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34.自分
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「はぁ~」
シャワーから出るお湯で体が温まっていくのが気持ちいい。体中に付いた泥をきれいに落としてシャワー室を出てロッカーへ行く。
着替えの入ったバッグを開け下着を手に取り身に付けていき気付く。
「Tシャツがない。タンクトップはあるけど」
続けて任務があった。
しかもどの任務も雨だった。
泥だらけになりながら追いかけた。
任務の前に回数分の着替えは用意していたのだが天気の悪い日が続き最後の任務である今日、大雨で肌寒くなることはあまり考えていなかった。
「予定では晴れだった」
仕方が無いとタンクトップを着た。汚れた服を袋に入れバッグにしまいながら作業部屋に戻ればパーカーがあったなと思い出す。誰かに会ったら心配されるだろうかと思いながらシャワー室を出ると少し離れたところにある男性用のシャワー室からルートが出てきた。
目が合った。
ものすごい勢いで近づいてきたルートはバッグから綺麗に畳まれて袋に入っているYシャツを出し
「普さん着てください」
「あ、ありがと」
ここは着た方がいいと判断し普はYシャツを着た。
「…」
ぶかぶかだ。
ぶかぶかのYシャツを着て見つめてくる普を見てルートは悶え苦しんでいる。
「私は普さんが変な目で見られて嫌な思いをしてほしくなくて……うぅ」(かわいいと口が裂けても言えない)
とりあえずこの状況をからかわれたら嫌なのでルートの手を引っ張ってコインランドリーみたいな部屋に行き洗濯をする。
待っている間にタンクトップの理由を話すと「予報は晴れでしたし、晴れると暑いですからね」と納得はしていた。
「一人で外出する時はタンクトップやめておいてください」
「涼しいのに」
「簡単に言うとモデルの依頼が「誰かといる時だけにする!!」
適度に引き締まった体に義手…そしてタンクトップ。映画に出てくる役者のような…とにかく注目されてしまう。
「僕の容姿はそんなにいいの?」
「虎二さん似ですがリエンさんに似たところもあります。綺麗とかかっこいいとかハーフだからというのはなんだか違う気がします。バランスの良さはありますね。一番は堂々としている姿、存在感というか言葉で説明するのは難しいです」
「影じいに似てるって言われることもある」
「誰かが必ず普ちゃんを見つけられるようにって願ったから」
見上げると伊藤が立っていた。
「虎二とリエンが生まれてくる赤ちゃんに願ったこと。少し強く叶えられてしまったのかもしれない」
伊藤は少し微笑みながら言い、続けて
「ぶかぶかの服を着ているといつも以上に守ってあげたくなる」
夜、家にて
ルートに返すため今、普ちゃんは乾いたYシャツにアイロンをかけている。
作業部屋に戻ってしばらく経ってからパーカーに着替えていた。男性の服が身体にしっくりきていたのかもしれない。それと同時に男性の服が着こなせるような体格になれないことを悲しんでいるように俺は感じた。
性別の苦しさから救ってあげることはできない。
手術やホルモン注射は痛いし、副作用もあるし、継続するためのお金もかかると聞く。本人はトランスだと当てはまらない部分があると言ってXジェンダーを名乗っている。
自分とはなんなのかという気持ちとずっと戦うのはとても疲れるはずだ。
「普ちゃん」
アイロンがけが終わったところで声を掛けるとこちらを向いて首を傾げている。
「今ある服サイズが合わなかったりしてない?」
「一部合わなくなってきてる」
おいでと手招きすると立ち上がりトコトコと近くまで来た。抱き寄せて頭に手を置き
「再会したときも大きくなってたけどここ数ヶ月でも身長が伸びたね」
「嬉しい」
「義手の調整も近いうちにしてもらおうね。あと服も買いに行こう。」
「うん」
リエンの身長ぐらいまで伸びればいいけれど精神的な面と義手のことを考えると今、成長が止まっていないだけでも喜ばないといけない。
そういえば普とルートの会話を聞いていて気づいたけれど普はタンクトップを着ることに抵抗がないのか。正確には義手と身体の繋ぎ目を見られることを気にしていないのか。影虎さんの義足を側で見ていたから、見られても気にしていない姿を見て気にするほどのことではないと思っているのか。
「腕を見られること怖くない?」
「怖くないよ。何か言われたことはあるけど酷い内容ではなかったし」
「答えられる範囲でいいからどんなことを言われたのか教えてほしい」
優しい声で聞いてくる良貴。本当は傷ついたんじゃないかって心配してくれてる。あの時の言葉に僕は何思ったんだろう?
「事故で失ったのかな」
「義手かっこいい」
「どこのメーカーのだろう?」
「かわいそう」
「あれだけ本当の手みたいに動くんだから腕を失っても困らないね」
「最後の嫌だね」
「嫌ではある。でも」
「失ったことを後悔してない…俺は普ちゃんがそう思い続けられるようにしていきたい」
伊藤は愛と責任を持つこと、普は伊藤と生きることをやめない限り道は続く。
仲間はその道が長く続くことを願ってる。出来れば幸せな道が続くことを。
シャワーから出るお湯で体が温まっていくのが気持ちいい。体中に付いた泥をきれいに落としてシャワー室を出てロッカーへ行く。
着替えの入ったバッグを開け下着を手に取り身に付けていき気付く。
「Tシャツがない。タンクトップはあるけど」
続けて任務があった。
しかもどの任務も雨だった。
泥だらけになりながら追いかけた。
任務の前に回数分の着替えは用意していたのだが天気の悪い日が続き最後の任務である今日、大雨で肌寒くなることはあまり考えていなかった。
「予定では晴れだった」
仕方が無いとタンクトップを着た。汚れた服を袋に入れバッグにしまいながら作業部屋に戻ればパーカーがあったなと思い出す。誰かに会ったら心配されるだろうかと思いながらシャワー室を出ると少し離れたところにある男性用のシャワー室からルートが出てきた。
目が合った。
ものすごい勢いで近づいてきたルートはバッグから綺麗に畳まれて袋に入っているYシャツを出し
「普さん着てください」
「あ、ありがと」
ここは着た方がいいと判断し普はYシャツを着た。
「…」
ぶかぶかだ。
ぶかぶかのYシャツを着て見つめてくる普を見てルートは悶え苦しんでいる。
「私は普さんが変な目で見られて嫌な思いをしてほしくなくて……うぅ」(かわいいと口が裂けても言えない)
とりあえずこの状況をからかわれたら嫌なのでルートの手を引っ張ってコインランドリーみたいな部屋に行き洗濯をする。
待っている間にタンクトップの理由を話すと「予報は晴れでしたし、晴れると暑いですからね」と納得はしていた。
「一人で外出する時はタンクトップやめておいてください」
「涼しいのに」
「簡単に言うとモデルの依頼が「誰かといる時だけにする!!」
適度に引き締まった体に義手…そしてタンクトップ。映画に出てくる役者のような…とにかく注目されてしまう。
「僕の容姿はそんなにいいの?」
「虎二さん似ですがリエンさんに似たところもあります。綺麗とかかっこいいとかハーフだからというのはなんだか違う気がします。バランスの良さはありますね。一番は堂々としている姿、存在感というか言葉で説明するのは難しいです」
「影じいに似てるって言われることもある」
「誰かが必ず普ちゃんを見つけられるようにって願ったから」
見上げると伊藤が立っていた。
「虎二とリエンが生まれてくる赤ちゃんに願ったこと。少し強く叶えられてしまったのかもしれない」
伊藤は少し微笑みながら言い、続けて
「ぶかぶかの服を着ているといつも以上に守ってあげたくなる」
夜、家にて
ルートに返すため今、普ちゃんは乾いたYシャツにアイロンをかけている。
作業部屋に戻ってしばらく経ってからパーカーに着替えていた。男性の服が身体にしっくりきていたのかもしれない。それと同時に男性の服が着こなせるような体格になれないことを悲しんでいるように俺は感じた。
性別の苦しさから救ってあげることはできない。
手術やホルモン注射は痛いし、副作用もあるし、継続するためのお金もかかると聞く。本人はトランスだと当てはまらない部分があると言ってXジェンダーを名乗っている。
自分とはなんなのかという気持ちとずっと戦うのはとても疲れるはずだ。
「普ちゃん」
アイロンがけが終わったところで声を掛けるとこちらを向いて首を傾げている。
「今ある服サイズが合わなかったりしてない?」
「一部合わなくなってきてる」
おいでと手招きすると立ち上がりトコトコと近くまで来た。抱き寄せて頭に手を置き
「再会したときも大きくなってたけどここ数ヶ月でも身長が伸びたね」
「嬉しい」
「義手の調整も近いうちにしてもらおうね。あと服も買いに行こう。」
「うん」
リエンの身長ぐらいまで伸びればいいけれど精神的な面と義手のことを考えると今、成長が止まっていないだけでも喜ばないといけない。
そういえば普とルートの会話を聞いていて気づいたけれど普はタンクトップを着ることに抵抗がないのか。正確には義手と身体の繋ぎ目を見られることを気にしていないのか。影虎さんの義足を側で見ていたから、見られても気にしていない姿を見て気にするほどのことではないと思っているのか。
「腕を見られること怖くない?」
「怖くないよ。何か言われたことはあるけど酷い内容ではなかったし」
「答えられる範囲でいいからどんなことを言われたのか教えてほしい」
優しい声で聞いてくる良貴。本当は傷ついたんじゃないかって心配してくれてる。あの時の言葉に僕は何思ったんだろう?
「事故で失ったのかな」
「義手かっこいい」
「どこのメーカーのだろう?」
「かわいそう」
「あれだけ本当の手みたいに動くんだから腕を失っても困らないね」
「最後の嫌だね」
「嫌ではある。でも」
「失ったことを後悔してない…俺は普ちゃんがそう思い続けられるようにしていきたい」
伊藤は愛と責任を持つこと、普は伊藤と生きることをやめない限り道は続く。
仲間はその道が長く続くことを願ってる。出来れば幸せな道が続くことを。
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