幕末・浪漫千香 〜どんな時代でも、幸せになれる〜

秋藤冨美

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国が揺らぐ

西郷吉之助 下

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 「西郷さん、これから日の本はどうなっていくと考えますか。 」

その後話題は次第に時勢のことに移り。

「うーん。そうなあえ。今薩摩おいたちと長州が同盟を結んだこたあ、日の本中に混乱をもたらしておいやしかもしれません。けれど、薩摩も長州も程度は違えど志を同じくすう者。今後日の本を動かしていく主要な藩になっていくと考えもす。 」

...当たっている。実際、江戸時代が終わり明治の世を迎えたとき、政府の重役には多くが両藩の者から選ばれた。しかし、そこに至るまでに多くの血を流したということもまた事実。

「でもそうなると、西郷さんたちに反発する人たちも出てくるのではないでしょうか。 」

「そやそうでしょうけど...。それにしても不思議なもんじゃ。女子おなごが世情について話すとは。千香さぁ、随分とくわしか様ですし。これからの世は女子おなごでん学が必要になってくうちゅうこっでしょうかね。 」

西郷は感慨深いといった風に腕組みをした。

「そうですよ。学ぶことは、生きることだと思うんです。女子おなごだって、勉学に励みたいと感じている人も居ます。でも、そんなことを言うと周りから白い目で見られてしまう。」

千香は、前々からこの時代に言われている女子の幸せについて疑問を持っていた。自分は、今まで初等、中等、高等、続いて大学と学ぶことに関して不自由な思いをしたことは無かった。しかしながら、この時代では女子に学問は必要無いと考えられている。いくら学びたいと思っても、周りがそれを承知せず渋々諦めるといったことが多い。だから後に、女だって学びたい、働きたいと声を上げた人々もいるのだ。

「早く嫁に行け、女子おなごが勉学など可笑しいと。女子おなごならば、嫁に行って子を産めというのが世の道理だと決めつけられているんですよ。そんなの、私は納得いきません。 」

千香はぎゅっと、膝の上に乗せた拳を握りしめた。

「...千香さぁの様な女子おなごは、未だ嘗て会ったこっがん。初めてこれ程までに自分の意志をはっきいと持っとうひとと出会おいもした。こいゃ、男も負けられませんね。 」

西郷はハッと息を呑んで、目を見開いた後口角を上げた。

「そう、ですね。この時代では珍しいかも...。 」

千香は顎に手を当てぼそり、と呟いた。

「ん?今何か言おいもしたか? 」

「いいえ。何も。...あの、もしよろしければなんですけど、薩摩の話を伺ってもいいですか?えと、別に変な意味は無くて!純粋に興味があるっていうか。 」

また思わず失言してしまうところだった。それで千香はなんとか話題を変えようと試みる。

「よかどよ!どおんと何でん聞いてくいやんせ! 」

こんな風に西郷は薩摩の話題になると、子どもの様に目をキラキラと輝かせる。けれど戦になると想像もつかない程恐ろしい姿に豹変するのだと考えると、千香はこの優しそうな雰囲気をまとっている西郷吉之助という男が初めて恐ろしく思えた。
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