27 / 95
忠実に生きていくということは
帰りたい
しおりを挟む
翌日、千香は幕末に戻る術を探すべく屯所跡へと向かった。結局昨晩は一睡も出来ず、ただただベットに横になっているだけだった。頭の中でも、どうすれば戻れるのか、歴史を変えてしまえばどうなるか等とぐるぐる考えていたので、とてもじゃないが眠れなかったが。
「もう一度、中に入れば行けるかも!試す価値はあるよね! 」
初めてタイムスリップしたときは屯所跡に入った瞬間、グワンと空間が歪んだと思ったら、幕末にいたのだ。だから、もう一度同じ条件を揃えれば行けるのではないだろうか。あの日と同じ服、荷物で門を前にする。
どうか、戻れます様にと心で強く願ってから、屯所跡に足を踏み入れた。
「無理か...。だったらどうすれば帰れるの...。」
願い叶わず、屯所跡に入っても辺りの風景に変化は無く。
途端、千香の腹の虫が泣いた。こんな時でさえお腹が空くなんて、と呆れ返るも、早く幕末に帰る方法を見つけたいがために朝食を摂らずにホテルを飛び出して来たのだから当然である。
一旦仕方無いと諦め、近くにあったカフェへと立ち寄り軽食を済ませた。
悩んでいるときは、何か他のことをしてみれば自ずと答えが出ることもある。と誰かが言っていたのを思い出して、折角京都に来たのだから、純粋に楽しもうと適当に散策を始めた。
暫く歩くと、見覚えのある甘味処が千香の視界に入った。どうして知っているのだろうと、頭を悩ませていると無意識のうちに暖簾を潜り、店へと入ってしまっていた。
中は客で溢れかえっていて、なかなか繁盛していることが伺える。
「って、何で私お店に入っちゃってるのよ!用が無いんだから出なきゃ。 」
くるりと方向転換し、店を後にしようと引き戸に手を掛けた瞬間、背後から聞き覚えのある声がして千香は思わず後ろを振り返った。
「いらっしゃいませー。って、お客さんもう帰るんですか?まだ店の甘味一つも食べてへんのに。 」
「...お千代、ちゃん? 」
現代に千代がいては可笑しいが、千香の目に映った少女は千代以外の何者にも見えないため、思わず目を見張った。
「ちゃうちゃう。うちは千鶴言います。お千代は曾祖母ちゃんのお名前。お客さんよう知ってはるなあ。 」
ケラケラと、軽やかに笑うところ。可愛らしい笑顔。明るい雰囲気。
千鶴は、千代にそっくりだった。血が繋がっているからだろうか。千香はパチパチと瞬きをして、目を擦る。
「...すみません。お団子、一つお願いします。 」
内装はあの時代の頃とさほど変わっていない様で、千代が生きた証を残している様だと感じた。千代がこの店を守り抜いて、現在まで残していたのだ。
「ご注文ありがとうございます。お席はこちらです。 」
にこりと笑う千鶴に促され、席に着く。前に来たのは一五〇年前だ。なんて一体誰が信じるだろう。常識では有り得ないと一蹴されるのが関の山と言ったところか。
暫く待っていると、机に団子が置かれた。
「このお店、江戸時代から続いてるんです。団子の味もその頃からずうっと変わってないんですよ。あんまり知られてないけど、かの有名な坂本龍馬も団子を食べに来たこともあるそうで。...何やお客さん疲れてるみたいやし、ゆっくりしていって下さいね。 」
千鶴の言葉に、千香は思わず涙する。この店には、自分の生きた証も残されていたのか。道理で覚えている訳だ。
その様子に驚いた千鶴は慌てて訳を聞いた。
「ど、どうかされたんですか? 」
「いいえ。ただ、懐かしくて。あの頃に戻ったみたいです。 」
涙を手の甲で拭いながら、千香は答える。
それに千鶴は千代にそっくりな顔でふわっと笑って。
「あの頃?何やよう分かりませんけど、お力になれた様やったら、嬉しいです。元気、出してください。笑ってたら、自然と幸せを呼び寄せるって言いますよ。それじゃ、私は失礼します。 」
千鶴が去った後、千香は口一杯に団子を頬張った。
ぽろぽろと零れ落ちる涙と共に、幕末で過ごした思い出さえも無くなってしまう様な感覚を覚えてしまう。
「味、変わってない。美味しいままだね。お千代ちゃん。 」
それを打ち消す様に、千香は夢中で団子を口へと運ぶ。
団子を平らげ勘定を済ませると千香は店を出て、幕末に居たときに立ち寄った覚えのある店を巡り始めた。
日も落ちて来た頃、千香はもう一度屯所跡へ戻って来た。いくら考えても、ここ以外幕末に戻れそうな場所は無いという結論に至ったからである。
「今度こそ、戻れますように! 」
千香は瞼をギュッと閉じて、胸の前で両手を合わせて強く祈った。
自分には新選組を命を懸けて、護る覚悟があるんだ。だから、神様お願いします!
バクバク脈打つ心臓を落ち着かせる様に、大きく深呼吸をしてもう一度屯所跡へと足を踏み入れた。
「もう一度、中に入れば行けるかも!試す価値はあるよね! 」
初めてタイムスリップしたときは屯所跡に入った瞬間、グワンと空間が歪んだと思ったら、幕末にいたのだ。だから、もう一度同じ条件を揃えれば行けるのではないだろうか。あの日と同じ服、荷物で門を前にする。
どうか、戻れます様にと心で強く願ってから、屯所跡に足を踏み入れた。
「無理か...。だったらどうすれば帰れるの...。」
願い叶わず、屯所跡に入っても辺りの風景に変化は無く。
途端、千香の腹の虫が泣いた。こんな時でさえお腹が空くなんて、と呆れ返るも、早く幕末に帰る方法を見つけたいがために朝食を摂らずにホテルを飛び出して来たのだから当然である。
一旦仕方無いと諦め、近くにあったカフェへと立ち寄り軽食を済ませた。
悩んでいるときは、何か他のことをしてみれば自ずと答えが出ることもある。と誰かが言っていたのを思い出して、折角京都に来たのだから、純粋に楽しもうと適当に散策を始めた。
暫く歩くと、見覚えのある甘味処が千香の視界に入った。どうして知っているのだろうと、頭を悩ませていると無意識のうちに暖簾を潜り、店へと入ってしまっていた。
中は客で溢れかえっていて、なかなか繁盛していることが伺える。
「って、何で私お店に入っちゃってるのよ!用が無いんだから出なきゃ。 」
くるりと方向転換し、店を後にしようと引き戸に手を掛けた瞬間、背後から聞き覚えのある声がして千香は思わず後ろを振り返った。
「いらっしゃいませー。って、お客さんもう帰るんですか?まだ店の甘味一つも食べてへんのに。 」
「...お千代、ちゃん? 」
現代に千代がいては可笑しいが、千香の目に映った少女は千代以外の何者にも見えないため、思わず目を見張った。
「ちゃうちゃう。うちは千鶴言います。お千代は曾祖母ちゃんのお名前。お客さんよう知ってはるなあ。 」
ケラケラと、軽やかに笑うところ。可愛らしい笑顔。明るい雰囲気。
千鶴は、千代にそっくりだった。血が繋がっているからだろうか。千香はパチパチと瞬きをして、目を擦る。
「...すみません。お団子、一つお願いします。 」
内装はあの時代の頃とさほど変わっていない様で、千代が生きた証を残している様だと感じた。千代がこの店を守り抜いて、現在まで残していたのだ。
「ご注文ありがとうございます。お席はこちらです。 」
にこりと笑う千鶴に促され、席に着く。前に来たのは一五〇年前だ。なんて一体誰が信じるだろう。常識では有り得ないと一蹴されるのが関の山と言ったところか。
暫く待っていると、机に団子が置かれた。
「このお店、江戸時代から続いてるんです。団子の味もその頃からずうっと変わってないんですよ。あんまり知られてないけど、かの有名な坂本龍馬も団子を食べに来たこともあるそうで。...何やお客さん疲れてるみたいやし、ゆっくりしていって下さいね。 」
千鶴の言葉に、千香は思わず涙する。この店には、自分の生きた証も残されていたのか。道理で覚えている訳だ。
その様子に驚いた千鶴は慌てて訳を聞いた。
「ど、どうかされたんですか? 」
「いいえ。ただ、懐かしくて。あの頃に戻ったみたいです。 」
涙を手の甲で拭いながら、千香は答える。
それに千鶴は千代にそっくりな顔でふわっと笑って。
「あの頃?何やよう分かりませんけど、お力になれた様やったら、嬉しいです。元気、出してください。笑ってたら、自然と幸せを呼び寄せるって言いますよ。それじゃ、私は失礼します。 」
千鶴が去った後、千香は口一杯に団子を頬張った。
ぽろぽろと零れ落ちる涙と共に、幕末で過ごした思い出さえも無くなってしまう様な感覚を覚えてしまう。
「味、変わってない。美味しいままだね。お千代ちゃん。 」
それを打ち消す様に、千香は夢中で団子を口へと運ぶ。
団子を平らげ勘定を済ませると千香は店を出て、幕末に居たときに立ち寄った覚えのある店を巡り始めた。
日も落ちて来た頃、千香はもう一度屯所跡へ戻って来た。いくら考えても、ここ以外幕末に戻れそうな場所は無いという結論に至ったからである。
「今度こそ、戻れますように! 」
千香は瞼をギュッと閉じて、胸の前で両手を合わせて強く祈った。
自分には新選組を命を懸けて、護る覚悟があるんだ。だから、神様お願いします!
バクバク脈打つ心臓を落ち着かせる様に、大きく深呼吸をしてもう一度屯所跡へと足を踏み入れた。
0
あなたにおすすめの小説
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写と他もすべて架空です。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
還暦妻と若い彼 継承される情熱
MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。
しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。
母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。
同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる