つけ出してみせる。 」
「その考えは、千香さんに伝えたのか? 」
「うん。でも、どこか不安に思っている気がする。時々、悲しそうな顔をして笑うんだ。 」
膝を抱えて、畳を見つめながら藤堂は続ける。
「どうしてだろう。俺の言うことが信じられないからだろうか。 」
「...俺が千香さんなら。 」
藤堂が沖田の方を向いて。
「もし仮に、夫婦になったとして。自分の意思と裏腹に、一五〇年後に帰ってしまったとする。そうすれば、平助を一人にするし、もし子どもが居れば育てる人間が居なくなるだろう。それに、いくら平助がどんなに離れていても必ず見つけると言ったところで、平助が一五〇年後の先の世に行ける確証も方法も無いという訳だ。 」
そこで藤堂は何かには、と気付き。
「...だとすれば、俺ずっと千香を不安にさせてたのかもしれない。ただでさえ、気苦労が多いのに。 」
「恐らく、そういう理由で夫婦にはなれないと言っていたのだと思う。 」
「じゃあ俺、どうすればいいんだ。 」
ぐるぐると頭の中で巡る考えを上手く整理できず、藤堂は頭を抱える。
「平助自身、いつ命を落とすか分からない身の上だろう?だから今は、二人で過ごす時間を大切にするのが一番なのではないかな。 」
「でも、二人きりになると...。 」
「それは、己を律するしかないな。 」
藤堂のくるくると変わる表情に、まるで幼子を見たときの様な微笑ましさを感じてしまう。いくつかしか歳も変わらないというのに、小さな弟を持った様な気分になるのは不思議だ。
「兎に角、土方さんが居ないからといって羽目を外しすぎないこと。それと、本当に千香さんを大切に思うなら、何よりも気持ちを尊重してあげることが重要だと思う。 」
「...ありがとう沖田さん。俺、何とか頑張ってみる。 」
「またいつでも話聞くから、何か迷ったら部屋に来いよ。 」
「うん。」
そうしてまた、一日は過ぎて行く。
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