25 / 95
心を尽くして
池田屋事件 下
しおりを挟む
夜が明けて早くも正午が近づいた頃、池田屋方面から聞こえていた声が止み隊士の一人が空き家に千香を呼びに来た。
怪我をしている人間も少なく、手当ては屯所へ帰ってからでも十分だと土方からの言伝を聞き、ほっとしたところで荷物をまとめ始める。
しかし、今だに目を覚まさない男がふと目に入り。
「あの、この人このお家の前で倒れちゃったみたいで手当てをしたんですけど、まだ目を覚まさないんです。どうすれば...。 」
「私の一存では決め兼ねます...。 」
隊士は眉をハの字にし困った様な表情をする。
「です、よね。でも、このまま置いて帰るのは良くないし...。 」
どうしたものかと悩んでいると、また誰かが空き家に飛び込んで来た。
「千香!終わったよ!千香のおかげで怪我しなかった! 」
「平助!良かったぁ...。お疲れ様。あのね、この人... 」
千香は藤堂の額を撫で、涙ぐみながらも側に眠っている男のことを藤堂へ説明した。
「ん...あ、れ。ここは...。 」
男が目を覚ました。
すかさず千香は男へと駆け寄る。
「目が覚めましたね!自分の名前、分かりますか? 」
「っ...。ああ。私は、森宮峻三と言う。 」
千香が支えながら半身を起こし、頭が痛むのか額に手を添え男はそう答える。
森宮。同じ苗字だけだと言うのに、何故だろうか。ドキリと千香の心臓が跳ねた。
「森宮さんですね。私たちは新選組です。森宮さんの怪我が治るまで、私たちの屯所でお世話して差し上げたいのですがいかかでしょうか。 」
スッと横から藤堂が出て来る。
その凛々しい表情に先程とは違う甘い高鳴りが胸が支配して。もう、自分の心臓は忙しいなと内心呆れ返る。
「かたじけない。傷が癒えるまで、世話になる。こんな体では郷に帰れないからな...。 」
「それでは、私は誰か人を呼んできます! 」
状況を察して、その隊士は外へと駆けて行く。
千香はその後ろ背を見ながら、頼もしいなと少し安堵し。
その隊士がもう何人かの者を連れて戻って来ると、千香たちの居た空き家の戸を拝借し、担架の様にして屯所へと運び始めた。
「何か身元でもはっきりすれば土方さんにも説明しやすいのにな。怪我してるんだし、治るまで安静にさせてやりたいけど...。 」
「うん...。でも、森宮、さんが屯所に入る前に土方さんに一言だけでも言っておいたほうがいいかも。 」
千香はその後ろに続きながら、藤堂と言葉を交わす。
屯所へ着いてから、真っ先に土方にその旨を伝えると、一先ず落ち着くまではいいだろうと許しを貰うことができた。
空いている部屋が無いため、千香は自分の部屋に蒲団を敷き、峻三を寝かせる。
「すみません。他の方の手当てがあるので、先ずはここでお休みください。終わり次第戻って参ります。 」
「正に至れり尽くせり。かたじけない。 」
蒲団に横になりながらも、何とか頭を下げようと首を僅かに動かそうとする峻三に、千香はにこりと笑い。
「いいえ。人間、困ったときはお互い様です。 」
障子を開けて廊下へ出ると、千香は一人呟く。
「私が知ってる歴史に、森宮峻三なんていない。ちょっとずつ歴史が、変わってるんだ。 」
何処からか底知れぬ物を感じ、身震いした。
怪我をしている人間も少なく、手当ては屯所へ帰ってからでも十分だと土方からの言伝を聞き、ほっとしたところで荷物をまとめ始める。
しかし、今だに目を覚まさない男がふと目に入り。
「あの、この人このお家の前で倒れちゃったみたいで手当てをしたんですけど、まだ目を覚まさないんです。どうすれば...。 」
「私の一存では決め兼ねます...。 」
隊士は眉をハの字にし困った様な表情をする。
「です、よね。でも、このまま置いて帰るのは良くないし...。 」
どうしたものかと悩んでいると、また誰かが空き家に飛び込んで来た。
「千香!終わったよ!千香のおかげで怪我しなかった! 」
「平助!良かったぁ...。お疲れ様。あのね、この人... 」
千香は藤堂の額を撫で、涙ぐみながらも側に眠っている男のことを藤堂へ説明した。
「ん...あ、れ。ここは...。 」
男が目を覚ました。
すかさず千香は男へと駆け寄る。
「目が覚めましたね!自分の名前、分かりますか? 」
「っ...。ああ。私は、森宮峻三と言う。 」
千香が支えながら半身を起こし、頭が痛むのか額に手を添え男はそう答える。
森宮。同じ苗字だけだと言うのに、何故だろうか。ドキリと千香の心臓が跳ねた。
「森宮さんですね。私たちは新選組です。森宮さんの怪我が治るまで、私たちの屯所でお世話して差し上げたいのですがいかかでしょうか。 」
スッと横から藤堂が出て来る。
その凛々しい表情に先程とは違う甘い高鳴りが胸が支配して。もう、自分の心臓は忙しいなと内心呆れ返る。
「かたじけない。傷が癒えるまで、世話になる。こんな体では郷に帰れないからな...。 」
「それでは、私は誰か人を呼んできます! 」
状況を察して、その隊士は外へと駆けて行く。
千香はその後ろ背を見ながら、頼もしいなと少し安堵し。
その隊士がもう何人かの者を連れて戻って来ると、千香たちの居た空き家の戸を拝借し、担架の様にして屯所へと運び始めた。
「何か身元でもはっきりすれば土方さんにも説明しやすいのにな。怪我してるんだし、治るまで安静にさせてやりたいけど...。 」
「うん...。でも、森宮、さんが屯所に入る前に土方さんに一言だけでも言っておいたほうがいいかも。 」
千香はその後ろに続きながら、藤堂と言葉を交わす。
屯所へ着いてから、真っ先に土方にその旨を伝えると、一先ず落ち着くまではいいだろうと許しを貰うことができた。
空いている部屋が無いため、千香は自分の部屋に蒲団を敷き、峻三を寝かせる。
「すみません。他の方の手当てがあるので、先ずはここでお休みください。終わり次第戻って参ります。 」
「正に至れり尽くせり。かたじけない。 」
蒲団に横になりながらも、何とか頭を下げようと首を僅かに動かそうとする峻三に、千香はにこりと笑い。
「いいえ。人間、困ったときはお互い様です。 」
障子を開けて廊下へ出ると、千香は一人呟く。
「私が知ってる歴史に、森宮峻三なんていない。ちょっとずつ歴史が、変わってるんだ。 」
何処からか底知れぬ物を感じ、身震いした。
0
あなたにおすすめの小説
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写と他もすべて架空です。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
還暦妻と若い彼 継承される情熱
MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。
しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。
母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。
同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる