26 / 95
忠実に生きていくということは
変わる歴史
しおりを挟む
翌朝、千香は峻三の分の朝餉を持って部屋へと向かった。それとなく身の上を聞けと、土方からの指示もあり、ドキドキしながら部屋の前に着く。
「森宮さん。朝餉持って来ました。失礼します。 」
「かたじけない。 」
峻三の返事を聞いて障子を開け、部屋へと足を踏み入れた瞬間。この時代に来た時の、あの空間が歪む様な感覚が千香を襲った。思わずギュッと目を瞑る。グワンとした感覚の後、再び目を開けると目の前に広がって居たのは、『平成』の京都の街並みだった。
「え...? 」
自分はつい先程まで、屯所で峻三の朝餉を運んで居たはず...。何が起こったのか理解出来ず、千香は必死に頭を働かせる。今着ている服は、着物ではなく。あの日と同じ服を着ていて、荷物も赤いキャリーケースと肩から掛けていた鞄で。
「戻って来ちゃったの...?それに何で今...? 」
暫くその場に立ち往生していたが、ふと携帯の時計を見るとあの日の日付のままで、時間もそのままだと言うことに気づき。
「ゆ、夢?...でも、龍馬さんから貰った簪は挿してあるし...。 」
ぐるぐると回る思考をただ持て余しているだけでは、時間の無駄かと思い、千香は一先ずホテルへ行って考えようと思い立ち、屯所跡を後にした。
千香は早めにホテルにチェックインを済ませ、部屋へ入りベットへダイブする。ボフッというベッド特有の感触と、部屋の造りを一瞥し、ここが幕末ではなく平成なのだということを身に染みて実感した。
「どうしたら、戻れるのよ。まだまだ、皆が命を落とす事件が残っているって言うのに何で帰ってきちゃうかなあ...。」
顔を伏せたまま、ぼんやりと考える。すると、自分があの時代に新選組と一緒にいたことによって何か変わっているのではないかと思いついて。
「気になるのは、森宮峻三。あんな人、今に残ってる新選組史に出てこなかったはずなのに...。 」
史料本ではなく、スマホで『森宮峻三』と検索をかける。あの時点であまり大きく新選組と関わりが無いため、史料本では載っていないかもしれない。唯、世話をしただけだから。でも、もしかしたらと思いスマホに頼ってみる。
「...あった。森宮、峻三。...池田屋事件で新選組に助けられた恩義から、新選組の最期まで隊士として尽くした。晩年は、故郷の松山にて妻子を持つ。原田左之助と仲が良かったとされる。...私が幕末に行く前、こんな記事無かった。歴史を変えてしまったの? 」
あまりの衝撃に固まっていたが、段々と頭が働いてきて。
「じゃ、じゃあ、平助は!?どうなったの? 」
すかさず『藤堂平助』と検索をかける。しかし、藤堂の最期は変わっていないことを確認し、ボトリとスマホを床に落としてしまう。
「戻らなきゃ、幕末に。大事な人たちを助けるために。 」
ベットから降りてのそりと立ち上がると、千香は床に落ちたスマホを拾い上げた。___...ブルルル。電話がかかって来た様だ。
「お母さんから?何の用だろう。...もしもし?お母さんどしたん? 」
「千香!驚かんといてよ?千香が飛んで喜ぶ物見つけたんよ! 」
「...何?私今急いどんやけど。 」
一刻も早く幕末に戻る方法を見つけたい千香には、久し振りの母との電話でさえも苛立ちを募らせるものにしか感じられず。
「ええけん聞いて!あのね、お父さんの実家の蔵あるや?その蔵の片付けしよったら、古い写真が出て来てね。見たことも無い人が写っとったけん、誰だろおもてお義父さんに聞いたんよ。ほんなら、自分のお父さんの若い頃の写真じゃって言て、それだけやなくて、新選組の隊士だったって言うたんよ! 」
「え...?今、何て...。」
母の言葉に、嫌な汗が出た。鼓動も警鐘を打つ様に早くなっていく。
「峻三、さんって言うんやって。森宮峻三さん。凄かろ?曾祖父さんが新選組やったとか、なかなかおらんのんやない?嬉しかろ? 」
「う、うん。ありがとう。教えてくれて。またね。 」
「ちょ、千香待って...。 」
母の制止の声をも待たず、千香は通話を終わらせた。どうやら、自分が池田屋事件の時に助けたことがきっかけで、峻三は新選組隊士になった様である。
「私、若い頃の曾祖父ちゃんと会ってたってこと?そんなことって...。しかも、私が新選組に引き入れたってことになるの、かな。 」
嫌な汗が千香の額を伝った。
「じゃ、じゃあ仮にもし、私がまた歴史を変えたとして、峻三さんが死んじゃったら、私は生まれなくなる...? 」
一度にたくさんのことが起こり、収集がつかない。何が正しいのか、どうすれば良いのか。あの時の自分の判断は間違っていたのだろうか。
「戻るに、戻れないのかも。でも、それでも私は皆に生き抜いて欲しいのよ。はあ。どうしたら良いわけ...。 」
千香はベットに腰掛けて、遠くを見つめた。
「森宮さん。朝餉持って来ました。失礼します。 」
「かたじけない。 」
峻三の返事を聞いて障子を開け、部屋へと足を踏み入れた瞬間。この時代に来た時の、あの空間が歪む様な感覚が千香を襲った。思わずギュッと目を瞑る。グワンとした感覚の後、再び目を開けると目の前に広がって居たのは、『平成』の京都の街並みだった。
「え...? 」
自分はつい先程まで、屯所で峻三の朝餉を運んで居たはず...。何が起こったのか理解出来ず、千香は必死に頭を働かせる。今着ている服は、着物ではなく。あの日と同じ服を着ていて、荷物も赤いキャリーケースと肩から掛けていた鞄で。
「戻って来ちゃったの...?それに何で今...? 」
暫くその場に立ち往生していたが、ふと携帯の時計を見るとあの日の日付のままで、時間もそのままだと言うことに気づき。
「ゆ、夢?...でも、龍馬さんから貰った簪は挿してあるし...。 」
ぐるぐると回る思考をただ持て余しているだけでは、時間の無駄かと思い、千香は一先ずホテルへ行って考えようと思い立ち、屯所跡を後にした。
千香は早めにホテルにチェックインを済ませ、部屋へ入りベットへダイブする。ボフッというベッド特有の感触と、部屋の造りを一瞥し、ここが幕末ではなく平成なのだということを身に染みて実感した。
「どうしたら、戻れるのよ。まだまだ、皆が命を落とす事件が残っているって言うのに何で帰ってきちゃうかなあ...。」
顔を伏せたまま、ぼんやりと考える。すると、自分があの時代に新選組と一緒にいたことによって何か変わっているのではないかと思いついて。
「気になるのは、森宮峻三。あんな人、今に残ってる新選組史に出てこなかったはずなのに...。 」
史料本ではなく、スマホで『森宮峻三』と検索をかける。あの時点であまり大きく新選組と関わりが無いため、史料本では載っていないかもしれない。唯、世話をしただけだから。でも、もしかしたらと思いスマホに頼ってみる。
「...あった。森宮、峻三。...池田屋事件で新選組に助けられた恩義から、新選組の最期まで隊士として尽くした。晩年は、故郷の松山にて妻子を持つ。原田左之助と仲が良かったとされる。...私が幕末に行く前、こんな記事無かった。歴史を変えてしまったの? 」
あまりの衝撃に固まっていたが、段々と頭が働いてきて。
「じゃ、じゃあ、平助は!?どうなったの? 」
すかさず『藤堂平助』と検索をかける。しかし、藤堂の最期は変わっていないことを確認し、ボトリとスマホを床に落としてしまう。
「戻らなきゃ、幕末に。大事な人たちを助けるために。 」
ベットから降りてのそりと立ち上がると、千香は床に落ちたスマホを拾い上げた。___...ブルルル。電話がかかって来た様だ。
「お母さんから?何の用だろう。...もしもし?お母さんどしたん? 」
「千香!驚かんといてよ?千香が飛んで喜ぶ物見つけたんよ! 」
「...何?私今急いどんやけど。 」
一刻も早く幕末に戻る方法を見つけたい千香には、久し振りの母との電話でさえも苛立ちを募らせるものにしか感じられず。
「ええけん聞いて!あのね、お父さんの実家の蔵あるや?その蔵の片付けしよったら、古い写真が出て来てね。見たことも無い人が写っとったけん、誰だろおもてお義父さんに聞いたんよ。ほんなら、自分のお父さんの若い頃の写真じゃって言て、それだけやなくて、新選組の隊士だったって言うたんよ! 」
「え...?今、何て...。」
母の言葉に、嫌な汗が出た。鼓動も警鐘を打つ様に早くなっていく。
「峻三、さんって言うんやって。森宮峻三さん。凄かろ?曾祖父さんが新選組やったとか、なかなかおらんのんやない?嬉しかろ? 」
「う、うん。ありがとう。教えてくれて。またね。 」
「ちょ、千香待って...。 」
母の制止の声をも待たず、千香は通話を終わらせた。どうやら、自分が池田屋事件の時に助けたことがきっかけで、峻三は新選組隊士になった様である。
「私、若い頃の曾祖父ちゃんと会ってたってこと?そんなことって...。しかも、私が新選組に引き入れたってことになるの、かな。 」
嫌な汗が千香の額を伝った。
「じゃ、じゃあ仮にもし、私がまた歴史を変えたとして、峻三さんが死んじゃったら、私は生まれなくなる...? 」
一度にたくさんのことが起こり、収集がつかない。何が正しいのか、どうすれば良いのか。あの時の自分の判断は間違っていたのだろうか。
「戻るに、戻れないのかも。でも、それでも私は皆に生き抜いて欲しいのよ。はあ。どうしたら良いわけ...。 」
千香はベットに腰掛けて、遠くを見つめた。
0
あなたにおすすめの小説
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写と他もすべて架空です。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
還暦妻と若い彼 継承される情熱
MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。
しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。
母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。
同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる