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二話『僕には世界が濁って見えるよ』
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「ただいま……って、誰もいないか」
大した遠回りにもならないので、晴翔は着替えと荷物を置いてシャワーを浴びるために一度、家に寄った。
十分ほどシャワーを浴び、さっぱりして外に出ると、さっきまで家にいなかった父親の秋春が缶ビールを片手にプロ野球の中継をかぶりつく様に見入っていた。
秋春を視界にとらえた瞬間、何かが急降下した様な気がした。
「親父、帰ってたのか。これからまた出かけてくるから。夕飯はコンビニで買ってくるから、いらないよ」
「おう、そうか。だから、表に中庭の所の倅がいたのか」
汰一と晴翔の家は所謂、お隣さん。晴翔の家が漁師で汰一の家が居酒屋。よって親同士もまた、必然的に仲が良くなる。
どうせまた、さっきまで一緒に呑んでいたに違いない、と勝手に晴翔は決めつけた。
「「……」」
暫くの間、二人の間を沈黙が支配する。その間に野球中継の音だけが虚しく響く。去年、晴翔の母親が病気で亡くなってからはいつもこんな感じだ。別段、不仲という訳でもないが、仲が良いともいえない微妙な関係。
晴翔はこの空気がなんとなく嫌いだ。
「……日ハム、勝てそう?」
「……ああ、この試合はいけそうだな。ピッチャーの球が走っているし、何よりバッティング冴えてる」
重苦しい沈黙に耐えかねた晴翔が無理やり話題を作っる。しかし会話は長くは続かない。
「……そっか、じゃあ行ってくる」
このまま、会話しててもお互いが気を使い合うだけだ、と思った晴翔は早々に秋春との会話を諦めて玄関に向かった。お気入りのクロックスを履いて年季の入った古びた戸を開ける。
「よお。さっき、親父さん帰って来てたぞ。多分、うちで一杯やった後だな」
戸が開く音で晴翔が出てきたのが分かったのだろう。汰一がスマホをポケットにしまいながら底ぬけに明るい声で話す。
沈んでいた何かが、汰一の声を聞いた瞬間に一気に浮上する。
「そうだな、我が友よ。あの親父は一体いつから呑んだくれてるのやら……まさか昼間か!?」
「はは、そりゃいいね。もしそうなら、うちの父さんとセットで明日なき酒飲みジジイだな」
汰一なりの自分への気遣いだということは晴翔も分かっている。それでも、二人はカラカラと笑い合った。
「そんじゃ、行くか?」
「そうだな我が友よ。ナックル、打ちまくろうぜ!! 僕たちなら甲子園も夢じゃない」
「アホ、スライダーだよ!!」
ひとしきりに笑い合った後。汰一はニコニコと笑みを浮かべながらそういうと晴翔のママチャリのペダルに足を延ばす。晴翔も慌てて後ろの荷台へと飛び乗った。
「相変わらずきったねーな、ここは」
「そりゃそうだろう。昨日も一昨日も汚かったんだから。進化してないだけマシだろ」
海岸沿いに引かれた国道をひたすらまっすぐ走ると目的地は見えてくる。『ブルーハウス』とい看板の文字は老化の所為で所々剥げている。この、歴史を感じさせる場所が築十五年のこの町で唯一の娯楽施設である。
築十五年でどうしてここまでボロくなるのかは晴翔達が抱く永遠の謎だ。
「おい、これ見ろよ汰一」
一足早く、自転車の荷台から降りた晴翔は『本日臨時休業』と記された掛札を指差す。
「はっ? 冗談だろ? 俺たちくらいしか客こないんだから開けとけよ……」
よほどショックが大きかったのか汰一はその場に項垂れる。こうして、晴翔と汰一が描いた甲子園の道は無情にも閉ざされたのだった。
「ナックル打ちたかったな」
そこまで興味は無かったが汰一が本気で残念がっているので一応合わせておく。
「……スライダーだよ、アホ。あーチクショウ、ついてねーな」
「だな。て、事で飯でも食って帰るか? 今日、夕飯いらないって言ってきたから食って帰らないと」
「……そうだな、我が親友よ。マックでも食いに行くか?」
「夜にマックって……。それに隣町まで行くつもりか?」
流石に夕飯にハンバーガーはキツイと顔を顰める晴翔。それに、この狭い漁村にはマックなんて大層なものはない。コンビニが辛うじて一軒あるくらいのこのど田舎にはそもそも必要の無い物だ。
「冗談だ。家で食おう。父さんに頼めばなんか作ってくれるだろうから」
力なく項垂れていた汰一はそう言って身体を起こすと再びママチャリに乗車した。
「ところでさあ。晴翔、バスケ楽しいか?」
汰一の家の居酒屋を目指して再び自転車を漕ぎ始めた汰一が振り返らず、唐突に口を開いた。
汰一の方からバスケに関する話題を出すなんて珍しいと晴翔は内心で少し驚く。
「別に楽しくないよ。頼まれたからやってるだけだし」
「……そっか。寿司のネタでいうとどのレベル?」
「うーん、アイナメとか?」
「渋いなお前……。まぁ、そのくらいだよな。"あの事"、まだ気がにしているのか?」
「……別に。そういう訳では」
「そっか、つまんねー事聞いたな」
それっきり汰一は口を閉じてしまった。ママチャリの荷台から日が落ちきった夜の海を眺めながら晴翔はバスケはもういいんだ、と何かに抗うように強く思った。
◆
汰一の家で夕飯をご馳走になり、解散した後も晴翔は家に帰る気には慣れなかった。そして、晴翔は一人になると決まって自宅の前の砂浜で時間をつぶす。波の音と海風が心地よく心を落ち着かせてくれるからだ。
現実として、然程に珍しく美しい景色という訳ではない。それでも、晴翔はただこの場所から海を眺めるのが好きだった。
「……つまねーな」
波の音を聴きながらつい口から言葉が溢れた。それは、晴翔の心の底で燻る紛れもない本心なのだろう。
確かに汰一と遊ぶと楽しいし時間を忘れられる。しかし、それで満たされるのかと言われれば当然、首を縦にふる事は出来ない。
ーー『ハル君。世界は色で溢れてるのよ。人それぞれが特別な色を持って輝くの。だから世界は美しいのよ』
何故だか、急に亡き母の言葉が頭の中を横切った。
「特別な色……ね。母さん、僕には分からないよ。母さんには僕の色は何色に見えてのかな? 僕には世界が濁って見えるよ」
当時、言われたばかりの頃はまだ幼く全然理解できなかった。そして、現在もまだ晴翔は理解する事が出来なかった。
まだ、自分は幼いままなのか、と晴翔は自嘲気味に口元を歪ませる。
そんな晴翔の心を知ってるのか知らないのか、海の彼方で船のランプがオレンジ色に光っていた。
「船にすら色があるのに僕には無いんだな、色が」
そう呟く、晴翔は何かに思い立った様にのっそりと立ち上がり自宅とは反対方向へ歩き出した。夜の海風が晴翔の短髪をなびかせる。
「確か、昔よくこっちの方で練習したっけ」
砂浜の端まで行くとそこにはバスケットコートがある。コートと言っても地面はコンクリートで転ぶと痛い。ゴールも一つしかなくボードは腐ってボロボロ、ネットはついて無いという粗悪な物だったと記憶している。
昔、晴翔は晴翔の母と汰一ともう一人の幼馴染との四人でよくバスケの練習をしたものだった。
「一年以上、行ってないからな。まだあるのかな、あのゴール」
あって欲しいと思った。バスケはもういいものだが、それでも母との思い出がある、あのゴールはいつまでも無くならないで欲しかった。
バスケットコートに近づくにつれて聴き覚えのある音を晴翔の耳は拾った。
トン、トン、トン、……と音は等間隔で聞こえてくる。
「これって、ボールをつく音? こんな時間に誰が? まさか、あいつか?」
瞬時に幼馴染の顔を思い浮かべるが、次の瞬間には無いな、と自らの仮説を全否定した。
一体、誰がボールをついているのか気になりコートへ向かう足を速める。そして、コートに辿り着いた時、汰一は目を見張った。
そこには、艶やかな黒髪をなびかせながら必死にボールをつく女の子がいた。ただ人と違う点が一つ、彼女は自分の足で立っているのではなく車椅子に腰を掛けながらドリブルをついていた。
月光に照らされたその姿は神々しく晴翔の視線は釘付けにされて、しばらく、目を離すことが出来なかった。
大した遠回りにもならないので、晴翔は着替えと荷物を置いてシャワーを浴びるために一度、家に寄った。
十分ほどシャワーを浴び、さっぱりして外に出ると、さっきまで家にいなかった父親の秋春が缶ビールを片手にプロ野球の中継をかぶりつく様に見入っていた。
秋春を視界にとらえた瞬間、何かが急降下した様な気がした。
「親父、帰ってたのか。これからまた出かけてくるから。夕飯はコンビニで買ってくるから、いらないよ」
「おう、そうか。だから、表に中庭の所の倅がいたのか」
汰一と晴翔の家は所謂、お隣さん。晴翔の家が漁師で汰一の家が居酒屋。よって親同士もまた、必然的に仲が良くなる。
どうせまた、さっきまで一緒に呑んでいたに違いない、と勝手に晴翔は決めつけた。
「「……」」
暫くの間、二人の間を沈黙が支配する。その間に野球中継の音だけが虚しく響く。去年、晴翔の母親が病気で亡くなってからはいつもこんな感じだ。別段、不仲という訳でもないが、仲が良いともいえない微妙な関係。
晴翔はこの空気がなんとなく嫌いだ。
「……日ハム、勝てそう?」
「……ああ、この試合はいけそうだな。ピッチャーの球が走っているし、何よりバッティング冴えてる」
重苦しい沈黙に耐えかねた晴翔が無理やり話題を作っる。しかし会話は長くは続かない。
「……そっか、じゃあ行ってくる」
このまま、会話しててもお互いが気を使い合うだけだ、と思った晴翔は早々に秋春との会話を諦めて玄関に向かった。お気入りのクロックスを履いて年季の入った古びた戸を開ける。
「よお。さっき、親父さん帰って来てたぞ。多分、うちで一杯やった後だな」
戸が開く音で晴翔が出てきたのが分かったのだろう。汰一がスマホをポケットにしまいながら底ぬけに明るい声で話す。
沈んでいた何かが、汰一の声を聞いた瞬間に一気に浮上する。
「そうだな、我が友よ。あの親父は一体いつから呑んだくれてるのやら……まさか昼間か!?」
「はは、そりゃいいね。もしそうなら、うちの父さんとセットで明日なき酒飲みジジイだな」
汰一なりの自分への気遣いだということは晴翔も分かっている。それでも、二人はカラカラと笑い合った。
「そんじゃ、行くか?」
「そうだな我が友よ。ナックル、打ちまくろうぜ!! 僕たちなら甲子園も夢じゃない」
「アホ、スライダーだよ!!」
ひとしきりに笑い合った後。汰一はニコニコと笑みを浮かべながらそういうと晴翔のママチャリのペダルに足を延ばす。晴翔も慌てて後ろの荷台へと飛び乗った。
「相変わらずきったねーな、ここは」
「そりゃそうだろう。昨日も一昨日も汚かったんだから。進化してないだけマシだろ」
海岸沿いに引かれた国道をひたすらまっすぐ走ると目的地は見えてくる。『ブルーハウス』とい看板の文字は老化の所為で所々剥げている。この、歴史を感じさせる場所が築十五年のこの町で唯一の娯楽施設である。
築十五年でどうしてここまでボロくなるのかは晴翔達が抱く永遠の謎だ。
「おい、これ見ろよ汰一」
一足早く、自転車の荷台から降りた晴翔は『本日臨時休業』と記された掛札を指差す。
「はっ? 冗談だろ? 俺たちくらいしか客こないんだから開けとけよ……」
よほどショックが大きかったのか汰一はその場に項垂れる。こうして、晴翔と汰一が描いた甲子園の道は無情にも閉ざされたのだった。
「ナックル打ちたかったな」
そこまで興味は無かったが汰一が本気で残念がっているので一応合わせておく。
「……スライダーだよ、アホ。あーチクショウ、ついてねーな」
「だな。て、事で飯でも食って帰るか? 今日、夕飯いらないって言ってきたから食って帰らないと」
「……そうだな、我が親友よ。マックでも食いに行くか?」
「夜にマックって……。それに隣町まで行くつもりか?」
流石に夕飯にハンバーガーはキツイと顔を顰める晴翔。それに、この狭い漁村にはマックなんて大層なものはない。コンビニが辛うじて一軒あるくらいのこのど田舎にはそもそも必要の無い物だ。
「冗談だ。家で食おう。父さんに頼めばなんか作ってくれるだろうから」
力なく項垂れていた汰一はそう言って身体を起こすと再びママチャリに乗車した。
「ところでさあ。晴翔、バスケ楽しいか?」
汰一の家の居酒屋を目指して再び自転車を漕ぎ始めた汰一が振り返らず、唐突に口を開いた。
汰一の方からバスケに関する話題を出すなんて珍しいと晴翔は内心で少し驚く。
「別に楽しくないよ。頼まれたからやってるだけだし」
「……そっか。寿司のネタでいうとどのレベル?」
「うーん、アイナメとか?」
「渋いなお前……。まぁ、そのくらいだよな。"あの事"、まだ気がにしているのか?」
「……別に。そういう訳では」
「そっか、つまんねー事聞いたな」
それっきり汰一は口を閉じてしまった。ママチャリの荷台から日が落ちきった夜の海を眺めながら晴翔はバスケはもういいんだ、と何かに抗うように強く思った。
◆
汰一の家で夕飯をご馳走になり、解散した後も晴翔は家に帰る気には慣れなかった。そして、晴翔は一人になると決まって自宅の前の砂浜で時間をつぶす。波の音と海風が心地よく心を落ち着かせてくれるからだ。
現実として、然程に珍しく美しい景色という訳ではない。それでも、晴翔はただこの場所から海を眺めるのが好きだった。
「……つまねーな」
波の音を聴きながらつい口から言葉が溢れた。それは、晴翔の心の底で燻る紛れもない本心なのだろう。
確かに汰一と遊ぶと楽しいし時間を忘れられる。しかし、それで満たされるのかと言われれば当然、首を縦にふる事は出来ない。
ーー『ハル君。世界は色で溢れてるのよ。人それぞれが特別な色を持って輝くの。だから世界は美しいのよ』
何故だか、急に亡き母の言葉が頭の中を横切った。
「特別な色……ね。母さん、僕には分からないよ。母さんには僕の色は何色に見えてのかな? 僕には世界が濁って見えるよ」
当時、言われたばかりの頃はまだ幼く全然理解できなかった。そして、現在もまだ晴翔は理解する事が出来なかった。
まだ、自分は幼いままなのか、と晴翔は自嘲気味に口元を歪ませる。
そんな晴翔の心を知ってるのか知らないのか、海の彼方で船のランプがオレンジ色に光っていた。
「船にすら色があるのに僕には無いんだな、色が」
そう呟く、晴翔は何かに思い立った様にのっそりと立ち上がり自宅とは反対方向へ歩き出した。夜の海風が晴翔の短髪をなびかせる。
「確か、昔よくこっちの方で練習したっけ」
砂浜の端まで行くとそこにはバスケットコートがある。コートと言っても地面はコンクリートで転ぶと痛い。ゴールも一つしかなくボードは腐ってボロボロ、ネットはついて無いという粗悪な物だったと記憶している。
昔、晴翔は晴翔の母と汰一ともう一人の幼馴染との四人でよくバスケの練習をしたものだった。
「一年以上、行ってないからな。まだあるのかな、あのゴール」
あって欲しいと思った。バスケはもういいものだが、それでも母との思い出がある、あのゴールはいつまでも無くならないで欲しかった。
バスケットコートに近づくにつれて聴き覚えのある音を晴翔の耳は拾った。
トン、トン、トン、……と音は等間隔で聞こえてくる。
「これって、ボールをつく音? こんな時間に誰が? まさか、あいつか?」
瞬時に幼馴染の顔を思い浮かべるが、次の瞬間には無いな、と自らの仮説を全否定した。
一体、誰がボールをついているのか気になりコートへ向かう足を速める。そして、コートに辿り着いた時、汰一は目を見張った。
そこには、艶やかな黒髪をなびかせながら必死にボールをつく女の子がいた。ただ人と違う点が一つ、彼女は自分の足で立っているのではなく車椅子に腰を掛けながらドリブルをついていた。
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