幕末・浪漫千香 〜どんな時代でも、幸せになれる〜

秋藤冨美

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国が揺らぐ

その後

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 「それでは、そろそろ帰いもす。今日はあいがとうござおいもした。またどっかでお会いしもんそ。 」

「はい。色んなことを伺うことが出来て嬉しかったです。ありがとうございました。 」

西郷と千香のどちらが払うか軽く揉めた勘定を何とか千香が払い終え、人で溢れかえっている通りに出たところで西郷が踵を返した。その後ろ背を見えなくなるまで見送った後、醤油を買うべく店に向かっていたとき。

「千香!...やっと見つけた。皆帰りが遅いって心配してるぞ。 」

「へ、平助。そうなのね。ごめんなさい。 」

後ろから声が聞こえ、どきりとし振り返ると。先程まで西郷と話していたものだから、少し罪悪感を覚え。

「買い出し終わったのか?荷物重そうだし持つよ。 」

「いいよ。あと買うのはお醤油だけだし。結構重いからいつも最後にしちゃうのよね。 」

「分かった。じゃあ、醤油は俺が持つ。 」

「ありがとう。 」

思えば久し振りに藤堂と話をした気がする。お互い何かと忙しくゆっくり話す時間もなかった。とすれば、藤堂が伊東と接する機会も多かったと考えるのが当然である。以前、伊東からなんとか引き離そうとしたものの失敗に終わってしまったことから、暗黙の了解で伊東に関する話題はタブーとなっており。千香はふとそんな考えが浮かび気持ちを暗くしながらも、それを悟らせないよういつも通り明るく振る舞った。


























醤油を買い終え、藤堂と二人連れだって歩いていると傍から声が聞こえ。

「そこの若夫婦、ちょいと休んでいかへんか。 」

千香が若夫婦、という単語にピクリと反応し声のする方を見てみるとえ、と固まった。その呼び込みを無視して早く屯所へ帰ろうとしていた藤堂は、千香が立ち止まったのに気づいてどうした、と声をかけ目線をやると。

「...真昼間から声かけるんじゃねえ!俺たちはそ、そんな...。ッもういい。千香行くぞ! 」

藤堂は急に大声を出したかと思うと、千香の手を取り歩き始めた。ちらりと見えたその顔は赤く染まっており。それもそのはず。その店とは出会い茶屋だったからだ。店に入るということはすなわち、これから自分たちが情事に及ぶことを大衆に叫んでいる様なものだ。現代でいうところのラブホテルなどがそれに相当する。

「俺だって、場所くらいわきまえる...。なんなんだ。昼間から、あんな...。 」

ぶつくさと文句を垂れる藤堂の顔から、未だ熱はひかないらしい。あまりに早い出来事だったので、思考が働かないでいたが千香もようやっと理解した。

「さ、さすが、このじだ、いってそういうのおおっぴらにしてるもんね...。あ、あはは。 」

下を向きながら、もごもごと言葉にならない声を発していると先程まで暗い気持ちでいたことなど忘れてしまった。

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