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二十一、若竹と結びキス
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テーブルに「ナガレコとキュウリの炒め餡かけ」「アオリイカの黄金焼き」「ガーリックポテトの洋風お好み焼き」が並んでいる。ナガレコはアワビの孫のような小さな貝で、これを乱切りにしたキュウリと一緒に炒め、ナガレコを煮た煮汁で餡かけにしてあった。「黄金焼き」はイカに卵の黄身を塗りながら焼き、さらにチーズを載せて炙(あぶ)った後、ひと口で食べられるように切ってある。「お好み焼き」は変わっていた。ニンニクとジャガイモを摺り下ろし、ズッキーニや赤ピーマン、黄ピーマン、玉ねぎを入れて平たく焼いたもので、上にセロリの千切りを載せ特製のドレッシングを掛けてあった。確かにタツヨシは腕のよりを普段の数倍かけている。
胸のつかえが取れた亮二は、話が動き出し勢いづくにつれて、箸の方の勢いも急ピッチになった。羽林の勢いも止まらない。うかうかしていると、すっかり二人に食べられてしまいそうだ。陶子はマイ・ペースで慌てず騒がず、ちびり飲んでは時折目星をつけた皿に箸を伸ばす。瑞希は、飲むことや食べることより話の方が気になっていた。
「陶子さん。で、どう大姫が絡んで来るの?」
「頼朝は亡くなる四年前、建久六年二月に鎌倉を発ってるの。政子と大姫、頼家を連れて」
「うん、うん。それから?」
「奈良の東大寺が再建されて供養が行われるので、その結縁(けちえん)のためという名目でね。三月に入って六波羅に着く。数日後、石清水八幡宮に詣でて、そこから東大寺に向かった。畠山重忠と和田義盛の務める先陣百二十名余り、次に頼朝が従える御家人衆百四十名、後陣は梶原景時十数名。『吾妻鏡』には全ての名前が書かれているから、これは嘘ではないでしょうね。ところが、奈良にいたのはたったの四日間」
「後はどこに?」
「京都に二ヶ月もいた」
「何してたんですか、頼朝は」
「政子と一緒に大姫を丹後ノ局に会わせたのよ」
「丹後ノ局!」
イカを頬張りながら、亮二が説明を加えた。
「安達盛長の妻じゃないよ。後白河院に寵愛されてた丹後二品(にほん)の高階(たかしな)栄子のこと。通称が丹後ノ局」
「ああ、びっくりした。その二品って何?」
「親王の位の第二番目に当たる階級のことだよ」
「そうなの。丹後ノ局っていうからてっきり」
「ごめん、ごめん」
陶子がガーリックポテトをひと切れ皿に取り、セロリを巻いて口に入れた。
「うん。これイケる。ほら、ウサギも食べなさい」
腰を浮かして瑞希の皿にガーリックポテトを乗せた。
「紛らわしいから、二品と言うわね。二品は後白河法皇の権威をバックに朝廷で睨みを利かせていたの。土御門通親とペアでね。あ、通親というのは妻が後鳥羽天皇の乳母で、反幕派の後鳥羽上皇とはツーカーの仲。頼朝は親幕派の関白九条兼実と繋がってたんだけれど、この時は挨拶程度であまり会ってないし、お土産も馬二頭だけ。ところが、二品には砂金三百両を銀で作った蒔絵(まきえ)の箱に詰め、白綾三十反(たん)の上に乗せてプレゼントしてるのよ」
「大姫を入内させるための工作なんですね」
「そ。親幕派の九条兼実から二品・通親コンビに乗り換えたってわけ。『建久七年の政変』で九条兼実が追い落とされる前のことよ」
にこにこ笑って時折頷いていた羽林が、ビールのお代わりをした。亮二も追加をしながら、話を補足する。
「頼朝が征夷大将軍に任じられたのが一一九二年の建久三年七月。翌年の五月末に富士の巻狩り。そうしてその二年後に大姫を連れて上洛してる。大姫入内工作は将軍就任直後から行われていたと考えられる。天皇の外戚になるんだ。一朝一夕には事は運ばないからね」
陶子が話を引き取った。
「御家人たちにとって大切なのは関東の自領よ。それを安堵さえしてくれればよかった。つまり、鎌倉幕府が武士の拠りどころとして機能していさえすればよかったのよ。ところが、頼朝は大姫を天皇の后にするため、朝廷内の親幕派を見捨てた。もし大姫が入内すれば、幕府はどうなる? 朝廷内が反幕派で固められたら、幕府そのものの存在が危うくなるでしょ。所詮、頼朝は武士団の担ぎ上げた御輿でしかないの」
「幕府の基盤はほとんど出来上がっていたんだ。それなのに、頼朝のやろうとしていることは幕府を壊す起爆剤になる可能性がある。御輿の代わりは、作ろうと思えば作れるんだ。何も頼朝でなくったっていい」
亮二の言葉で、ようやく瑞希は道筋が見えた。
「そうなの。だから、クーデターだったのね。大姫も可哀想。そんな親の道具にされて」
「全くだわ」
陶子が少し強い語気で言葉を吐いた。
「おまけに入内が決まって上洛する途中で死ぬなんて」
陶子は、苦い薬でも飲むように盃を傾けて飲んだ。
「頼朝は次女の三幡姫も入内しようとしてましたよね、陶子さん」
「そうよ。その三幡姫も………」
「待って。三幡姫の入内工作の途中で頼朝は亡くなったんでしょ。ってことは、またクーデターがあった、としてもおかしくないんじゃありません?」
亮二のジョッキを持つ手が止まった。
「そうだ。そうだよ、瑞希。大姫が亡くなったのは建久八年。翌年に頼朝は三幡姫入内のための上洛寸前にまで漕ぎ着けてる。頼朝の死は第二弾クーデターだった!」
亮二は気が昂ぶって来た。
「橋供養の時、頼朝は死んだ。朝廷への報告は建久十年正月十三日に死去とされてるけど………」
瑞希が亮二の言葉を受けて言った。
「平治の乱で頼朝が殺されることになっていた日と同じ日なんでしょ。わざとそうしたのよ。その方が頼朝に箔(はく)が付くから」
「そうだろうな。死んだのは橋供養の時か、延ばしても数日内。勿体(もったい)をつけて因縁(いんねん)めかせるために、死んだ日を同じにしたんだろうな」
「橋は稲毛重成が新造したのよね」
「うん。そうすると、メンバーは北条がらみになる。ということは………」
「第一弾の時と重なる人たち」
「北条時政、娘婿の稲毛重成、その弟の榛谷重朝も入るだろうな。三浦義澄、甥の和田義盛と畠山重忠………」
「そのほとんどは、後で北条氏に滅ぼされてるわ」
「口封じの意味も込めて、だな」
「もう他にいない? 頼朝が生きてると都合の悪い人は」
「誰かいるかな………」
「あの人は?」
「誰?」
「丹後ノ局の夫」
「安達盛長かい?」
「私は、あると思うんだけど」
「うーん」
亮二は考え込んだ。盛長は頼朝のお手付きとなった丹後ノ局を妻に迎えた。そうして頼朝の御落胤を自分の子として育てた。それだけなら何ということは無いだろう。世話になっている比企ノ尼の望んだことだろうし、万が一頼朝に男子が産まれず、また頼朝自身の身に不幸が起これば源氏を継ぐ子が必要だからだ。その後見人として子を育てることに、盛長は誇りすら抱いていただろう。頼朝は年末年始には欠かさず甘縄の館にやって来る。それは自分の子の成長を見るという目的があったからに違いない。
「女は嫉妬深いって言われるけど、男だってそうじゃない? 亮ちゃん」
「何だよ、急に」
「私ね、もし亮ちゃんの中にあの香澄美さんっていう人が棲んでたら、我慢出来ない。あの人、まだ亮ちゃんのこと好きなのよ。私、解るもの」
「こんな所でそんな話………」
「ううん、聞いて。もし亮ちゃんもあの人のことが忘れられないとしたら、私たち付き合っていけないよね。そうじゃないから、良かったんだけど。そうでしょ?」
「ああ」
「あのね、言いにくいんだけど」
「何が、だい?」
「怒らないで聞いてね」
「うん」
瑞希は断って言おうとしている。亮二は真面目に聞かないといけないと思った。
瑞希はちょっと息を吸って、それから言った。
「亮ちゃん。もし碓井君が何もしなかったら、私とこんなに早く仲良くなれた?」
「それは………。なれたと思うよ」
「嘘。そりゃあ、いつかはなれたかも知れないけど、こんなに急接近じゃなかったでしょ」
「うーん」
「私、碓井君のお陰だと思ってるの。亮ちゃんが私のこと大事に思うようになってくれたのは」
確かにそうだ。碓井が瑞希に交際を申し込んだと聞いた時、いや瑞希にキスをしたと聞いた時、亮二は焦った。瑞希を失いたくないという気持ちが、自分の中で前面に出て来たのだ。
「瑞希の言う通りだよ」
「それって、やっぱり嫉妬じゃないの? 碓井君に対する」
「嫉妬か。碓井にというより、瑞希が碓井に気持ちが移るのが怖かったんだ」
「馬鹿ね。私、そんなに軽かないもの」
「それは、ごめん」
「でね。私たちのことはこれでオシマイ。あー、スッキリした」
案外あっさりと瑞希は二人の話を打ち切った。だが、それは逆に瑞希がかなり長い間そのことに悩んでいたことの裏返しだ。自分を納得させるため、胸の内の袋の中に納めようと努力していた証拠でもある。口に出して言ったことで、瑞希はようやくストンと胸の袋の中に仕舞い込むことが出来たのだ。亮二は瑞希に済まない気がした。
「話を丹後ノ局、頼朝、盛長に戻すね。もし頼朝が丹後ノ局を忘れられず、丹後ノ局も頼朝を大事に思う気持ちを持っていたとしたら、盛長はどう思う?」
頼朝は館に泊まることもあった。だが二人の思いが通じ合っていたとしたら、何事も無く過ごすことが出来ただろうか。何も起こらなかったとしても、心は平穏のままでおれただろうか。丹後ノ局が病に臥せった時、頼朝は雷雨にもかかわらず忍んで来た。病気治癒の祈祷を上げたというが、単なる家臣の妻であればそこまではしない。頼朝と丹後ノ局は惹かれ合っていた。そう考える方が自然じゃないだろうか。もし頼朝と丹後ノ局が情を交わす仲だったとすれば、盛長の心境は複雑を通り越して狂おしく悶えた筈だ。碓井と瑞希が付き合い始めた場合の自分の心を推し測ってみれば、容易に想像はつく。それが嫌だったから、自分は思い切って前に出たんだ。丹後局の心の中に頼朝が棲んでいたとしたら、夫の盛長はどうするだろう………。
「確かにあり得る話だ。盛長は許せなかっただろうな、頼朝を」
「でしょう? 人間の気持ちって厄介なのよ。理性では解っていても気持ちが行動を決めたりすること、あるもの。それからね、気になってることがあるの」
「どんなこと?」
「大姫は本当に病気だったと思う。神経は衰弱してたかも知れないけど、死ぬほどのこと? 三幡姫の病気と死もそう。頼家も病気になっちゃうし。何だか誰かが計算したように、次々と病気になったり死んだりするんだもの。朝廷とか幕府に都合の悪いことがある度に」
「今と違って昔は衛生状態も食料事実もよくない。一旦、流行(はや)り病が発生したら瞬く間に横行するよ。おできが元で死んだ人間もいるくらいだ。だから一概(いちがい)にそうだとは言い切れない」
「でも、なあんか引っ掛かるのよね。幕府も朝廷も陰でコソコソしてるような気がして」
「確かにタイミングは良過ぎるよな。大姫は上洛の途中で京から遣わされた実全法印という修験者に祈り殺されたとも言われてるし、三幡姫も朝廷のお抱え医師の調合した朱砂丸で命を縮めた。もし幕府内の人間が頼朝以外に別ルートを持ってるとすると、まず考えられるのは大江広元。広元の長男は土御門通親の養子だったから繋がりは深い。それに梶原景時だろ。景時の上洛は明らかに後鳥羽上皇との密約によるものだ。そうして北条時政ルート。時政と牧ノ方の末娘は坊門忠清に嫁いでるしね。他にもあったかも知れないな」
二人の尽きそうに無い話を、陶子は黙って聞いていた。
羽林が銚子を取って、陶子に「ほら」と盃を持つよう促した。
盃に酒を注いで貰いながら、陶子は羽林に目配せをした。
「なかなかのコンビでしょ、この二人」
「さすがは『豆タンク』が見込んだだけのことはあるやなかか。葛西君一人だけでは心許(こころもと)無か、思いよったけんど。これあ、二人三脚で頑張って貰わんならん」
「そうなの。この二人なら、放っておいても勝手にお互いを引っ張り合っていけそうでしょ」
陶子は嬉しそうに微笑んだ。その笑みには多少の寂しさのようなものも隠されてはいた。それを見透かされないように、陶子は盃を口に運んでひと息に飲んだ。羽林に盃を渡し、今度は陶子が酒を注ぐ。
「俺はぼちぼち焼酎にしよか思とったとに。ま、お流れば頂戴して、憧れの歴研のマドンナ『豆タンク』に敬意ば表するとするか」
「へええ、初耳だわ。これから『豆タンク』って呼び方やめて、『豆タンク』の前にくっ付けた形容で呼んでくれない?」
「『歴研のマドンナ』つかあ? ぐらしかぁ!」
「何、蛙が空仰いで叫んでるようなその言葉の意味は」
「熊本弁での、『恥ずかしいィ!』って言うとよ、ワハハ」
「体型に似合ってないって、その言葉。ドコモッコの口から出たら、こっちの方こそ『ぐらしかぁ!』だわ」
店の扉が開いて、客が数人入って来た。これから伽武羅屋は本格的に忙しくなりそうだ。
「新三郞」
安達盛長は、馬上から声を掛けた。
「辛い役目を押し付けた。許せ」
頼朝を乗せた網代車(あじろぐるま)を引く牛の側について歩く新三郞は、首を横に振った。
「いいえ。何を仰(おお)されます。私が望んだことです」
「雑色(ぞうしき)として頼朝公に仕えるよう命じなければ、こんなことには巻き込まれなかったろうに」
「楽しいこともございました。建久五年でしたか、東大寺供養のご布施費用進上の送文(おくりぶみ)を携えて京に参りました折などは」
「京に上ったのは、それが初めてだったのか?」
「はい。見るもの聞くもの珍しく、さすがに都は鎌倉とは違うと気が昂ぶりました。同行した同僚、出雲の時沢浜四郎と少々羽目を外しまして」
記憶の断片が新三郞の脳裏を走り、ふと口元がほころんだ。
「お役目を無事済まして気が抜けていたのでしょう。街に繰り出し飲み明かしました」
「飲んだだけではあるまい」
「はい。酔いに任せて女と」
「京女は坂東女と違うたか」
「いえ。私ども雑色ふぜいの相手をしてくれる女は、どこも同じでしょう。ですが都に居るというだけで、どことなく品があるように思えるのですから不思議です。まやかしとは解っているつもりでも、ついつい引き摺られてしまいます」
「騙(だま)されたか」
「京には魔物が棲んでいる。そう思い知らされました。気が付けば女は消えて、懐の金もすっかり消えておりました」
盛長は笑った。しかし、心の底からは笑えなかった。自分はこれまで一度も羽目を外したことは無い。ひたすら真面目に、辛抱しただけだった。盛長は新三郞を、むしろ羨(うらや)ましくさえ思った。
「京女は………」
新三郞が言った。
「静様のようなお方ばかりと思っていたのが間違いでした」
「静御前か。あの方のような女はこの世に二人とはおるまい」
「そのお子を………私は………」
新三郞の言葉が途切れた。頷いて、盛長も黙った。
都落ちする源義経に同行した静御前は、吉野山で義経と別れた。京にいる静の母、磯禅尼(いそのぜんに)の許(もと)へ帰そうという義経の配慮による。この時、静は付けられていた雑色に裏切られ、義経から与えられた金銀さえ奪われた。静は蔵王堂の近くで捕らえられ、京都守護北条時政の預かりとなる。尋問を受けたが、義経一行を匿った吉野山の僧の名前は決して口に出さなかった。義経の行方を問うため、頼朝は静と磯禅尼を鎌倉に呼び寄せた。鎌倉で二人を預かり面倒を見たのが、安達新三郞清常だったのである。
静の白拍子としての名声はすこぶる高い。頼朝は再三舞うように求めた。しかし、静は拒み続けた。静が舞うことにしたのは、北条政子の強い願いがあったからである。鶴岡八幡宮の八幡大菩薩の御前での奉納舞ということで、静も納得した。頼朝から罰せられるのを覚悟で、静は義経思慕の舞を舞う。静の舞には、兄弟でいがみ合う愚かさと愛情の尊さ、頼朝を諫める想いが籠められていた。当然のことながら頼朝の怒りを買った。だが頼朝に反論し、静を貞女と言い切ったのは政子だった。政子は、石橋山の合戦に送り出した後の頼朝を想う我が心と静の心を同じ痛みとして受け止めていたからだ。
静は政子の娘、大姫のために南御堂(勝長寿院・頼朝が父義朝の菩提を弔うために建立)でも舞っている。病気治癒の祈願のため二七日(にしちにち・人の死後十四日目の忌日)の参籠(さんろう)満願の前日のことである。大姫は許婚(いいなずけ)である木曽義仲の子、志水義高を頼朝の命で殺されている。引き裂かれた恋人を想う気持ちは静も大姫も同じだ。大姫のために舞うことを、静は快く引き受けた。
その年、文治二年(一一八六年)閏(うるう)七月二十九日、静は男子を産んだ。女子ならば母親が育てればよいが、男子ならば襁褓(むつき・生まれたばかりの子に着せる産衣)の内にあっても命を絶つべきだという考えから、頼朝は由比ガ浜に捨てることを命じた。政子が助命嘆願をしたが、頼朝は聞き入れなかった。そうして、新三郞がその役を務めることになったのである。
「私がお子を取り上げようとすると、それと察した静様は半狂乱になって抵抗なされます。女とは思えないほどの力です。我が子を渡すまいと、それは必死でした。ひどいとは思いましたが、ご命に背くことは出来ません。背けば、私ばかりではない、静様も磯禅尼様も処罰されるでしょう。隙を見て禅尼様が赤児を引ったくり、私に押し付けました。私は一目散に駆け出しました。由比ガ浜を目指して。後ろは振り向きません。静様の泣き叫ぶ声が、耳の後ろに尾を引いて聞こえます。私は走りました。遮二無二(しゃにむに)走りました。気が付いた時には静様の声に代わって、波の打ち寄せる潮騒と赤児のひくつくような泣き声が耳に届きます。赤児を腕の中であやしながら、浜に下りてゆきました。砂に足を取られながらゆっくり歩くと、安心したのか赤児はようやく泣き止みました。高くかざしてやる。すると、笑いさえするのです。私は海に眼をやりました。きらきらと輝く、静かな海です。何事も無く、大らかに広がる海です。この子をこの海に沈めるのか。そう思うと、涙が出て止まりません。このままこの子を抱いて逃げようか。そんな考えも胸に浮かびます。しかしながら、雑色の私にそんな大それた真似は出来よう筈もありません。私は一歩ずつ海へ近づき、波に足を差し入れました。足首から脛(すね)、膝と水が上がって来ます。腿(もも)から腰のところまで来ると、歩くのが重くなりました。私が赤児を見ると、赤児は何かをねだるような眼をして見返します。眼をつぶりました。耐えられなかったのです。そうして思いを断ち切り、私は………。私は、赤児を抱く自分の両手を海に浸(つ)けたのです」
そこで、新三郞は言葉を切った。
盛長は黙って言葉を待った。
しばらくして、新三郞が再び口を開いた。
「少しの間、赤児はじっとしていました。それから、ひどくもがき始めました。私の腕は震え、その震える手に赤児のもがきが伝わって来ます。私は空を仰ぎ、絞れるだけ絞って声を上げました。それでも堪(こら)え切れず、今度は水の中に顔を突っ込み声にならない声を吐き出したのです。私は自分の息が続かなくなるまで、水の中で叫び続けました。水から顔を上げた時、両手の中の小さなものに命はもうありませんでした。何というひどいことをしたのか、と私は私を責めました。人非人(にんぴにん)とはお前のことだ。他に手立てはいくらでもあったのではないのか。罪人ならばいざ知らず、お前が手を下したのはこの世に生を授かったばかりの命だぞ。お前なんぞ足元にも及ばない将来を駆け抜ける子であったかも知れないのだぞ。それをお前は、いくら命ぜられたからといって、容易(たやす)く葬り去ってしまった。静様の嘆きを、お前は受け止めることが出来るのか。どの面(つら)下げて静様の前に出ようというのか。お前は屑(くず)だ。人間の、屑だ。生きる価値も無い。この子と一所に死ね。死んで、この子と静様に詫びろ………」
新三郞の声は涙でくぐもっていた。だが涙は拭いもせず、新三郞は歩みを速めた。涙を見られたくないのだろう、と盛長は思った。盛長は新三郞と並ばないよう、敢(あ)えて馬の脚を速めなかった。
「私は、死ねませんでした。頼朝公に願い出て、お役を外させて貰いました。静様と禅尼様は京に戻られた、と知ったのはずっと後のことです。御台所様と大姫様が憐れみになられ、大層な金銀宝物を授けられたということも聞きました。私は何もして差し上げることは出来ません。もし出来たとしても、お二人は私をお許しにならなかったでしょう。私に残されたのは、あの由比ガ浜の海の中の赤児の重さです。余りにも軽い、波にさらわれてしまいそうなほどに軽い重さ。その感触が今でもこの両手に残っているのです………」
盛長は、新三郞に掛ける言葉を見つけることが出来なかった。頼朝は大きなことを成し遂げた。代わりに、多くの人間を犠牲にした。こうなって当たり前だ、と思う。自分の行為を正当化しようというのではない。己が為したことには己自身が責を負わなければならないのだ。いずれ自分もこの報いを受ける時が来るだろう。その時にはそれを甘んじて受ける気概だけは持っていたい。
「新三郞、儂はな、出家しようと思うている」
「仏門に入られるのですか」
「頼朝公はじき亡くなられる。菩提を弔わなければならん」
盛長は前方の空を見上げた。少し雲が厚くなった空に茜色が差し掛かっている。
「もうすぐ藤沢だ。鎌倉に着く頃には日が暮れる。少し急ぐか」
「承知致しました」
新三郞が牛を結わえた軛(くびき)に手を掛けて引き、牛の足を速めさせた。頼朝を乗せた網代車はひと揺れし、車輪を軋(きし)ませながら鎌倉へ続く道を進んだ。
四人のテーブルに、締めの料理が出された。清(す)まし汁だった。椀の中の具はキスゴと筍と若芽。キスゴは尾を切り落とさないように三枚におろし、中骨を外して結んである。立て塩に浸けた後、片栗粉をまぶして熱湯でサッとゆがいて汁に浮かせてあった。筍は薄く切った若竹で、出始めたばかりのものだ。若芽と筍は春を告げる旬の食材である。亮二の卒業祝いに相応(ふさわ)しい一品だった。
陶子がひと口、汁を啜った。
「美味しい!」
陶子の賛美に誘われ、三人も椀に手を伸ばした。
「うん。旨か!」
羽林も舌鼓を打つ。
「この魚、綺麗!」
瑞希は箸をつける前に感心した。
「結びキスだよ。お祝い事があると、タツヨシさん、決まってこの料理を出すんだ」
亮二は長い間アルバイトをしていたから、タツヨシの思い入れがよく解る。
「『結び』は終わりを意味することでもあるけど、願を掛けたり誓いを立てたりする時にも使われるし、お祝い事には欠かせないからね」
「そういえばそうね」
瑞希は亮二の言葉を聞いて頷いてから、椀に口をつけた。
「うん。美味しい!」
陶子がキスを箸に挟んで持ち上げる。
「なかなか心憎いことしちゃって。お正月料理に『結び昆布のお煮しめ』ってあるじゃない。あれはお目出たいから。昔は『結び松』といって神様に願掛けしたしるしに松の小枝を結んでたのよ。それから水引ね。ほら、結婚祝いやお葬儀の袋を結ぶ。慶事の時と弔事の時は水引の色は変えるけど」
「人生の節目ん時には『結び』ばするとよ」
羽林は陶子の「結びキス」鑑賞を横目に、自分の「結びキス」はすでに口の中に入れていた。
「それに『結びの神』いうこともあるけんな」
「そうね」
陶子は充分鑑賞したらしく、「結びキス」をひと口、並びのいい歯で噛んだ。
「ここで卒業祝いするのも、何かの縁結びだわ。新しい出発を祝いましょ」
「若竹の我らに乾杯ばするか」
「一人だけトウの立った太い竹が混ざってるけど」
「なん? 俺のことかぁ? それを言うとなら『豆タンク』、お前も一蓮托生じゃなかか?」
「あら、失礼な。『歴研のマドンナ』に向かって」
「あれは失言や」
「私が執念深いの知ってるでしょ」
「キツかおなごじゃ、堪らん」
羽林は陶子の反撃にタジタジとなった。
亮二も瑞希も笑った。今夜結ばれた縁がこれからどんな糸を縒り、紐を組んでいくのか誰にも解らない。だが、今夜のこの時を繋いだ結び目を、四人の誰も忘れることは無いだろう。もちろん、素晴らしいこの夜を演出してくれたタツヨシのことも忘れるわけにはいかない。四人は今、彼に感謝の一杯を捧げている。羽林同様、若竹というには少々トウが立ってはいるけれど。
─ 完 ─
胸のつかえが取れた亮二は、話が動き出し勢いづくにつれて、箸の方の勢いも急ピッチになった。羽林の勢いも止まらない。うかうかしていると、すっかり二人に食べられてしまいそうだ。陶子はマイ・ペースで慌てず騒がず、ちびり飲んでは時折目星をつけた皿に箸を伸ばす。瑞希は、飲むことや食べることより話の方が気になっていた。
「陶子さん。で、どう大姫が絡んで来るの?」
「頼朝は亡くなる四年前、建久六年二月に鎌倉を発ってるの。政子と大姫、頼家を連れて」
「うん、うん。それから?」
「奈良の東大寺が再建されて供養が行われるので、その結縁(けちえん)のためという名目でね。三月に入って六波羅に着く。数日後、石清水八幡宮に詣でて、そこから東大寺に向かった。畠山重忠と和田義盛の務める先陣百二十名余り、次に頼朝が従える御家人衆百四十名、後陣は梶原景時十数名。『吾妻鏡』には全ての名前が書かれているから、これは嘘ではないでしょうね。ところが、奈良にいたのはたったの四日間」
「後はどこに?」
「京都に二ヶ月もいた」
「何してたんですか、頼朝は」
「政子と一緒に大姫を丹後ノ局に会わせたのよ」
「丹後ノ局!」
イカを頬張りながら、亮二が説明を加えた。
「安達盛長の妻じゃないよ。後白河院に寵愛されてた丹後二品(にほん)の高階(たかしな)栄子のこと。通称が丹後ノ局」
「ああ、びっくりした。その二品って何?」
「親王の位の第二番目に当たる階級のことだよ」
「そうなの。丹後ノ局っていうからてっきり」
「ごめん、ごめん」
陶子がガーリックポテトをひと切れ皿に取り、セロリを巻いて口に入れた。
「うん。これイケる。ほら、ウサギも食べなさい」
腰を浮かして瑞希の皿にガーリックポテトを乗せた。
「紛らわしいから、二品と言うわね。二品は後白河法皇の権威をバックに朝廷で睨みを利かせていたの。土御門通親とペアでね。あ、通親というのは妻が後鳥羽天皇の乳母で、反幕派の後鳥羽上皇とはツーカーの仲。頼朝は親幕派の関白九条兼実と繋がってたんだけれど、この時は挨拶程度であまり会ってないし、お土産も馬二頭だけ。ところが、二品には砂金三百両を銀で作った蒔絵(まきえ)の箱に詰め、白綾三十反(たん)の上に乗せてプレゼントしてるのよ」
「大姫を入内させるための工作なんですね」
「そ。親幕派の九条兼実から二品・通親コンビに乗り換えたってわけ。『建久七年の政変』で九条兼実が追い落とされる前のことよ」
にこにこ笑って時折頷いていた羽林が、ビールのお代わりをした。亮二も追加をしながら、話を補足する。
「頼朝が征夷大将軍に任じられたのが一一九二年の建久三年七月。翌年の五月末に富士の巻狩り。そうしてその二年後に大姫を連れて上洛してる。大姫入内工作は将軍就任直後から行われていたと考えられる。天皇の外戚になるんだ。一朝一夕には事は運ばないからね」
陶子が話を引き取った。
「御家人たちにとって大切なのは関東の自領よ。それを安堵さえしてくれればよかった。つまり、鎌倉幕府が武士の拠りどころとして機能していさえすればよかったのよ。ところが、頼朝は大姫を天皇の后にするため、朝廷内の親幕派を見捨てた。もし大姫が入内すれば、幕府はどうなる? 朝廷内が反幕派で固められたら、幕府そのものの存在が危うくなるでしょ。所詮、頼朝は武士団の担ぎ上げた御輿でしかないの」
「幕府の基盤はほとんど出来上がっていたんだ。それなのに、頼朝のやろうとしていることは幕府を壊す起爆剤になる可能性がある。御輿の代わりは、作ろうと思えば作れるんだ。何も頼朝でなくったっていい」
亮二の言葉で、ようやく瑞希は道筋が見えた。
「そうなの。だから、クーデターだったのね。大姫も可哀想。そんな親の道具にされて」
「全くだわ」
陶子が少し強い語気で言葉を吐いた。
「おまけに入内が決まって上洛する途中で死ぬなんて」
陶子は、苦い薬でも飲むように盃を傾けて飲んだ。
「頼朝は次女の三幡姫も入内しようとしてましたよね、陶子さん」
「そうよ。その三幡姫も………」
「待って。三幡姫の入内工作の途中で頼朝は亡くなったんでしょ。ってことは、またクーデターがあった、としてもおかしくないんじゃありません?」
亮二のジョッキを持つ手が止まった。
「そうだ。そうだよ、瑞希。大姫が亡くなったのは建久八年。翌年に頼朝は三幡姫入内のための上洛寸前にまで漕ぎ着けてる。頼朝の死は第二弾クーデターだった!」
亮二は気が昂ぶって来た。
「橋供養の時、頼朝は死んだ。朝廷への報告は建久十年正月十三日に死去とされてるけど………」
瑞希が亮二の言葉を受けて言った。
「平治の乱で頼朝が殺されることになっていた日と同じ日なんでしょ。わざとそうしたのよ。その方が頼朝に箔(はく)が付くから」
「そうだろうな。死んだのは橋供養の時か、延ばしても数日内。勿体(もったい)をつけて因縁(いんねん)めかせるために、死んだ日を同じにしたんだろうな」
「橋は稲毛重成が新造したのよね」
「うん。そうすると、メンバーは北条がらみになる。ということは………」
「第一弾の時と重なる人たち」
「北条時政、娘婿の稲毛重成、その弟の榛谷重朝も入るだろうな。三浦義澄、甥の和田義盛と畠山重忠………」
「そのほとんどは、後で北条氏に滅ぼされてるわ」
「口封じの意味も込めて、だな」
「もう他にいない? 頼朝が生きてると都合の悪い人は」
「誰かいるかな………」
「あの人は?」
「誰?」
「丹後ノ局の夫」
「安達盛長かい?」
「私は、あると思うんだけど」
「うーん」
亮二は考え込んだ。盛長は頼朝のお手付きとなった丹後ノ局を妻に迎えた。そうして頼朝の御落胤を自分の子として育てた。それだけなら何ということは無いだろう。世話になっている比企ノ尼の望んだことだろうし、万が一頼朝に男子が産まれず、また頼朝自身の身に不幸が起これば源氏を継ぐ子が必要だからだ。その後見人として子を育てることに、盛長は誇りすら抱いていただろう。頼朝は年末年始には欠かさず甘縄の館にやって来る。それは自分の子の成長を見るという目的があったからに違いない。
「女は嫉妬深いって言われるけど、男だってそうじゃない? 亮ちゃん」
「何だよ、急に」
「私ね、もし亮ちゃんの中にあの香澄美さんっていう人が棲んでたら、我慢出来ない。あの人、まだ亮ちゃんのこと好きなのよ。私、解るもの」
「こんな所でそんな話………」
「ううん、聞いて。もし亮ちゃんもあの人のことが忘れられないとしたら、私たち付き合っていけないよね。そうじゃないから、良かったんだけど。そうでしょ?」
「ああ」
「あのね、言いにくいんだけど」
「何が、だい?」
「怒らないで聞いてね」
「うん」
瑞希は断って言おうとしている。亮二は真面目に聞かないといけないと思った。
瑞希はちょっと息を吸って、それから言った。
「亮ちゃん。もし碓井君が何もしなかったら、私とこんなに早く仲良くなれた?」
「それは………。なれたと思うよ」
「嘘。そりゃあ、いつかはなれたかも知れないけど、こんなに急接近じゃなかったでしょ」
「うーん」
「私、碓井君のお陰だと思ってるの。亮ちゃんが私のこと大事に思うようになってくれたのは」
確かにそうだ。碓井が瑞希に交際を申し込んだと聞いた時、いや瑞希にキスをしたと聞いた時、亮二は焦った。瑞希を失いたくないという気持ちが、自分の中で前面に出て来たのだ。
「瑞希の言う通りだよ」
「それって、やっぱり嫉妬じゃないの? 碓井君に対する」
「嫉妬か。碓井にというより、瑞希が碓井に気持ちが移るのが怖かったんだ」
「馬鹿ね。私、そんなに軽かないもの」
「それは、ごめん」
「でね。私たちのことはこれでオシマイ。あー、スッキリした」
案外あっさりと瑞希は二人の話を打ち切った。だが、それは逆に瑞希がかなり長い間そのことに悩んでいたことの裏返しだ。自分を納得させるため、胸の内の袋の中に納めようと努力していた証拠でもある。口に出して言ったことで、瑞希はようやくストンと胸の袋の中に仕舞い込むことが出来たのだ。亮二は瑞希に済まない気がした。
「話を丹後ノ局、頼朝、盛長に戻すね。もし頼朝が丹後ノ局を忘れられず、丹後ノ局も頼朝を大事に思う気持ちを持っていたとしたら、盛長はどう思う?」
頼朝は館に泊まることもあった。だが二人の思いが通じ合っていたとしたら、何事も無く過ごすことが出来ただろうか。何も起こらなかったとしても、心は平穏のままでおれただろうか。丹後ノ局が病に臥せった時、頼朝は雷雨にもかかわらず忍んで来た。病気治癒の祈祷を上げたというが、単なる家臣の妻であればそこまではしない。頼朝と丹後ノ局は惹かれ合っていた。そう考える方が自然じゃないだろうか。もし頼朝と丹後ノ局が情を交わす仲だったとすれば、盛長の心境は複雑を通り越して狂おしく悶えた筈だ。碓井と瑞希が付き合い始めた場合の自分の心を推し測ってみれば、容易に想像はつく。それが嫌だったから、自分は思い切って前に出たんだ。丹後局の心の中に頼朝が棲んでいたとしたら、夫の盛長はどうするだろう………。
「確かにあり得る話だ。盛長は許せなかっただろうな、頼朝を」
「でしょう? 人間の気持ちって厄介なのよ。理性では解っていても気持ちが行動を決めたりすること、あるもの。それからね、気になってることがあるの」
「どんなこと?」
「大姫は本当に病気だったと思う。神経は衰弱してたかも知れないけど、死ぬほどのこと? 三幡姫の病気と死もそう。頼家も病気になっちゃうし。何だか誰かが計算したように、次々と病気になったり死んだりするんだもの。朝廷とか幕府に都合の悪いことがある度に」
「今と違って昔は衛生状態も食料事実もよくない。一旦、流行(はや)り病が発生したら瞬く間に横行するよ。おできが元で死んだ人間もいるくらいだ。だから一概(いちがい)にそうだとは言い切れない」
「でも、なあんか引っ掛かるのよね。幕府も朝廷も陰でコソコソしてるような気がして」
「確かにタイミングは良過ぎるよな。大姫は上洛の途中で京から遣わされた実全法印という修験者に祈り殺されたとも言われてるし、三幡姫も朝廷のお抱え医師の調合した朱砂丸で命を縮めた。もし幕府内の人間が頼朝以外に別ルートを持ってるとすると、まず考えられるのは大江広元。広元の長男は土御門通親の養子だったから繋がりは深い。それに梶原景時だろ。景時の上洛は明らかに後鳥羽上皇との密約によるものだ。そうして北条時政ルート。時政と牧ノ方の末娘は坊門忠清に嫁いでるしね。他にもあったかも知れないな」
二人の尽きそうに無い話を、陶子は黙って聞いていた。
羽林が銚子を取って、陶子に「ほら」と盃を持つよう促した。
盃に酒を注いで貰いながら、陶子は羽林に目配せをした。
「なかなかのコンビでしょ、この二人」
「さすがは『豆タンク』が見込んだだけのことはあるやなかか。葛西君一人だけでは心許(こころもと)無か、思いよったけんど。これあ、二人三脚で頑張って貰わんならん」
「そうなの。この二人なら、放っておいても勝手にお互いを引っ張り合っていけそうでしょ」
陶子は嬉しそうに微笑んだ。その笑みには多少の寂しさのようなものも隠されてはいた。それを見透かされないように、陶子は盃を口に運んでひと息に飲んだ。羽林に盃を渡し、今度は陶子が酒を注ぐ。
「俺はぼちぼち焼酎にしよか思とったとに。ま、お流れば頂戴して、憧れの歴研のマドンナ『豆タンク』に敬意ば表するとするか」
「へええ、初耳だわ。これから『豆タンク』って呼び方やめて、『豆タンク』の前にくっ付けた形容で呼んでくれない?」
「『歴研のマドンナ』つかあ? ぐらしかぁ!」
「何、蛙が空仰いで叫んでるようなその言葉の意味は」
「熊本弁での、『恥ずかしいィ!』って言うとよ、ワハハ」
「体型に似合ってないって、その言葉。ドコモッコの口から出たら、こっちの方こそ『ぐらしかぁ!』だわ」
店の扉が開いて、客が数人入って来た。これから伽武羅屋は本格的に忙しくなりそうだ。
「新三郞」
安達盛長は、馬上から声を掛けた。
「辛い役目を押し付けた。許せ」
頼朝を乗せた網代車(あじろぐるま)を引く牛の側について歩く新三郞は、首を横に振った。
「いいえ。何を仰(おお)されます。私が望んだことです」
「雑色(ぞうしき)として頼朝公に仕えるよう命じなければ、こんなことには巻き込まれなかったろうに」
「楽しいこともございました。建久五年でしたか、東大寺供養のご布施費用進上の送文(おくりぶみ)を携えて京に参りました折などは」
「京に上ったのは、それが初めてだったのか?」
「はい。見るもの聞くもの珍しく、さすがに都は鎌倉とは違うと気が昂ぶりました。同行した同僚、出雲の時沢浜四郎と少々羽目を外しまして」
記憶の断片が新三郞の脳裏を走り、ふと口元がほころんだ。
「お役目を無事済まして気が抜けていたのでしょう。街に繰り出し飲み明かしました」
「飲んだだけではあるまい」
「はい。酔いに任せて女と」
「京女は坂東女と違うたか」
「いえ。私ども雑色ふぜいの相手をしてくれる女は、どこも同じでしょう。ですが都に居るというだけで、どことなく品があるように思えるのですから不思議です。まやかしとは解っているつもりでも、ついつい引き摺られてしまいます」
「騙(だま)されたか」
「京には魔物が棲んでいる。そう思い知らされました。気が付けば女は消えて、懐の金もすっかり消えておりました」
盛長は笑った。しかし、心の底からは笑えなかった。自分はこれまで一度も羽目を外したことは無い。ひたすら真面目に、辛抱しただけだった。盛長は新三郞を、むしろ羨(うらや)ましくさえ思った。
「京女は………」
新三郞が言った。
「静様のようなお方ばかりと思っていたのが間違いでした」
「静御前か。あの方のような女はこの世に二人とはおるまい」
「そのお子を………私は………」
新三郞の言葉が途切れた。頷いて、盛長も黙った。
都落ちする源義経に同行した静御前は、吉野山で義経と別れた。京にいる静の母、磯禅尼(いそのぜんに)の許(もと)へ帰そうという義経の配慮による。この時、静は付けられていた雑色に裏切られ、義経から与えられた金銀さえ奪われた。静は蔵王堂の近くで捕らえられ、京都守護北条時政の預かりとなる。尋問を受けたが、義経一行を匿った吉野山の僧の名前は決して口に出さなかった。義経の行方を問うため、頼朝は静と磯禅尼を鎌倉に呼び寄せた。鎌倉で二人を預かり面倒を見たのが、安達新三郞清常だったのである。
静の白拍子としての名声はすこぶる高い。頼朝は再三舞うように求めた。しかし、静は拒み続けた。静が舞うことにしたのは、北条政子の強い願いがあったからである。鶴岡八幡宮の八幡大菩薩の御前での奉納舞ということで、静も納得した。頼朝から罰せられるのを覚悟で、静は義経思慕の舞を舞う。静の舞には、兄弟でいがみ合う愚かさと愛情の尊さ、頼朝を諫める想いが籠められていた。当然のことながら頼朝の怒りを買った。だが頼朝に反論し、静を貞女と言い切ったのは政子だった。政子は、石橋山の合戦に送り出した後の頼朝を想う我が心と静の心を同じ痛みとして受け止めていたからだ。
静は政子の娘、大姫のために南御堂(勝長寿院・頼朝が父義朝の菩提を弔うために建立)でも舞っている。病気治癒の祈願のため二七日(にしちにち・人の死後十四日目の忌日)の参籠(さんろう)満願の前日のことである。大姫は許婚(いいなずけ)である木曽義仲の子、志水義高を頼朝の命で殺されている。引き裂かれた恋人を想う気持ちは静も大姫も同じだ。大姫のために舞うことを、静は快く引き受けた。
その年、文治二年(一一八六年)閏(うるう)七月二十九日、静は男子を産んだ。女子ならば母親が育てればよいが、男子ならば襁褓(むつき・生まれたばかりの子に着せる産衣)の内にあっても命を絶つべきだという考えから、頼朝は由比ガ浜に捨てることを命じた。政子が助命嘆願をしたが、頼朝は聞き入れなかった。そうして、新三郞がその役を務めることになったのである。
「私がお子を取り上げようとすると、それと察した静様は半狂乱になって抵抗なされます。女とは思えないほどの力です。我が子を渡すまいと、それは必死でした。ひどいとは思いましたが、ご命に背くことは出来ません。背けば、私ばかりではない、静様も磯禅尼様も処罰されるでしょう。隙を見て禅尼様が赤児を引ったくり、私に押し付けました。私は一目散に駆け出しました。由比ガ浜を目指して。後ろは振り向きません。静様の泣き叫ぶ声が、耳の後ろに尾を引いて聞こえます。私は走りました。遮二無二(しゃにむに)走りました。気が付いた時には静様の声に代わって、波の打ち寄せる潮騒と赤児のひくつくような泣き声が耳に届きます。赤児を腕の中であやしながら、浜に下りてゆきました。砂に足を取られながらゆっくり歩くと、安心したのか赤児はようやく泣き止みました。高くかざしてやる。すると、笑いさえするのです。私は海に眼をやりました。きらきらと輝く、静かな海です。何事も無く、大らかに広がる海です。この子をこの海に沈めるのか。そう思うと、涙が出て止まりません。このままこの子を抱いて逃げようか。そんな考えも胸に浮かびます。しかしながら、雑色の私にそんな大それた真似は出来よう筈もありません。私は一歩ずつ海へ近づき、波に足を差し入れました。足首から脛(すね)、膝と水が上がって来ます。腿(もも)から腰のところまで来ると、歩くのが重くなりました。私が赤児を見ると、赤児は何かをねだるような眼をして見返します。眼をつぶりました。耐えられなかったのです。そうして思いを断ち切り、私は………。私は、赤児を抱く自分の両手を海に浸(つ)けたのです」
そこで、新三郞は言葉を切った。
盛長は黙って言葉を待った。
しばらくして、新三郞が再び口を開いた。
「少しの間、赤児はじっとしていました。それから、ひどくもがき始めました。私の腕は震え、その震える手に赤児のもがきが伝わって来ます。私は空を仰ぎ、絞れるだけ絞って声を上げました。それでも堪(こら)え切れず、今度は水の中に顔を突っ込み声にならない声を吐き出したのです。私は自分の息が続かなくなるまで、水の中で叫び続けました。水から顔を上げた時、両手の中の小さなものに命はもうありませんでした。何というひどいことをしたのか、と私は私を責めました。人非人(にんぴにん)とはお前のことだ。他に手立てはいくらでもあったのではないのか。罪人ならばいざ知らず、お前が手を下したのはこの世に生を授かったばかりの命だぞ。お前なんぞ足元にも及ばない将来を駆け抜ける子であったかも知れないのだぞ。それをお前は、いくら命ぜられたからといって、容易(たやす)く葬り去ってしまった。静様の嘆きを、お前は受け止めることが出来るのか。どの面(つら)下げて静様の前に出ようというのか。お前は屑(くず)だ。人間の、屑だ。生きる価値も無い。この子と一所に死ね。死んで、この子と静様に詫びろ………」
新三郞の声は涙でくぐもっていた。だが涙は拭いもせず、新三郞は歩みを速めた。涙を見られたくないのだろう、と盛長は思った。盛長は新三郞と並ばないよう、敢(あ)えて馬の脚を速めなかった。
「私は、死ねませんでした。頼朝公に願い出て、お役を外させて貰いました。静様と禅尼様は京に戻られた、と知ったのはずっと後のことです。御台所様と大姫様が憐れみになられ、大層な金銀宝物を授けられたということも聞きました。私は何もして差し上げることは出来ません。もし出来たとしても、お二人は私をお許しにならなかったでしょう。私に残されたのは、あの由比ガ浜の海の中の赤児の重さです。余りにも軽い、波にさらわれてしまいそうなほどに軽い重さ。その感触が今でもこの両手に残っているのです………」
盛長は、新三郞に掛ける言葉を見つけることが出来なかった。頼朝は大きなことを成し遂げた。代わりに、多くの人間を犠牲にした。こうなって当たり前だ、と思う。自分の行為を正当化しようというのではない。己が為したことには己自身が責を負わなければならないのだ。いずれ自分もこの報いを受ける時が来るだろう。その時にはそれを甘んじて受ける気概だけは持っていたい。
「新三郞、儂はな、出家しようと思うている」
「仏門に入られるのですか」
「頼朝公はじき亡くなられる。菩提を弔わなければならん」
盛長は前方の空を見上げた。少し雲が厚くなった空に茜色が差し掛かっている。
「もうすぐ藤沢だ。鎌倉に着く頃には日が暮れる。少し急ぐか」
「承知致しました」
新三郞が牛を結わえた軛(くびき)に手を掛けて引き、牛の足を速めさせた。頼朝を乗せた網代車はひと揺れし、車輪を軋(きし)ませながら鎌倉へ続く道を進んだ。
四人のテーブルに、締めの料理が出された。清(す)まし汁だった。椀の中の具はキスゴと筍と若芽。キスゴは尾を切り落とさないように三枚におろし、中骨を外して結んである。立て塩に浸けた後、片栗粉をまぶして熱湯でサッとゆがいて汁に浮かせてあった。筍は薄く切った若竹で、出始めたばかりのものだ。若芽と筍は春を告げる旬の食材である。亮二の卒業祝いに相応(ふさわ)しい一品だった。
陶子がひと口、汁を啜った。
「美味しい!」
陶子の賛美に誘われ、三人も椀に手を伸ばした。
「うん。旨か!」
羽林も舌鼓を打つ。
「この魚、綺麗!」
瑞希は箸をつける前に感心した。
「結びキスだよ。お祝い事があると、タツヨシさん、決まってこの料理を出すんだ」
亮二は長い間アルバイトをしていたから、タツヨシの思い入れがよく解る。
「『結び』は終わりを意味することでもあるけど、願を掛けたり誓いを立てたりする時にも使われるし、お祝い事には欠かせないからね」
「そういえばそうね」
瑞希は亮二の言葉を聞いて頷いてから、椀に口をつけた。
「うん。美味しい!」
陶子がキスを箸に挟んで持ち上げる。
「なかなか心憎いことしちゃって。お正月料理に『結び昆布のお煮しめ』ってあるじゃない。あれはお目出たいから。昔は『結び松』といって神様に願掛けしたしるしに松の小枝を結んでたのよ。それから水引ね。ほら、結婚祝いやお葬儀の袋を結ぶ。慶事の時と弔事の時は水引の色は変えるけど」
「人生の節目ん時には『結び』ばするとよ」
羽林は陶子の「結びキス」鑑賞を横目に、自分の「結びキス」はすでに口の中に入れていた。
「それに『結びの神』いうこともあるけんな」
「そうね」
陶子は充分鑑賞したらしく、「結びキス」をひと口、並びのいい歯で噛んだ。
「ここで卒業祝いするのも、何かの縁結びだわ。新しい出発を祝いましょ」
「若竹の我らに乾杯ばするか」
「一人だけトウの立った太い竹が混ざってるけど」
「なん? 俺のことかぁ? それを言うとなら『豆タンク』、お前も一蓮托生じゃなかか?」
「あら、失礼な。『歴研のマドンナ』に向かって」
「あれは失言や」
「私が執念深いの知ってるでしょ」
「キツかおなごじゃ、堪らん」
羽林は陶子の反撃にタジタジとなった。
亮二も瑞希も笑った。今夜結ばれた縁がこれからどんな糸を縒り、紐を組んでいくのか誰にも解らない。だが、今夜のこの時を繋いだ結び目を、四人の誰も忘れることは無いだろう。もちろん、素晴らしいこの夜を演出してくれたタツヨシのことも忘れるわけにはいかない。四人は今、彼に感謝の一杯を捧げている。羽林同様、若竹というには少々トウが立ってはいるけれど。
─ 完 ─
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有り難うございます。
私は歴史が好きで、特に教科書には出て来ない生身の人間の生き様に惹かれます。歴史はそういう人の上に成り立っているのだと思います。
これまでに書いたものを見直し整理しながら、投稿しています。共感を得られるところがあれば嬉しく思います。引き続き読んで戴ければ幸いです。