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第一部 翠河の国の姫、押しが強すぎる
番外編① BL時空のモブサムライ
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僕の名は高橋誠。
数学と物理が得意で、日本史を嗜んでいる。
いわゆるオタクと呼ばれる人種で、高校でもボッチ確定。そのはずだった。
憂鬱な昼休み。僕は、まだ弁当を鞄から出さずに、教室の様子を伺っていた。雰囲気と場合によっては、便所飯もあり得る。それが陰キャの宿命なのだ。
そんな時、自分と似た状況のクラスメイトに気がついた。イヤホンをして音楽を聴くふりをしながら、横目で周囲の様子を伺っている。一目で同類だと直感した。
じっと見つめすぎたせいか、彼がこちらを向いて、目を見開いた。そのまま立ち上がって、こちらへ向かってくる。色白で、背は少し高いほうだと分かった。
彼は無言で自分の鞄を持ち上げてみせた。
ぶら下がっているのは、とあるソーシャルゲームのマスコットキャラクターのアクリルキーホルダー。
僕も鞄を持ち上げて、同じゲームのアクリルキーホルダーを見せた。
次の瞬間、しっかりと握手を交わしていた。
それが、心の友、町上郁朗との運命の邂逅だった。
「郁朗氏、最近なんかやたら周藤に絡まれてるよな。何かしたのか?」
「知らねーよ。何もしてねーよ」
実のところ、入学して早い時期から周藤智哉が郁朗を目で追っているのを知っていた。
理由は分からないが、いつも熱い視線を郁朗に注いでいる。郁朗自身は気付いていなかったようだ。
――あの時までは。
いつもと変わらない朝だったはずが、郁朗が周藤に追いかけられて教室を飛び出していった。
ホームルーム後に戻ってきた時には、二人の距離がやけに近かった。
郁朗は何も言わなかったが、それから周藤がどんどん近づいてくるようになった。
ひとまず、郁朗は嫌がっているようだ。貞操が危険で危ない。それなら、身を挺して助けるのが心友だろう。
でも、周藤智哉は強敵だった。
イケメンで、陽キャだ。しかも、人当たりが良くて結構いい奴だった。
陰キャの僕が勝てる要素は、成績くらいしかない。
お腹が痛い。
元々胃腸の弱い僕は、神経性胃腸炎で数日間、学校を休んでしまった。
自宅でベッドとトイレを行き来しながら考えた。
あの陽キャに対抗するには、何か強い仮面を纏うしかない。
ロールプレイと思えば、僕にもできるだろう。
そうして、僕は「サムライ」という仮面を被った。
一人称を「某」にし、語尾に「ござる」をつける。それだけでも、自分を守る鎧になり、イケメン周藤の前でも上手く話せるようになった。
最近では「智哉氏」と親しく呼ぶようになり……途中で方向性を間違えた気がする。
間違ったといえば、最初の「郁朗は嫌がっている」との読みも間違っていたかもしれない。
見てしまったのだ、二人が手を繋いでいるところを。楽しそうにフォークダンスを踊っているところを。人気のない場所で肩を寄せ合っているところを!
前提条件が覆されてしまった。
郁朗と智哉、二人はつまりBLな関係ということなのか?
つまり、二人はそういう関係で……。
理解した。
某はBL時空へ異世界転生してしまったのだ。モブキャラとして。
こうなったら軌道修正するしかあるまい。
二人の恋路を邪魔せず、むしろ応援する位置に立つのだ。
それが、BL時空のモブサムライであるところの、某の立ち位置にござる。
数学と物理が得意で、日本史を嗜んでいる。
いわゆるオタクと呼ばれる人種で、高校でもボッチ確定。そのはずだった。
憂鬱な昼休み。僕は、まだ弁当を鞄から出さずに、教室の様子を伺っていた。雰囲気と場合によっては、便所飯もあり得る。それが陰キャの宿命なのだ。
そんな時、自分と似た状況のクラスメイトに気がついた。イヤホンをして音楽を聴くふりをしながら、横目で周囲の様子を伺っている。一目で同類だと直感した。
じっと見つめすぎたせいか、彼がこちらを向いて、目を見開いた。そのまま立ち上がって、こちらへ向かってくる。色白で、背は少し高いほうだと分かった。
彼は無言で自分の鞄を持ち上げてみせた。
ぶら下がっているのは、とあるソーシャルゲームのマスコットキャラクターのアクリルキーホルダー。
僕も鞄を持ち上げて、同じゲームのアクリルキーホルダーを見せた。
次の瞬間、しっかりと握手を交わしていた。
それが、心の友、町上郁朗との運命の邂逅だった。
「郁朗氏、最近なんかやたら周藤に絡まれてるよな。何かしたのか?」
「知らねーよ。何もしてねーよ」
実のところ、入学して早い時期から周藤智哉が郁朗を目で追っているのを知っていた。
理由は分からないが、いつも熱い視線を郁朗に注いでいる。郁朗自身は気付いていなかったようだ。
――あの時までは。
いつもと変わらない朝だったはずが、郁朗が周藤に追いかけられて教室を飛び出していった。
ホームルーム後に戻ってきた時には、二人の距離がやけに近かった。
郁朗は何も言わなかったが、それから周藤がどんどん近づいてくるようになった。
ひとまず、郁朗は嫌がっているようだ。貞操が危険で危ない。それなら、身を挺して助けるのが心友だろう。
でも、周藤智哉は強敵だった。
イケメンで、陽キャだ。しかも、人当たりが良くて結構いい奴だった。
陰キャの僕が勝てる要素は、成績くらいしかない。
お腹が痛い。
元々胃腸の弱い僕は、神経性胃腸炎で数日間、学校を休んでしまった。
自宅でベッドとトイレを行き来しながら考えた。
あの陽キャに対抗するには、何か強い仮面を纏うしかない。
ロールプレイと思えば、僕にもできるだろう。
そうして、僕は「サムライ」という仮面を被った。
一人称を「某」にし、語尾に「ござる」をつける。それだけでも、自分を守る鎧になり、イケメン周藤の前でも上手く話せるようになった。
最近では「智哉氏」と親しく呼ぶようになり……途中で方向性を間違えた気がする。
間違ったといえば、最初の「郁朗は嫌がっている」との読みも間違っていたかもしれない。
見てしまったのだ、二人が手を繋いでいるところを。楽しそうにフォークダンスを踊っているところを。人気のない場所で肩を寄せ合っているところを!
前提条件が覆されてしまった。
郁朗と智哉、二人はつまりBLな関係ということなのか?
つまり、二人はそういう関係で……。
理解した。
某はBL時空へ異世界転生してしまったのだ。モブキャラとして。
こうなったら軌道修正するしかあるまい。
二人の恋路を邪魔せず、むしろ応援する位置に立つのだ。
それが、BL時空のモブサムライであるところの、某の立ち位置にござる。
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