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第3章 魔王編

東堂兄妹

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「海斗、お前コイツらの言葉が分かるのか?」

レオンが聞いてきた

やっぱり。宿に入って来た時にレオン達が首を傾げていたのは2人の言葉が理解できてなかったからなのか

そして受付の人も言葉が通じてなかったから噛み合わなかった訳だね

「あの、貴方は異世界言語を取られたのですか?」

日本人の女性が海斗に聞いてくる

どうしようか、正直に言うべきか困る質問だな。まだ2人の事がよく分からないから言える範囲で答えていこう

「まぁ、喋れますね」

「本当ですか!?じゃあ通訳してもらってもいいですか?」

おっと、濁したのに突っ込まないんだ。それ程切羽詰まってたのかな?

お互いの話を聞いてみると

2人はこの宿に着いてから2週間泊まっていたそうだ。宿の人は1週間ずつ更新をしており次の週をどうするかを聞いていた。

彼等は後2日分しか無いとお金を見せながら身振り手振りで説明していたが、宿の人には後2週間泊まるから宿代を2日分安くして欲しいと言っていると思ったみたいだ

言葉の壁って意外と高いんだね。

海斗は宿の人に説明をして、取り敢えず2日分泊まるようだと伝えて支払いを済ませさせた。

これで終わったかなと思いじゃあ!と手を上げてフェードアウトしようと思ったけど逃げられない

2人にガッシリと捕まれて食堂へと連れて行かれた。

6人座れる丸いテーブルがあったので全員で座り話をする事に

「それでは改めて、俺は東堂マサユキでこっちが東堂スミレ。名前で分かると思うけど兄妹だ」

スミレは日本人らしく会釈で挨拶してくる

「俺は天道海斗です、後の3人はこちらの世界の人間ですね」

それにしても兄妹だったのか、似てないな。兄妹で異世界召喚されたとか両親の心配が半端ないよね

ん?そう言えばマサユキ?スミレ?何処かで聞いたような気が・・

「あっ!?」

「海斗!?どうした?」

突然驚いた海斗にレオンがびっくりする

「いや、そう言えば2人の事知ってるかもって」

そう言って2人に向き直す

「もしかしてですけどマサユキさんは火の魔法でスミレさんは水の魔法を取られましたか?」

2人は驚き顔を見合わせる。そして海斗を見て

「えっと、何故分かったんだ?」

全員に分かるようにヴィン様のスカウトに行った理由を説明してみた

「あの時のゴブリンの話はそんな事になってたんだ・・お兄が嫌な予感がするって言うから」

「おまっ!?お前だって賛成したろ!だからお金貰って直ぐに街を出たんじゃないか!」

2人はあの時のなすり付け合いを始めている

右も左もわからない言葉も通じない世界で相当なストレスがかかってたのかもね。

取り敢えず落ち着かせる為に皆んなでこのまま夕食を取ることにする

お腹が膨れないと頭も働かないからね

そのままご飯を食べながら話を続けた

2人はあのスーパーに何日か居たのだが何も変化は無く、水も食料も少なくなってきていた。

周りの人もまだまだ居たのだが少しずつグループを作って出て行っていた。

意を決して食料を確保し、外の世界へ歩き出し街を探す

火と水を選んだのは、どちらも攻撃に使う事が出来、尚且つ生活用にも可能だと判断したからだそう

サバイバルで必須の二種目だったからだそうだ

あの時焦らずにちゃんと考えて決めていたんだなと感心してしまった

俺なんかハプニングでスマホだぞ!完全にネタじゃん!

今となっては当たりだったけど

そして魔物をマサユキが倒して魔石とドロップ品を回収して、村で物々交換をしたり近くの魔物を討伐する事でお金を稼いで地球に帰る為の旅をしていたそうだ

俺が居なくなった後のスーパーの事も少し分かり、彼等の苦労も服装を見れば分かる

大変な思いをしてここまで来たんだろう。俺は定期的にショッピングアプリで下着を買ってるし、現地の服を買えている。

異世界特典でこんなにも違うのか

本当に性格悪いぞ!あの愉快犯!

東堂兄妹は当てもなく旅を続けているけど海斗が通訳出来るならついて行きたいと言ってくる

「俺達は今から魔物1万の軍と戦う所に行くんだ」

海斗がそういうと2人は黙り込んだ。

そりゃそうだ。いくら通訳が必要だからってそんな危険な場所に行きたいとは思わないだろう

「なら紹介状を書いて学園都市に行きますか?校長に取り持ってもらう様に計らいますよ?言葉も教えてもらえるようにしますし」

そう言うと2人はボソボソと話し合い

「1つ質問をしてもいいか?」

「どうぞ」

「海斗さんは何故その戦いに行くんだ?この世界の人間では無いのに危ない所へ行く理由は何なんだ?」

もっともな質問だよね。

「自分から無闇に首を突っ込んだり、死地に向かいたいとは思ってないよ。けどこの世界で出会った人達と一緒に過ごしている内に助けたいって思ってしまったんだよね

だから自分の出来る範囲でやれる事をやろうと思っているよ。今回も難しそうなら彼女のお母さんを連れて避難する案も考えてるし」

横に座ってるサーニャを見て答えた

「そうか・・なら俺達も連れて行ってくれ。少しは戦力になると思う。後、ヤバそうならスミレだけでも避難させてやってくれ」

「お兄!?」

ヨシユキの言葉に驚くスミレ。海斗達もまさか付いてくるとは思ってもなかったので驚いている

「どうしてだ?海斗の言った通り1万もの魔物だぞ?それこそ2人とも関係ない話じゃないか?」

海斗の通訳を通して話を聞いていたレオンが疑問をぶつけてきた

いや、通訳するの俺だけどさ、結構大変なんだぞ?

「関係無くは無いさ。魔物が1万も進軍してくるならいつかは俺達の所へと来る可能性が高い。なら逃げても無駄だろうし

それに、今まで立ち寄った村の人達は、言葉も通じない怪しげな俺達を温かく迎えてくれたんだ。だから海斗さんと一緒でそんな人達を危険な目に合わせる訳にはいかないと思ったんだよ」

中々に良い奴だった

レオン達も気に入ったみたいだし、改めて2人が仲間に入る事を歓迎してその場は解散した

次の日は早目に出る事を伝えて部屋に戻り『スマホ』の画面を開く

2人の話を聞いてるとこのスキルって多様性があるよな、異世界言語が使えたのは大きかったんだね

電話のアプリをタッチして感慨深く眺めていると

「え?」

電話帳に名前が薄い字で登録されていた

東堂兄妹の名前だ

思わず触れてみる。すると濃くなったが何も起こらない

何だったんだろう?

考えても分からないので取り敢えず寝る事にした


次の日の朝


「海斗さん!俺達に何かしたのか!?」

おはようを言う前にヨシユキとスミレが慌てて駆け寄ってきた

何だ何だ?朝から一体



「朝起きてからこの世界の人達の言葉が分かるようになったんだよ!」


「はぁぁ?」
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