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キースの思い
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初めて会ったときはただ、可哀想な方だと思った。
公爵家の三男という身分に生まれながら、妾の子として世間から隠され、隔離されて生きていた人。誰にも尊ばれずに生きてきた人。泣くことすら許されず生きてきた人。
初めは面倒だと思っていた。騎士団の仕事に加えて、厄介な事情のある令息の護衛なんて。当たり前だろう。貴族といえば、平民を見下す高飛車な輩が多い上、無理難題を与えてはそれに悪戦苦闘する人間を見て喜んでいるような連中ばかりだと思っていたから。
この国の貴族なんて、そんなものだ。
キースは騎士団には珍しい、平民の出身だった。男勝りな貴族敗れの母が、女手一つで育てた自分好みの息子。それがキースだ。
騎士団にいる連中は、実力主義の人間が多い。故に騎士団で一、ニを争う実力者であるキースは、騎士団では尊重され、大切にされてきた。まァ、男連中らしく思いっきり頬を張られたり、信じられない量の飯を盛られたりはしたが。悪い連中じゃない。
そんな騎士団の団長であるファロウから呼び出されたのは、午後の訓練の時間だった。
「やぁ、キース。来たか」
「はっ」
「そう畏まらなくていい。今日は楽にしていていいよ」
ファロウは丸眼鏡にふわふわの髪をした、端正な顔立ちの優しげな男だ。だがその実、益荒男の集まりである騎士団を取りまとめる強いリーダーシップとカリスマ性を持ち合わせる人物でもある。
「実は、きみに依頼があってね」
「それは、どのような」
「知ってるかな?メイヴィ公爵家三男の噂」
「それは……」
知っている。かの名高きメイヴィ公爵家には、娼婦の腹から生まれた三男がいるという。手の付けられぬ癇癪持ちで、表に出されることはない、とか。
「彼の護衛を頼みたいそうだ。公爵直々のご依頼だよ」
にこり、と天使のような顔で笑って、ファロウは言った。
そうして会った三男は、見るも無惨な姿だった。萎えた細い足、痩せこけて顔色は悪く、美しいはずの髪は一切の艶を失くしている。こちらを無表情に見えいる姿は、必死に自分の心を守ろうとしているように見えて、どうしたって癇癪持ちには見えない。寧ろ、その逆に見えた。
だが依頼は依頼。俺はこのユリシス様の護衛をするだけだ。
「初めまして、ユリシス・フォン・メイヴィ様」
翡翠色の濁った瞳は、俺を映さない。
「私はキース・ファビオと申します。よろしくお願い致します」
白いワンピースのような服に身を包んだこの人は、なんの寒さも感じていないように見えた。
ただただ氷のように美しいお方。
公爵家の三男という身分に生まれながら、妾の子として世間から隠され、隔離されて生きていた人。誰にも尊ばれずに生きてきた人。泣くことすら許されず生きてきた人。
初めは面倒だと思っていた。騎士団の仕事に加えて、厄介な事情のある令息の護衛なんて。当たり前だろう。貴族といえば、平民を見下す高飛車な輩が多い上、無理難題を与えてはそれに悪戦苦闘する人間を見て喜んでいるような連中ばかりだと思っていたから。
この国の貴族なんて、そんなものだ。
キースは騎士団には珍しい、平民の出身だった。男勝りな貴族敗れの母が、女手一つで育てた自分好みの息子。それがキースだ。
騎士団にいる連中は、実力主義の人間が多い。故に騎士団で一、ニを争う実力者であるキースは、騎士団では尊重され、大切にされてきた。まァ、男連中らしく思いっきり頬を張られたり、信じられない量の飯を盛られたりはしたが。悪い連中じゃない。
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「やぁ、キース。来たか」
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ファロウは丸眼鏡にふわふわの髪をした、端正な顔立ちの優しげな男だ。だがその実、益荒男の集まりである騎士団を取りまとめる強いリーダーシップとカリスマ性を持ち合わせる人物でもある。
「実は、きみに依頼があってね」
「それは、どのような」
「知ってるかな?メイヴィ公爵家三男の噂」
「それは……」
知っている。かの名高きメイヴィ公爵家には、娼婦の腹から生まれた三男がいるという。手の付けられぬ癇癪持ちで、表に出されることはない、とか。
「彼の護衛を頼みたいそうだ。公爵直々のご依頼だよ」
にこり、と天使のような顔で笑って、ファロウは言った。
そうして会った三男は、見るも無惨な姿だった。萎えた細い足、痩せこけて顔色は悪く、美しいはずの髪は一切の艶を失くしている。こちらを無表情に見えいる姿は、必死に自分の心を守ろうとしているように見えて、どうしたって癇癪持ちには見えない。寧ろ、その逆に見えた。
だが依頼は依頼。俺はこのユリシス様の護衛をするだけだ。
「初めまして、ユリシス・フォン・メイヴィ様」
翡翠色の濁った瞳は、俺を映さない。
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白いワンピースのような服に身を包んだこの人は、なんの寒さも感じていないように見えた。
ただただ氷のように美しいお方。
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