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〈4〉私の呪い、解かれます。
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長かった夏休みも終わり
今日から学校が始まる。
2限目のフランス語が今日のスタート。
私はどうしてフランス語の授業を
とったのだろうか……
あぁ、そうか。
彼が「一緒にとらないか」と
誘って来たんだった。
教室に入ると女子生徒が2人、隣同士で座り、携帯を弄りながら喋っていた。
座席指定は特に無いようだ。
どこに座ろうか迷っていると
後ろから肩を叩かれた。
「ん?」と振り返る。
彼だった。
彼は、笑顔で「よっ」と軽く右手を上げた。
私も「久しぶりだね」と反応する。
私は廊下側の後ろから2番目の席に荷物を置いた。
「このへん、どう?」
と彼に聞く。
「いいね」
と言うと彼は、私の斜め後ろの席に座った。
「あれ?隣、来ないの?」
「うん。ここがいいんだ」
「なんで?1番後ろが好きなの?」
「いや、むしろ嫌いかな、僕目悪いし」
「だったら前座れば……」
「いいんだよ、ここで。ほら、始まるよ」
これ以上、何を言っても無駄な気がする。
放っておこう。
授業が始まった。
正直、私はフランス語に興味がなかった。
だから、全然頭に入ってこない。
というか、頭に入れる気がない。
テストは、あとで教科書を見れば乗り切れるだろう、と思っていた。
あくびが止まらない。
眠気に負けそうになり、
(さすがに寝るのはまずいよね)
と、目をこする。
(痛っ!まつ毛入ったかも……)
ポーチから手鏡を取り出し、
顔の前に持ってくる。
すると
目が合った。
鏡の中の彼と。
黒板を見るわけでもない。
教科書を見るわけでも
窓の外を見るわけでもない。
今も
じっと
"私を"見ている。
そして
鏡の中の彼が微笑んだ。
それから授業が終わるまでの1時間、
ずっと彼に見られているような
そんな気がした。
しかし、よく考えてみると
私が鏡を出したあの瞬間だけ、こちらを見ていた可能性もある。
誰かがゴソゴソと何かを探していたら、私だって少しは気になる。
私は冗談めかして
「授業中、私のこと見てたでしょ~」
と、彼に言ってみた。
すると彼は、少しの沈黙の後
「あ、バレちゃった?だって、面白いくらいあくびしてるからさぁ」
と、私と同じようなテンションで
茶化すように答えた。
「もうやめてよ、恥ずかしいなぁ」
ホッとする。
普通の友達の会話みたいだ。
そう
私たちは
"普通の友達"なんだ。
ずっと、友達を作るのが怖かった。
作ってはいけないものだと思っていた。
『友達なんてものを信じるな。お前がいくら信じようと、相手は勝手に離れていく。つらい思いをするのはお前だけだ。』
という両親の言葉が、呪いのように付きまとい、私を孤立させた。
でも、彼のおかげで
私は変わることができた。
友達は悪いものではない。
毎日を楽しくしてくれるものだ。
悲しみを分かちあってくれるものだ。
両親が言うように
つらい思いをすることになっても
それもまた
友達が癒してくれるはずだ。
私と彼は友達。
普通の
友達。
初めての
友達。
今日から学校が始まる。
2限目のフランス語が今日のスタート。
私はどうしてフランス語の授業を
とったのだろうか……
あぁ、そうか。
彼が「一緒にとらないか」と
誘って来たんだった。
教室に入ると女子生徒が2人、隣同士で座り、携帯を弄りながら喋っていた。
座席指定は特に無いようだ。
どこに座ろうか迷っていると
後ろから肩を叩かれた。
「ん?」と振り返る。
彼だった。
彼は、笑顔で「よっ」と軽く右手を上げた。
私も「久しぶりだね」と反応する。
私は廊下側の後ろから2番目の席に荷物を置いた。
「このへん、どう?」
と彼に聞く。
「いいね」
と言うと彼は、私の斜め後ろの席に座った。
「あれ?隣、来ないの?」
「うん。ここがいいんだ」
「なんで?1番後ろが好きなの?」
「いや、むしろ嫌いかな、僕目悪いし」
「だったら前座れば……」
「いいんだよ、ここで。ほら、始まるよ」
これ以上、何を言っても無駄な気がする。
放っておこう。
授業が始まった。
正直、私はフランス語に興味がなかった。
だから、全然頭に入ってこない。
というか、頭に入れる気がない。
テストは、あとで教科書を見れば乗り切れるだろう、と思っていた。
あくびが止まらない。
眠気に負けそうになり、
(さすがに寝るのはまずいよね)
と、目をこする。
(痛っ!まつ毛入ったかも……)
ポーチから手鏡を取り出し、
顔の前に持ってくる。
すると
目が合った。
鏡の中の彼と。
黒板を見るわけでもない。
教科書を見るわけでも
窓の外を見るわけでもない。
今も
じっと
"私を"見ている。
そして
鏡の中の彼が微笑んだ。
それから授業が終わるまでの1時間、
ずっと彼に見られているような
そんな気がした。
しかし、よく考えてみると
私が鏡を出したあの瞬間だけ、こちらを見ていた可能性もある。
誰かがゴソゴソと何かを探していたら、私だって少しは気になる。
私は冗談めかして
「授業中、私のこと見てたでしょ~」
と、彼に言ってみた。
すると彼は、少しの沈黙の後
「あ、バレちゃった?だって、面白いくらいあくびしてるからさぁ」
と、私と同じようなテンションで
茶化すように答えた。
「もうやめてよ、恥ずかしいなぁ」
ホッとする。
普通の友達の会話みたいだ。
そう
私たちは
"普通の友達"なんだ。
ずっと、友達を作るのが怖かった。
作ってはいけないものだと思っていた。
『友達なんてものを信じるな。お前がいくら信じようと、相手は勝手に離れていく。つらい思いをするのはお前だけだ。』
という両親の言葉が、呪いのように付きまとい、私を孤立させた。
でも、彼のおかげで
私は変わることができた。
友達は悪いものではない。
毎日を楽しくしてくれるものだ。
悲しみを分かちあってくれるものだ。
両親が言うように
つらい思いをすることになっても
それもまた
友達が癒してくれるはずだ。
私と彼は友達。
普通の
友達。
初めての
友達。
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