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第十六章 三点測量
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海底から浮上する潜水艇の中で、測は意識を失っていた。
「ハカル——」
リーネの声が、遠くに聞こえる。
「起きて、ハカル——」
目を開けると、リーネの顔が視界に入った。涙を流している。
「……生きているか、俺は」
「ええ、生きているわ。でも——」
「スキルは、なくなった」
「……ごめんなさい」
「謝ることじゃない。必要な代償だった」
測は体を起こそうとした。だが、力が入らない。スキルを失ったことで、体にも大きなダメージが残っている。
「しばらくは、安静にしないと」
「わかった」
測は再び目を閉じた。
だが、心は穏やかだった。
五つの大基準点が復活した。世界の座標系は正常化した。歪曲公は消滅した。
やるべきことは——やった。
────
座標院に戻ったのは、出発から一ヶ月後のことだった。
「お帰りなさい、先生!」
卒業生たちが出迎えてくれた。彼らの顔には、喜びと安堵が浮かんでいる。
「皆、無事だったか」
「はい。大基準点が復活してから、歪曲の攻撃は完全に止まりました。基準点網も安定しています」
「そうか。良かった」
測は杖をついて歩いた。体はまだ完全に回復していないが、立って歩くことはできる。
「先生、あの——」
卒業生の一人が、遠慮がちに訊ねた。
「スキルを失ったと聞きましたが——」
「ああ、失った」
測は率直に答えた。
「もう、座標を見ることはできない。だが——」
測は微笑んだ。
「測量はできる。道具と知識があれば、誰でもできる。俺がいなくても——お前たちがいる」
卒業生たちは、複雑な表情を浮かべた。だが、その中に——決意の色が見えた。
「私たちが——先生の代わりを務めます」
「代わりじゃない。継承だ」
測は言った。
「測量の技術は、一人のものじゃない。世界全体のものだ。俺が始めたことを——お前たちが続ける。それが、測量士の役目だ」
────
一ヶ月後、国際測量会議が開催された。
世界中から代表が集まり、大基準点復活後の世界について話し合った。
「五つの大基準点が復活したことで、世界の座標系は完全に安定しました」
測は報告した。
「今後は、各大陸に座標院の分校を設立し、測量師を育成していきます。座標の技術は、世界共通の公共財として管理されます」
各国の代表が頷いた。異論はなかった。大基準点の復活は、すべての国に恩恵をもたらしている。国境紛争は減少し、インフラは安定し、魔法陣は正常に機能している。
「ハカル殿」
アクアダクト王国の宰相が立ち上がった。
「あなたの功績に対し、我々は感謝の意を表します。そして——」
宰相は深々と頭を下げた。
「国際測量機構の名誉会長に、あなたを推薦します」
会場から拍手が起きた。
測は——少し照れくさそうに——頭を下げた。
「光栄だが——俺はただの測量士だ。名誉会長なんて、大げさだ」
「大げさではありません」
リーネが立ち上がった。
「あなたは、この世界を救ったのよ。座標を取り戻し、歪みを正した。その功績は——」
「功績は、俺だけのものじゃない」
測は言った。
「クロードが機材を作り、ボルガが戦い、ミーシャが古代の知識を提供し、リーネが外交を担った。卒業生たちが各地で活躍した。皆の力で——世界は救われた」
測は会場を見回した。
「だから——名誉会長を引き受けるなら、条件がある」
「条件?」
「俺一人じゃなく、チーム全体で引き受ける。座標院の創設メンバー全員が、名誉会長だ」
会場がざわついた。だが、すぐに——温かい笑いに変わった。
「了解しました」
宰相は微笑んだ。
「では、座標院創設メンバー全員を、国際測量機構の名誉会長に推薦します。異議のある方は?」
誰も、異議を唱えなかった。
「ハカル——」
リーネの声が、遠くに聞こえる。
「起きて、ハカル——」
目を開けると、リーネの顔が視界に入った。涙を流している。
「……生きているか、俺は」
「ええ、生きているわ。でも——」
「スキルは、なくなった」
「……ごめんなさい」
「謝ることじゃない。必要な代償だった」
測は体を起こそうとした。だが、力が入らない。スキルを失ったことで、体にも大きなダメージが残っている。
「しばらくは、安静にしないと」
「わかった」
測は再び目を閉じた。
だが、心は穏やかだった。
五つの大基準点が復活した。世界の座標系は正常化した。歪曲公は消滅した。
やるべきことは——やった。
────
座標院に戻ったのは、出発から一ヶ月後のことだった。
「お帰りなさい、先生!」
卒業生たちが出迎えてくれた。彼らの顔には、喜びと安堵が浮かんでいる。
「皆、無事だったか」
「はい。大基準点が復活してから、歪曲の攻撃は完全に止まりました。基準点網も安定しています」
「そうか。良かった」
測は杖をついて歩いた。体はまだ完全に回復していないが、立って歩くことはできる。
「先生、あの——」
卒業生の一人が、遠慮がちに訊ねた。
「スキルを失ったと聞きましたが——」
「ああ、失った」
測は率直に答えた。
「もう、座標を見ることはできない。だが——」
測は微笑んだ。
「測量はできる。道具と知識があれば、誰でもできる。俺がいなくても——お前たちがいる」
卒業生たちは、複雑な表情を浮かべた。だが、その中に——決意の色が見えた。
「私たちが——先生の代わりを務めます」
「代わりじゃない。継承だ」
測は言った。
「測量の技術は、一人のものじゃない。世界全体のものだ。俺が始めたことを——お前たちが続ける。それが、測量士の役目だ」
────
一ヶ月後、国際測量会議が開催された。
世界中から代表が集まり、大基準点復活後の世界について話し合った。
「五つの大基準点が復活したことで、世界の座標系は完全に安定しました」
測は報告した。
「今後は、各大陸に座標院の分校を設立し、測量師を育成していきます。座標の技術は、世界共通の公共財として管理されます」
各国の代表が頷いた。異論はなかった。大基準点の復活は、すべての国に恩恵をもたらしている。国境紛争は減少し、インフラは安定し、魔法陣は正常に機能している。
「ハカル殿」
アクアダクト王国の宰相が立ち上がった。
「あなたの功績に対し、我々は感謝の意を表します。そして——」
宰相は深々と頭を下げた。
「国際測量機構の名誉会長に、あなたを推薦します」
会場から拍手が起きた。
測は——少し照れくさそうに——頭を下げた。
「光栄だが——俺はただの測量士だ。名誉会長なんて、大げさだ」
「大げさではありません」
リーネが立ち上がった。
「あなたは、この世界を救ったのよ。座標を取り戻し、歪みを正した。その功績は——」
「功績は、俺だけのものじゃない」
測は言った。
「クロードが機材を作り、ボルガが戦い、ミーシャが古代の知識を提供し、リーネが外交を担った。卒業生たちが各地で活躍した。皆の力で——世界は救われた」
測は会場を見回した。
「だから——名誉会長を引き受けるなら、条件がある」
「条件?」
「俺一人じゃなく、チーム全体で引き受ける。座標院の創設メンバー全員が、名誉会長だ」
会場がざわついた。だが、すぐに——温かい笑いに変わった。
「了解しました」
宰相は微笑んだ。
「では、座標院創設メンバー全員を、国際測量機構の名誉会長に推薦します。異議のある方は?」
誰も、異議を唱えなかった。
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